「いま、推薦入試が熱い!」
2023年頃から過半数を占めるようになった推薦・総合型選抜は、ますます選ばれるようになっていきましたが、その勢いは未だに衰えるところを知りません。かつて多数派だった一般入試も、もはや縮小の一途を辿っていくようです。
おそらく、この記事を読んでいる方の多くも、推薦入試を考えているのではないでしょうか。ただ、「志望理由書ってどうやって書くの?」など、わからないことだらけで困ってしまいますよね。
そこで、この連載では「受かった先輩が、どんな志望理由を作り上げたか」「高校時代に、どんな活動をしていたのか」について、合格者に直接訪ねていきます!
今回お話を伺うのは、広島市立大学情報科学部に通うM.Oさん。もともと一般入試しか考えていなかったという彼を変えたのは、担任の意外な一言でした。彼の数奇な受験体験を追っていきます。
「屈辱の提案」を受け入れて
__もともとは一般入試を考えられていたということですが、どうして方針を変えられたのでしょうか?
先生から、「一般受験だけだと不安だから、推薦も受けたほうがいいんじゃない」と勧められたからです。
母校では、半分くらいは推薦で受かりますが、「国公立に受かるような人は実力勝負の一般だよね」って雰囲気があります。私自身は、別に学年上位ではなかったものの、国公立一般受験を狙えるところにはいたので、「まぁ、自分の実力なら一般かな」と考えていました。
確かに先生は、私が一般受験したい気持ちもわかってくれていました。だからこその「滑り止めとしての推薦併用」を提案されたのだと思います。
__確かに、チャンスが2倍になる点で推薦併用は優れています。ただ、ご本人としては、どうしても悔しい気持ちもあったのではないでしょうか?
本当に、自分が情けなかったです。コツコツやっていけば結果が出ると思っていたのに、その結果が出せていないから、こういう提案を受けているわけですよね。
別に、私自身は研鑽を怠った自覚はありません。高2の冬に併願を提案されるまで、毎日夜遅くまで勉強していたんです。
__どれくらい頑張っていたのでしょうか?
高1の頃は、運動部に入っていました。18時くらいに部活が終わって帰宅すると、さっさと食事と風呂を済ませて、20時から勉強を開始します。
終わるのは深夜2時頃。この生活を毎日続けていました。
夢に向かって努力した日々
__日中は学校と部活を頑張って、夜8時から深夜2時まで6時間も勉強していたんですか!? つらくはありませんでしたか。
昔は、学校の先生になりたかったんです。先生になるために、つらくても前に進み続けられるモチベーションがわいてきました。
確かに眠気はありましたが、50分勉強して10分休憩するサイクルを守って、10分の休憩中は完全に脳を休めたり、シャワーを浴びたりと、リフレッシュする体制を組んだので、意外とはかどりましたよ。

__当時は先生になるために頑張っていたのですね。どうして目指す先が変わったのでしょうか?
小中学校の頃、周りの子よりも勉強ができていた私は、しばしば人に勉強を教えていました。同級生だったり弟だったり、その中で「わかった!」という声を上げてもらえることが、何よりもうれしかった。
私自身も、何かをわかった瞬間はとても楽しいと感じます。これを多くの人に伝えたかったんです。
技術系に興味が出てきたのは、高2の探究活動で、AIを使った探求例を見たときのことでした。人工知能にいろいろな質問を投げかけたときに、その伝え方や内容の砕き方によって、全然出力が変わることを示していたのですが、「伝え方を変えるだけで、全然違う答えが返ってくるなんて、面白いな」と感じたんです。
ここから、情報技術にも興味が出てきました。
見えてきた「もう一つのキャリアデザイン」
__そこから情報系に志望が変わっていった?
本格的に志望を変えたのは、高3の時です。試験対策の内容が幅広く、深くなっていく中で、自信があった数学すらも確信を持てなくなってきていました。
「わかるのに解けない感覚」を体感したわけですが、先生って「わかって解ける」から成立する仕事であって、「わかるけど解けない」では務まらない仕事なわけですよね。勉強に対して、だんだん自信がなくなっていく中で「わかっていない人が勉強を教えるなんて、あっていいことだろうか?」と将来像が揺らいでいきました。
このころは、家族に相談するなど、かなり悩んだ時期でした。
その中で先生と相談したときに、「先生になったら、先生の仕事だけかもしれないが、情報技術系の仕事をやってから先生になることもできるんじゃないか」と学びを得られたんです。情報系に行った方が、将来の幅が広がるよ、と。
このころ受けた模試でも教育系より情報系のほうが判定が良かったこともあり、ここで転換を決めました。高3の夏のことでした。
__将来に対して、とても悩まれたのですね。ですが、相当志望校決めに苦労されたのではありませんか?
確かに、大学についての情報がほとんどない状態に戻ってしまいました。2年生の冬までは、教育系のオープンキャンパスにばかり行っていたものですから。
まずは高校の先生から大学について教えてもらいました。いま通っている広島市立大学についても、ここである程度目星をつけていました。
ほかの候補として愛媛大学などもありましたが、愛媛は書類が少ない、広島市立は書類の量が多いと違いもありました。最終的には、先生の勧めもあって広島市立に決めた形でした。
実際、広島市立なら試験内容が書類と面接に加えて、国数英の3教科筆記もありました。もともと一般志望だったこともあり、筆記に自信があったことも、決め手となりました。
「絶対に先生を納得させる」ために
__書類が多いとなると、準備が大変だったのでは?
大変でした。先生と相談しながら作ったのですが、「こういう感じでどうですか」と初めて自力で書き上げた書類は、まさかの全部書き直し。
「この内容じゃ伝わらないし、言いたいことが言えていない」。自分としてはそれなりに言えているつもりでしたが、振り返れば、論理的に組み立てようとしすぎるあまり、細かいところばかり説明しすぎていて、「結局何が言いたいの?」と思わせる仕上がりでした。
10回以上は書き直したでしょうか。3~4回目くらいまでは全部書き直し。そのたびに「終わらないじゃん!」と焦りつつ、「絶対に納得させてやる!」と燃え上がったのは確かです。
6~7回目くらいの時に、ようやく方針のOKがもらえました。
「やっとか!」と先生は仰っていましたが、内心「『やっと』はこっちのセリフだよ」と思いましたね(笑)。

__推薦入試でよかったと感じたことはありますか?
入試の日に一つ感じたことがありました。
試験が終わって帰りを待っているときに、別の学校の受験生の子とちょっと話して、少しだけ仲良くなれたんです。試験終わりにもかかわらず、不安とか緊張に悩まされずに帰れたので、いい思い出です。
よく考えれば同じ席をかけて奪い合うライバルなわけですから、一般入試ではあまりそういうことは起きないんじゃないかなと思います。
__逆に、困ったことはありますか?
大学に入る前は、一般受験の友人たちとの接し方で少し困りました。下手に受かったとか何とか言って、相手にプレッシャーを与えるのも違いますから。
結局同じ受験生で、同じく戦っているのに、平等じゃない感じがしましたね。
あとは、入った後に、「共テの○○難しかったよね!」とか「二次試験の○○がヤバかった」とか、入学直後ならではの「入試あるあるトーク」に参加できないのも気まずかったです。
一般のほうが努力をしていて、結果を出しているんだなって見せつけられた気がして、最初は少しだけコンプレックスがありました。
今は、同じ大学で同じ内容を勉強しているわけですし、差も感じないのですが。
実際、勉強で困ったことはありません。私が一般志望でコツコツ積み上げていたことも大きいでしょうが、それなりに勉強していれば、大学での学びにも十分についていけます。
受かってから共通テストまでの1か月間を、遊ばずにしっかり数学と物理に充てたおかげです。大学で学ぶために受験しているわけですから、受かっても「勉強終わり!」とはならないようにしたいですね。






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