医学部の入試といって何を想像しますか?
最も特徴的なのは「面接」だと私(医師)は考えます。
筆記試験については、東大対策をはじめとした教科書や参考書、動画教材など、信頼できる情報に溢れています。一方で、面接対策は信頼できる情報を手に入れづらいのが現状ではないでしょうか。
「そもそも医学部の面接ってどんな感じなの?」
「面接対策ってなにをするの?」
「医学部ならではの対策ってあるの?」
こういった疑問に対して、現役医師の視点から、面接の実態と対策方法をまとめました。
医学部の入試で面接は必須なのか
医学部入試において、面接は基本的に必須の選考プロセスとなっています。
東京大学の理科III類では面接が行われていなかった時代もありましたが、現在では面接が導入されています。
つまり、医学部を目指す受験生にとって、面接はほぼ100%避けて通れない関門ということになります。
面接の配点は大学によって大きく異なる
面接がほぼ必須であるとなると、気になるのはその配点の高さでしょう。
しかし実際には、面接の位置づけは大学によって異なり、大きく二つの方式に分けられます。
1つ目:「再確認パターン」
例えば東京大学や東京科学大学では、得点開示で面接点が具体的に公開されていません。
このことから、おそらく「面接点が合計点に加算されていない」と考えられます。
つまり、学力試験の得点によって合否がほぼ決まり、面接は「著しい問題がないか」を見極めるための再確認としての機能が強いのでしょう。
2つ目:「面接点パターン」
例えば筑波大学では、2次試験1400点中200点が面接点として組み込まれています。面接点が合計点に直接影響するため、1つめの「再確認パターン」よりも面接の重要性が高いと考えられます。
とはいっても、周囲の医師や医学生の話を聞く限りではあまりに大きな差がつくことは稀な印象です。
このように、面接がどれほど合否を左右するかは大学によって異なるため、志望校がどちらに近いのかを把握しておくことが対策の第一歩になります。

面接では何が評価されているのか
配点方式が異なるとはいえ、面接で評価されるポイントには共通点があります。
実際に重視されているのは、次のような項目だと考えられます。
- 明らかに逸脱した倫理観を持っていないか
- 卒業できる見込みがあるか(遅刻や休みの回数など)
- 最低限の対策をする熱意や能力があるか
- 周囲と協力できる、良い医者になれる素養があるか
これらを見ると、面接は「加点」というよりも「ネガティブチェック」としての側面が強いことがわかります。
就職活動のように「一緒に働きたいか」を見極めるよりも、
「医師になって社会に不利益を与えうる人物」を排除するための場、の意味合いが強いと考えられます。
面接形式
面接の形式は大学によって様々ですが、大きく二つのタイプに分けられます。
典型的な面接では、志望動機や学生の人となりが問われます。質問としては、
- なぜ医学部を志望するのか
- 卒業後どのようなキャリアを描いているか(キャリアプラン)
- なぜその大学を選んだのか
といった内容が中心となります。
一方で、少し変わった形式の面接を実施する大学もあります。例えば、
- 一枚の絵を見て感じたことを話す
- グラフを読み取り、そこから読み取れることを説明する
- グループディスカッションを行う
といった形式です。これらは受験生の思考の柔軟性やコミュニケーション能力を見る狙いがあると考えられます。
具体的な質問と回答
まず、これだけは用意すべき、という質問と回答例を列挙します。
もちろん大学によりますが、面接が簡易な大学では、これだけの準備でも面接を通過することができます。
1.医師を志した理由
基本的には何を言ってもよいです。医学部の教員が面接をするわけですし、「人の健康に関わる」ことの魅力は疑われません。
注意すべきは一点だけで、倫理的に逸脱しないことです。
例えば、「人体実験をしたい」「職業としての安定性や給与を魅力に感じた」など、面接として不適切でないことを目指しましょう。
よくある回答例は
「親が医師で身近な職業だった」
「自身や身内が病気になった・ケガをした経験から」
「〜〜(ips細胞などの技術)の研究に興味がある」
などです。就職活動などでは不十分な回答かもしれませんが、近くに医療者がいない高校生も受けると考えると、これくらいの水準でも及第点です。
2.なぜその大学なのか
立地・学力・学費、というのがほぼ全員の受験生の本音です。
そのため、医師の志望理由と同様に、「変わったことを言わない」ことが最重要になります。
よくある回答としては、
「オープンキャンパスでの雰囲気が良かった、先輩に憧れた。」
「〜という特徴的なカリキュラムに惹かれた。」
「大学の歴史・ブランド・実績に憧れた。その実績に集まる仲間と高めあいたい。」
最低限、その大学について下調べをした、という努力を見せられれば十分でしょう。
3.キャリアプラン
こちらも何を答えても基本的によいです。
大きな枠組みとしては、
・臨床医(病院で働くのがメイン) or 研究医 (研究メイン)
・専門科(なんでも良いですが、理由が言えるように。ケガをした経験から整形外科、など。)
・働く場所(都市/地方、大病院/クリニック)
くらいが言えれば十分です。
どのようなプランを述べても減点されることは基本的にないので、筋が通るようにするのが最重要です。(強いて言うなら、研究医は珍しく、下調べが不十分なら避けた方が無難です。特に低偏差値帯では希少さが増します。)
4.その他
加えて、他に聞かれる質問としては、以下の2つのようなものが頻出です。
・性格面について(「周囲からどういう人だと言われる?」「人間関係で困った経験」など)
・併願について(ある程度正直に答えてよいでしょう。ただ、その大学を第一志望と自信を持って言える理由を作っておきましょう。)
5.過去の事例
最後に、変わり種を紹介します。
大学ごとの対策が必要になる場合があるので、過去問は必ず確認するようにしましょう。
・うちの大学の歴史について教えて(女子医科大学)
・この絵をみて、思ったことを述べて。(東京慈恵会医科大学)

・医療ニュース関連(「最近気になったニュースは?」「〜の技術についてどう思う?」)
・倫理系(「お金を払えない人がいたら、治療する?」「安楽死についてどう思う?」)
どの場合についても言えるのは、「尖った発言をしない」ことです。
「お金を払えないなら治療しない」「安楽死に対して、過度に賛成の意見を取る」
といった回答はリスクが高いです。
面接対策はどう進めればよいか
対策の基本は、大きく二つに集約されます。「言うことの準備」と「数をこなすこと」です。
対策がしやすいのは、志望動機などを問う「典型的な面接」の方です。
具体的には、
- 想定される質問への回答をあらかじめ作成し、進路指導の先生や医学部生、医師にチェックしてもらう
- 模擬面接を繰り返す
という流れが鉄板です。
模擬面接の相手は必ずしも医療関係者である必要はなく、とにかく人前で話すことに慣れておくことが重要になります。
なお、英語での面接が課される大学を受験する場合は、英会話も含めた別途の対策が必要になるでしょう。
一方、絵を見て感想を述べるような変則的な形式の面接は、そもそも対策が難しく、時間や労力をかけた割に得られるものが少ないです。こうした形式については、過去問に目を通し、当日のイメージトレーニングをしておく程度の受験生が多いと考えられます。
面接対策にかかる時間は?
これらの面接対策に関して、力の入れ方にもよりますが、それほど時間はかからないと思います。
人前で話すことが得意な受験生であれば、極端に言えば、用意した回答を覚える数時間の準備でも十分に対応できるレベルです。
医師を志望する理由など、定番の質問に対する回答さえ用意しておけば、大きな失敗は避けられます。
具体例を出すと
・頻出の質問への回答の準備(添削2回を含む):3-10時間
・話す練習(一人・模擬面接の合計で):5-10時間
と考えると、面接の1ヶ月前から始めても間に合わせることは可能です。3ヶ月程度を見込んでおくと、余裕があると思います。
また、東京大学を第一志望とする受験生が、併願で都内の私立医学部を受験し合格しているケースは珍しくありません。こうした事例を踏まえても、医学部の面接対策はイメージされているほど大変なものではないと言えるでしょう。
まとめ
医学部の面接は、大学によって「足切り」としての側面が強い場合と、「配点」として合否に直結する場合とに大別されます。
実際に、面接で評価されるのは、明るさなどの加点要素よりも、倫理観や協調性などのネガティブチェックが中心だと考えられます。
対策としては、定番の質問への回答を準備し、模擬面接で場数を踏むことが基本です。
具体的には、20時間を準備にかければ一定のレベルには達すると考えられます。
面接と聞くとハードルが高いように感じる受験生も多いかもしれません。
しかし、実際の内容や対策に必要な時間を把握することで、面接があるからという理由で医学部を候補から外すことは少なくなるのではないでしょうか。

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