激動の2025年もあっという間に残すところ1日となりました。一般入試の受験生は2026年1月17日・18日の共通テストに向けて勉強している最中かもしれませんね。
一方、「年内入試」とも呼ばれる総合型選抜は基本的にすべての審査が終了しており、あとは結果を待つだけ。今年度の総合型選抜は一通りが出そろったわけですが、未来図では今年の入試や出願形態、合格者の傾向などを振り返り、来年度以降の総合型選抜入試傾向の未来予想図を作ってみたいと思います。
そこで本日はリザプロ株式会社推薦事業部統括の河上明夢さんをお招きし、今年度の総合型選抜で注目すべき点などを伺いました。
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英語だけではNG
__早速ですが、今年の総合型選抜で起きた主要な変化を教えてください。
河上:大小様々ありますが、やはり注目すべきは早稲田大学国際教養学部(以下SILS)が、日本語論文を入試本番日に課すようになった点でしょう。

これまでも日本語の論文は課されていましたが、志望理由書と一緒に事前提出させる形を取っていました。入試本番では英語論文だけだったので、極端な話、英語がある程度できれば、日本語に多少の不自由があっても周囲の大人のサポートを受けて出願することだってできた。
それが、今年は事前提出物がなくなり、本番で日本語論文と英語論文の両方を書かなくてはならなくなったんです。日本語論文の内容も、志望理由を混ぜ込んだエッセイ形式となり、生半可な日本語運用能力ではふるい落とされてしまうでしょう。
長らく、SILSは「英語ができればイケる」とみられがちで、実際に合格者にはインターナショナルスクールに通っていた方や、帰国子女などが多かった。大げさに言えば、日本語運用能力が求められていなかったのかもしれません。
ただ、今回の変化を見る限りでは、「日本生まれ日本育ち」かつ「英語運用能力が高い」ような学生を狙っているように見えます。おそらく、大学としても、英語一辺倒になりすぎないように、日本語英語両方を使いこなせるバイリンガルを育てたい意図があるのではないでしょうか。おそらく、来年も何かしらの形で日本語能力を試すテストが課されると考えられます。

__なるほど、ほかに目を引いた学部はありましたか?
河上:学習院女子大学が無くなって、学習院大学と統合されたわけですが、そこで新設された国際文化交流学部に注目しています。というのも、倍率が非常に高いように見えるためです。
学習院大学は今時珍しく、合否判定システムではなく、昔ながらの受験番号一斉掲示による合否発表を行います。今年の発表結果は以下の通りですが、これが全て通し番号だとしたら、少なくとも105名の受験生がいたことになる。

それでいて、実際に受かったのは9名たらず。実質倍率は10倍の大台を突破しており、非常に苛烈な戦いが起きたのではないでしょうか。
倍率がここまで高まった要因も予想できています。こちらの大学は出願要件が非常に緩く設定されており、高校卒業(見込み含む)資格以外には、TOEFL50点 or IELTS4.5 or TOEIC L&R 600点を満たすだけでよい。他校や他学部で要求される高い評定平均がなくても出願自体はできるんです。

ですが、実際の結果を見る限りでは、相当厳しい審査基準によってより分けられているはず。つまり、「評定平均が出願資格にない」ことと「評定平均が合否に関係しない」ことは、全くの別問題なんです。評定を求められないからと言って、学校がそれを無視しているわけではなく、むしろ高い評定を取った子ばかり合格している。
これは、他校にも言えることです。慶應義塾大学法学部のFITと呼ばれる選抜方式はA方式とB方式に分かれます。このうちA方式は「評定も英語資格も不要」で、B方式は「指定の科目(数学・外国語・国語・地理歴史・公民)および全体の評定が4.0以上」のみと、やはり早慶クラスにしては非常にやさしい条件で出願自体は可能になっている。
しかし、AもBも英語の能力を要求されることに変わりありません。試験会場で行われる講義を基に小論文をまとめるA方式の方では、講義も問題も日本語出題ですが、英語能力を示していない学生は書類審査の段階でことごとく落ちている。

一方、B方式は英文読解の問題が課され、しかも準二級程度では太刀打ちできないような難しい文章がほとんどですから、やはりそれなりに英語の勉強をしていないと厳しい。「求められていないから勉強しなくていい」と安易に考えてはいけません。


早慶は「英語ができて当たり前」
__「英語や評定がなくても大丈夫!」なんて甘い話はないということでしょうか?
河上:大学のレベルにもよりますが、目安としていうならば、早慶クラスに出願したいなら少なくとも評定4.0は欲しいところ。それでいて、国際系以外の学部なら英検二級、国際系なら準一級資格もしくはそれを満たす実力が欲しい所です。先述のSILSも、出願条件はありませんが、実際に受かった子は評定4.0以上、英検一級、TOEFL100点越え,IELTS8.0など高い能力を示しています。
GMARCHクラスだと、やはりここも大学によりますが、明治大学・青山学院大学・立教大学を狙うならば評定4.0はキープしたいところ。中央大学・法政大学に関しては、評定が4.0水準に満たなくても、英検準一級資格があれば、戦える可能性はあります。逆を言えば、明治・青山・立教の三校は英検準一級があっても、評定がないと難しい。
評定は数字で出やすいので想像しやすいですが、英語能力に関しては「英検準一級」が「英語ができる」の証明となります。
イメージとしては、早慶クラスだと「英語ができる」が有利条件ではなく、参加資格。そこに、プラスで学校の成績や課外活動などが足されて審査される。GMARCHクラスなら「英語ができる」と有利はなりますが、それが決め手になって……とはいかないレベル。やはり、評定や課外活動など、プラス要素がほかにいくつかほしい。
「推薦入試=ラク・逆転可能」みたいにみられることもありますが、それは大きな間違いです。準一級資格を目指して英語の勉強をしつつ、それ以外の教科もしっかり押さえて評定平均で4.0以上を目指すのは、高校三年間の継続的な努力が必須。むしろ、高3時点で評定がガタガタだったり、英語がからきしだったりすると、相当不利な戦いを強いられます。
少なくとも、弊社は生徒様との初回面談の際に、評定平均や英語の成績、資格の有無などを鑑みて、志望校を決定しています。もちろん、「評定や資格はないけれど、どうしても早慶に行きたい!」と仰るなら、そのお考えを尊重しますが、「相当不利な戦いになると思われますが、よろしいですか?」とハッキリお伝えしている。リスクをお伝えせず「受かります!」と太鼓判を押すのは、無責任極まりないですから。
「穴場学部」に惑わされず堅実な選択を
__穴場の学部などは、もはや存在しないということでしょうか?
河上:「人気がある学部で一般入試のハードルも高いのに、総合型だと楽に入れる!」みたいな意味での「穴場」をお探しなら、あまり期待されないほうがよろしいでしょう。
もちろん、もう少し条件を緩和すれば「穴場」は見つかるかもしれません。例えば、中央大学の「英語運用能力特別入学試験」は英検一級など高級な英語資格を要求されるハイレベルな入試ですが、正直このクラスの英語資格を持つ方は、早慶などを目指されることが多いでしょうから、比較的倍率は低くなるかもしれない。
あとは、法政大学の国際文化学部は「評定平均3.5以上かつ英語の評定が4.0以上」で出願可能であり、比較的緩い。ただ、こちらは在学中の留学が卒業要件として必須に指定されており、入学後が大変です。専攻によって倍率もまちまちですが、中にはロシア専攻など、戦争状態にある現在は情勢が不安定な国・地域も含まれています。もちろんロシア専攻で入学したら、卒業までの現地留学が必須ですが、そもそも戦争がいつ終わるのか、どのように幕を閉じるのか、見通しすらついていない現状で、目指したがる方は、多くないのでは……。

つまり、難関大学の中でも単純に人気が無かったり、出願条件が極端に高かったりするところは、倍率が低くなりやすいでしょうから、比較的有利な戦いができる可能性はあります。
ただし、総合型選抜は、学部が出しているアドミッションポリシーと一致する学生を評定や課外活動など多角的視点から審査して募集する入試方式であり、「穴場だから」と軽い気持ちで適当な学部に入ると、入学後に相当な苦労を強いられる可能性も。
やはり、安易な「逆転」の甘言に惑わされず、ちゃんと勉強して、ちゃんと積み重ねることが必須でしょうね。この点においては、一般選抜と共通する部分があります。
「推薦=ラク」ではない
年々注目度が高まる総合型選抜ですが、やはり出願者数が増えるほどに戦いのレベルは上がっているようです。
慶應FIT入試は、今年初めて受験者が300名を超えました。出願者数も、その平均レベルも年々上昇している。「評定も資格もいらない」との触れ込みで急激に人気が高まったためですが、それでも実際に受かるのは「評定も資格もある子」。
もちろん、大学側がそれら要件を貸さないのも、数字や資格に囚われず、柔軟な実力のある学生を求める意図があるのでしょう。ただし、だからといって「勉強しなくても受かる」わけではない。むしろ、勉強で結果を出せないなら、それ以外の活動で継続的かつハイレベルな活動実績を求められると考えるべき。
「総合型=ラク」と考える方もいらっしゃるようですが、私個人の意見を述べるなら、私自身も一般入試で入学していますが、最後の一年だけ詰め込めば何とかなる分、評定平均などコンスタントな努力が求められる総合型より楽にも感じます。
とはいえ、これは「隣の芝生は青く見える」の典型であり、どちらもそれなりに大変さがあるのでしょう。共通するのは「自分を磨き上げる努力が必要である」点。来る2026年、そして2027年度入試からも目が離せません。
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