はじめに

 今回は、2025年度の東京大学合格者数について前年に比べて合格者数を減らした高校についての調査結果を共有させていただきます。各高校ごとの変化を調査したところ、25年度に東大合格者が一気に少なくなった高校がいくつか見受けられました。

 本記事では、そのような学校のうち特に顕著な変化が見られた高校について紹介するとともに、なぜそのような減少が起こったのかを考察します。

 なお、本記事の目的は、特定の高校を批判することでは一切ありません。東大合格者数は、年度ごとに大きく変動することも多く、合格者数の減少は学校の教育力や生徒の能力の低下を意味するわけではありません。データはあくまで数字の動きであり、それをもとに背景を丁寧に読み解いていく姿勢が大切だと考えています。その前提の上で、こちらの記事をご覧いただければと思います。

東京大学合格者数を減らした高校4選

 まずは、前年に比べて合格者数が大きく減少した高校を4校紹介します。今回紹介する4校は、2024年度の合格者数から比べて-10人以上の減少があった学校に関して紹介をしています。

 これらの学校はいずれも全国屈指の進学校であり、減少の背景には単純ではない事情が隠れています。

1. 西大和学園(奈良県) 前年比-27人

 2024年度に71人という驚異的な合格者数を出した西大和学園ですが、2025年度は44人と約30人近く減少しました。京大合格者も2024年の28人から2025年の26人と少し減少しています。単なる東大志向の変化だけでなく、全体的な志望傾向の変化が推測されます。

2. 灘高校(兵庫県) 前年比-17人

日本最高峰の男子校・灘高校も、2024年度の94人から77人に減少しています。-17人ですから、かなり大きな数字のように感じられますが、しかしこれは、他の学校の事情とは少し違うのではないか?と考察することもできます。

灘高校の東大合格者数(現役・浪人別)

年度

合格者数

現役合格者数

浪人合格者数

2025年

77人

59人

18人

2024年

94人

71人

23人

2023年

88人

65人

23人

2022年

89人

66人

23人

2021年

91人

68人

23人

 注目するべきは、24年度までの浪人合格者数が23人程度だったのに対して、25年度は18人となっているポイントです。去年の現役合格者数が71人でかなり多かったため、反動として、浪人生が少なくなり、合格者数全体が減ったという「隔年現象」の典型例と見られます。

 つまり、この減少は一時的な波であり、学校の進学実績や学力そのものの低下ではないと考えられます。むしろ浪人を含めて中長期的に東大合格者数を安定して輩出していると見るべきかもしれません。

3. 桜蔭高校(東京都)前年比-11人

 女子最難関・桜蔭高校も2024年度の63人から52人に減少しています。この原因は、医学部進学者の割合が増えたことではないかと言われており、「桜蔭といえば東大」というようなイメージの変化・進路の多様化が影響していると考えられます。

4. 早稲田高校(東京都)前年比 -13人

早稲田高等学校(東京都新宿区)も、前年から大きく減少しました。具体的には、2024年度の合格者数43人から2025年度は30人へと13人減少しています。この減少幅は、全国の主要進学校の中でも特に顕著であり、同校の東大合格者数が30人台に落ち込むのは近年では稀なケースです。


📉 早稲田高等学校の東大合格者数推移(2021〜2025年度)

年度

合格者数

増減(前年比)

2021年

38人

2022年

41人

+3人

2023年

45人

+4人

2024年

43人

-2人

2025年

30人

-13人

 とはいえ、早稲田高校は早稲田大学合格者数が多い高校なので、東大の合格者数だけで学校の評価をすることは難しいとも考えられます。

減少したのは、学校の問題ではない?「隔年現象」という自然な波

 さて、先ほども少しだけ触れましたが、この東大合格者の減少に関して、“隔年現象”と呼ばれる現象が背景には存在する場合があります。この減少は、ある年に現役生の東大合格者数が多くなると、その学年の浪人生が翌年少なくなり、翌年度の合格者数が自然と減るというパターンです。確かに、現役で東大合格する人が増えれば、浪人して次の年に合格する人はその分減りますよね。

 伝統的進学校では。この傾向がよく見られると言われています。このことを加味すると、単年の合格者数の増減は、“学校の力の低下”と結びつけるべきではないわけです。進学実績は「年のめぐり合わせ」によるところも大きいのです。

 東大の浪人合格者数は全体の2割程度で、決して大きな数字ではありませんが、しかし浪人してもう一度しっかり勉強して受験すればこれらの伝統的進学校の生徒は合格できる可能性はかなり高いと言われています。

 ですから、例えば西大和学園はかなり合格者数を減らしましたが、その分浪人して東大を目指す人が増え、来年の東大合格者数は大きく増えるという可能性も十分に考えられます。

 逆にいえば、「2年連続」で東大合格者数が減っている学校は要注意、となります。

東大の魅力が相対的に薄れてきた?

 もう一つ注目されるのは、「そもそも東大を目指す生徒が減っているのではないか?」という視点です。これについては、下記の3点が考えられます。

海外大学志向の増加

 特に西大和学園や灘高校などは、海外大学進学をしている人も多くなっていると言われています。日本のトップではなく、世界に羽ばたく生徒がいるというわけですね。

医学部志望の強まり

 桜蔭高校で顕著だと考えられていますが、医学部進学をする人の割合が高くなっていることで、東大志望の人が減っているというわけですね。

社会変化に合わせたキャリア観の多様化

さまざまな社会的要因の中で、東大の「圧倒的正解感」が薄れてきており、「東大以外でもよい」と考える優秀な高校生が増えてきたと考えることができます。東大の魅力が減っているという可能性があるわけですね。

おわりに

東大合格者数の減少は、決して高校の“凋落”を意味するものではありません。むしろ、進学先やキャリアの選択が多様化する現代において、数字だけでは読み取れない「選択の自由」が広がっているとも考えられます。または、東大の魅力の低下という社会的な背景も存在するのではないか、と考察することもできます。今後もこれらの数字を追っていきたいですね。