Q5. 同じ学校を受験するとして、合格する生徒と不合格の生徒の合否を分けるところはどこですか? 特に目立つものをいくつか教えてください。

論理崩壊を起こさない

中央大学の文学部教育学専攻に出願した男の子がいます。評定も4.8ぐらいで、英検も持っていましたが、落ちました。

志望理由書の第一段落には、「私は将来、非認知能力向上を目的とした教育コンサルタントになって、日本の教育を変えていきたい」ということを書いていました。

第二段落では、なぜそう思ったのかという理由として、高校時代に経験した短期留学で、日本の教育は画一的だと思った、ということを書いています。

そして、解決したい社会的な課題として、偏差値などにとらわれずに子供たちが育っていく方法を考えたい、ということを書いていました。

2020年出願だったと思います。結論から言うと、落ちています。

同じ学校を受験する場合に、合格する生徒と不合格になる生徒を分けるものは何かという話ですが、特に目立つのは、論理崩壊です。先ほどの内容を見ても、かなり論理が崩れていることが分かります。

まず、非認知能力の研究は、中央大学の文学部では強くありません。これは大前提です。この時点で、大学側からすると、第一段落に「自分たちの大学ではできないこと」が書かれているわけです。

さらに、「偏差値にとらわれない」と言っている一方で、レベルの高い大学を目指しているという点も、論理としておかしいわけです。

基本的に、学校の先生方には一度心を鬼にして、生徒の書類が論理崩壊を起こしていないかを見てほしいと思います。


確認すべきは「本当にその大学である必要があるのか」

まず、その大学である必要があるのかということです。それを考える上で重要なのは教授です。どんなに崇高な理念を書いていても、どんなに評定や英検の成績が高くても、その生徒が興味を持っていることをサポートしてくれる教授がいなかったら、落ちる入試です。

十人の教授がいて、そのうち一人の教授が「この学生を受からせよう」と思ったら受かる入試でもあります。

逆に言えば、落ちている生徒の多くは、「その大学でなければならない理由」が明確になっていません。

特に、第一段落でその点が崩れている生徒が非常に多いです。志望理由書の第一段落を読んだだけで、この子は厳しいなと思うケースがかなりあります。


第一段落が社会課題になっているか

もう一つは、志望理由書の第一段落が社会課題になっていないことです。例えば、「非認知能力の向上を目的とした教育コンサルタント」と書いていても、それによって何の社会課題を解決するのか、という話になります。

大学というのは高等教育機関で、国の税金を投下して、私立も国立も運営されています。

そのため、卒業したら社会課題を解決できる人を育てなければいけない。これが大学側の責務です。そう考えると、第一段落に自分の将来の夢を書くというのは、基本的にナンセンスなんです。

社会課題というのは、解決した時に社会が何かしら良くなる、社会へのインパクトがあるということ。そして、もう一つが実現可能性です。

夢ではないので、「貧困を解決したい」とか、「日本の教育を良くしたい」といった、ふわっとした言葉では難しい。具体的に解決できるというところまで落とし込むことが、非常に求められます。

この二点が崩れたままになっているケースが多いです。


改善するなら、まず第一段落から

大前提として学校の先生方に伝えたいのは、第一段落で納得させられなかったら、第二段落以降は読んでもらえないということです。特に難関大学で、倍率が高ければ高いほど、その傾向は強くなります。

第一段落が漏れなくダブりなく整理されているか。そして、本当に社会課題になっているのか。

このあたりを含めて、先生方には見ていただいた方がいいと思います。理想は、こうしたことを生徒自身が気づけるようにしていくことです。

ただそれはすぐに実現するのは難しいと思うので、まずは先生方が第一段落の段階で、論理が崩れていないか、大学との接続ができているかを確認してあげることが重要だと思います。


併願戦略をどの程度意識させるか

総合型選抜と学校型選抜をどちらも出願しようとする生徒の指導で、気をつけるべきことは、併願戦略の組み方です。

先生方にお願いしたいのは、推薦入試の出願が終わったら、すぐに一般の勉強に戻るということです。

「もう受かるものではない。落ちるものだ」という認識を、学校内でとにかく統一していくことが大事です。

推薦入試を一つの独立した受験として捉えるのではなく、一般入試まで含めた併願戦略の中で位置づける。そして、推薦入試の出願後も学習を止めないという方針を学校全体で共有し、生徒への声かけまで一貫させていくことが大切だと思います。