この連載では、みなさんからフォーム・セミナーや、感想に寄せられたご質問に孫さんが回答していきます!今回の質問はこちらです。
Q.未来図の志望理由書データベースを活用した指導をする際の活用事例を教えてください。
未来図のデータベースは「思考の材料」
まず、基本的に推薦入試の指導方法は、大きく分けると2つあります。
1つ目は、自分の興味から大学を探していくフォアキャスト。
2つ目は、行きたい大学から逆算して行動を考えるバックキャストです。
未来図の志望理由書データベースも、この二つの使い方ができます。
大学から逆算する「バックキャスト」
まずバックキャストです。
これは、行きたい大学・学部が先に決まっているパターンです。
例えば、「私は早稲田大学の社会科学部に行きたい」というところからスタートするとします。
そうしたら未来図で、実際に早稲田の社会科学部に合格した先輩たちの志望理由書を見る。
例えば、放送部での活動を通して、聴覚障害のある柔道家を1年間取材し、「将来、聴覚障害を持っている人たちにも見やすいテレビ番組を作っていきたい」というテーマを書いて合格した生徒がいます。

引用:未来図 2025年入学 早稲田大学 社会科学部全国自己推薦入試 合格志望理由書
この事例を見て、「では、自分もジャーナリズムにつながる活動をしてみよう」と考えていく。
つまり、合格者の特徴を見つけ、それをモデルケースにしながら、自分がこれから何をするべきか逆算する。
これがバックキャスト型の活用方法です。
自分の興味から大学を探す「フォアキャスト」
逆にフォアキャストは、自分の中にすでに興味があるテーマがあるパターンです。
例えば、
「自分はジャーナリズムに興味がある」
「教育に興味がある」
「ジェンダーの問題に興味がある」
といった状態です。
その場合は未来図を使って、同じようなテーマに関心を持っていた先輩たちが、どの大学・学部に合格しているのかを調べます。
「自分と似た関心を持った先輩がこの大学に進学しているなら、自分にも合っているかもしれない」という形で、興味から大学を探していくわけです。
これがフォアキャストです。
理想はフォアキャスト。ただし、高3では難しい
これまで多くの受験生を見てきた経験上、基本的にはフォアキャスト型の生徒の方が合格率が高いです。
理由はシンプルです。
バックキャストは、「この大学に行きたいから、このテーマをやる」という大学起点の考え方。
フォアキャストは、「自分はこのテーマに興味がある。だから、それを学べる大学を探す」という興味起点の考え方です。
推薦入試では、後者の方が活動や志望理由に一貫性が生まれやすい。
ただし、現実には簡単ではありません。
高校生の段階で、「自分はこれに興味がある」と明確に言える生徒ばかりではないからです。
特に高校3年生になると、「この大学に行きたい」というところから受験を考え始めるケースも多く、どうしてもバックキャスト型になりやすくなります。
それはもう、しょうがないものとして考えた方がいいです。
重要になるのは、バックキャストをどう設計するかです。
バックキャストでも受かる子は何をしているのか
バックキャスト型で受かる子は何が違うのか。
彼らが得意なのは、合格した人の特徴を抽出して、アドミッションポリシーと照らし合わせることです。
例えば、早稲田大学の社会科学部で考えてみます。
放送部の子が受かってる。放送部の子以外にはどんな子が受かっているのか。
例えば、「生理に対するタブーや偏見を解消したい」というテーマを書いている子もいる。
逆に、「日本の英語教育、とりわけ話す力を育成する仕組みを作って、将来、日本人が英語を喋れるようにしていきたい」という子もいる。
全く違うテーマなわけですよね。
だからこそ、例えば、放送部、英語教育、ジェンダー、生理問題みたいに、何個かの合格例を見せる。
その上で、「この人たちには、どんな共通点があるだろう?」というのを、生徒自身に考えさせる必要があります。
合格者の共通点とアドミッションポリシーを照らし合わせる
もちろん、合格事例を見ただけで簡単に答えが出るわけではありません。
そこで次に行うのが、大学のアドミッションポリシーとの照合です。
自分が考えた「この大学に受かる人には、こういう特徴があるのではないか」という仮説を立てる。
そして、その仮説と、大学側が公式に示している「どのような学生を求めているのか」を照らし合わせます。
このプロセスを通して、この大学・学部では、何が評価されているのかを考えていきます。
実際に大学側が「こういう学生が欲しいです」と言っている内容が、本当に合っているのかを見る。
ここまでやらないと、基本、バックキャストの子は結構受かりづらいです。
逆に言えば、高校三年生でも、このプロセスを一旦経ることで、合格率を上げることはできます。
早稲田大学社会科学部なら、何が見えてくるのか
例えば、早稲田大学社会科学部の教育理念を見ると、「学際性」「臨床性」「国際性」といった考え方が重視されています。

先ほどの合格事例と照らし合わせると、「早稲田の社学って、社会課題そのものは何でもいいんだな」ということが見えてくるんですよね。
放送でもいい。
英語教育でもいい。
ジェンダーでもいい。
生理問題でもいい。
テーマは違っていても、それぞれの社会課題を学際的・実践的・国際的な視点から捉えている。
このように、大学側が本当に評価している共通項を見つける。
これが大事なんです。
同じ早稲田でも、学部によって「絞り所」が違う
一方で、同じ早稲田でも全然違うところがあります。
例えば、創造理工学部建築学科では、合格者のテーマが建築に関する社会課題にかなり絞られています。
「将来の目標は、建築士としてタンザニアをはじめとする世界各地域の風土や文化に適した学校を建てる」という生徒もいれば、
「病院が持つ殺風景さをなくしていきたい」というテーマを書いた生徒もいます。
つまり、同じ早稲田でも、社会科学部は社会課題自体はかなり広くていいが、建築学科は、建築の社会課題にかなり絞らないといけない、ということが分かる。
このように、未来図の志望理由書を複数見ながら、合格者の志望理由書と大学側の方針を照らし合わせて、「どこまでテーマを絞る必要がある大学・学部なのか」を抽象化していくっていうことが、極めて重要です。
未来図は「答えを見るため」ではなく、「仮説を作るため」に使う
未来図のデータベースは、「この文章を真似すれば受かる」という使い方をするものではありません。
複数の合格事例を見ながら、
・なんでこの人たちは受かったんだろう?
・共通して評価されているものは何なんだろう?
・この大学・学部は、何を求めているんだろう?
ということを、生徒自身に考えさせる。
そして、そこで立てた仮説をアドミッションポリシーと照らし合わせる。
未来図は、答えを見るためのデータベースというより、思考の材料として使う。
これが一番大事な使い方だと思います。
理想は、高校全体でフォアキャストの生徒を育てること
理想を言えば、高校1・2年生の段階から未来図を活用し、フォアキャスト型で進路を考えられる生徒を増やすことです。
例えば、
「自分と同じ興味を持っていた先輩は、どんな大学に進んだのだろう?」
「このテーマを学べる学部には、どんな選択肢があるのだろう?」
と調べてもらう。
そうすることで、大学名から進路を考えるのではなく、自分の興味から大学を探せるようになります。
とはいえ、すべての生徒を高校1年生から3年間継続して指導できるとは限りません。
だからこそ、実際の学校現場では、
高1・高2では、できるだけフォアキャストで使う。
高3で大学ありきになっている生徒には、バックキャストで複数の合格者を分析し、アドミッションポリシーまで照らし合わせる。
この2つの使い方を分けて考えるのが、未来図のデータベースを活用するうえで理想的だと思います。
