志望理由書を添削しても、なぜか内容が深くならないときに見るべきポイントは何か。

志望理由書の添削をしていると、文章自体は読みやすくなったのに、なぜか内容が深くならないことがあります。

そんなときに見るべきなのは、言い回しや表現のきれいさだけではありません。

推薦入試で問われているのは、単なる「やる気」ではなく、自分の関心を、社会の課題と、大学での学び、そして自身の将来の方向性と一本につなげて語れるかどうかです。

志望理由書というと、「とにかく熱意を伝える文章」「大学に入りたい気持ちを書くもの」と思われがちですが、熱意だけでは足りません。

自分の「好きなこと」や「得意なこと」を語るだけでも不十分です。

志望理由書は、自己理解・社会読解・自己展開の3つを文章の形にする作業なのです。

まず、5つの段落が一本につながっているかを見る

志望理由書には、基本の「型」があります。

【第1段落】「将来何がしたいか」を示す
【第2段落】「なぜそう思ったか」を語る
【第3段落】「今まで何をしてきたか」を書く
【第4段落】「大学で勉強したいこと」を具体的に述べる
【第5段落】「大学卒業後にやりたいこと」へつなげる

この順番で書くと、過去・現在・未来が一本の線になります。

添削するときに重要なのは、それぞれの段落がきれいに書けているかではなく、5つの段落が本当に一本でつながっているかを見ることです。

たとえば、第1段落で教育格差の問題に向き合いたいと書いているのに、第3段落ではまったく関係のない活動実績が並び、第4段落では「英語を学びたい」と書かれていたら、文章としては整っていても、志望理由としては弱くなります。

逆に、将来向き合いたい課題、その原点となる経験、これまでの行動、大学で学びたいこと、その先の将来像が自然につながっていると、文章は一気に強くなります。

第1段落:「好き」ではなく、どんな課題に向き合いたいか

第1段落では、「将来したいこと」を書きます。

大事なのは、「自分がやりたいこと」だけで終わらないことです。

志望理由書の冒頭は、

「私は英語が好きです」
「私は人と話すのが好きです」
「私は昔から〇〇に興味があります」

といった気持ちの表明ではありません。

そうではなく、「将来、自分が社会のどんな課題に向き合い、どんな形で関わっていきたいのかを書く」のです。

たとえば、「子どもと関わる仕事がしたいから、教育学部に行きたい」と書くよりも、「地域や家庭環境によって学ぶ機会に差が生まれてしまう現状を変えたい」と書いたほうが、はるかに強い。

あるいは、「英語を学びたい」よりも、「外国ルーツの子どもが言語の壁によって孤立しない社会をつくりたい」と書いたほうが、社会に向いた文章になります。

大学が見たいのは、「この人は何が好きか」だけではなく、その関心をどんな社会課題と結びつけて考えているかだからです。

ただし、「世界平和を実現したい」「すべての人を幸せにしたい」のように、あまりに大きすぎる言葉で書き始める必要もありません。

大切なのは、本人が本当に引っかかっている現実の問題を書くことです。

第2段落:「なぜそう思ったか」が弱いと、将来像が浮いて見える

次に、第2段落では、「なぜそう思ったか」を書きます。

ここでは、自分の問題意識の原点、つまりその考えを持つようになった“きっかけ”を書きます。

ここが弱いと、第1段落で書いた将来像が、急にどこかから落ちてきたように見えてしまいます。

逆にここがしっかりしていると、「この人はこういう経験を通して、この問題を自分ごととして考えるようになったのだな」と相手に伝わります。

たとえば、高齢者福祉に関心があるなら、祖父母の介護を身近で見た経験があるかもしれません。

教育に関心があるなら、周囲の友人が進学や学習環境で大きな差を抱えていることに気づいた経験があるかもしれません。

環境問題なら、地域の自然が変わっていく様子や、災害を通して危機感を持った経験があるかもしれません。

ここで注意したいのは、単なる感想文にしないことです。

「かわいそうだと思いました」
「何とかしたいと思いました」

で止まらないようにします。

大事なのは、その経験を通して何が問題だと感じたのか、どんな違和感を持ったのか、自分の中で何が変わったのかを書くことです。

第2段落は、思いを披露する場所ではありません。

第1段落で書いた将来像に、ちゃんと理由を与える場所です。

第3段落:「何をしたか」ではなく、その関心に沿ってどう動いたか

第3段落では、「今まで何をしてきたか」を書きます。

ここでよくある失敗は、「すごい自分」を見せようとしてしまうことです。

たしかに、高校時代に何をしてきたかは重要です。

けれど、推薦入試は実績自慢の大会ではありません。

推薦入試で大事なのは、実績の大きさそのものではなく、その経験が自分の関心とどうつながっているかです。

  • ボランティアに参加した。
  • 探究活動をした。
  • 読書をした。
  • 資格の勉強をした。
  • 地域のイベントに関わった。
  • 先生や地域の人に話を聞いた。

こうしたことは、どれも立派な材料になります。

ただし、それが第1段落・第2段落で書いた問題意識とつながっていなければ意味がありません。

重要なのは、「何をしたか」だけではなく、その関心に沿って自分がどう動いたかです。

さらに、この段落では行動の事実だけで終わらせないことが大切です。

そこから何を学んだのか。

どんな難しさを感じたのか。

自分の知識や経験の足りなさにどう気づいたのか。

そうしたことまで書けると、第3段落は一気に深くなります。

たとえば、「子どもの学習支援に参加した」で終わるのではなく、「学習支援の必要性だけでなく、家庭環境や制度上の問題が複雑に絡んでいると知った」と書ければ、単なる活動歴ではなく、問題意識が深まった過程になります。

一番差がつくのは「大学で何を学びたいか」

志望理由書の中で最も差がつくのが、第4段落です。

ここでは「大学で勉強したいこと」を書きます。

多くの受験生がここで急に弱くなります。

なぜなら、大学で何を学びたいかを、具体的に書けていないからです。

「英語を勉強したい」
「幅広い教養を身につけたい」
「サークル活動も頑張りたい」

といった表現は、一見前向きに思えますが、推薦入試の志望理由書では弱くなります。

どの大学にも当てはまってしまうからです。

大学は高度教育機関です。

だから、大学で勉強したいことは、できるだけ具体的でなければなりません。

何を、どの観点から、どのように学びたいのか。

その大学のどんな授業、どんなカリキュラム、どんな先生の研究と自分の関心がつながるのか。

そこまで書けると、第4段落の内容の精度が一気に上がります。

たとえば法学部なら、「法律を学びたい」ではなく、

「高齢者の相続トラブルに関心があるため、民法や家族法を通して、日常生活の中で人を守る制度を学びたい」

教育学部なら、「教育について学びたい」ではなく、

「地域教育の持続可能性に関心があり、教育心理学や学校臨床の視点から、安心して学べる環境づくりを考えたい」

農学部なら、「農業について学びたい」ではなく、

「地域農業の持続可能性に関心があるため、生産技術だけでなく流通や地域資源管理まで含めて学びたい」

ここまで具体化されると、「大学で学びたいこと」が初めて志望理由になります。

第4段落:「この大学でなければならない理由」が入っているか

第4段落で特に重要なのは、「この大学でなければならない理由」をつくることです。

そのためには、大学のホームページを見るだけでは足りません。

シラバスを調べる。

カリキュラムを調べる。

何年次にどんな授業があるのかを見る。

教授やゼミも調べる。

そこまでやると、志望理由書の中に「大学名」だけでなく「大学の中身」が入ってきます。

「貴学は国際教育に力を入れているため志望します」のような文章は、多くの大学に当てはまります。

一方で、「〇〇教授の研究」「〇年次の〇〇という授業」「〇〇という実習」と、自分の問題意識が具体的につながっていれば、その大学を選ぶ理由が見えてきます。

添削するときには、「大学名を別の大学に変えても、そのまま成立してしまわないか」という視点で見るのも有効です。

第5段落:大学での学びと卒業後が自然につながっているか

最後の第5段落では、「大学卒業後にやりたいこと」を書きます。

ここでは、いきなり新しい夢を出すのではなく、大学での学びの延長線上にある将来像を書きます。

第4段落で、大学で学びたいことを書いたのに、第5段落でまったく別の夢が出てくると、文章の一貫性が失われます。

逆に、大学での学びと卒業後の姿が自然につながっていると、「この人は大学での4年間をちゃんと将来へつなげて考えている」ことが相手に伝わります。

たとえば、大学で教育格差について学びたいと書いたなら、卒業後は教育現場や行政、NPOなどで学習機会の不平等を小さくする仕事に関わりたいとつなげられます。

環境政策を学びたいなら、自治体や企業で持続可能な地域づくりに関わりたいと書けるかもしれません。

もちろん、高校生の段階で将来を完全に言い切る必要はありません。

ただし、方向性は必要です。

大学で何を学び、それをどう社会へ返したいのか。

そこが見えていると、志望理由書は最後まで一本の線を保つことができます。

添削では「各段落」より「段落と段落の間」を見る

志望理由書の内容が浅いとき、それぞれの段落だけを直しても、あまり深くなりません。

むしろ見るべきなのは、段落と段落の間です。

「なぜこの経験から、その問題意識につながったのか」
「なぜその問題意識から、この活動をしたのか」
「その活動を通して、なぜこの学問が必要だと思ったのか」
「なぜその学問を、この大学で学ぶ必要があるのか」
「大学で学んだことを、その後どう生かしたいのか」

この間が飛んでいると、文章はきれいでも、どこか借り物のように見えてしまいます。

逆に、このつながりを一つずつ確認していくと、志望理由書の内容は自然と深くなっていきます。

志望理由書は「うまい文章」を書く競技ではない

志望理由書は「うまい文章」を書く競技ではありません。

大事なのは、自己理解・社会読解・自己展開の3つが、5つの段落の中で自然につながっていることです。

自分は将来何がしたいのか。

なぜそう思うのか。

今まで何をしてきたのか。

大学で何を学びたいのか。

卒業後に何をしたいのか。

この5つの問いに、自分の言葉で答えてみる。

そこに一本の筋が通れば、文章は強くなります。

志望理由書とは、「この大学に入りたいです」というための文章ではありません。

「私はこういう問題意識を持ち、こういう経験をしてきて、だからこの大学でこう学びたいのです」と示す文章です。

文章は整っているのに内容が浅いと感じたら、表現を直す前に、5つの段落と、その間のつながりを確認してみてください。