2026年7月10日、東京大学は2027年9月に開設する新学部「UTokyo College of Design」(以下、CoD)の入学者選抜概要を公式に発表した。教養学部以来、約70年ぶりの新学部設置であり、全授業英語・秋入学・5年一貫・定員100名という、既存の東大学部とは全く異なる設計である。本記事では、発表された要綱の中身を項目ごとに具体的に読み解き、受験生・保護者・教育関係者が「まず何を押さえるべきか」を丁寧に噛み砕いて解説する。

CHAPTER 01CoDとは何か──要綱が示す学部の基本設計

 まずはCoDが「どんな学部なのか」を、今回発表された要綱をベースに整理する。ここを押さえておかないと、選抜方法の意味も、100名という定員の重みも、正しく読み取れない。

 UTokyo College of Design(以下、CoD)は、2027年9月に開設予定の東京大学の新しい教育課程である。特徴を一言で表せば、「東大が本気で作った、これまでの東大とは違う学部」だ。学士4年+修士2年の5年一貫プログラムで構成され、成績優秀者は修士課程の早期修了制度を活用して5年で修了することもできる。定員は100名、そのうちRoute A・Route Bにそれぞれ50名が割り当てられている。

 授業はすべて英語で行われ、入学時期は国際標準の秋(9月)入学。1年次は目白台にある「目白台インターナショナルビレッジ(MIV)」で全寮制の生活を送り、多国籍・多文化の環境で1年目の基礎を築く。既存の東大学部で行われている「進学選択(旧・進学振分け)」は存在せず、入学時点から5年間、CoDのカリキュラムを一貫して受講する形になる。

 また、4年次には約半年間の長期インターンシップが必修となっており、国内外の企業や国際機関等での実践的経験がプログラムに組み込まれている。教室での学びを、現実の社会課題にぶつける──これはCoDが繰り返し打ち出している設計思想である。

 要綱の冒頭で東大は、CoDが目指す教育理念を次のように説明している。

UTokyo College of Designでは、多様な学術知を「デザイン」によって繋ぎ、融合することによって様々な社会課題に取り組み、世界にインパクトを与える人材の育成を目指します。すべての授業は英語で行われ、学生は、従来の学問領域にとらわれず、それぞれの興味・関心に基づき学びを組み立てます。さらに、国内外での長期インターンシップなどを通して、知の定着とその実践に取り組みます。

 抽象的な言葉に聞こえるかもしれないが、これから解説する選抜要綱は、この理念を非常に具体的な「入試の作り」に落とし込んだものになっている。

■ CoDの基本設計(要綱ベースの一覧)

項目

内容

開設時期

2027年9月

学位プログラム

学士4年+修士2年の5年一貫(成績優秀者は早期修了制度を活用し5年で修了可能)

定員

100名(Route A:50名/Route B:50名)

授業言語

全授業英語

入学時期

秋入学(9月)

1年次居住

目白台インターナショナルビレッジ(MIV)で全寮制

進学選択

なし(入学時点から5年間一貫カリキュラム)

学外体験

4年次に約半年間の長期インターンシップが必修

理念

多様な学術知を「デザイン」で繋ぎ、社会課題解決に挑む人材育成

この基本設計だけ見ても、CoDは既存の東大学部と「入試の作り」からして別物にならざるを得ないことがわかる。全授業英語なら英語力を測る仕組みが必要になり、9月入学なら共通テスト後の2月に合格を出すスケジュールになり、5年一貫なら入学時点で覚悟を問う入試になる──要綱の細部は、この基本設計から必然的に導かれた形をしている。

CHAPTER 02 要綱が明かした「求める学生像」──5つの資質

今回の要綱は、「どんな学生を求めているか」を5つの資質として明記した。これは単なる建前ではなく、選抜方法・提出書類のすべてにこの5つが埋め込まれている。1つずつ噛み砕いていこう。

公式の「令和9(2027)年度入学者選抜の概要」において、東大がCoD入学者に求めるとして掲げているのは、次の5つの資質である。

  1. 知力と学習能力
  2. 優れたコミュニケーション能力及び英語力
  3. 論理的思考力に加えて創造的思考力
  4. 責任感、社会正義感、包摂性
  5. 自主性に加えて協調性

1. 知力と学習能力 ── 学問領域を越境するための基盤

CoDは「多様な学術知をデザインで繋ぐ」学部である以上、特定分野に閉じない基盤的な知力と、新しい分野を短期間で吸収する学習能力が前提となる。共通テストで文理どちらのパターンでも受験できる設計(第4章)は、まさにこの「越境の基盤」を測るためのものだ。

2. 優れたコミュニケーション能力及び英語力 ── 全授業英語+多国籍環境で不可欠

授業がすべて英語で、1年次は多国籍な寮生活、4年次には海外インターンも視野に入る。英語は「読み書きできる」レベルでは足りない。議論し、共同でプロトタイプを作り、異なる文化背景の仲間と衝突しながら合意を形成する──そのためのコミュニケーション力全体が問われる。

3. 論理的思考力に加えて創造的思考力 ── 「デザイン」学部が最も重視する両輪

ここが「College of Design」らしさの核心だ。CoDにおける「デザイン」は美術的な意味ではなく、複雑な社会課題に対して「新しい価値・システム・解を設計する」という広義の概念。だからこそ、論理的に構造化する力と、その先に飛び越える創造性の両方が求められる。

4. 責任感・社会正義感・包摂性 ── 社会課題解決にコミットする価値観

気候変動、高齢化、AIの社会実装──CoDが向き合うのは、正解のない社会課題ばかりだ。だからこそ、単に頭の良い人ではなく、「社会に対する責任を引き受け、多様な他者を巻き込める人」が求められる。エッセイや課外活動の証明資料は、この資質を測るための手掛かりになる。

5. 自主性に加えて協調性 ── プロジェクト型学習・寮生活を支える資質

CoDのカリキュラムはプロジェクト型学習が中心。自分で問いを立てる自主性と、チームで動かす協調性は、どちらか一方では成立しない。1年次全寮制という設計も、この両輪を叩き上げるためのものと考えていい。

POINTこの5つは、面接だけで判断されるわけではない。エッセイ・ビデオ課題・課外活動の証明資料・評価書まで含めた9つの提出物(第7章)と、面接をあわせた「総合評価」で判定される。要綱を読むときは、常にこの5つを頭の片隅に置いておくとよい。

CHAPTER 03 入学者選抜の全体像──2ルート制の設計思想

CoDの選抜は「1つの学部に2つの入口」を用意した独特の構造をしている。まずは全体像を掴んでから、各ルートの中身に入っていこう。

CoDの2027年度入学者選抜は、大きく分けてRoute AとRoute Bという2つのルートで構成される。両者は併願不可。出願時にどちらか一方を必ず選ぶ必要がある。

  • Route A:主に日本国内の高校で学ぶ受験生を想定したルート。日本の大学入学共通テストと、対面の面接を組み合わせる。
  • Route B:海外校・インターナショナルスクール等で学ぶ受験生を想定したルート。国際的な統一試験(IB、SAT、ACT、GCE A Level等)のスコアと、オンラインの面接を組み合わせる。

さらに重要な点として、CoDの受験は東大の他の選抜方式(一般選抜前期日程、学校推薦型選抜、外国学校卒業学生特別選考)との併願も認められない。CoDに出願する時点で、実質的に「今年の東大受験はCoD一本」ということになる(詳細は第9章)。

選抜の流れは、Route A・Route Bともに2段階選抜である。

  • 第1段階選抜:出願時に提出された書類・資料に基づく総合評価による選考。ここを通過した者だけが次に進む。
  • 第2段階選抜:面接(Route Aは対面、Route Bはオンライン)。書類と面接をあわせた総合評価で最終的な合否が判定される。

「学力試験の点数だけで一発勝負」というスタイルではなく、提出書類・資料・面接を通じた総合評価(学力審査を含む)という枠組みが基本にある。この点はRoute A/B共通だ。

■ Route A / Route B 比較(要点)

項目

Route A

Route B

主な対象

国内高校生

海外・インター校生

募集人員

50名

50名

学力審査

大学入学共通テスト(2027年1月実施)

国際統一試験(IB/SAT/ACT/A Level 等)

面接形式

対面(東大キャンパス)

オンライン

面接言語

英語+一部日本語

英語のみ

面接日

2027年2月15日・16日

2027年1月13〜22日のうち指定1日

併願

Route A と Route B の併願は不可/東大の他方式との併願も不可

Route AとRoute Bは「別々の入試」に見えるが、共通する部分もある。英語能力検定試験の受験・スコア提出は両ルート共通で必須であり(第6章)、ビデオ課題やエッセイなど、9種類の提出書類の骨格も共通(第7章)。学力を測る「軸」を国内試験にするか国際試験にするかが違うだけで、CoDが見ようとしている資質そのものは同じ、と読むのが正しい。

CHAPTER 04 Route A の詳細──国内高校生向けルートを完全解剖

日本の高校生が最も現実的に検討することになるのがRoute Aだ。共通テストが軸になるが、東大の一般前期とは異なる「使い方」がされている点に注意したい。

4-1. 学力要件:大学入学共通テストの指定科目

Route Aの学力審査の軸は、2027年1月に実施される令和9年度大学入学共通テストである。要綱では、共通テストの得点について次のように記されている。

入学後の学修を円滑に行い得る基礎学力を有しているかどうかを判断する観点から、概ね8割以上の得点であることを目安とします。

「8割」という数字はあくまで目安だが、CoDが求める学力水準を推し量る上での重要なアンカーになる。東大の一般選抜前期の共通テスト目安と近い水準であり、CoDは学力面でも東大の主流入試と同等以上を求めていると理解しておくとよい。

指定科目には「パターン1」と「パターン2」の2種類があり、受験生はどちらか一方を選択する。パターン1は文系寄りの選択もしやすく、パターン2は理系寄りの選択に向いた設計だ。

■ Route A 共通テスト指定科目:パターン1(6教科8科目 または 7教科8科目)

教科

科目・条件

配点

国語

国語

200

地歴・公民

指定5科目のうち2科目(世界史探究/日本史探究/地理探究/公共・倫理/公共・政治経済 から)

200

数学①

数学I・A

100

数学②

数学II・B・C

100

理科

基礎付2科目 または 発展1科目

100

外国語

英語

200

情報

情報I

100

■ Route A 共通テスト指定科目:パターン2(6教科8科目)

教科

科目・条件

配点

国語

国語

200

地歴・公民

指定5科目のうち1科目

100

数学①

数学I・A

100

数学②

数学II・B・C

100

理科

発展2科目

200

外国語

英語

200

情報

情報I

100

パターン1とパターン2を見比べるとわかるように、「地歴公民を厚くする」か「理科を厚くする」かの違いが本質だ。国語・数学・英語・情報の骨格は共通で、CoDは文系型でも理系型でも受験できるように共通テストの利用法をデザインしている。

これは「デザインで学問を繋ぐ」という理念と地続きの発想だ。CoDは入試段階から、文理どちらのバックグラウンドを持つ受験生にもドアを開けている。裏を返せば、「文理どちらかに極端に振っていても、他の教科もしっかり取れる基礎学力」が求められる、ということでもある。

POINTRoute Aで気を付けたいのは、共通テストの得点そのものだけで合否が決まらない点だ。共通テストは第1段階選抜の材料の一つ。第2段階の面接、そしてエッセイやビデオ課題を含む書類全体が総合評価される。「8割」はあくまで通過ラインの目安として捉えたい。

4-2. 面接

第1段階選抜(書類選考)を通過した受験生には、第2段階選抜として面接が課される。Route Aの面接は次のような形式だ。

  • 形式:対面(東大キャンパスで実施される個人面接)
  • 言語:英語+一部日本語
  • 実施日:2027年2月15日(月)または16日(火)
  • 評価:提出書類とあわせた総合評価で最終判定

面接が英語ベースである点は、Route Aの受験生にとって最大のハードルの一つだろう。共通テスト後、わずか2〜3週間で英語面接に臨むことになる。CoDが求めているのは「試験勉強としての英語」ではなく、「議論と自己表現のための英語」である以上、共通テスト後に一夜漬けで作れるものではない。

逆に言えば、日常的に英語で議論・発信をしてきた受験生にとっては、Route Aは非常に相性の良い設計だ。共通テストという「国内標準の学力」と、面接という「国際標準のコミュニケーション力」の両方を、正面から測ろうとしている。

CHAPTER 05 Route B の詳細──海外・国際生向けルートを完全解剖

Route Bは海外校生・インターナショナルスクール生・帰国生を主対象とした国際標準の入試ルート。日本の共通テストではなく、世界で通用する統一試験を「学力の物差し」として使うのが特徴だ。

5-1. 学力要件:国際統一試験の基準

Route Bでは、東京大学が指定する国際的な統一試験・資格のうちいずれか一つを受験・取得し、その結果を提出することが求められる。要綱および解説記事によれば、目安として次のような水準が示されている。

■ Route B 統一試験の目安基準

統一試験

目安基準

国際バカロレア(IB Diploma)

Diploma 42点以上/TOK・EE合わせて 2点以上

SAT

合計 1480点以上(加えて AP スコアの提出が望ましい)

ACT

Composite 33以上

GCE A Level

3科目で AA 以上

その他各国試験

上位 87% 以上/上位 1.4% 以内(2016年ATAR基準では 98以上)等

これらの数値は、いずれも「機械的なカットオフ」ではなく総合評価のための目安」である点に注意してほしい。要綱は「取得から5年未満の成績が有効」とする一方、明確な足切りスコアは示していない。実際の合否は、統一試験のスコアに加えて、エッセイ、ビデオ課題、評価書、課外活動記録、面接を含む総合評価で判定される。

とはいえ、IB Diploma 42点、SAT 1480点、ACT 33、A Level 3科目AA──これらの数値は世界的に見てもかなり上位の水準だ。世界各地から集まる受験生と同じ土俵で戦うことを考えると、目安を大きく下回るスコアで挑むのは現実的ではない。

POINTRoute Bを選ぶ受験生は、多くの場合IBやAレベル、SAT/APを組み合わせた海外大学出願と並行して準備を進めることになる。CoDの目安スコアは、世界のトップ大学が要求する水準とほぼ同じレンジにある。「東大だけを狙う」ではなく、「世界のトップ大学と並べて出願先の一つに加える」という発想が現実的だ。

5-2. 面接

  • 形式:オンライン個人面接(渡日不要)
  • 言語:英語のみ
  • 実施日:2027年1月13日(水)〜1月22日(金)のうち、大学が指定する1日

Route Bはオンライン面接で完結するため、海外在住のまま受験を完了できる。ここには、「世界中のどこからでも東大CoDを受験できるようにする」という東大の明確な意志が表れている。廃止される学部英語コースPEAK(第10章参照)は、実質的な現地要件が壁になるケースがあったが、CoDのRoute Bはその制約を大きく緩和している。

ただし、オンライン面接だからといって難易度が下がるわけではない。世界中の同世代の中で最上位クラスの受験生が集まるルートである以上、「英語で自分の思考を構造化して話せる力」の水準は、対面よりむしろ厳しく問われるだろう。

CHAPTER 06 両ルート共通の英語能力検定要件

Route A・Route Bを問わず、東大指定の英語能力検定試験のうち一つを受験し、そのスコアを提出することが必須となる。これはCoDが「全授業英語」で運営される以上、避けて通れない要件だ。

要綱によれば、Route A・Route B共通で、東京大学が指定する英語能力検定試験のうちいずれか一つを受験し、その結果を提出しなければならない。主な指定試験と目安は次の通り。

■ 指定英語能力検定試験と目安

試験

目安

TOEFL iBT(Home Edition 含む)

東大指定基準(正式募集要項で明示予定)

IELTS Academic

6.0 以上

ケンブリッジ英語検定

169 以上

Duolingo English Test

110 以上

TEAP

各技能が一定水準以上

これに加えて、以下の運用ルールが定められている。

  • Route Bで、英語による教育を3年以上受けたと認められる場合は、英語能力検定試験の提出が免除されるケースがある。
  • スコアの有効期限:2025年11月1日以降に受験したものが有効。
  • 受験・スコア提出の期限:2026年12月18日までに受験、2026年12月14日までにスコア送付手続きを完了しておく必要がある。

ここで示されている数値は、日本国内の一般的な大学入試の英語資格基準と比べると、そこまで極端に高いわけではない。IELTS 6.0、Duolingo 110などは、しっかり準備すれば射程圏に入る水準だ。ただし、CoDの選抜における英語能力検定は「最低ラインを示す物差し」であって、これを大きく超えるスコアを持っていて損はない。

重要スコア送付には試験機関側の処理時間が必要になる。特にTOEFLやIELTSは、受験からスコアレポート送付まで数週間かかるのが通常だ。「12月18日ギリギリに受験」ではなく、遅くとも夏〜秋のうちに一度受験しておくのが現実的な計画である。

また、Route Bで英語圏の学校教育を長年受けてきた受験生であっても、免除に該当するかは学校の履修証明などで判断される。「英語で学んできたから当然免除」と思い込まず、要綱の該当箇所を必ず確認しておきたい。

CHAPTER 07 提出書類の詳細──9つの提出物

CoDの入試は「学力だけでは測れない多面的評価」の思想で貫かれている。要綱に列挙された9種類の提出物は、それぞれ第2章の「5つの資質」のどこかに対応している。

要綱に基づき、Route A・Route B共通で提出が求められる主要な資料は次の通り(Route Aは調査書・共通テスト成績請求チケット等、Route Bは成績証明書・統一試験結果等、細部で差異あり)。

  1. エッセイ(英語):志望動機、これまでの経験、CoDで何を成し遂げたいかを英語で綴る。第2章の「創造的思考力」「社会正義感」「自主性」を測る中心的な材料。
  2. ビデオ課題:2026年11月13日〜16日に提出。具体的な内容は募集要項公表時に指示される。動画による自己表現は、書面では見えない受験生の言語運用・思考の即興性を測る手段。
  3. 評価書:教員等(担任・進路指導・課外活動指導者など)が受験生の学力・人格・活動について評価するレター。第三者の視点から受験生を立体的に見るための資料。
  4. 成績証明書:Route Aは調査書、Route Bは学校発行の成績証明書。これまでの学業成績のトラックレコード。
  5. 統一試験・資格の結果:Route Aは共通テスト成績請求チケット、Route Bは IB/SAT/ACT/A Level 等の結果。
  6. 英語能力検定試験の結果(第6章):TOEFL/IELTS/ケンブリッジ/Duolingo/TEAP など。
  7. 卒業(見込)証明書:出願資格の確認書類。
  8. 課外活動・学習成果の証明資料:3件まで提出。各項目について100語以内の英語説明と、それを裏付ける証明資料(写真・賞状・成果物など)を添える。研究活動、コンテスト、社会活動、アート、スポーツなど、何をどう選ぶかで受験生の「デザイン」観が現れる。
  9. 学校要覧(推奨):受験生の学校のカリキュラム・評価基準を大学側に伝えるための資料。

この9つのラインナップを見て感じ取ってほしいのは、CoDが「学力(4・5・6)」「人格・活動(1・2・3・8)」「事務要件(7・9)」の三層構造で受験生を捉えようとしている、ということだ。特に 1・2・8 は、いわゆる「一発試験」では絶対に測れない領域を評価するための仕掛けである。

POINT課外活動の証明資料は3件までという上限がある。数を並べれば有利になるわけではなく、「自分が何を選んで、なぜそれを選んだのか」が評価される。エッセイと課外活動証明は、5つの資質のどれをどう体現しているかを一貫したストーリーで組み立てるべきだ。

ビデオ課題の詳細は正式募集要項(2026年8月)で明かされるが、期限が出願期間の直後(11月13〜16日)に設定されている点からして、「事前に凝った作品を作り込む」というよりは、短時間で英語による発話・思考を求められる形式である可能性が高い。オンザフライで英語で話す訓練は、直前になって始めるものではない。

CHAPTER 08 スケジュール総まとめ

全体の流れを一枚で俯瞰しよう。Route AとRoute Bで動きの違うポイントを、時系列でまとめている。

時期

Route A

Route B

2026年8月

正式募集要項発表

同左

2026年10月15日 9:00〜11月5日 17:00(日本時間)

出願期間

同左

2026年11月13日〜16日

ビデオ課題提出

同左

2026年12月18日まで

英語能力検定受験期限(14日までスコア送付手続き)

同左

2026年12月22日

─

Route B 第1段階選抜合格発表

2027年1月

大学入学共通テスト受験

─

2027年1月13日〜22日

─

Route B オンライン面接(指定1日)

2027年2月10日

Route A 第1段階選抜合格発表

─

2027年2月15日・16日

Route A 対面面接

─

2027年2月20日

最終合格発表

同左

2027年9月

入学

同左

この表からわかる重要なポイントは3つある。

  1. 出願期間はRoute A・B共通で2026年10月15日〜11月5日と非常に早い。共通テスト(2027年1月)よりも約3ヶ月前に出願を締め切るため、エッセイ・ビデオ・課外活動証明などの準備を秋までに完了させておく必要がある。
  2. Route BはRoute Aより約2ヶ月早いタイミングで面接・第1段階合格発表が動く。海外受験生の年度暦(多くは6月卒業)に合わせた設計と考えられる。
  3. 最終合格発表は2月20日で共通。東大の一般選抜前期日程の合格発表(例年3月10日前後)よりも早い。これは、CoD不合格の場合に東大他方式に切り替える余地がないことを示唆している(次章参照)。

CHAPTER 09 受験生が今すぐ確認すべき「併願不可」ルール

要綱に埋め込まれた最重要ルールが、この「併願不可」だ。数字よりも先に、まずこの縛りを腹に落とすことから受験戦略が始まる。

今回発表された要綱は、併願について次の点を明確に示している。

  • Route A と Route B の併願は不可。出願時にどちらか一方を選ぶ。
  • CoD受験と、東大の一般選抜(前期日程)/学校推薦型選抜/外国学校卒業学生特別選考との併願も不可。

この2つのルールを合わせると、実質的な意味は次のようになる。

「CoDに出願する」=「その年度、東大の他のルートで受ける道は自ら閉じる」

これは非常に重い設計だ。日本の大学入試では、東大受験生の多くが東大内でも複数の入口を比較しながら戦略を組み立ててきた。だがCoDに関しては、「本命として腹を括る」以外の受け方が制度上できない。しかも合否が出るのは2027年2月20日で、東大他方式の受験機会はすでに閉じている。

要注意CoDを受けるなら、東大の他方式は諦める──言葉を選ばずに言えば、そういう入試だ。逆に、「他方式との併願不可」というルールを課してでも来てほしいと東大が思う学生像がある、ということでもある。腹を括った受験生に、腹を括った選抜を──というのが、この設計思想である。

もちろん、私大や海外大学、他の国公立大学との併願は制度上可能だ。特にRoute Bで受験する層は、海外大学の出願と並行するのが一般的な戦い方になるだろう。Route Aで受験する国内高校生は、「東大CoD」+「他大学」という組み合わせで受験戦略を組み立てることになる。

この併願不可ルールは、志望校決定のタイミングも大きく前倒しする。出願期間が2026年10月15日開始という早さである以上、2026年夏までにはCoDを受けるか否かを腹決めしておくのが現実的だ。

CHAPTER 10 既存の東大選抜への影響

CoDの新設は、CoDを受けない受験生にも大きく影響する。既存の東大入試の「難易度」と「選択肢」の両面が変わるからだ。

2027年度以降、東大の一般選抜の募集人員は計100名減員される見込みだ。CoDの定員100名が既存学部からの振り替えという位置づけになるためで、各科類とも変更前から約3%の減員となる。もともと極めて狭き門だった東大一般選抜が、さらに狭くなることを意味する。

もう一つの大きな変化は、学部英語コースPEAK(Program in English at Komaba)の学生募集停止である。PEAKは、教養学部の英語による学位プログラムとして、これまで多くの海外・国際生を受け入れてきたが、2026年9月入学者の選抜をもって募集を停止する。

  • PEAKは2026年9月入学者の選抜が最後。
  • それ以降、東大が英語で学位を取れるプログラムを提供する主要な入口は、実質的にCoDに集約される。
  • CoDはPEAKの「後継」ではないが、「英語で東大の学部教育を受ける」入口としては後継的な役割を担う構造になっている。

整理すると、次のような構図だ。

影響対象

変化の内容

一般選抜

2027年度以降、募集人員が計100名減員(各科類約3%減)→ 難易度上昇

PEAK

2026年9月入学者の選抜をもって募集停止

英語での学位取得

実質的にCoDが主な入口に

学校推薦型選抜等

制度自体は継続。ただしCoDとの併願は不可。

「CoDは自分には関係ない」と思っている受験生も、一般選抜がわずかに狭くなるという事実は無視できない。反対に、「PEAKを受けようと思っていた」海外・国際生にとっては、CoDが事実上の唯一無二の選択肢になる。今回の要綱発表は、東大の学部入試全体の地図を書き換える出来事なのだ。

CHAPTER 11 学費見込み

正式な学費は8月の要項待ちだが、東大現行の学部学費が参考になる。奨学金制度についても要綱で言及されている。

CoDの正式な学費・入学料は、2026年8月頃発表予定の正式募集要項にて確定する。現時点で公表されている情報は限定的だが、参考として、東京大学現行(2025年4月時点)の学部学費は以下の通りである。

項目

金額(参考)

授業料(学部生)

年額 642,960円

入学料

282,000円

CoDの学費が現行の学部学費と同水準になるのか、国際プログラム相応の設定になるのか、あるいは奨学金でどこまで負担軽減されるのかは、正式要項の発表を待つ必要がある。ただし、東大は要綱で奨学金制度について言及しており、経済的な事情によって多様な学生の入学が阻まれない仕組みが検討されていることは明らかだ。

また、1年次全寮制(MIV)にかかる寮費・生活費についても、正式要項および公式サイトの奨学金ページで案内される予定である。海外からの入学者や、地方から上京する受験生にとっては、学費以外の「生活コスト」も含めた費用計画が必要になるだろう。

POINT「学費が確定していない」ことを、CoD受験のリスクと捉える必要はない。東大は国立大学であり、極端な学費設定が突然発表される可能性は現実的ではない。今の段階で確認しておくべきは、「奨学金制度をどのように活用するつもりか」を、自分と保護者の中で早めに整理しておくことだ。

SUMMARY 要綱から読み解くCoDの設計思想

ここまで見てきた要綱の中身を、「なぜこの設計になっているのか」という視点で改めて整理しよう。

2026年7月10日に公表された「令和9(2027)年度入学者選抜の概要」は、単なる入試ルールの説明書ではない。東大が「これから育てたい人材像」と「そのために必要な選抜方法」を、極めて具体的な形で世に示した設計図である。要点を整理すると、次のようになる。

  • 「学力+多面性+英語力+創造性」を総合的に評価する国際標準の選抜設計。共通テスト/国際統一試験・エッセイ・ビデオ・課外活動証明・面接という多層的な評価軸は、まさに世界のトップ大学の入試と並ぶ発想だ。
  • 国内高校生と海外生を分離しつつ、同じ土俵で競わせる二本立て設計。Route AとRoute Bで学力の測り方は違うが、5つの資質と9つの提出物という骨格は共通している。
  • 併願不可という強い縛りで「本気度」を測る。CoDを受けるなら東大他方式は諦める──この設計は、受験生に本気の意思決定を要求している。
  • 100名という少数精鋭による、これまでの東大にはない教育実験。全授業英語・秋入学・5年一貫・全寮制・長期インターンシップ──通常の学部では実現が難しい要素をパッケージ化して提供する。
  • 2026年8月の正式募集要項で、さらに詳細が明らかになる。ビデオ課題の内容、学費、奨学金制度、統一試験の具体的な足切りなど、確定していない項目も少なくない。

この要綱を読んで、あなたが受験生本人であれば、まず問うべきは「自分は5年一貫のこの教育に本気でコミットする覚悟があるか」だ。保護者や進路指導教員であれば、「この生徒にとって、CoDと東大他方式のどちらが未来を最大化するか」を早い段階で議論しておく必要がある。教育関係者や社会人であれば、CoDは「日本の高等教育がどこへ向かおうとしているか」を映す非常に鮮明な鏡だ。

2027年9月、100名の第一期生がMIVに集う。彼らがどんな学びを立ち上げ、どんな社会課題に挑むのか──その第一歩は、今回発表された要綱の細部から、すでに始まっている。


REFERENCE 参考URL・免責事項

参考URL(一次情報)

【免責】本記事は、2026年7月10日時点で東京大学が公表した「令和9(2027)年度入学者選抜の概要」に基づいて執筆されています。正式な募集要項は2026年8月頃の発表予定であり、指定科目・スコア基準・スケジュール・学費等の詳細は今後変更される可能性があります。受験を検討される方は、必ず東京大学の公式サイトおよび正式募集要項で最新情報をご確認ください。