学歴に異常なこだわりを持ち、他者を偏差値で判断する「学歴厨」。
今回のパックン対談は日本のSNS界隈で話題の早稲田に9浪で合格した「9浪はまい」や、毎年東大入試を受け続ける「阿修羅」など、極端な例を紹介しながら、日米の学歴観の違いに迫っていきます。
アメリカでは大学の総合評価が重視される一方、日本では偏差値序列が社会の序列に直結。さらに就職時の「学歴フィルター」が学歴社会を強化し、社会的な階層を決めていることについてもパックンの本音を聞きました。
さらには学歴クラスターは就職クラスターへと進化し、会社の序列まで偏差値感覚で判断される実態があるといいます。高学歴の親が直面する子育てのジレンマや、学歴社会の是正への展望まで、ハーバード卒のパックンと学歴研究家の伊藤滉一郎氏が本音で語り合いました。
.png)
学歴厨とは何か──名門大学に固執する人々
パックン: 今回のテーマは「日米の学歴厨・学歴クラスター」。正直、僕にはこの「学歴クラスター」という言葉がピンと来ないんですが…伊藤さん、どういう意味ですか?
伊藤: まず「学歴厨」というネットスラングがあります。自分の出身大学や合格した大学に極端なまでのこだわりを持つ人たちのことです。学歴をやたらと誇示したり、自分の大学より偏差値が低い大学の人を見下したりする。例えば「自分は東大出身だから、東大未満の大学出身者なんて皆バカだ」と公言して憚らないような人が典型的な“学歴厨”ですね。学歴至上主義者と言い換えてもいいでしょう。
伊藤: 典型的な学歴厨の特徴としては、そうですね…(1)自分の出身大学や偏差値に異常にこだわる、(2)他人を大学名や偏差値で判断しがち、(3)学歴の高低で人の価値を決めつける——といったところでしょうか。
パックン: なるほど…。確かにSNSでもそういう発言を見かけますね。
パックン: 実際、職場なんかでも「お前、◯◯大学かよ」みたいに露骨に見下す人っていますよね。
伊藤: いますいます(笑)。他人を学歴で判断して「あいつは◯◯大卒のくせに使えない」とか「△△大学出だからしょうがない」なんて、何でも学歴のせいにしてしまうタイプです。
パックン: でも、それって世界共通の現象じゃないですか? 名門大学を出た人はその学歴を誇りに感じるのは当然だし、自分よりランクの低い学校の人をどこか見下してしまう人も…そういう態度は日本に限った話ではない気がします。
アメリカでは大学の卒業時に、校章入りの大きな指輪——いわゆる卒業リングを買う文化があって、それをはめて自慢する人もいます。5万円とかするから、高いんですよ。これを付けている人は「学歴クラスター」ですかね(笑)。
食事の席でわざと指輪でグラスをチリンと鳴らして、「それ何の指輪?」なんて聞かれたら、「ああ、ハーバード大学の卒業記念リングで…」なんて具合に自分から学歴マウントを取るんですよ(笑)。
伊藤: 面白いですね(笑)。そういう人はアメリカにもいると。
パックン: 逆に、「ハーバード卒」とか自分から言うのは嫌味に聞こえるからと、あえて学歴を明かさない人も多いですけどね。変な空気になってしまうから、ハーバード卒だという発言を「HーBomb(ハーバード爆弾の意味)」というスラングもあります。
ですので、本当はハーバード卒でも、「大学はどこ?」と聞かれて「ボストンの大学です」とボカしたり。言われたほうも「もしかして…?」と察しますよね(笑)。
とはいえ、僕自身は日本では「ハーバード卒」という肩書きにだいぶ助けられてますけどね(苦笑)。
伊藤: 確かにパックンさんは“高学歴タレント”として知られてますもんね(笑)。
パックン: ありがたいような、ちょっと複雑なような気持ちですけどね(笑)。アメリカには学歴を誇示する人もいれば、逆に学歴を隠そうとする人もいる——本当に様々ですね。

SNSで沸騰する“学歴マウント”合戦
伊藤: 実は今、日本のSNS上には学歴偏重の言動で注目を集めている人たちが何人かいます。過激な学歴マウント発言が飛び出して炎上することもあります。
この記事ではそんな代表的な人物を、パックンに4人ほど紹介します。
パックン: そんな“学歴厨”が4人もいるんですか?
伊藤: ええ。まず一人目は、9浪の念願かなって早稲田大学に合格した「9浪はまい」さんです。高校時代の成績は平凡で、偏差値40程度の高校に通っていました。当然その高校から早稲田に入るのは極めて異例です。
パックン: 高校卒業後はいったん就職したんですか?
伊藤: いえ、実は一度別の大学に進学しています。卒業後、一度は就職して営業マンとして働きながら、独学で受験勉強を続けたそうです。そして9浪、つまり9年越しで、30歳前後にようやく早稲田大学に合格しました。
パックン: 9回も受験に挑戦して、30歳で合格ですか…!
伊藤: 本当にすごい執念ですよね。その努力の末に念願の早稲田生になった。しかし卒業後は就職せず、自身の浪人経験を武器にフリーの“浪人ライター”として活動しています。
アメリカでも学歴に関係ない仕事をするんだけれども、コンプレックスの解消のためだけに、大人になって大学に入りなおすような人はいるんですか?
パックン: アメリカでも、大人になってから学歴コンプレックスを解消するために大学に入り直す人はいますよ。実は僕が大学2年生時に住んでいた寮にも、当時42歳の同級生が一人いたんです。僕は飲みませんでしたが、未成年だった他の寮生たちに代わってお酒を買ってきてくれる、頼れる“おじさん学生”だったと聞いてます(笑)。
伊藤: 年齢を問わず学び直す人がいるんですね。
パックン: そうですね。ただ学歴が人生に与える影響という点では、やはり日本のほうが極端かもしれません。

新卒一括採用が生む学歴フィルター
パックン: アメリカも、もちろん学歴社会ですけど、日本ほどではない気がします。
早稲田に入っただけで仕事ができるとか、東大卒だからって就職できるわけでもなく、僕のハーバードの同級生で困ってる人もいる。いい仕事が見つからないと。
伊藤: そうですね。日本では特に新卒一括採用という仕組みがあって、就職の際にまず学歴でふるいにかける企業が多い。いわゆる“学歴フィルター”ですね。
パックン: 学歴フィルターは、日本で学歴社会が進む理由ですよね、ジョブ型ではなく、一般職・総合職などで学歴で採りますもんね。
伊藤: 例えば有名企業だと、採用エントリーの段階で特定ランク以上の大学の学生しか受け付けない、なんてことがあると聞きます。○○大学以上じゃないと書類選考しない、といった具合に。
パックン: 学歴さえ良ければ書類審査は通過できる、と。
伊藤: はい。だから皆、何年経っても自分の大学という肩書きを武器にしてチャンスを得ようと必死になるわけです。
パックン: 就活で学歴ばかり重視する風潮は僕も良くないと思います。学歴だけで採用が決まるわけではないにせよ、最初の門でそれが強く注視してしまうのは問題ですよね。
伊藤: おっしゃる通りです。学歴だけで人を判断してしまうのは危険だし、もったいない。ただ、企業側にも大量の応募者を効率よく絞り込むために学歴で足切りする事情はあるのかもしれませんが、だからといって学歴だけで判断するのは乱暴ですよね。
偏差値序列 vs 総合評価:日米の学歴観の違い
パックン: 日本では、大学の偏差値ヒエラルキーが誰の目にも明確で、それがそのまま社会的な序列にもなっていますよね。例えば国立なら東大が頂点で、京大、そして一橋・東工大(現東京科学大学)…私立なら早稲田・慶應がトップクラスというように、大学名で人の評価が決まってしまう。
伊藤: 確かに日本は偏差値偏重ですね。上から下まで偏差値70から40までありますから。 で上に行くほど偉いって学歴厨はみんな思ってますし、すごく単純な世界なんです。
パックン:一方アメリカの大学入試はテストの点数一発で合否が決まるわけではなく、エッセイや課外活動、推薦状といった要素も総合的に考慮される。
パックン: そう。SATみたいな共通テストの点数も重要ですが、結局それだけじゃダメで、課外実績や人柄を見る面接の結果まで含めて総合点で判断される。だから「どの大学に入れたか=その人の能力の序列」とは一概に言えないんです。
伊藤: アメリカのトップ大学は確かに皆テストでも満点近く取るような優秀な学生ばかりですが、それでも合否には学力以外の評価軸が大きいですもんね。日本みたいに偏差値だけで序列が固定されるのとは大違いです。
パックン: そこが日米の大きな違いですね。日本のように大学名が人生を左右する社会って、世界的に見ても特殊かもしれません。アメリカは偏差値もないので、トップ大学はみんな統一試験で、合格ラインがみんな同じなので、有名大学同士の序列はないんですよね。
トップ10大学はみんな分かるかもしれませんが、どの大学が一番いいという議論に正解はないです。

4浪4留の異色YouTuber・藤井四段
パックン: 二人目の藤井四段というのは、どんな人ですか?
伊藤: 二人目は「将棋のできない藤井四段」というハンドルネームの若者です。彼はお父さんもお兄さんもお医者さんという家庭で、自身も医学部を目指したのですが、結局大学受験は4浪しても医学部には合格できませんでした。それで仕方なく横浜国立大学の理工学部に進学したものの、やりたい分野と違ったのか在学中に4年も留年してしまったんです。合計で8年近くも高校卒業後にかかっている計算ですね。
パックン: 4浪4留…すごい経歴ですね(苦笑)。でもこれって学歴クラスターにあたるんですか?。
伊藤: 本人も自分の挫折経験を自虐ネタにしていて、自ら「4浪4留インフルエンサー」を名乗り、YouTubeなどで発信しています。自分の失敗談をコミカルに語るスタイルで人気を集めているようです。
パックン: 浪人も留年も、普通どちらも避けたいことですからね。それを両方経験してネタにしてしまうんだからすごい。
伊藤: 彼自身は学歴至上主義というわけではないと思います。ただ、SNS上の学歴クラスター界隈では「あんなすごい経歴の人がいるぞ」と話題になっていて、一種の有名人ですね。極端なケースとして面白がられている存在です。
東大入学を“ゲーム化”する男、「阿修羅」
パックン: 三人目の「阿修羅」というのは何者なんでしょう?
伊藤: 三人目は「阿修羅」という異名で呼ばれる人物です。彼は5浪して東京大学の理科三類(医学部系)に合格したんですが、なんと東大入学後も毎年東大入試を受け続けているんです。
パックン: 毎年受験!? それはすごい…というか親御さんが寛大だね。
伊藤: ですよね(笑)。彼の場合、医者になりたくて東大理Ⅲに行ったわけではなく、東大入試そのものをゲームのように楽しんでしまっているんですよ。一度日本最高峰の入試に合格したのに、「受験って楽しいから」という理由で翌年もまた東大を受験し、そしてまた受かってしまう(笑)。親御さんも呆れるどころか、見守っているようです。
パックン: なんという…!東大理IIIにせっかく入ったのに、医学の勉強そっちのけで毎年入試に挑み続けていると。
でもこのパターンも、学歴クラスターではなく、一匹狼という感じですね。
伊藤: はい。大学の講義より受験勉強の方が好きだというのですから驚きですよね。今では自分で塾を開いたり家庭教師をしたりして生活しつつ、彼は現在30歳になりますが、まだ毎年のように東大入試に挑戦しているとか。常識では考えられないタイプですが、そんな人まで出てくるのが日本の受験文化の奥深さというか…良くも悪くもすごいですよね。
ちなみにアメリカにはこんな方いらっしゃらないですよね?
パックン:意外とそんなこともなくて、永遠に大学院から大学院にはしごをする人とか、学位のコレクターとか結構いるんですよ。20以上の修士号も含めて30もの学位を獲得しているおじさんもいるようですし。
受験が趣味?“27浪”サラリーマンの執念
パックン: 四人目の「えぐざま」さんですか。どんな経歴の持ち主なんでしょう?
伊藤: 四人目は通称「27浪さん」という猛者です。もうすぐ50歳になる会社員の方ですが、日本中の大学受験を“趣味”として毎年受け続けているんですよ。
パックン: 毎年受験を…!? それはもう受験生の域を超えてますね(笑)。
伊藤: でしょう(笑)。この方は会社勤めの傍ら、趣味でいろんな大学を受験しては、その経験を分析してブログで発信しています。なんと昨年は、27年目の挑戦で慶應義塾大学に合格したそうです。
パックン: へえ…本当に受験が好きなんですね。今回ご紹介いただいのは、学歴社会の問題点という感じではないですね。趣味の世界ですね。
伊藤: そうですね。実際、えぐざまさんもSNSの学歴クラスター界隈では伝説的な存在ですが、フォロワー数は5,000人程度と決して多くはありません。あくまで一部コミュニティ内での有名人という位置づけでしょう。でも27年も受験を続ける社会人なんて他に聞いたことがないですし、まさに“日本一の受験マニア”でしょうね。
パックン: ものすごい世界ですね…。ここまで極端な例はさすがに稀でしょうけど、日本では学歴に執着する人がこれだけ現れてしまう土壌があるということですよね。
伊藤: ええ、日本の受験制度や就職慣行が、知らず知らずのうちに「学歴さえ良ければ幸せになれる」という幻想を植え付けている面はあると思います。
パックン: こうしてお話を伺うと、皆さん本当に並外れた執念ですね…。ある意味感心しちゃいます。
伊藤: そうですね(笑)。よくそこまで頑張れるなと驚きます。別のことにその情熱を向ければとも思ってしまいますが。
総理大臣も「学歴厨化」する日本
伊藤: そして最後に紹介したいのは、宮澤喜一さんです。第78代の内閣総理大臣ですね。留学経験もないのに非常に英語が堪能で、数々の英語堪能神話が残っています。
同僚や記者に最終学歴を聞きまくり、「ほう、近頃じゃあ法学部じゃなくても東大って言うんですか」とコメントしていたとか...
それぐらい、やっぱりこの偏差値意識というのが、国の特にエリート層にも浸透してしまっていることを象徴している感じがします。
パックン: 宮澤さんはもちろん知っています、孫のエマさんは僕の友人です。でもミュージカル女優になっていますし、学歴主義は孫までは浸透していなかったのかな(笑)。
伊藤: 一概には言えませんが、学歴コンプレックスが強い人ほど学歴に執着しやすい傾向はあるかもしれませんね。自分が思うような学歴を得られなかった反動で、余計に学歴を気にしてしまうというか。
パックン: ああ、なるほど。逆に自分が高学歴であることを誇りに思うあまり他人を見下すパターンと、両極端があるわけですね。
伊藤: そうですね。前者はコンプレックス型、後者はエリート意識過剰型とでも言いましょうか(笑)。いずれにせよ、学歴に過度に囚われている点では同じですね。
パックン: ここまで極端な例になると、さすがに周囲もドン引きしちゃいそうですね(笑)。
伊藤: そうですね…。SNSでもネタとして面白がられる反面、「そこまでやるのはどうなんだ」という冷ややかな声もあります。学歴に固執しすぎるのはやっぱり行き過ぎだ、という批判も出ますね。
パックン: 行き過ぎは良くない。でも程度の差こそあれ、多かれ少なかれ日本人は学歴に囚われがちな部分がありますよね。
考えてみると、僕が人生で共に仕事をし続けている相方の「マックン」は、最終学歴が高卒です。でも、だから学歴がどうとかは、もちろん考えたこともないですからね。
企業の採用と学歴フィルターの現実
パックン: 日本の名門企業の採用もその理屈で成り立っていますよね。18歳までにどれだけ努力できてきたかという。
伊藤: そうです。日本はジョブ型ではなくポテンシャル採用なので、東大のような偏差値の高い大学の学生の方が計画的に努力でき、会社員としても活躍できる可能性が高いという理由で採用しているわけです。
パックン: 企業の採用試験では、大学の成績は見るのですか?大学名だけを見るのでしょうか?
伊藤: 実はほとんど大学名だけです。
パックン:僕は「18歳で決まるってどういうこと?」と思うんですよ。大学に入ってから何をしたのか、あるいは大学に入らなくても22歳までに何をしてきたのか、どういう経験を積んできたのかが重要なはず。例えば名門ではない大学で4年間を有意義に使った人や、大学に入らずに起業したり世界を旅したりした人も、同じスタートラインに立てるべきだと思います。
でも、それが実現しないのが日本の現状ですね。
伊藤: はい。私自身、以前銀行員をしていた経験がありますが、そこは完全な学歴社会でした。採用人数が大学ごとに決まっているんです。東大は何十人、早稲田は何人、日大は5人と決まっていて、これは変えられない。日大から優秀な学生が10人いても、5人以上は採用されないんです。
パックン: それはおかしいですね。
伊藤: これが日本の学歴フィルター、ポテンシャル採用、メンバーシップ型雇用の弊害的な側面です。ただ、エンジニアなどの領域では学生時代にどんなプログラムを書いてきたかなど、実績が分かりやすいので、IT業界などでは学歴社会が少し崩壊しつつありますね。でも商社や銀行など、ゼロから育てる業界ではまだまだ学歴が重視されています。
学歴以外の価値──多様な評価基準への期待
パックン: その辺を直していただきたいですね。学歴を自慢するのはいいけど、それは甲子園に出場したとか、コンクールで優勝したとか、何か記録を持っているといった実績と同じです。問題は学歴を重視しすぎて、それ以外の要素に目を向けない社会や採用のあり方だと思います。
伊藤: 確かに。学歴以外の「クラスター」もあるでしょうか。
パックン: スポーツなら、例えばオリンピックに出場したとか、学生時代に日本一になったとか、世界選手権で入賞したとか、そういう実績は当然紹介する際に言いますよね。でもそれを「甲子園クラスター」などとは言わない。学歴も頭脳を使う社会人の土台作りの証しなので、頭脳を使う立場であれば紹介してもいいと思いますが。
伊藤: そうですね。ただ、学歴が将来的な社会的地位と結びついているからこそ、やっかみを生みやすいのかもしれません。
パックン: 多分そうでしょうね。全員が全員ではないですが、傾向としてはあると思います。
.png)
学歴クラスターから就職クラスターへ──終わらない序列化競争
伊藤: 読者やネット民の皆さんの周りにも、学歴だけが取り柄で実力のない人がいるでしょう。それが一番腹立たしいと思うんです。学歴をすぐ自慢するけど、結局何もできていない。それなのに無名大学や短大卒の優秀な人より先に出世するという現実が恨みを買うんですね。
パックン: メンバーシップもそれに左右されてしまうんですね。東大を出たというだけで、仕事ができなくても優遇される。
伊藤: そういう人はたくさんいます(笑)。面白いことに、この学歴クラスターは大学生になると今度は「就職活動のクラスター」になりがちなんです。いい大学に入った後に考えるのは、どの企業に内定をもらったかというステータスです。就職四季報に平均年収が上から掲載されているんですよね。
パックン: それも序列の一つになっているんですか?
伊藤: そうなんです。例えば専門商社より総合商社、その中でも三菱商事に行った人が偉いという価値観があります。
パックン: それも序列化されているんですね。
伊藤: はい。日本人は偏差値と同じ価値観を引きずっていて、三菱商事、伊藤忠商事、丸紅というランク付けがされています。学歴クラスターが「経歴クラスター」になり、学歴社会をそのまま引きずっているんです。
日本には「就職偏差値」という概念があります。
パックン: アメリカでは、例えばグーグルやゴールドマン・サックスの社員だと紹介されると同じような反応があるかもしれませんが、日本ほど序列意識はないでしょうね。日本は何でもランキングする傾向がありますね。
伊藤: その通りです。さらに「不動産クラスター」という段階に進むんです。どこの区のマンションがステータスが高いかといった議論までしています。

教育の未来──バランスの取れた子育てと社会の変化に向けて
パックン: 難しいですね。学歴クラスターをなくしてほしいとは思うけど、正直、自分たちは「勝ち組」ですよね。でも友達や家族のほとんどは目立った学歴ではないが、皆幸せに暮らしています。一方で、自分の子供には頑張ってほしいとも思う。人生が楽になるから。
伊藤: その矛盾が多くの高学歴の親が抱える悩みですね。自分は東大でも、子供にはいろんな選択肢を与えたいと思うけど、どうしても勉強の方向に誘導したくなってしまう。多くの親がそう感じています。
パックン: 僕は子供にはハーバードは良いところだから入れれば行ってほしいと言いつつも、「ほぼ入れない」「宝くじみたいなもの」ということも伝えています。僕はたまたま当たっただけで、どこに行っても一生懸命やれば幸せな人生が待っていると。でも、将来、子供が「ハーバード卒の親を持ったせいでコンプレックスになった」と言われるのが一番怖いんです。親としては頑張ってほしいし、宿題もチェックしますが、厳しくはしない。優しく支えながら促す。毒親との境界線を超えないように気をつけなければと思っています。
伊藤: その「強制かどうかのライン」が重要ですね。
パックン: そうです。「ハーバードが絶対」とか「アイビーリーグじゃなきゃダメ」「東大じゃなきゃダメ」とは言いたくないんです。
伊藤: 日本のXには「教育親クラスター」もいて、子供を中学受験させる親のコミュニティがあります。どこまでが適切なのか、皆さん悩んでいますね。
パックン: 甲子園を目指して頑張る野球少年がたくさんいても、行けなかったから人生終わりと思わせてしまうのはよくないですよね。自分だけの力じゃないし。
伊藤: そうですね。学歴に代わるものが見つかっていない以上、今の仕組みに乗っかるのはある程度しょうがないかもしれません。でも行き過ぎて「ここ以上じゃなきゃ絶対ダメ」というラインを決めすぎるのは問題だと思います。
パックン: ありがとうございます。親が高学歴であればあるほど、自分が享受してきた恩恵を子供にも与えたいと思うのは自然なことです。自分が辿ってきた道に誘導したくなるのも理解できます。でも、それが強制や教育虐待に発展しかねないリスクもある。常に自分を律して、その線引きを考えながら親も成長していく必要があるのではないでしょうか。
.jpg)
.png&w=3840&q=75)
.png&w=3840&q=75)



.png&w=3840&q=75)

.png&w=3840&q=75)
.png&w=3840&q=75)





.png&w=828&q=75)

.jpg&w=828&q=75)
