「英検準1級は、英語が得意な子だけが受かる特別な級というわけではありません。
中学1年生から少しずつ積み上げていけば、現実的に目指せるラインです」

そう語るのは、「EIKEN先生Hirokiの英語塾」を運営し、現在は大学でTOEIC講座も担当している”EIKEN先生”こと臼井裕貴さんです。

とはいえ、多くの人がこう感じるのではないでしょうか。
「英語がわからない」「学校では見たことのない単語ばかり」「やっぱり準1級は壁が高すぎる」と。

世の中には、IELTSやTOEFL、TOEICなど、英語力を測る試験がいくつもあります。その中でも特に英検は、進路と結びついて語られることが多く、「大学受験のための資格」という印象を持たれがちです。

それでもEIKEN先生は、「準1級は現実的な目標だ」と言い切ります。
なぜ、そう言えるのでしょうか。

多くの学習者を見てきた立場から見えてきた、英検の使い方について詳しく話を聞きました。


―― 英語資格がいくつもある中で、あえて英検を選ぶ理由は何でしょうか。

英語資格としての「使いやすさ」だけを考えると、TOEFLやTOEICのほうが向いている場面は確かにあります。留学や就職など、目的がはっきりしている人にとっては、そうした試験の方が成果が見えやすいことも多いと思います。

ただ、英検にはそれら試験にはない大きな魅力があります。
「レベル別設計」です。

たとえば、英検3級や4級レベルの人が、いきなりTOEFLやTOEICを受けた場合、問題の難易度についていけず、ほとんど手がつかないまま時間だけが過ぎてしまうこともあります。これは英語力の問題というより、試験のレベル設定が合っていないケースと言えるでしょう。

その点、英検は各級ごとに求められる力の範囲が明確です。
自分の現在地に合った級からスタートし、一段ずつ力を積み上げていくことができる。

この「今の自分にあった挑戦」が用意されているという点は、英語学習を続けていく上で大きな意味を持つと思います。


―― 進路を考える中で、英検は「どこまで」使うのが現実的なんでしょうか。

EIKEN先生:

大学受験の場面では、英検は優遇されるケースが多い資格です。出願資格になったり、推薦入試の条件になったり、英検利用として点数に換算されたりすることもあります。その意味では、取っておいて無駄になる資格ではありません。

ただし、英検1級については少し視点を分けて考える必要があります。
合格まで約1000時間と相当な時間がかかる試験なんです。

英語そのものを強みとして前面に出したい人にとっては、挑戦する価値のある資格だと思います。一方で、そこまで英語を軸にしないのであれば、課外活動や他教科の学習など、別の軸に時間を使った方が進路上有利になるケースも少なくありません。

英検は、「取るべきかどうか」で判断する資格というより、自分の目的に対して、どこまで使うのかを考える資格だと思っています。

―― でも、英検準1級って正直かなり難しい試験じゃないですか。

EIKEN先生:

たしかに、英検準1級は簡単な試験ではありません。2級とは大きな隔たりがあり、それなりに勉強しないと通らない。ただ、「特別な英語環境で育った人じゃないと無理」という試験かというと、必ずしもそうではないと思っています。

たとえば、小学校までは公教育の英語を受けて、中学から本格的に英語学習を始めた生徒でも、中学1年生の段階から1日1時間〜1時間半ほどの学習を継続できれば、1年〜1年半ほどで2級取得は実現可能です。


そこからさらに学習を積み重ねていけば、2級合格からおよそ1年半後を目安に準1級を目指す、というペース感が現実的だと思います。

もちろん、誰もが同じスピードで進めるわけではなく、個人差はあります。平均して1時間から1時間半ほどの学習を、止めずに続けられるかどうかが、大きな分かれ目になります。

英検の勉強は、派手なテクニックや裏技が求められるものではありません。むしろ重要なのは、「特別なことをしない代わりに、やめないこと」。
英検は短距離走ではなく中距離走で、途中で多少ペースが落ちても、学習を続けていれば前に進める試験です。

中学1年生から3年間という時間をかけて段階を上っていけば、英検準1級は現実的な目標として見えてくる。
その再現性がある点が、英検の大きな特徴だと思います。


―― 準1級になると、1人で勉強するのは難しくなりませんか。

EIKEN先生:

準1級になると、「仕事」「環境」「教育」など、社会的で抽象度の高いテーマが増えてきます。正直、中高生の立場だと、意見がすぐに思い浮かばないことも多いですよね。それは英語ができないというより、考えるための材料がまだ十分にない、という場合が多いのではないでしょうか。

だから、アイデアを外から持ってくる、という発想でたとえばChatGPTに、「このテーマについて、賛成と反対の理由をそれぞれ2つ、CEFR B1レベルの英語で出してください」と聞く、という使い方があります。これは答えをそのまま使うためではなく、考えるきっかけをつくるための方法です。

ここでのポイントは、「自分がちゃんと言える英語」に落とし込むことです。
もし出てきた表現がまだ難しいと感じたら、「もっと簡単にして」「言い換えて」と頼んで構いません。そうやって、自分の中で無理なく使える形まで調整していくことが大切になります。

その中から、「これなら自分でも言えそうだな」と思う表現を拾い、自分が言える英語に言い換えたり、次に使える形で覚えたりする。
こうしたプロセスを踏んでいけば、ChatGPTを使うこと自体がマイナスになるわけではありません。むしろ、使い方次第で、1人でも学習を前に進めるための、十分に現実的な手段になると思います。

まとめ

今回、EIKEN先生の話を聞いて見えてきたのは、英検が「合否を見る試験」ではなく、英語学習の現在地を確認するためのツールとして設計されているという点でした。

級が分かれているからこそ、今の自分がどこにいるのかが分かる。
できなかったことが、次の級ではできるようになっている。その変化を一段ずつ確かめながら進めるのが、英検という試験です。

一方で、TOEICやTOEFLは、ある程度の英語力を前提に「どれだけ使えるか」を測る試験です。英検と競合するものではなく、役割がはっきり分かれていると言えるでしょう。

英検は、英語力を一気に証明するための資格ではありません。
学習の途中で立ち止まり、自分の現在地を確かめるための試験です。

準1級は、到達点というより、「ここまで来た」と言える位置なのかもしれません。