受験戦争の行き着く先、医学部。そんな医学部に“女子校”があることをご存知でしょうか。その名は「東京女子医科大学」。日本どころか、世界でも唯一の医学部女子校です。

旧制医専のひとつであり、1900年から100年以上の深い歴史がある由緒正しい名門校。再生医療分野に強く、近年は早稲田大学との連携にも取り組んでいます。

世界的にも珍しい「女性専用の医科大学」。近年様々な学校で共学化が進んでおり、数少ない「女性専用医科大学」であったペンシルベニア女子医科大学も、現在はドレクセル大学医学部に統合されてしまいました。

その背景には、女子大の人気低迷もあるのでしょう。例えば、かつては「私学の雄」と称えられる慶應義塾大学と並ぶほどの難易度であった津田塾大学も、現在では偏差値50ほどと人気が落ちています。

なぜ、女子医科大学は「女性のみ」にこだわるのか。今回は女子医大の現役学生に取材を行い、「女子だけだからこそ生まれる安心感」や、「女性ならではのキャリアに寄り添った配慮」など、女性目線での魅力や大学受験の様子に迫ります。

プロフィール

河野さん
東京女子医科大学2年生
中部地方の中高一貫校出身(偏差値60-65)
自己推薦入試で合格

医師に囲まれて育つ 

ーー医学部を目指すきっかけはなんだったのでしょうか。

家庭の影響が大きかったですね。父や叔父が医師なので、小さい頃から身近な職業でした。

医学部進学については、高校1年生の時に決断しました。漠然と福祉系の仕事がいいなと考えてはいたのですが、処方など、できることの幅が広いことが医師にしかない魅力だと考えました。

高校1年生のときは信州大学が第一志望で、可能性を増やすために推薦と一般の両狙いのつもりでした。実際に、高校2年の夏までは成績は悪くなくて、信州・富山・新潟大学はA判定やB判定が取れていました。

情報がない中での受験対策

ーー信州大学を目指していたのに、最終的に私立の医学部を選んだきっかけを教えてください

持病があり、勉強に完全に集中することができなかったんです。実際に、高校2年の冬に信州大学D判定まで落ちてしまいました。体力の面でも、高校3年の2月まで受験を続けるのは厳しいな、と思って受験が12月という早期に終わる女子医大は魅力的でした

ーー受験にあたって困ったことはありますか

まず、そもそもどこを受けていいのかわからなかったです。
地方の学校なので、首都圏の私立の医学部に行く先輩や同級生や、先生たちの指導のノウハウも少ないんです。都会の高校とかだったら、先生がおすすめの大学を教えてくれたりするのではないでしょうか。

加えて、どうやって対策すればいいのかもわからないんです。公開されていない過去問があったりして、自分ひとりで調べるのでは限界がある。だから、地方の高校や、過去に合格者のいない高校ではとても不利なんじゃないかな、と思います。

私立の医学部用の予備校は地元にないので、週末は東京の予備校(富士学院)まで通っていました。本当に朝めっちゃ早く起きて、夜遅くに帰ってくるんです。予備校では学力テスト・小論文の傾向を仕入れたり、面接・集団面接の練習をしたりしていました。

ーー具体的な対策について教えてください

面接対策が1番大事なんです。特に女子医科大学は特殊な学校なので、歴史や理念がわかっているかや、貴賓のある振る舞いができるかをみられていました。
具体的には以下のような事項が問われます。

・初代学長の名前、出身地
・創立年
・建学の精神、理念

こういった事項は、やはり事前の情報がないと難しいと思います。
受験する子がみんな初代学長の名前や創立年を覚える、というのは珍しいですよね。
みだしなみについても、受験生の一挙手一投足を観察して、たくさんメモをとっている面接官がいたんです。歩き方や髪型、服装、靴のかかとを踏んだあとがないかまで確認していて、震えました笑。

女性ならではの医学部受験

ーー他の併願校ではなく女子医科大学を第一志望にした理由はなんだったのでしょうか。

体調面で早く受験が終わることが1番でした。また、女性としてのキャリア(妊娠、出産)を遅らせないため、現役で進める難易度の大学を目指したんです。地域枠も考えましたが、6年も先の勤務地を確定させる勇気はありませんでした。

他には、女の子の人数が多いというのは大きかったです。
共学の場合だと学部100人中で女子は20人くらいですよね。そうするとだいたい3,4グループになると思うんですが、何か揉め事が起こったらかなり気を遣うな、と想定していました。

だから、30%以上は女子がいた方がいいかなと考えていて、女子医科大学ではその心配はありませんでした。
加えて、大学では、友人や先輩後輩など男女関係での揉め事というのも多いと聞いていたので、そういったリスクもありませんし。

ーー実際に入られてどうでしょうか

いろんな人に寛容で、かつ面倒見が良い印象です。実際に、30代の再受験の方、体が弱い方、子供がいる方もいます。

普段からも、生徒に対して教員の数が多かったり、再試にかかると面談をしてくれたりとバックアップも手厚いです。例えば、授業に赤ちゃんを連れてきてもいいんです笑。妊娠中や体調が優れない学生については試験日程をずらして対応などもしていました。

単純な手厚さに加えて、女性ならではの悩みにも対応してくれる素敵な大学です。

ーー今後について教えてください

緩和ケアについて興味があり、学生のうちは医学部の勉強以外にボランティアにも積極的に参加していきたいです。
また、部活動にも力を入れて、体力をつけられるように頑張りたいです。

まとめ

地方からの受験で情報格差に苦しんだ河野さん。私立の医学部の受験には情報で大きな不利を取らない工夫が求められます。河野さん自身も「学校の先生や東京の予備校を頼ることが大事」と強調します。

また、女子医科大学ならではの「女性に優しい環境」についても語っていただきました。体調や妊娠・出産といった女性特有のライフイベントに合わせて試験日程を調整してくれたり、授業に赤ちゃんを連れて参加できたりと、柔軟なサポート体制が整っています。さらに、女子の学生数が多いため、人間関係の不安や男女間のトラブルを避けられる点も安心材料です。

単なる学習支援の手厚さだけでなく、女性ならではの悩みやライフステージを理解し寄り添う制度・文化があるのは大きな魅力です。医学部志望の女子高校生は、現実的な進路として検討してみてはいかがでしょうか?