志望理由書では、社会問題に対するあなたの意見を聞かれることがあります。社会問題について自分の意見を論理的に述べるのは、日本語でも難しいものです。ただでさえ議論が難しい社会問題について英語で書くというのは、非常にハードルが高く感じられるのではないでしょうか。

 しかし、しっかりとポイントを押さえてさえいれば、文字数を重ねた上で説得力のある文章を書くことは難しくありません。大切なのは「当たり前の内容を、当たり前の表現で繋ぐこと」です。

 すなわち、妥当性の高い議論の展開を、気取らない平易な英語で、短く簡潔に一つずつ文章化するということです。下手に長くて難しい文法や言い回しを使うと、「文字数を稼ごうとしている感」「背伸びして難しいことを書こうとしている感」が出てしまってNGです。採点者である大学の先生には必ず見破られてしまう上に、最悪の場合、文法ミスによって減点を喰らってしまう可能性もあります。

 では、どうやって書けばいいのか? 実際に英語で社会問題について書かれた志望理由書を見てみましょう。

中央大学法学部 英語運用の例

あなたの世代にとって重要だと思うイシューを一つ挙げなさい、また、なぜそう思ったのか述べなさい

  One issue that is important for our generation is the lack of cross-cultural awareness in Japan. I think this is an important issue for our generation because globalization is expanding in various aspects of society. In my personal experience as a representative of an NGO, I’ve been supporting many refugees and foreign residents of Japan. They had an experience of facing discrimination. I strongly thought that I wanted to support them. Our generation must change this situation. Deepen understanding of different cultures and aim to globalize.  (81 語)

ポイント1:イシューを名詞型で1つ明確に書くこと

 「重要だと思うイシューを一つ挙げなさい」と指示されているので、問題意識を漠然と語るのではなく、具体的なイシューを明確に挙げる必要があります。この志望理由書では、「the lack of cross-cultural awareness in Japan.=日本における異文化に対する意識の欠如」と、名詞の形ではっきり示しています。

 英語のショートエッセイの基本は、結論を最初に明確に述べることです。遠回しな表現は決して必要ありません!この例では、「One issue〜」と最初から問題を明確に記しています。英語の文章の基本パターンに沿って書くことで、最初に明確な問題提起、続いてその問題についての詳しい解説、次に具体例……という順序だった説明の流れを採点官も予想しながら読めるので、非常に読みやすい文章になるのです。

 今回の例では「cross-cultural awareness」と素晴らしく簡潔に名詞句で問題がまとめられていますが、単語が思いつかない場合はパラフレーズ(言い換え)を試みると良いかもしれません。例えば今回の問題に即すのであれば

・people lacks understanding of different culture
(異なる文化を理解することが欠如している)

などが考えられるでしょう。 

ポイント2 洗練された「言い換え表現」を使うこと

  英語の文章においては、同じ単語を繰り返すことは基本的に好ましくありません。それは日本語でも同様ではあると思いますが、英語の文章の場合はこの原則はより強く適用されます。それは、語彙力や表現の仕方などによって文章の格や専門性が変わってきてしまうからです。もちろんただひたすらに難しい言葉を使えば良いというわけではありませんが、同じような内容を表す表現方法をいくつか覚えておくというのは、英語の文章を書くうえで非常に有用です。

 今回の志望理由書で用いられている「deepen understanding」(理解を深める)というのは、特に素晴らしい表現です。形容詞の「deep」(深い)は非常に初歩的な単語ですが、これを動詞として使うことで、書き手の英語力の高さが一気に見えてきます。 

 「deep」のように、一般的な形容詞に「en」をくっつけて動詞として活用できる単語は、他にもあります。

broaden(広げる、拡大する)
strengthen(強化する)
weaken(弱める)
lengthen(延ばす、長くする)
sharpen(鋭くする、磨く)

 このように単語の形を変えることで、同じ表現が連続して登場するのを回避することができます。「自分では思いつかないよ〜」という方は、Chat GPTにこれと似たような単語を羅列するように質問をすると、いくつも例を出してくれるのでおすすめです。

 また、今回の「deepen understanding」(理解を深める)といった抽象的で便利なワードは、頻繁に使うことが想定されます。そこで、言い換え表現を以下に示しますので、いくつか覚えて使えるようになっておくと良いでしょう。

Enhance comprehension(理解を高める)
Broaden awareness(認識を広げる)
Strengthen knowledge(知識を強化する)
Expand insight(洞察を広げる)
Increase familiarity(親しみを深める)

ポイント3:副詞で強調し、自説を強めること 

 自説を語る際には副詞を入れて強調を行うと説得力が増す上に、英語力を示すことができます。今回でいえば「strongly」が入っていてもいなくても本質的な意味合い自体は全く変わりません。一方で、書き手の思いの温度感であったり、語彙力の強さは表現することができます。

  自説や自身の思いを書く際には「I think」といった表現を頻繁に使います。これも重複しやすいので、他にもいくつか表現の仕方を覚えておくと良いでしょう。副詞を含めた頻繁に使う表現の例をいくつか挙げてみます。

 I firmly believe(私は強く〜と信じている)
I truly think(私は本当に〜と思う)
I genuinely feel(私は心から〜と感じる)
I deeply believe(私は深く〜と信じている)
I wholeheartedly agree(私は心から同意する)

 などなど探せばたくさんあります。英語の長文問題を読んだ際などに「これは使えそうだぞ」という表現を見つけたら、どんどんメモして蓄積していくと良いでしょう。

 今回例に挙げた「考える」「理解を深める」といったような一般的によく出てくる単語や文章などは、色々な表現を調べて覚えてみると、文章の表現の幅が広がるでしょう。

 いかがだったでしょうか?「結論から述べる」「同じ単語は避ける」「短く簡潔に」といった基本的原則を守ってしまえば、あとは英語のエッセイは案外単純なものです。最初にも述べましたが、気取った言論は必要ありません。自身の経験や思いを、妥当な論理で、簡潔な文章で繋ぐことが大切なのです。