あつい。あつすぎる。本日2025年8月21日の最高気温は37度を記録し、熱中症警戒アラートは17日から5日連続で鳴りやまない。
外にいるどころか、室内にいても汗が噴き出してくる。クーラーの室外機が悲鳴じみた唸り声をあげながら、1度でも気温を下げようと頑張っているのに、それをあざ笑うかのような日差しと湿度は、容赦なく我々の体力を奪っていく。
こんなことでは、仕事や勉強どころではない。
我々には生きていくための最低限度の保証が必要だ。どうにかして、涼を得ねば。
そう考えながら『喰いタン』(寺沢大輔著)を読んでいたところ、気になる記述があった。

『喰いタン』(講談社)寺沢大介 著
激辛カレーを食べると、発汗作用が働いて、著しく体感温度が下がるという。
これだ
医食同源という考え方がある。日ごろからバランスの取れた美味しい食事を摂ることで、病気の予防や治療につなげる、もともとは中国の「薬食同源」から来た思想だ。我々の身体は、そして体を動かすエネルギーのもとは、すべて食事からなっている。
ならば、暑さに負けそうな夏バテ真っ盛りの今こそ、食事に気を払うべきではないか?
そして、ここは遠く天竺はインドの考え方にならい、カレーを食べるべきではないだろうか。

日本の家庭料理におけるカレーは、もはや日本料理の一種と言っても過言ではないくらい、我々の味覚に溶け込んだ国民のアイドル的献立だ。
だが、一方で様々なコンセプトのカレー専門店が乱立するなど、様々なアレンジや方向付けがなされる激戦区でもある。カレーの味付けは、もはや戦争の火種となりうるのだ。
そして、我々未来図編集部がいま最も注目しているカレーと言えば、学生食堂のカレーだ。学食メシのクオリティは、キャンパスライフの質を大きく左右するからだ。
問題の大学選びだが、国公立も気になる一方で、私立大学の食堂のほうがちゃんとお金がかかっていそう。せっかくならうまいカレーを食べたい。そこで、今回は、日ごろから火花を散らす「私学の雄」である早稲田大学と慶応義塾大学の二校に絞って、カレー早慶戦を勝手ながら開催してしまうこととする。
推薦入試メディアとカレーに何の関連もないって? でも「ここのカレーはうまい!!!」って言われたらオープンキャンパスに行く動機になるでしょ?
「カレー早慶戦」厳正なる判定方法について
今回は公平を期するために、私以外に2人の判定人を呼んだ。以下の3名がそれぞれ独立に点数を算出し、その合計点で競うこととする。
布施川審査員

小野審査員

小松審査員

判定基準だが、学食のカレーである以上は、学生のわずかな昼休みの時間に提供されるファストフード的立ち位置であることを加味し、吉野家のキャッチコピー「うまい、やすい、はやい」が達成できているか否かを見ることとする。
具体的には、各判定人は味3点、値段3点、提供速度3点と、独自目線による加点要素1点の合計10点を持ち、それぞれの項目に沿って採点を行う。最終的な勝敗には合計得点のみを用いる。
いつの時代も競い合ってきた「私学の雄」。味覚がハッキリしているのは果たしてどちらなのだろうか。まずは、「在野の精神」を掲げるほど庶民に開かれているであろう早稲田大学から、その味を確かめに行こう。
先攻・早稲田大学の攻撃
早稲田大学西早稲田キャンパスにやってきた。ここの理工カフェテリアにて、「学食のカレー」が提供されているという。

広々としたキャンパスは、夏休みだからか閑散としており、まばらに行きかう人とは対照的に生き生きと生い茂る植物のたくましさが感じられるようだった。そして、今回のお目当てである理工カフェテリアの入り口がこちら。

大丈夫かこれ? 本当にここから入ってもいいやつ?
右下には明らかな警告色で彩られた「高圧ガス製造事業所」の文字が踊り、「お前の来るべきところではない」と拒絶されているオーラが伝わってくる。

不安になって戻ってみると、赤いのぼりには力強さを感じさせるフォントで「営業中」の文字が。これなら、たぶんカフェテリア自体はやっているのだろう。多少の逡巡の後、直射日光でアツアツに熱されたドアノブを握り、飛び込んだ。
ワレ発見セリ
早稲田大学の地下で出会ったカレーは、どこか懐かしさを感じさせる素朴なものだった。ルーはどろどろとしており、小麦粉の割合が高いようだ。ねっとりしていて、いかにも腹持ちの良さを予期させる面構えからは、「絶対に安く学生を満足させる」心意気が伝わってくるようだった。

地味にスプーンがプラスチック製なのも嬉しい。金属製のスプーンは鋭いし、食べた時もなんだか味がキンキンするようで、個人的には好きじゃない。
実食

「食べやすいですね」
「まぁ、こういう感じだよね」
記者の率直な感想だ。いわゆる「学食カレー」といった佇まいのもったりとしたライトブラウン色のルーは、これでもかと小麦粉が配合されているのだろう、非常に腹持ちがよくねっとりとした食感を演出していた。
非常にやさしい味わいのまろやかなカレー。様々な地域、国から学生を集める早稲田大学だからこそ、あまり尖りすぎない味わいが求められているのだろうか。よく言えば「誰にでも受け入れられる味わい」だが、悪く言えば「これといった印象がない」。
個人的には応援団時代に垣間見たアクの強い早稲田大学応援部のメンバーを輩出するほどの自己主張を見せてほしかったものだ。
一方で、「陸の王者」慶應は、果たしていかほどの実力を見せてくれるだろうか。
後攻・慶応義塾大学の攻撃
踵を返して一路三田駅へ。目指すは慶應義塾大学三田キャンパス。平日の昼下がりだというのに三田・田町駅前は人でごった返しており、否が応でも汗が噴き出る。ふらふらになりながらたどりついたのが、慶応義塾大学自慢の食堂「山食」だ。
何を隠そう”Curry”を日本で初めて「コルリ」と紹介したのが、福沢諭吉であったそうで、山食は戦前から存在する歴史の深い食堂なのだとか。


学内にはそこかしこの木陰にベンチが設置されており、過ごしやすい日には外で学生たちが教科書を片手に様々な談議に花を咲かせるのではなかろうか。さすがに、40度近い気温と焼け付くような直射日光の照りつける中では誰一人ベンチに腰掛ける人はいなかったようだが。

食堂の奥には慶応義塾の校旗(通称:塾旗)が飾られており、右下には「山食」の二文字が刻まれている。伝統を重んじる校風と、受け継がれてきた歴史の重みが感じられた。

満を持してやってきた「山食」のカレー。いわゆる「日本風のカレーのイメージ」が脳内からそのまま出てきたようなビジュアルで、「カレーの祖」に相対する事実に緊張が高まる。

高級なホテルカレーのようなビジュアルに、さらさらとしたルー。具材は溶け込んでいる中で一部柔らかな玉ねぎや肉の触感が感じられ、優しい味わい。昨今のコク至上主義な濃厚カレーに辟易している方ならば、きっと気に入るはずだ。
さっぱりとした辛さは、晴れた夏の日の日差しによく似ていて、どこまでも遠く抜けていくような爽やかさを感じさせる。
お盆とスプーンなどカトラリーにこだわりがあるのもおしゃれポイントだ。特に、スプーンの柄にはよくみれば「山食」と刻んであり、慶応義塾大学の中でもこの食堂自体が特別な立ち位置にあることがわかる。

惜しむらくは、やはり若干の古さを感じさせられることだろう。戦前から変わらないレシピを守り続けているといえば聞こえはいいが、やはり今風の味ではない。
「むかし懐かし」のカレーですらないその伝統の深さは、逆に令和を生きる我々の味覚と隔たりを作るようなものであるように思えてならない。確かに、カレーとしてレベルが高いのは間違いないのだが……。
ここまでですべての攻撃回が終わった。あとは評定をつけ勝者を決めるだけだ。帰途に付きながら、早速の評価に入る。多少の紆余曲折はありつつも、なんと最終的には三者で「最強の学食カレー」が一致した。
審査員が満場一致で選び出した、「最強の学食カレー」を提供する大学。それは……
優勝は……

優勝は上智大学に決定した。 満場一致である。
……理由を説明するので、一度石を投げるのを思いとどまっていただきたい。
今回勢いで始めた「カレー早慶戦」だが、正直、当初の想定を大きく上回ることもなく、どっちもどっちな印象を受けていた。私学の雄である早慶の学食カレーには、相当な期待を寄せていたのだが……。これならば、自分だったら別に学内でカレーを食べようとは思わないだろうが、この程度が学食の限界なのだろうか。
そう考えていた時、審査員2人から提案を受けた。
「これなら、絶対に上智のほうがおいしい」というのだ。
かつては早慶上智(いまは早慶上理だが)と呼ばれていた私学三国志の一角である上智大学。
四谷にキャンパスを構える以外には大した情報がなかったが、どれほどのポテンシャルを秘めているのだろうか。
そこで、案内のもと、上智大学四谷キャンパスにやってきた。

四ツ谷駅から徒歩5分と非常に優れた立地にありながら、ひとたびキャンパス内に踏み入れると、静謐さが漂いつつも活力を感じる不思議な空間が広がっていた。歴史の古い建物と、新築のビル棟が入り混じっており、今回案内された食堂は新築ビルの2号館5階に位置していた。

カレーの値段は3校で最安の350円。
しかもこれが普通盛りの値段だというから驚きだ。とはいえ、「安かろう悪かろう」とか「安物買いの銭失い」とか、安いがゆえに質が低い危険性を戒める言葉は星の数ほどある。1円2円を切り詰めるために途方もない努力が必要だろう中で、300円台半ばを打ち出してくる豪胆さに舌を巻きつつ、警戒心は強まっていく。

なかなかどうして、立派なビジュアルをしている。
深いブラウンをしているルーの海からは、ただ目線をやるだけでスパイスの深淵を覗き込んでいるかのような気分にさせられてしまう。深みのある味を予期させるが、どうか。

ガシャガシャ ぐァつぐァつぐァつ
これだ______

素人は黙っとれ____
そんな言葉が浮かんでくるような、圧倒的存在感。思わず天を見上げてしまう。口に含むと感じられるスパイス感を包み込むようなまろやかさ。ほのかに香るバターの風味とコク。野菜や肉からあふれ出た旨みをどっしり受け止めて作られただろう強靭な足腰を前提にした味の組み立て。
これこそが圧倒的にカレーであり、学食カレーの概念を根底からひっくり返してきた。街のレストランで提供されても「うまい!」と絶賛できるクオリティ。
明らかにレベルが違う。
ここまでのコクと深みのある味を、大量生産の学生食堂で、しかも一人前350円という破格の値段で提供されている事実。質・量・値段のうち二兎すら追えない食堂が大半の中で、三兎をすべて手中に収める矛盾。それでも、事実として、このうますぎる・安すぎるカレーは目前に君臨している。
早慶戦などといっていた自分が恥ずかしい。カレーの世界は広く、この世にはまだ見ぬ激ウマ・激安カレーがまだまだ存在するのだろう。少なくとも、カレー偏差値をつけるならば、この上智のカレーは80を優に越す「理Ⅲ級」。異次元の食欲対策に、かきこむ匙が止まらない。
こうして優勝は満場一致にて、上智大学のカレーに決定した。ちなみに、以下が大学別の点数と講評だ。
布施川審査員評価
早稲田大学
味:1/3
値段:2/3
提供速度:3/3
自由枠:カトラリーがプラスチック製だったので1点
➡合計7点コメント:
正直、味はかなりもったりしていて、不味くはないが、特別美味しいわけではない。値段も、非組合員価格では400円を突破しており、学食としてみた時に特別安さを感じさせるほどではなかった。ただ、注文から一瞬で提供され、しかもルーは非常に腹持ちが良く、タイパとコスパに優れた面は評価ポイントだった。また、プラスチックのスプーンなのは素直にうれしい。
慶應義塾大学
味:2/3
値段:2/3
提供速度:3/3
自由枠:カトラリーにこだわりを感じるので1点
➡合計8点
コメント:
見た目はめちゃくちゃいい。高級なホテルカレーみたいなツラをしている。ルーの粘度は低く、かなりさらさらしている。昔ながらのカレーといった味。高級料理としてのカレーを目指しているのかもしれないが、個人的にはもっとコクがあったほうがいい。コメは固くてうまい。量はそこそこある。ビジュがいいだけに、もうちょっと美味しいカレーを想像してしまっていたからこその、落胆というか、残念感が際立ってしまった印象。例えるなら、人気者のイケメンに話しかけたら絶望的に話がつまらなかったときのようなガッカリ感がある。
上智大学
味:3/3
値段:3/3
提供速度:3/3
自由枠:駅チカで眺望もよいレストラン。立地も文句なし!1点
➡合計10点
コメント:
非常に深みのあるルーに、ちょっと固めに炊かれたコメのバランスが素晴らしい。具がほぼ溶けていた早稲田慶応のカレーに比べると、野菜と肉の存在感が強く、満足感も高い。しかも、学生か否かに関わらず350円で提供するコスパの良さも見逃せない。カレーセットにしても420円と、うれしいを通り越してうすら寒さすら感じさせる顧客満足度への姿勢は、博愛の精神を感じさせるものだった。
小野審査員評価
早稲田 6/10
味:2/3 (辛いのが苦手な人でも味わえれる、ルーとご飯の量がピッタリ、お肉はない)
値段:1/3 (小358円)
提供速度:3/3
自由:0 (特別なことが特にない)
コメント:30秒ほどで提供される、とろみのあるテクスチャで、具材は肉なしのにんじんとジャガイモ。ルーを使って作る家庭のカレー味っぽく、特別要素はない。私はお米が少し多い方を好むため、お米とルーの量は最高だった。慶應 7/10
味:2/3 (辛い)
値段:2/3 (420円)
提供速度:2/3(普通)
自由:1/1(見栄え:おぼん、割り箸・お皿慶應・山食専用品)
コメント:慶應の山食では、お皿や割り箸が専用のもので統一されていて、おぼんもシルバーで少しおしゃれ。見栄えからすでにテンションが上がります。カレーは具沢山で、上智と違って鶏肉が全員に平等に入っているのも嬉しいポイント。さらさら系で、味は辛め。辛さに弱い私には、途中から少し味がわからなくなってしまいました。上智 9/10
味:2/3 (少し辛い、ハヤシライスぽい、ご飯の硬さ最高、具材豊富、福神漬け付き)
値段:3/3 (みんな350円)
提供速度:3/3 (一瞬)
自由:1/1 (見栄えが良い、景色も最高)コメント:早稲田の提供速度は早いと思ったが、それを抜く提供の速さ、加えて見栄えまで抜群。テクスチャはサラサラで、ハヤシライスっぽさがある。お肉もゴロゴロのカレーだが、盛り付ける量は運次第。ちなみに私はハズレだった。ルーがお米よりも多めだったが、お米の硬さが抜群だったから、許せてしまった。景色もよく、良い気持ちで食べれた。
小松審査員評価
早稲田大学
味:1/3
→レトルトにありがち、不味くないけど普通。しかし、ご飯が少しべちゃついていたのが嫌だった。 ルーとごはんが4:6で個人的にはルーが多い方が好きだからあんまりだった。値段: 1/3
→安すぎる300円でおなかいっぱいになるのはすごい、と思っていたが、上智の方が量も質も高いのに安かった。具材は小さな人参とじゃがいものみだった。寂しい。提供速度: 3/3
→夏休みということもあるが、とてもはやかった。従業員の方の雰囲気は普通だった総合評価:5
→全体的に普通だった。これなら家でレトルトのカレーを食べた方がコスパ的にもいいんじゃないか?と思ってしまった。早稲田の組合員とその他で20%ほど金額が変わるのがネック。
慶應義塾大学
味:2/3
→さらさらとして、カレーぽくない味だった。玉ねぎやお肉が大きめに入っていたことは評価したいが、あまりにも味にコクがない。さっぱりしていて辛かった。ご飯と食べるほど味が濃くない。ルーとご飯が6:4でその配分は◎だった。ご飯はべちゃついておらずばっちり値段:2/3
→カレーを食べているという欲が満たされないカレーだったから、普通の一食として考えたら破格だが、学食にしてはそこまでお得感がなかった。しかし、ちゃんと量があったため、この評価。提供速度:3/3
→どの大学も同じくらい早かった自由枠:食堂のおばちゃんの雰囲気で+1
→まるでPTAの役員さんのように明るく、親しみやすい人たちだった。他の2大学の職員さんたちとは違って、雑談にも答えてくれる優しい様子がとても好きだった。あったかい。総合評価:8
→食べログに登録されていたり、「慶應には専属のシェフがいる」などといった前評判があったからか、結構がっかりだった。カレーはそんなにだった、食堂のスタッフの方に聞いてみると、「定食の方が人気がある」とおっしゃっていたので、もしかして慶應のメインはカレーではないのかも!と思った。そうでないと、あんなに評判が良い理由がわからない。
上智大学
味:3/3
→野菜もお肉もしっかりと入っていて手作り感があった。福神漬けもついていて◎
コクがあり、スパイスが入っているけど甘く、絶妙だった。カレー専門店には劣るが学食レベルをはるかに超えていた!値段:3/3
→値段は変わらないのに、早稲田の小サイズの2倍あった。上智生ではなく、一般人でも同じ価格なのが◎提供速度:3/3
→体感は早稲田と同じくらい自由枠:見栄えで+1
→専用のお皿でもられたカレーは学食の雑多感がなく、洗礼されていた。見た目からもう美味しかった。総合評価:10
→余裕でNo.1。王道のカレーという味ではないが、個性と手作り感が出ていてよかった。学食の雰囲気も明るく、快適な空間で美味しいご飯を食べられるという環境も含めて総合的に1番だった。
まとめ
今回は早慶+上智大学の3大学について、学食カレーの品評を行った。伏兵・上智大学によって大分かき回された形になったが、裏を返せば「この世にはカレーがうまい大学がまだまだたくさん眠っている」ことの証左でもある。
もし、この記事の読者に「ぜひうちの大学のカレーを試してほしい」と感じた方がいらっしゃったら、問い合わせフォームから大学・食堂名・メニュー名を送ってほしい。まだまだ学食カレー探究は始まったばかり。
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