この連載では、みなさまからのフォーム・セミナーや、感想に寄せられたご質問に孫さんが回答していきます!今回の質問はこちらです。

Q.個別大学の総合型選抜を考えるうえで、共通して見るべきポイントは何ですか?

大学が「なぜ推薦入試で学生を取るのか」を考える

総合型選抜や学校推薦型選抜の対策を考えるうえで、まず意識してほしいことがあります。

それは、なぜ、その大学はわざわざ推薦入試で学生を取るのか?ということです。

一般選抜でも十分に学生が集まる大学が、なぜ推薦入試を実施するのか。

その理由を考えるときに重要になるのが、大学の経営方針です。

大学には、それぞれ目指している方向性があります。

  • 国際的な研究力を高めたい
  • 多様な学生を集めたい
  • 新しい分野の教育を強化したい

といった方針ですね。

推薦入試も、そうした大学の方針と無関係ではありません。

つまり、大学のアドミッションポリシーだけでなく、大学全体がどこを目指しているのかまで調べる。

大学の経営者や学長の視点に立って、「どんな学生に入学してほしいのか」を考えることが重要なんです。

早稲田大学の「Waseda Vision 150」から考える

例えば、早稲田大学には「Waseda Vision 150」という中長期計画があります。

これは、2032年の創立150周年に向けて、大学がどのような教育・研究を実現していくのかを示したものです。

私が早稲田大学の4学部すべてに合格できた理由の一つも、この「Waseda Vision 150」を理解していたことにあると思っています。

引用:早稲田大学「Waseda Vision 150」

この計画では、世界大学ランキングの向上を意識した国際競争力の強化や、留学生の受け入れ拡大などが掲げられています。

そうなると、留学生と積極的に議論し、多様な人たちと協働してプロジェクトや研究を進められる学生は、大学側にとって魅力的ですよね。

つまり、大学が目指す方向性を理解することで、どのような学生が求められているのかが見えてくるわけです。

同じ難関大学でも、求める学生像は違う

一方で、大学が違えば、重視している方向性も変わります。

例えば、早稲田大学と慶應義塾大学です。

早稲田大学は「Waseda Vision 150」で、国際化や研究力の向上、グローバルリーダーの育成などを打ち出しています。

逆に、慶應義塾大学は、「実学」や「独立自尊」といった独自の理念があり、世界大学ランキングの向上というのを目標として置いていないんです。

もちろん、慶應も国際的な教育・研究を重視しています。ただ、大学の理念や教育方針を見ていくと、早稲田とは異なる特徴が見えてきます。

ここで大事なのは、「早稲田なら国際性」「慶應ならイノベーション」と単純に分けることではありません。

それぞれの大学が何を重視していて、それが学部・学科の教育方針や入試制度にどう表れているのかを考えることです。

同じ大学でも、学部が違えば求める人物像は変わります。

だからこそ、大学名や偏差値だけで志望校を考えるのではなく、大学・学部・学科それぞれの方針を調べる必要があります。

大学の方針は、入試制度にも表れる

大学がどのような学生を求めているかは、実際の入試制度にも表れます。

例えば、東京科学大学などで導入されている、理工系分野の女子学生を対象とした入試枠です。

こうした制度の背景には、理工系分野における女性の進学や活躍を後押しし、学生の多様性を高めたいという方向性があります。

つまり、大学が抱えている課題や、今後実現したいことが、入試制度の設計にもつながっているわけです。

このように考えると、推薦入試は単に学力試験以外で学生を選ぶ制度ではなく、大学が実現したい教育・研究環境に向けて、多様な学生を受け入れるための仕組みとして捉えることができます。

だからこそ、入試要項だけでなく、その制度が作られた背景まで調べることが重要なんです。

これからは「文理融合」と「データ分析」が重要になる

今後の推薦入試を考えるうえで、もう一つ注目してほしいのが、文理融合型の学びです。

特に、データ分析や情報系の分野は、これからますます重要になると思っています。

社会課題を考えるときにも、経済や教育、環境といったテーマを、データを使って分析する力が求められるようになっています。

そうなると、高校段階から統計やデータ分析の基礎を学んでいる生徒は、大学での学びにもつなげやすくなります。

例えば、数学Ⅰの「データの分析」で扱う分散や標準偏差などの知識ですね。

こうした内容を、ただ試験のために覚えるのではなく、実際の社会課題と結びつけながら学んでいく。

それだけでも、探究活動や志望理由書の内容は大きく変わってきます。

今後は、文系・理系という枠組みだけで進路を考えるのではなく、複数の分野を組み合わせて課題を解決できる生徒を育てることが重要になると思います。

高校全体で「教科横断型」の進路指導を考える

では、こうした大学の変化に対して、高校ではどのような指導ができるのでしょうか。

私が重要だと思っているのは、学校全体で進路指導を設計することです。いわゆる、学校の「グランドデザイン」ですね。

例えば、英語科と国語科の先生が協力してスピーチコンテストを指導したり、英語科と理科の先生が連携して科学的なテーマを英語で発表する機会を作ったりする。

また、数学科や情報科の先生が、探究活動に必要なデータ分析を教えることも有効です。情報系の資格や検定も、志望する学部によってはアピール材料になります。

このように、推薦入試の指導を進路指導の先生だけで完結させず、教科を横断して生徒の力を伸ばしていくことが、これからますます重要になると思います。

大学の経営方針を、実際の進路指導にどう活用するか

ここまでの話を、実際の指導に落とし込むなら、次のような流れになると思います。

① 大学の中長期計画や教育方針を調べる

まず、大学の公式サイトで中長期計画や学長メッセージなどを確認します。

その大学が、今後どのような教育・研究を強化しようとしているのかを考えます。

② 学部・学科のアドミッションポリシーを確認する

次に、その大学全体の方向性が、志望する学部・学科の教育方針にどのようにつながっているのかを調べます。

③ 求める学生像について仮説を立てる

例えば、「この学部は国際的な協働経験を重視しているのではないか」「社会課題をデータで分析できる学生を求めているのではないか」と考えてみる。

④ 合格事例や募集要項と照らし合わせる

そして、実際の合格者の志望理由書や、入試で評価される項目と照らし合わせて、その仮説が妥当なのかを確認します。

この流れを通して、生徒自身が「大学は何を求めているのか」を考えられるようになることが理想です。

大学の方針から仮説を立てて、合格事例や入試制度を調べる。

そうすると、志望理由書や活動実績を、単なる過去の経験の紹介ではなく、大学での学びにつながるものとして整理できるようになります。

大学の「経営者の視点」に立って考える

今回、一番伝えたいことはシンプルです。

大学の経営者や理事長、学長の視点に立って、「なぜ、わざわざ推薦入試でその生徒を取るのか?」を考えてほしいんです。

特に、一般入試でも多くの学生が集まる難関大学が、なぜ推薦入試を実施しているのか。

その背景には、大学の中長期経営計画や、国の政策・補助金など、大学側のさまざまな事情があります。

こうした経営ロジックを高校の先生が理解し、生徒自身にも調べさせることが、推薦入試の対策につながります。

これが戦略です。

具体的にどの大学・学部でどんな対策をするべきかは、そこから考えていく話なんです。

この考え方を持っていれば、大学や学部が変わっても応用できるので、ぜひ意識していただければと思います。


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