早稲田大学人間科学部の2027年度FACT選抜では、カメラ・オブスキュラ(暗箱)を用いた光学実験が事前課題として出題されました。未来図編集部では、大学が公開した課題内容に加え、過年度の受験生から寄せられた面接質問や試験の振り返りをもとに、FACT選抜で求められる力と対策のポイントを解説します。

今回の事前課題では、自ら装置を製作し、光の性質を観察するだけでなく、実験条件を変えながらデータを収集・分析し、その結果を科学的に説明することが求められています。単に正しい結果を導くのではなく、「なぜその方法を選んだのか」「予想と異なる結果が出た場合、どう考えるのか」といった、科学的な探究姿勢が重要になると考えられます。

問題概要

2027年度FACT選抜の事前課題は、2026年6月15日に大学公式サイトで公開されました。

テーマは「カメラ・オブスキュラを用いた光学現象の観察」です。カメラ・オブスキュラとは、暗い箱に開けた小さな穴を通して外の景色を投影する装置で、写真技術の原型の一つとして知られています。

受験生には、次の3つの課題に取り組み、その結果を総合的に考察したレポートの提出が求められました。

https://www.waseda.jp/fhum/hum/assets/uploads/2026/06/FACT_pre_2027.pdf

【課題1】カメラオブスキュラの製作

段ボールやアルミ箔などを用いて装置を自作し、外の景色が上下左右に反転して映る現象を観察する課題です。装置の構造や像の写真を記録するとともに、なぜ像が反転するのかを光の直進という性質から説明することが求められました。

【課題2】ピンホールの形状が像の明るさ・鮮明さ等に与える影響を調べる

大きさの異なる5種類以上の円形ピンホールと、形状の異なる3種類以上のピンホールを用意し、像の明るさと鮮明さを比較する課題です。実験前の仮説、定量的な比較結果、測定誤差などを報告したうえで、自分なりの評価基準をもとに「最も良い像」が得られる条件を考察することが求められました。

【課題3】自作レンズによるピンホールの代替

UVレジンなどを使ってレンズを自作し、ピンホールとの違いを検証する課題です。像の明るさや鮮明さ、ピント合わせの必要性を比較するとともに、レンズの焦点距離を測定し、そのデータから樹脂の屈折率を求めることが求められました。また、像のにじみや歪みを観察した科学的スケッチの提出も指定されました。

レポート本体はA4判で5〜10ページとされており、実験の結果だけでなく、その過程や考察を簡潔かつ正確にまとめる力も試される内容となっています。

用語解説:「仮説検証」とは

仮説検証とは、ある現象について予想や説明を立て、実験や観察によってその妥当性を確かめる科学的な研究方法です。

例えば、今回の課題2では、「ピンホールを小さくすると像は鮮明になる」という仮説を立てることができます。しかし、穴を小さくしすぎると、光の回折によって逆に像がぼやける場合があります。

つまり、一般的な知識から立てた予想が、すべての条件で成り立つとは限りません。

そこで重要になるのが、実験によって得られたデータをもとに仮説を検証し、必要に応じて修正する姿勢です。予想と異なる結果が出た場合にも、測定条件や誤差を検討することで、新たな発見につなげることができます。

FACT選抜の公式資料でも、「仮説の構築」「実験や観察による検証」「仮説の再構築」という循環が科学的な探究の基本として示されています。

関連すると思われる社会問題

今回の事前課題から考えられる関連テーマとして、「科学的根拠に基づく意思決定」と「情報の信頼性」が挙げられます。

現代社会では、インターネットやSNSを通じて膨大な情報に接することができます。しかし、情報の中には、個人の経験や印象に基づくものと、適切な条件で収集されたデータに基づくものが混在しています。

例えば、ある商品の効果について「自分には効果があった」という感想だけでは、その商品が一般的に有効であるとは判断できません。効果を確かめるためには、比較する条件をそろえ、複数回の測定や検証を行う必要があります。

これは今回の光学実験とも共通する考え方です。ピンホールの大きさによる違いを比較する際、被写体との距離や周囲の明るさが毎回異なれば、その違いが本当にピンホールの大きさによるものなのか判断できなくなります。

また、何をもって「良い」と判断するかによって、結論が変わる点も重要です。今回の課題2では、明るさを優先するのか、鮮明さを優先するのかによって、最適と判断するピンホールの条件が異なる可能性があります。

こうした考え方は、医療、福祉、環境政策、情報技術など、人間科学部が扱うさまざまな分野にも応用できます。複数の評価基準を整理し、客観的なデータをもとに結論を導く力が問われていると考えられます。

理想回答の方向性

① テーマ理解

今回の事前課題の中心にあるのは、光学に関する専門知識の暗記ではなく、実際の観察を通じて現象を捉え、科学的に説明する能力です。

特に、実験で失敗した点や予想と異なった点について、その原因を考察し、改善策を説明できるかどうかが重要になると考えられます。

② 内容展開の方向性

【課題1】

A. 光が直進する性質をもとに、像が反転する理由を説明する。

B. 遮光や内部反射を防ぐために、装置の製作時にどのような工夫をしたか整理する。

C. 室内と屋外など、観察条件による像の違いについて考察する。

【課題2】

A. 像の明るさと鮮明さの関係について、実験前に立てた仮説を説明する。

B. 実験条件を統一した理由と、データの比較方法を説明する。

C. 「最も良い像」の評価基準を明確にし、実験結果から判断した理由を述べる。

D. 理論値と測定値の違いが生じた原因を検討する。

【課題3】

A. ピンホールとレンズの結像原理の違いを説明する。

B. レンズの曲率や焦点距離と、像の見え方との関係を考察する。

C. 自作レンズの測定値から屈折率を求め、一般的な値との差について考える。

D. 観察結果を科学的スケッチとして正確に記録する。

③ 面接での回答例

【質問】課題2で「最も良い像」とありますが、「良い」の定義をどのように考えましたか?

【回答例】

私は、像の「明るさ」と「鮮明さ」の両方を評価する必要があると考えました。ピンホールを大きくすると像は明るくなりますが、輪郭はぼやけやすくなります。一方、小さくすると幾何光学的なぼけは減るものの、光量が減少し、回折の影響も大きくなります。そのため、単に穴が小さいほど良いとは判断できません。私は、明るさと鮮明さをそれぞれ数値化し、両方の結果から最適な条件を判断する方法が適切だと考えます。

※上記は考え方を示す回答例です。実際の面接では、自身の測定方法、数値、判断基準を用いて説明する必要があります。

面接について

過年度の受験者から寄せられた情報によると、FACT選抜の面接では、志望理由や大学で研究したいテーマに加え、事前課題への取り組み方について詳しく質問されました。

実際にあったと報告されている質問

  1. 論述試験はどうでしたか?
  2. 論述試験と事前課題のつながりは感じましたか?
  3. 事前課題で失敗したこと、苦戦したことはありますか?
  4. 事前課題と論述試験で学んだことは、どのようなことに活かせますか?
  5. 事前課題の課題2で「最も良い」とありましたが、「良い」の定義はどのように考えていますか?
  6. これまでいろいろな研究方法を試してきたと思いますが、その他に何か思いつきますか?
  7. 課題1から3まで被写体がすべて違うのは、何か意図がありますか?
  8. 自分の視点を変えたり、新しい発見を得たりするために学びたい授業はありますか?
  9. なぜFACT選抜を選んだのですか?
  10. 学業以外で何かやりたいことはありますか?
  11. なぜスターバックスでアルバイトしたいのですか?
  12. 人間科学部で何を研究したいですか?

※質問は過年度の受験者からの報告をもとにしたものであり、2027年度の事前課題について実際に質問されたものではありません。

これらの質問からは、事前課題を正しく理解しているかだけでなく、自身の研究方法を振り返り、その限界や改善点を説明できるかどうかが重視されていると考えられます。

特に特徴的なのが、「良い」の定義や被写体を変えた理由など、受験生自身の判断を問い直す質問です。実験に成功したかどうかにとどまらず、実験条件を設定した理由や、結果を評価する基準についても説明できるよう準備する必要があります。

受験生の振り返りと対策のポイント

過年度の受験者からは、「事前課題について何を聞かれても答えられるくらい理解を深めておくことが大切」という声が寄せられました。

面接では、実験で苦戦した点だけでなく、それをどのように改善したのか、どのような工夫をしたのかまで整理しておく必要があります。

また、論述試験については、過去問から出題形式が大きく変化し、長文英語やバリアフリー、ダイバーシティ、ユニバーサルデザインといった用語に関する問題が出題されたとの報告もありました。

受験者は、「120分の試験時間が足りず、もっと早く着手していれば解けた問題もあった」と振り返っています。そのため、最初に問題全体を確認し、解ける問題から取り組むなど、時間配分を意識した対策も重要になりそうです。

さらに面接では、回答を一字一句暗記するのではなく、重要なキーワードや考え方の軸を決め、自分の言葉で説明する練習が役立つといいます。

「まず結論を短く述べ、その後に根拠や具体例を加える」ことが、複雑な質問に対応するうえでも重要なポイントといえるでしょう。

FACT選抜は、実験の知識を身につけるだけでなく、自分で問いを立て、実験で確かめ、結果を分析し、相手に伝える力が求められる入試です。事前課題を提出して終わりにするのではなく、自分の実験について「なぜ」「どうして」と問い直し続けることが、論述試験や面接への準備につながると考えられます。