現在、私立高校無償化が話題になっています。自公と維新が、私立高校の就学支援金を63万円まで引き上げることを協議し始めたのです。もしこれが実現すれば、公立高校も含めて、日本の高校の授業料がほぼ完全に無償化することになります。
出典:高校授業料無償化”全国で実現か 自公と維新が週明け正式合意へ 先行する大阪では公立“閉校”危機も
これは、日本の教育業界をどのように変えうるのでしょうか?
本記事では、教育関係者への取材も踏まえて、考察してみた結果を共有させていただきたいと思います。
高校無償化に至る流れ・就学支援金制度とは?
そもそもの話、「私立高校無償化」ということで現在大きな話題になっていますが、現在でも「就学支援金制度」によって、実は私立高校に通う世帯は昔よりもかなり経済的負担が少なく高校に通うことができています。
就学支援金制度とは、高等学校などに通う生徒の授業料を軽減するために、国が授業料の一部を補助する制度です。特に、家庭の経済的負担を軽減し、すべての生徒が安心して高校教育を受けられるようにすることを目的としています。
就学支援金制度の現状
現状、年収や学校の種類に合わせて支給金額が大きく変わります。こちらをご覧ください。
学校の種類 | 年収目安 | 支給額上限(年額) |
公立高校 | 約910万円未満 | 118,800円 |
私立高校 | 約590万円未満 | 396,000円 |
私立高校 | 約590万~910万円 | 118,800円 |
このように、私立高校に通う年収約590万円未満の世帯が、一番支給金額が多くなります。例えば都内にある私立高校の平均授業料は、489,343円とのこと(※東京都生活文化スポーツ局発表「令和6年度 都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」より)なので、396,000円の支給の支給があれば年間10万円以下の負担で済みます(ちなみに東京都は令和6年からの授業料軽減助成金制度で48万円程度の助成金を受け取ることができるため、この例の場合はほぼ授業料を払わなくてもよくなります)。
2025年度以降、どう変わる?
現状でもこんなに支給があるわけですが、2025年以降もこの流れが加速します。この世帯年収による制限が取り払われ、全ての世帯で就学支援金が支給されるようになるのです。
そして2025年2月、石破首相は17日の衆院予算委員会で、私立高校に通う世帯に年間最大で39万6000円が支給されている就学支援金を、45万7000円をベースに引き上げを検討する考えを示しました。これに対し、「日本維新の会」の要求として、来年度から公立・私立共に所得制限を撤廃・私立には最大年間「63万円」を支給するというものでした。この金額は大阪の私立の授業料平均とほぼ一致するものです。
これを図で表すと、このようになります。

ここから起こり得る変化とは?
さて、これによってどのような変化が起こりうるのか?
現時点の情報だけで予想できることは限られていますが、現状考えられることとしては4つのポイントが挙げられます。
1 私立の便乗値上げ
多くの私立学校は現在、授業料が63万円以下です。それがもし最大63万円の支給があるとなった場合は、この値段まで授業料を引き上げる可能性が高くなります。この制度に便乗した値上げというわけですね。これが行われれば、私立高校ではより高い教育水準の授業が受けられるようになる可能性があります。
2 公立高校の没落
公立高校と私立高校の違いとして、今までは「学費」が挙げられました。公立は学費が安く、私立は学費が高い。だから世帯年収が低い家庭にとっては私立はお金がかかるため、公立に流れる傾向がありました。 これが私立では授業料がかからなくなることで、学費に実質的な負担がなくなると言う事態になれば、公立高校を選ぶ理由が1つ減ります。そうなると、今以上に私立が人気になり、私立高校の入学試験がより一層激化するのではないかと考えられます。
公立高校は、私立高校よりも学費が安かったからこそ、質がそこまで求められなかったという背景があります。しかしこれからは、公立高校にも私立高校と同じ質の授業が求められるようになるという可能性があります。公立高校は今後どのように生き残っていくのか、注目するべきだと考えられますね。
3 通信制高校の躍進
あまり注目されていませんが、この就学支援金制度を使って授業料が無償となれば、私立高校に通っている家庭の負担は入学費や施設利用料・制服代、交通費のみとなります。しかし通信制高校のオンライン通学コースに通うことになれば、これらのお金もほぼなくなります。つまり、通信制高校のオンライン通学コースであれば、どんな世帯年収の家庭であっても、本当に無償で高校卒業資格を得ることができてしまうのです。
通信制高校に通いつつ、その分の学費を学習塾や家庭教師に払うということも考えられます。通信制高校の中でも特に現在N高等学校はトップシェアを持っており、オンライン通学コースの割合が他の通信制高校と比べて多いです。このため、N高等学校が今後も躍進を続けるのではないかという考え方があります。
4 「大学全入時代」の終焉
私立高校に誰でも入れて、かつ年間63万円までは授業料が無償ということは、かなり高級な授業を受けることができるようになるということを意味します。また、これは確定的な情報ではありませんが、国公立大学の学費値上げも発生しています。ということは、「高校まででもう十分な授業が受けられるから、大学には行かなくてOK」という考え方もあるでしょう。
塾による私立高校への参入
また、推薦専門家でこの「未来図」の代表である孫辰洋は、この私立無償化は「塾が学校を始めるのではないか」という見方をしています。
「特色のある私立高校がどんどん生まれていく可能性は高いと思います。例えば、医学部志望専門の通信制高校が誕生する可能性はありますよね。河合塾は河合塾学園ドルトンスクールがありますし、公文は公文国際学園がありますが、このような流れはこれからも加速するのではないか、と。駿台予備学校や東進衛生予備校などが通信制高校も含めて私立高校の運営に乗り出す可能性は高いのではないかと考えています」
いかがでしょうか? 高校無償化に関して、今後も注目していく必要がありそうですね。





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