春から大学生! ついに始まる新生活に胸を躍らせる方も多いのでは?
地元から出て一人暮らしを始める方も少なくないはず。初めての自活に対して、期待と不安で胸がいっぱいでしょう。

賃貸物件を探すとき、確認すべきといわれるのが“水回り”。

PRタイムズの調査でも、賃貸選びで最も重視する条件の首位は「バス・トイレ別」だそうです。
私自身も上京時の部屋探しでは、「ユニットバスはNG!共用トイレはありえない!」と母に熱弁しました。

実際、不動産サイトでも、「バス・トイレ別」は目玉のように大きく表示されますし、水回りとは日々の生活の快適さを左右する重要な要素なのでしょう。

しかし、家賃の高騰が続く都市部で生活費を抑えたいなら、条件の妥協は必須。完全な一人暮らしを諦め、公立の学生寮を選ぶ学生も少なくありません。特に東京ではワンルームでも月8〜10万円を超える物件は珍しくなく、「好立地・食事付き・家賃安め」と好条件の学生寮は合理的な選択肢に映ります。

ただし、そうした寮の多くは、トイレや風呂が共用。そして、水回りに大きな落とし穴が隠されている場合も少なくない。写真では見えない“共用トイレのリアル”とはどのようなものなのでしょうか。

今回は、都内の公立学生寮に住む現役大学生2名にお話を伺いました。

 

共用トイレのリアル

今回お話を伺ったのは、都内の公立寮に住む前田さん(仮名・20代男性)と田中さん(仮名・20代女性)のお二人。二人は同じ系列の男子寮と女子寮にそれぞれ住んでいます。

前田さんの住む男子寮はかなり歴史があり、よく言えば伝統的ですが、悪く言えば古びた設備が特徴的。中でもトイレはひどい有様だそうで……。

「窓が通年開けっ放しで、いつも虫がいます。特にカナブンが多いですね。夏はジメっと暑くて、冬は風が吹き込んで寒い。過ごしやすい環境とは言えません。

床も経年劣化が激しく、ひびが入ったり剥がれたり……しかも、いつも濡れていて、こびりついた砂やほこりのせいで茶色く変色しています。ハンドペーパーやハンドドライヤーがなく、タオルを出すのをめんどうくさがって、手洗い後に水を払い落とす学生が多いんです。

フロアによってはにおいが気になるところも……。掃除は2週間に1回、当番制で寮生がやっていますが、それだけでは到底衛生環境を整えられません」

前田さんの住む寮の男子トイレは、長らく改築が行われていません。設備の経年劣化と、利用者の雑な取扱いによってどんどん汚くなっていき、もはや止められない負のスパイラルに入ってしまいました。

 

一方、同じ運営元による併設の女子寮では、大きく様子が異なるようでした。

「女子寮には各フロアに3つの個室が設置されています。基本的には清潔で使いやすいですよ。たまににおいや汚れが気になることもありますが、週2回の掃除でほぼ解消されます。前田さんが話しているような虫や床の汚れはあまり気にならないですね。」

女子寮は男子寮よりも後に建設されたこともあり、比較的設備も新しく、利用者の衛生意識も高いようで、男子トイレのような惨状にはなっていないそう。しかし、女性ならではの不便さもあるといいます。

サニタリーボックスがないんです。生理用品の廃棄に困り、同じ悩みを持つ寮生たちで設置要望を出していたのですが、結局”設置の必要はない”と一蹴されてしまい……。

最初のころは処分方法がわからなくて本当に困りました。自室まで持ち帰るのも誰かと鉢合わせたら恥ずかしいし、黒のビニール袋を各個室に一つずつ置いてくれればそれでいいのですが……。

また、音姫も設置されておらず、正直使用がためらわれる瞬間もあります。

各フロア8名住んでいるのですが、トイレが3つずつあるので全部埋まってしまうことはありません。しかし、誰かと利用時間が被ることは結構ある。音姫を使えれば、さほど気にせず利用できるシーンも増えるのでしょうが……。

私自身、誰かがトイレ方面に向かうのを目撃したら、どれほど切羽詰まっていても一度自室に戻ります。廊下に面している共用トイレのドアが”ガチャン”と閉まる音がして、さらに時間をおいてから、タイミングを見計らってようやく部屋を出る。

先客がいた時は、仕方ないのでそのまま自分もトイレに入りますが、出るときはお互い鉢合わせないように、やはり頃合いを見計らって退室します。

“先客が手を洗い終わって、扉が閉まる音を確認してから個室を出る”。寮内における暗黙の了解です。」

 

そして、男女ともに口をそろえて不便だと語ったのは”体調不良のとき”でした。

「私の部屋は共用トイレから2番目に遠い部屋なので、下痢や腹痛のときにトイレまでいくのが特にしんどくて。先述の”ルール”を守りつつなので、緊急時は気が気ではない。

胃腸炎やインフルエンザなど感染症にかかると最悪で、他の寮生へ配慮しなくてはならない。『1番端っこのトイレを使います』と宣言したり、使うたびに消毒を徹底したり……。体が辛いのに気を遣い続けなければいけなくて、本当に余裕がなかった。」(田中さん)

「そもそも、体調が悪くて寝込んでいるようなときに、わざわざ排泄のために部屋の外に出なければいけないのが大変。個室にトイレが設置されていれば……と何度後悔したことか分かりません。」(前田さん)

一人暮らしでの体調不良時は、体力的にはもちろん、精神的にキツい。誰かの助けが必要なほど弱っている時に、他者への気遣いなんてできるはずもありません。

 

しかも、トイレから部屋が近いことは一見”あたり部屋”のように感じますが、思わぬデメリットを語ってくれました。

「僕の部屋は共用トイレの目の前にあるので、確かにアクセスは抜群です。実際入居前の部屋選びでも、近いほうが何かと便利だと思って選びましたから。当初想定していた臭いについても、意外と困ることはなく、最初は不便を感じなかったんです。

しかし、扉の開閉の音が予想外に部屋に響くんです。まさか、夜な夜なトイレの扉の開閉音に睡眠妨害されるとは思いもよらなかった。

ようやく寝られる……とウトウトしているときに、”バン!”と扉を閉める音で引き戻される。寮の壁が薄いのでどうしようもないですが、毎回”もう少し静かに閉めてくれよ”と言いたくなる気持ちを堪えています。」(前田さん) 

共用トイレは“人と環境”で決まる

また、共用部分の清掃が外部業者なのか、寮生による当番制なのかも確かめるべきポイント。田中さんと前田さんの寮では掃除当番制が採用されており、誰かが掃除してくれる気楽さの裏返しに「当番が必ず回ってくる」のも覚悟しなくてはいけません。

特に不潔さが目立つという男子トイレについては、掃除当番の仕事の甘さも原因にあるはず。自分の環境を自分で整えられないといけない責任ものしかかります。とはいえ、同じ寮に住んでいるだけの他人の糞便や、血などの体液、吐しゃ物などを処理するのは、どうしたって抵抗があるでしょう。

先ほどの前田さんのお話にもあったように、誰かと暮らす以上はどうしても我慢すべきタイミングが出てきます。その「我慢」が自分の許容内なのか否かをよく確かめるべきなのかもしれません。特に、「寮を選ぶなら必ず内見すべき」と2人は声を揃えます。

「トイレやお風呂などの水回りを実際に目で見て、"自分が汚いと感じるかどうか"を基準に判断することが大事。ウォシュレットの有無など、実家の環境に近いかどうかも確認ポイントになりますよ。館長に寮の雰囲気を聞いたり、ホームページで確認したりするのも有効ですが、”百聞は一見に如かず”ともいいます。自分の目で確かめたほうが安心できるでしょう」(田中さん)

「僕は契約後に内見しましたが、トイレの中まで確認できなかった。共用トイレなのは事前に知っていましたし、そこまで抵抗感はなかったので気にしていなかったのですが……。

あと、個人的には、案内してくださった寮生とお話しできたことが一番の収穫でした。”この人たちとなら、一緒に暮らしていける”と思えたからです。話せるタイミングがあれば積極的に話しかけるべきでしょう。」(前田さん)

共同生活の覚悟を持って

共同生活の満足度は自分の許容範囲と居住者のモラル、そして環境の掛け合わせで決まります。だからこそ、内見では単に設備を見るだけでなく、水回りの清潔感や掃除の頻度、寮全体の空気感を確認することが重要です。

可能なら、 前田さんのように実際に住んでいる寮生と話し、「この人たちと生活できるか」を検討できれば、より後悔しにくい選択へつながるでしょう。

自分の我慢できるラインと、そうでないラインの線はどこにひかれているのか?
誰しもが自分と異なる他者だからこそ、自分のセーフ/アウトラインと他人のそれらは違うはず。

逆に言えば、寮生活を経験すれば、お互いの線引きの存在を意識できる人へ成長できるかもしれません。
小さな社会に属した時に、自分がどのようにふるまうか? 他者のふるまいをどこまで許容するか?
一人暮らしをされるなら、これを機に一度考えてみてはいかがでしょうか。