日本にはたくさんの特徴的な学校がある。筆者の趣味は、そんな「オモシロイ学校」の行事、制度、制服、校舎、校章、校歌などを研究し、巡礼すること。今回は鳥取まで足を運び、突撃取材してきた。

鳥取県鳥取市に位置する青翔開智中学校・高等学校は、鳥取市で一番存在感のある私立校。東大・京大・国公立医学部医学科だけでなく、トロント大学等海外大学へも度々合格者を輩出し、近年注目を集めている。

わずか創立12年の学校が、なぜこれほど驚くべき実績を上げられるのか。その秘密は「6年間探究教育」と「徹底した少人数指導」にあった。今回は、同校司書・広報の横井麻衣子先生(写真左)と進路支援部の森川真吾先生(写真右)にお話を伺った。謎に包まれた青翔開智の秘密を探る。
校舎が非常にかっこいい!!!
鳥取空港を降り立ち、タクシーで現地へ。「青翔開智までお願いします」というとしっかり伝わった。地元では確かに知名度があるようだ。
到着すると、「ガラス張りの博物館」とも称される校舎の美しさについ目が眩んだ。事前に画像検索で下調べはしていたものの、やはり圧巻である。
内部も外観に負けず劣らず美しく、特に校舎中央に巨大な本棚に囲まれたスペースがあり、そこから教室への廊下が広がるなど、いわゆる”普通の学校”とは全く異なる構造には目を瞠った。久々の獲物につい舌なめずりしてしまう。にやにやと舐めまわすように屋内を見物する筆者の姿は、生徒たちには異様に映ったかもしれない。
Q.何でこんなに特徴的な校舎にしたんですか!?
A.これは、現校長が色々視察に行って導入したものです。日本だけでなく、アメリカの家具なども採用しています。まず理想の「教育の在り方」を考えて、そこに近づけていくようにして設計したので、スタートから学校らしくない環境でした。

(校舎は「ガラス張りの博物館」とも呼ばれる)
Q.実際、特徴的な校舎には意味がありますか?
A.教員室とも距離が近かったり、校長室と教員室も繋がっていたりと開放的ですし、教室と廊下の境がガラスなので中が見やすく、出入りがしやすいなどなど、交流が図りやすい形になっています。外部交流の面でも例外ではなく、実際うちは外からのお客様も多いですし、授業にゲストを招くことも少なくありません。
Q.本棚が校舎中にたくさんありますね!
A.どこからでもアクセスしやすいように、敢えて校舎の中心に図書館を据えています。モデルにした校舎では、図書館が真ん中にあって、学びの中心になっているようでした。おかげで、授業中に図書室の関連する本を利用するなど、調べ学習の観点からも役に立ちます。管理は確かに大変ですが、マナーやモラルの指導をするなど、ソフト面で補っていますね。
欧米の学校をヒントに、オープンに人々が集まって研究するような環境を目指しており、実はインテリアも海外ブランドのものを採用しています。最近ではアクティブラーニングという言葉も浸透しましたが、当時の日本の雰囲気ではありませんでしたから。校内にソファがあれば、くつろげますし、そうやって学びに積極的な生徒たちが集まれば、自然と学術的な話題も出やすいですよね。
(廊下の本棚。学校全体が図書館のよう)
「探究」の時間は何をしているのか?
青翔開智の1番の特徴は、おそらく「探究」だ。近年、推薦入試や総合型選抜の台頭など、教育現場の変化の中でよく聞くようになったこの言葉について、青翔開智ではどのように向き合っているか、綺麗事でないホンネに迫った。
Q.「探究」に力を入れ始めた出発点は何ですか?
A.鳥取県は人口が少ないので、新しい学校を作るなら、やはり他校との差別化が必要です。そこで今後の時代に必要な教育は何なのかと考えたときに、出てきたのが「探究」でした。
Q.青翔開智の「探究学習」のシステムについて教えてください。
A.中1から高1までが、学年ごとに完結するグループ探究の期間。中1は中1のテーマ、中2は中2のテーマ……のように1年かけて探究する中で、思考の型、探究のスキル、マインドセットなどをだんだん身につけていきます。高2以降は個人での活動となり、高2で探究した内容を、高3で論文にすることが目標です。鳥取から視野を広げ、日本社会全体の課題に取り組むなど、内容が少しずつ高度になります。
Q.探究学習はどのような体制で運営されているのでしょうか?
A.高1までは、探究部の教員が探究の指導をします。高2と高3は、全教科の全教員が生徒の課題研究をサポートしています。先生1人が生徒2〜3名を担当して、最後まで研究を支援します。他校の場合ですと先生1人が大勢の生徒を監督していらっしゃると思うんですけど、うちはどの教員も生徒と一緒になって探究の過程に伴走するんです。ですからマンツーマン的な指導が可能です。
認知度はどうなのか?
大都市圏以外の地方では、高校受験で名門公立校に進むルートが定番。鳥取県もその例外ではない。私立中高一貫校である青翔開智には逆風に思えるが、どれほどの志望者が集まっているのだろうか?
Q.鳥取で中学受験熱って多分そんなにないですよね??
A.開校当時は中学受験の文化自体がほぼありませんでした。
そのような状況でわざわざ中学受験をしてもらうのは大変でした。まず「今後はこういう教育が必要だ」と訴えかけるところから始めないといけませんから。地道に保護者の方の理解を得て、受験生を増やしていきました。倍率は開校から数年後には2.0倍に、現在も1.5倍〜2.0倍で推移しており、現在はもう、地域で知らない人はいないほどの認知度を得ています。
Q.学年の人数が50~60人ほどと大変少ないようですが、少人数の利点はありますか?
A.やはり先生との結びつきでしょうか。その子の興味に沿って研究を一緒にやっていきますから、生徒が少なければその分だけ先生が一人一人に割ける時間が増えますよね。
また、高2〜高3の個人テーマによる課題研究を見る先生は、志望理由書の添削やディスカッションの進路支援担当にもなるんですね。「生徒が何を探究してきたか」を理解している先生が受け持つので、生徒にマッチした進路指導ができています。生徒一人ひとりと向き合い続けるからこそ、各個人の「強み」をじっくり理解しつつ、長所を伸ばしていける。そこも少人数ならではの利点だと思います。
寮は設置しないのか?
さて、「寮の設置」は地方の私立校あるあるだ。ラ・サール中学校・高校や西大和学園中学校・高校などが有名である。寮をおくことで、地元の生徒に限らず都市部の優秀な生徒をも取り込むことができる。しかし、青翔開智には寮がない。寮を作ればいいのに、と素人目線では思ってしまうが、どうなのだろうか。
Q.寮は作らないんですか?
A.作ろうという話も何回か上がりましたけど、予算等の面で実現していません。一部、兵庫県とか岡山県とか、鳥取県の西部(島根県よりの地域)から通学している生徒もいますが、9割は鳥取市内の生徒です。
確かに地元外にも需要はあるでしょう。実際に、地元以外のご家族様から「寮はありますか」と問い合わせられることもあります。
ですが逆に、「地元の生徒を育てる」ことが青翔開智の特色でもあるんです。入学者の大半は本当に、普通の素朴な子。その子たちが青翔開智で過ごして、難関大・海外大も含め進路を作っていけるって夢がありますよね。全国から優秀な子が集まってきちゃうと、その分優秀な進路になるのは当たり前になってしまう。なるべく「地方出身の普通の子」が、自分の輝き方を見つけて、世界へ羽ばたいていけるような今の環境を維持したい気持ちもありますね。
まとめ
鳥取でひときわ異彩を放つ学校である青翔開智中学校・高等学校。開校してからたったの12年で推薦入試合格者や難関大・海外大進学者をたくさん輩出し、着実に輝かしい結果を出している。
秘密は、生徒の興味関心に合わせた学習体制と、教員一人ひとりが生徒に寄り添う手厚い進路指導。そしてそれらを後押しする開放的な校舎だった。
青翔開智から日本に、そして世界に飛翔していく生徒たちは、これからの時代できっと活躍していくことだろう。




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