2026年5月27日、文部科学省は大学入試における大きな方針転換を発表しました。総合型選抜や学校推薦型選抜、いわゆる「年内入試」において、受験生の能力や意欲を多面的に評価するため「面接の原則必須化」を通知したのです。
大学側が駆使してきた「学力偏重の年内入試」の抜け穴が塞がれることで、今後の大学受験制度はどう変わっていくのでしょうか。本記事では、これからの小中学生の保護者が知っておくべき「高校選びの戦略」について解説します。
「学力偏重」年内入試の終焉
年内入試(総合型・学校推薦型選抜)は、一般入試(2月)より早く年内に合否が決まる仕組みであり、書類審査や面接等を通じて「人物重視」の評価が行われます。しかし近年、一部の大学が「基礎学力型年内入試」と称して、面接をほぼ課さずに学力試験のみで合否を決める手法を導入し始めました。
関東圏ではあまり見られないスタイルの入試選抜であり、東洋大学の導入が話題を呼びました。大学側は早期に優秀な学生を囲い込む「裏技」として利用できますし、受験生にとっても年内に合格がもらえるため、受験生が殺到したのです。
しかし、これは「実質的な一般入試の前倒し」とも見えるもので、特に受験生を奪い合う立場にある他大学の強い不満を招くものでした。高校としても、学力入試が前倒しされ続ければ、どんどんカリキュラムに無理が出ていき、最終的には中高一貫校と、超特急で進む授業についていけるトップ進学校しか生き残れなくなってしまいます。

そこで、ついに文科省が是正に動いたのでした。
数万人が殺到する入試で全受験生と面接を行うことは物理的に不可能であり、この学力偏重の年内入試モデルは事実上崩壊することになったのです。
この「面接必須化」のニュースにより、多くの受験生や保護者は「これからはコミュニケーション能力や面接対策の比重が大きくなるのか」と勘違いされたかもしれません。ですが、文部科学省の狙いは真逆の「増えすぎた名ばかりの推薦入試を減らし、学力重視の受験生を本来の一般入試の時期(2月)に戻すこと」にあります。
「少人数の志願者をじっくり多角的に評価する」という当初の目的を忘れ、ルールの抜け穴を探って一般選抜の前倒しを図る大学への牽制が最大の目的なのです。これにより、各大学は入試設計の抜本的な見直しを迫られることになりました。
面接の「形骸化」
とはいえ、面接必須化によって、面接スキルが求められるようになったのは事実。今後はしっかり面接対策をしなければ推薦入試を勝ち抜けなくなったのでしょうか。
これについて、未来図編集部では「今後の面接は極端に二極化する」と予測しています。
例えば、東京大学の学校推薦型入試のように、複数の教授陣が受験生に対して高度な質問を投げかけ、徹底的に議論を交わすようなスタイルの入試も出てくるでしょう。とはいえ、多くの大学には数千人規模の受験生に本格的な面接を行う余裕はありません。
その結果、「1分間で名前や志望理由を言わせて面接に代える」ような、極めて形骸化した面接試験を課す大学も出てくるでしょう。もちろん、それがその大学の行うべき入試か否かは、内部の方にしかわかりません。
ただ、受験生としては「何が評価ポイントになるか」「どこまで面接を重視するか」は気になるところ。
せめて、形式的な面接試験なのであれば、受験要項にもそうとわかるように記載してほしい。そうしなければ、面接対策するだけ無駄となる「頑張ったものがバカを見る」入試体制が確立してしまうからです。
「指定校推薦」が爆増する未来
さらに、この制度変更により「指定校推薦」が爆発的に増加すると予想できます。少子化により、日本の大学の多くは定員割れの危機に瀕しており、どこも学生数を早期に利確したいのが本音だからです。
とはいえ、今回の面接義務化によって、年内入試を数千人、数万人規模の受験生相手に行う手法は事実上閉ざされてしまいました。となれば、次に大学が取れる「早期利確」の手段こそが「指定校推薦枠の大幅増加」なのです。これの枠数については、各大学の裁量にゆだねられていますし、効率よく受験者・入学者を確保できます。

つまり、全体としての年内入試の枠数は変わらなくても、その内訳は「指定校推薦」へと大きくシフトしていく可能性が高いのです。
このような激動の大学入試時代において、最もコストパフォーマンスが良い進学ルートは「指定校推薦」になるのは間違いありません。高校受験の段階で「その高校が、どの大学の指定校推薦枠をいくつ持っているか」を徹底的にリサーチすることが、大学受験までを見越した生存戦略上最良の一手となります。
これまでは偏差値で高校選びを行っていたかもしれませんが、今後は偏差値の高低だけで高校を選ぶのは危険です。偏差値が低くとも、かつて隆盛を誇った伝統ある高校には、代々受け継がれた早慶やMARCHなどを含む有力な指定校枠が多数存在するケースがあります。基本的に指定校推薦の内容や枠数は公開されませんから、在校生を通じた実態把握が欠かせません。
そして、「高校独自の配分ルール」にも注意しましょう。学校によっては「一般入試で合格実績を稼がせるために、特進コースには指定校推薦を使わせない」「指定校推薦の内容が特定日まで開示されず、特定の掲示時間内に申請しないと推薦の権利を失う」などの独自ルール(ブラックボックス)が存在します。
せっかく指定校枠が豊富な高校に入学しても、枠をもらえなければ意味がありません。可能ならば、進路指導部長のスタンスを見て高校を選ぶべきであり、表面的なデータだけでなく、内部事情まで見極めることが、これからの受験戦略の最大の鍵となるでしょう。




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