最新の大学入試は、かつてないほど多様化しています。

 例えば、2026年6月に「ある大学入試のニュース」が受験関係者の間で大きな話題となりました。獨協大学(埼玉県草加市)が、2027年度入試(2027年2月1日実施)から、夕方の時間帯に試験を行う「イブニング入試」を新規導入すると発表したのです。「日本の大学入試にタイパ革命」とも報じられ、時事通信をはじめ全国紙・地方紙が一斉に取り上げました。「大学受験は朝にある」というイメージが強かった今までの常識を覆すこの入試形式に、多くの入試関係者が注目しています。

 本記事では、このイブニング入試を含め、未来図編集部が注目する3つの新方式──「夕方開始の一般入試」「本の紹介で勝負する推薦入試」「図書館や実験室にこもる総合型選抜」を順にご紹介します。「自分に合った入試があるかもしれない」というヒントを、ぜひ受け取ってください。

1. 獨協大学「イブニング入試」

 最初は、冒頭でもお話ししたイブニング入試をご紹介します。

 まず前提として、毎年2月1日は、早慶上智やGMARCHをはじめ、多くの私立大学の入試が重なる「入試激戦日」のひとつとして知られています。各大学が朝から夕方にかけて試験を実施するため、受験生は「どの1校を選ぶか」という難しい判断を迫られてきました。とくに地方在住の受験生にとっては、ホテルを取り、移動費をかけて上京しても、結局はたった1校しか受けられない、という構造的な悩みがありました。

 獨協大学が打ち出した「イブニング入試」は、こうした受験生の負担と、「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する近年の動向に正面から応えるかたちで設計された、画期的な新制度です。獨協大学は公式リリースのなかでこの入試を「日本の大学入試にタイパ革命を起こす」と表現しており、昼間に他大学を受験したあと、夕方から獨協大学を受験する──そんな「W受験」を当たり前にする入試として、にわかに注目を集めています。

基本データ

区分

内容

種別

一般選抜(2027年度新設)

試験日

2027年2月1日(月)夕方

試験科目

共通テスト「英語」+本学受験「選択科目」(国語・地理歴史・公民・数学から1科目)

試験会場

全国13会場(札幌/仙台/新潟/水戸/宇都宮/高崎/千葉/新宿/東京/長野/名古屋(新設)/福岡/本学(草加))

検定料

1学科 20,000円/2学科目 +10,000円/3学科目 +0円/4学科目以降 +5,000円ずつ(併願数に制限なし)

試験当日のタイムスケジュール

時間

全学科統一前期

イブニング入試

集合

14:40

16:50

1時限目(15:00-16:00)

英語

2時限目(17:10-18:10)

選択科目(国語・地歴・公民・数学)

選択科目(国語・地歴・公民・数学)

 同日の「全学科統一前期」と併願する場合、2時限目(17:10-18:10)の選択科目試験を1回受けるだけで、両方の判定に使われる仕組みです。つまり、獨協大学を第一志望にする受験生にとっては、午後の3時間あまりで2方式分の合否チャンスを掴むことができる、極めて効率的な設計になっています。

大学が掲げる3つの導入意図

 獨協大学は公式リリースで、本制度の意図を以下の3点に整理しています。

  1. 2月1日W受験で受験機会を創出──昼に他大学を受験して、夕方から獨協大学を受験するという新しい受験スタイルを可能にします。
  2. 受験機会の最大化と移動・宿泊費の削減──「これまでにない画期的なタイムスケジュール」を選択できることで、入試激戦日でも諦めずに挑戦できる環境を整えるとしています。地方受験生の滞在日数短縮、保護者の経済的負担軽減にもつながるという狙いです。
  3. 会場戦略:好アクセス会場の全国13会場展開──東京駅直結の「東京会場」や「新宿会場」、そして2027年度より新設される「名古屋会場」など、移動の負担を抑えられる会場を全国に整備しています。

こんな「W受験」が想定できる

 それでは、実際にイブニング入試はどのように活用できるのでしょうか。獨協大学公式が想定するパターンを軸に、いくつかの具体例を挙げてみます。

  • 【獨協を第一志望にする受験生】午後イチで全学科統一前期 → そのままイブニングへ
    最も公式が推している王道パターンです。同一会場・同一受験生で、選択科目の1回の試験が2方式の判定に使われるため、移動ゼロ・受験負担最小で2方式分の合否チャンスを得られます。獨協大学を本命に据えるなら、まず検討したい組み合わせです。
  • 【首都圏受験生】午前に他大学を受験 → 午後にイブニング会場へ移動
    2月1日午前中に試験が終わる他大学を受けたあと、新宿会場や東京会場(東京駅直結)に移動して16:50集合に間に合わせる、というパターンです。獨協大学は「昼間に別の大学を受験して、夕方から獨協大学を受験可能」と明示しており、首都圏で会場の選択肢が多いことが強みになります。
  • 【地方受験生】地元会場でイブニングだけ受けて日帰り
    札幌・仙台・新潟・名古屋・福岡などの地方会場でイブニングを受験すれば、宿泊不要で日帰り受験が可能になります。これまで「上京して1日1校しか受けられない」という制約に縛られていた地方受験生にとっては、コスト面・体力面で大きな選択肢の広がりとなります。
  • 【共通テスト利用と組み合わせ】昼間に共テ利用入試で他大学を狙う → 夕方から獨協で勝負
    共通テスト利用入試は当日試験がないため、2月1日の昼間を他大学の個別試験に充てたうえで、夕方から獨協のイブニングに挑む、という組み合わせも可能です。

 なお、他大学とのW受験を狙う場合は、相手校の試験終了時刻と、その会場から獨協のイブニング会場までの移動時間を必ず事前に確認することをおすすめします。16:50集合という時間設定は余裕があるように見えますが、入試激戦日の2月1日は交通機関の混雑も想定されるため、早めの移動計画が安心です。

 こんな受験生におすすめ:2月1日の入試激戦日に、第一志望校とのW受験を諦めたくない受験生/地方から上京する負担を軽くしたい受験生/獨協大学を第一志望に据え、1日で複数方式に挑みたい受験生におすすめです。

出典

2. 筑波大学「ビブリオバトル方式」推薦入試

 次に紹介するのは、筑波大学 情報学群 知識情報・図書館学類の推薦入試(ビブリオバトル方式)です。2019年度入試から導入されているこの方式は、受験生が自分で選んだ1冊の本について語り合うという、まさに唯一無二の年内入試として知られています。

データ

区分

推薦入試(年内入試)

実施学類

情報学群 知識情報・図書館学類

導入年度

2019年度入試から

選抜要素

ビブリオバトル方式の面接/小論文/提出書類等を総合判定

ビブリオバトルとは?

 そもそもビブリオバトルとは、「人を通して本を知る。本を通して人を知る」をキャッチコピーに全国へ広がっている、本の紹介コミュニケーションゲームです。一般的な面接と異なり、自分の選んだ本で試験に臨めるため、事前準備の手応えがそのまま試験に活きるのが特徴です。

試験の流れ

  1. 受験生は事前に「自分が面白いと思った本」を選び、5分間の紹介を準備します。
  2. 試験当日、5人前後のグループで試験室へ入ります。
  3. 1人ずつ5分間で本を紹介します(メモ等の持ち込みは不可)。
  4. 受験生同士で2〜3分のディスカッションを行います。
  5. 全員終了後、「どの本が一番読みたくなったか?」を投票し、チャンプ本が決まります。

 なお、チャンプ本に選ばれることと面接試験の得点は無関係です。あくまで紹介とディスカッションの質が評価対象となります。本の種類は自由で(公序良俗に反しないもの)、電子書籍も認められています。

評価される3つのポイント

  • その本を読むべき理由を、論理的かつ説得力をもって説明しているか。
  • 判断に役立つ質問がきちんとできているか。
  • 質問に対して的確に回答するなど、コミュニケーション能力を持っているか。

こんな受験生におすすめ:読書を通じて考えるのが好きな人、自分の選んだ土俵で力を発揮したい人におすすめです。

出典:筑波大学 情報学群 知識情報・図書館学類 推薦入試(ビブリオバトル方式)
https://klis.tsukuba.ac.jp/admission/biblio_battle.html


3. お茶の水女子大学「新フンボルト入試」

 お茶の水女子大学が2017年度入試から実施している総合型選抜「新フンボルト入試」です。文系志願者は図書館に6時間こもり、理系志願者は実験室で研究に取り組む、本格派の年内入試として知られています。

基本データ

区分

総合型選抜(年内入試)

導入年度

2017年度入試から

名称の由来

近代大学の祖、ヴィルヘルム・フォン・フンボルト。「理系は実験室での実験、文系は図書館でのゼミナールから学問の真理が生まれる」という理念に基づきます

倍率の目安

文系学科で約10倍(出願条件は比較的ゆるやか)

選抜のしくみ

選抜は、2段階の選考で構成されています。

第1次選考

  • 文系志願者:「プレゼミナール」(2026年9月26日土曜実施)で大学の授業を実際に体験し、レポート等を提出します。
  • 理系志願者:プレゼミナールは必須ではなく、出願書類による審査が行われます。

第2次選考

  • 文系学科「図書館入試」──昼食や休憩を挟みながら、6時間も大学の図書館にこもり、与えられたテーマについて小論文を作成します。
  • 理系学科「実験室入試」──自主研究の発表や、実験を行って結果をまとめ考察するなど、学科ごとに内容が異なります。たとえば、数学科は口述試験、物理学科は面接、化学科は実験+考察といった具合です。

評価のポイント

 単なる知識量の多寡ではなく、「その知識をいかに応用できるか」が問われます。論理的思考力、探究力、コミュニケーション能力、独創性など、従来型のペーパーテストでは測りにくい潜在的な力(ポテンシャル)を、丁寧に見極めようとする入試なのです。

こんな受験生におすすめ:ペーパーテストでは測れない潜在力を試したい人、長時間集中して探究するのが好きな人におすすめです。

出典:お茶の水女子大学 総合型選抜(新フンボルト入試)
https://www.ao.ocha.ac.jp/ao/index.html


3つの新方式 一覧比較

大学

入試方式

区分

主な特徴

こんな人におすすめ

獨協大学

イブニング入試

一般選抜(2027年新設)

夕方開始でW受験可能、全国13会場

タイパ重視・地方からの受験生

筑波大学 知識情報・図書館学類

推薦入試(ビブリオバトル方式)

年内入試(推薦)

自分の選んだ本で5分間プレゼン

読書好き・発表が得意な人

お茶の水女子大学

新フンボルト入試

総合型選抜(年内入試)

図書館に6時間こもる/実験室で考察

長時間の探究を楽しめる人


まとめ──「自分の強み」を活かす入試を選ぶ時代へ

 今回ご紹介した3つの事例に共通しているのは、「受験生の多様な強みを評価しようとする大学側の姿勢」です。

 「学力テストだけ」「面接だけ」という従来の枠を超え、生活スタイル(タイパ志向)、得意分野(読書)、深い思考力(長時間の探究)など、それぞれの個性が活きる入試が次々と登場しています。これからの受験戦略の鍵は、自分の強みを見つめ直し、それを最大限活かせる入試方式を探すこと。学力一本で勝負するだけが、大学入試ではないのです。

 未来図では、今後も新しい入試方式の情報を継続的にお届けしてまいります。あなたの可能性を広げる一手として、ぜひこれらの選抜方式にも目を向けてみてください。