この連載では、みなさんからフォーム・セミナーや、感想に寄せられたご質問に孫さんが回答していきます!今回の質問はこちらです。
Q.直前期の小論文指導はどのように進めていますか? 国公立ならではの指導方法はありますか?
国公立だから特別な指導があるわけではない
まず、国公立ならではの指導方法というのは、基本的にはありません。
国公立か私立かというよりも、大学や学部ごとの出題の特徴の方が強いです。
ただ、総合型選抜・推薦入試の小論文には、大きく分けて2つのパターンがあります。
1つ目が、基礎学力や基礎的な論理思考力を見る小論文です。
その学部についてどれだけ知識があるかというよりも、その子が本当に文章を読めているのか、書かれている内容を正しく理解できているのか、というところを見ています。
2つ目が、学部に特化した知識や適性を見る小論文です。
例えば、政治系の学部で「シルバー民主主義とは何か。その課題は何か。どう解決すればいいか」と聞かれるような問題です。
この場合は、そもそも「シルバー民主主義」という言葉を知らなければ答えられません。
出題形式を見ると、大学が何を見ているか分かる
実際、出題形式を見ると、この違いはかなり分かりやすいです。
文章を読ませて、その内容を要約し、そのうえで自分の考えを述べさせる問題であれば、基本的には前者の基礎読解・論理型です。
逆に、専門用語や学部に関する知識を直接問う問題であれば、後者の学部知識特化型になります。
例えば、筑波大学の医学系の推薦入試では、「血中の酸素濃度が下がったとき、人間の体はどうなるか」といった、知識がないと答えられない問題が出ることがあります。
なので、まずやるべきなのは、生徒が受験する大学の過去問を見て、その大学がどちらのタイプなのかを判断することです。

学部知識特化型は、知識を入れる
学部知識特化型の方は、対策自体はかなりシンプルで、その学部に関する知識を、とにかく入れるしかありません。
学部ごとにどんなテーマが小論文で出やすいのかは、ある程度整理できます。以前、西岡さんと一緒に、学部ごとの頻出テーマや必要な知識を整理したこともあります。

引用:【学部別】総合型選抜(AO入試)における小論文の頻出テーマ
例えば、経済学部なら経済格差やグローバル経済、教育学部なら教育格差やICT教育、法学部なら法と倫理や社会正義といったテーマです。
こうしたテーマについての基本的な知識を入れていく。経済学なら『はじめての経済学』のような入門書を読む、政治やジャーナリズム系ならニュース検定の教材を使う、という形です。
このあたりは、かなり一般入試に近いです。
必要な知識を覚えて、「これについて説明してください」と言われたときに、自分の言葉で説明できる状態まで持っていく。
直前期であれば、やるべきことは比較的明確です。
難しいのは、基礎読解・論理型
一方で、難しいのは基礎読解・論理型の方です。なぜかというと、知識を覚えれば終わりではなく、生徒が文章を本当に読めているのかを確認しなければいけないからです。
ここは学校の先生にとっても添削の負担が大きくなりやすいところだと思います。
そこで、僕が直前期におすすめしているのが、2019年以前のセンター試験・国語の現代文を使った練習です。
センター試験はマーク式なので、選択肢がありますよね。
その選択肢を全部隠して、本文と設問だけを見せます。
そして、本来は選択肢から選ぶ問題を、自分の言葉で自由記述させます。
センター試験の正解選択肢を、模範解答として使う
次に、実際の正解選択肢と自分の答えを比べます。
この方法のいいところは、正解選択肢がそのまま模範解答の役割をしてくれることです。
生徒が書いた文章と正解選択肢を比べながら、「この要素が抜けている」「ここを読み違えている」と確認できます。
先生側も、毎回ゼロから模範解答を作る必要がありません。
共通テストでもできなくはないんですが、直前期の小論文対策としては少し複雑すぎる問題もあるので、僕はセンター試験の現代文くらいがちょうどいいと思っています。
直前期は、要約をかなり多めにやる
なぜここまで読解や要約の話をするのかというと、基礎読解型の小論文では、まず文章を正しく読めていることが大前提になるからです。
多くの問題は、最初に「この文章では何を言っているのか」を要約させ、そのあとに「それを踏まえて自分の意見を書きなさい」と続きます。
ここで最初の要約を大きく外してしまうと、その後にどれだけ自分の意見を上手に書いても評価されにくい。
大学側からすると、そもそも課題文を読めていない人の意見を、そのあと何百字も読む意味がないということなんですよね。
そのため、直前期の対策は、6割から7割くらい要約でもいいと思っています。
文章を読んで、「結局、この文章は何を言っているのか」をまとめる練習です。
これができないと、自分の意見を深めたり、論理的に書いたりするところまでいきません。
「書く力」より先に、「読む力」が必要
小論文というと、どうしても「自分の意見をどう書くか」に目が行きがちです。
ただ、直前期で本当に優先した方がいいのは、その前の段階です。
まず文章を読めること。
そのうえで、何が書いてあるのかを正確にまとめられること。
ここができて初めて、自分の意見を書くところに進めます。
なので、小論文だからといって、最初から意見を書く練習ばかりする必要はありません。
むしろ、直前期ほど要約の割合を増やした方がいいと思っています。
結局、小論文の土台は現代文
ここまで話していて思うんですが、基礎読解・論理型の小論文って、結局かなり現代文なんですよね。
ちゃんと国語ができるか。文章を正しく読めるか。
最終的には、そこに帰結すると思います。
もちろん、時間があれば、文章を読んで、要約して、自分の意見を書いて、添削して、ということを繰り返せばいいです。
ただ、直前期にはそこまで時間がありません。
なので、ある意味ちょっと荒治療ではありますが、センター試験の選択肢を消して自由記述させるような方法で、短期間に読解と要約を鍛える。
これはかなり有効だと思っています。
混合型の大学もある
もちろん、大学によっては、基礎読解型と学部知識型を混ぜて出してくる場合もあります。
前半では文章を読ませて要約させて、後半では学部の専門知識を問う、といった形です。
だからこそ、最終的には過去問を見て判断する必要があります。
基礎読解・論理型なら要約を徹底する。
学部知識特化型なら、その学部の知識を入れる。
両方出るなら、両方に合わせて対策する。
塾内でも、今はとにもかくにも、要約をかなりやらせています。
まず読めること。その次に要約できること。そのうえで、自分の意見を書く。
直前期ほど、この順番が大事だと思います。
