今回紹介するのは、ヒップホップが好きなだけで中央大学文学部社会学専攻に合格した方の志望理由書です。
…..なんて言うと、「ヒップホップで中央大学に合格ってどういうこと?」と疑問に思う方も多いと思いのではないでしょうか?

そもそも、多くの人からすると、推薦入試は成績優秀者や部活動・習い事での華々しい実績が必要だと思っているのではないでしょうか。

実は、今回紹介する志望理由書ではただただヒップホップが大好きなだけで中央大学に合格できてしまったのです。

果たしてどのようにその情熱を合格へと繋げたのでしょうか?

3つのポイントをあげて、詳しく解説します。

それでは、実際の志望理由書を見てみましょう!

 私は貴学の文学部社会学専攻で、人々はヒップホップにおける「地下性」というものをどのように捉えているのかについて研究したい。12年ダンスを続けている私にとって、音楽というものは日常生活に常に欠かせないものであった。その中で私はヒップホップに出会い、社会的な声が反映され、時代の変化に対応し続けるこの文化の奥深さに魅了された。

  アンダーグラウンドなものとして現れ、親しみにくい黒人の文化として捉えられていたはずのヒップホップは、今や私たちまでよく耳にするものになった。黒人ラッパーに止まらず世界的に人気を博す音楽ジャンルに至るまでには何が起因していたのか、人々の間での捉えられ方がどう変化したのかを社会学的に解明していきたい。メインストリーム文化と相互作用し、時には取り込まれたり、逆に影響を与えたりするプロセスを知るためにはまずヒップホップが持つ「地下性」について理解する必要があると考えた。ヒップホップについての論文や記事には「地下性」という言葉が多用されるが、そのアンダーグラウンド性とはどのようなものなのだろう。

  イヴォンヌ・バイノーによる『ラップ・ヒップホップ文化百科事典』では、「アンダーグラウンド」は「主要なレコード会社と関わりを持たないラップ音楽を表す用語、または、アメリカ全土で展開しているが、通常ラジオやミュージックビデオ番組といった商業的な娯楽販路で販売促進されていない、より多様でしばしば社会意識の高いラップ音楽やヒップホップ文化を示す用語」と定義されている。

  マーシリエナ・モーガンの著書『本物のヒップホップ』では、”ヒップホップにおける「地下」の用語はすべて、逃走(flight)、闘争(fight)、自由(freedom)と密接に関係していると同時に、奴隷制を思い起こさせるものである。当時奴隷とされたある民族は、自分たちの言葉や会話、創造性、身体、文化、宗教実践、そして人生そのものをコントロールする機会を求めて、驚くべき欲求と勇気を奮い立たせた。つまり地下とは、人間性にとって究極の空間であり、場所なのである”と主張している。

  トリーシャ・ローズは『ヒップホップ戦争』という著書の中で、”「政治的に進歩的な内容」が、アンダーグラウンド・ヒップホップと主流または商業的ヒップホップとの線引を「展開」させる一因である”と主張している。ここで言う「政治的に進歩的な内容」とは、一般的に、政治的声明や意見を述べた歌詞や、社会や経済の状況を批判した歌詞、あるいは社会正義のテーマを直接含んだ歌詞などである。

  これらの意見に基づき、リーハイ大学のジェームズ・ピーターソン准教授による論文、『アンダーグラウンドの底力─ヒップホップとアフリカ系アメリカ人文化』では、”モーガンの「逃走・闘争・自由」というテーマはヒップホップ文化の地下概念を考える上で最も重要な視点であり、ローズが主張する「政治的に進歩的な内容」を含む歌詞こそが、ヒップホップ文化における地下性の、詩的にも芸術的にも最も意味のある側面である”と結論付けられていた。しかし、文中には、「歌詞に社会意識が高い内容が含まれるか否かで商業的なメインストリームかアンダーグラウンドかを決定される傾向にあり、その両者が対立していることで関係を複雑化させている」との問題提起もされていた。さらに、同論文ではヒップホップにおける地下性はラップミュージックに止まらず、4大要素であるグラフィティーアートの観点からも明らかにされていた。最も昔のグラフィティーアーティストだとされているディミトリウスは、ニューヨーク市内のマンハッタン、ブロンクス、ブルックリン、クイーンズ、リッチモンドの5つの行政区の至る所に「TAKI183」というタグネームを描いて有名になったが、その移動手段及びニューヨーク全域に広めるための手段として地下鉄を利用したことは、地下活動における神業だったと指摘されている。その上でピーターソンは、”特に貧困地域に住む若者の様々な自己発見の手順のために、公共施設と公共サービスを思い通りに操りたいという衝動が若者にあった”ことを明らかにしている。

  上記を踏まえて私は、歌詞研究や公共空間の観点から「地下性」を明らかにできそうだと考え、以下のように研究を進めたい。

  まず社会学の基礎演習や外国語科目、入門科目の履修を中心に、社会学の本質を捉えるとともにその後の学びの基礎を養いたい。加えて英語文学文化専攻のアメリカ文化の授業でアメリカのポップカルチャーを詳しく学び、アメリカのメインストリームの実態を把握したい。その次に、貴学の社会学専攻が大きく掲げる社会調査実習を通して実践的に調査方法を学び、主に質的調査法の理解を深めていく。また、異文化理解や文化人類学、言語学、アメリカ研究、グローバルチュートリアルなど、関連する講義を通して国際的な視点からもアプローチを図り、歌詞研究の材料にしたい。3・4年次には、本格的に始まるゼミでのプロジェクト演習を通して自分の研究テーマと向き合う。文献では調査しきれない部分をインタビューなどの質的調査を中心に生の声を聴くことで、公共空間におけるヒップホップの捉えられ方を解明していきたい。その際、グローバルスタディーズにて海外を研究フィールドとし、私の研究に対する日本国外の方の見解も取り入れた英語でのディベートにも挑戦したい。さらに、Global Sociologyでグローバル化とは何かを理解し、それが引き起こす諸問題に対して、自らの行動を批判的に思考することはこれからの私の研究になくてはならない力だ。

  70年代ニューヨークの荒廃した街に住むアフリカ系アメリカ人らが生み出した文化であるヒップホップを総体的に学び、人間性にとって究極の空間だとされる「地下性」について追求することは貴学の文学部でしか出来ないことだと考える。以上の理由から、貴学の文学部社会学専攻を希望する。

【ポイント①ユニークな視点】

この志望理由書の最大のポイントは、「ヒップホップを研究対象にする」という切り口です。

もちろん、ヒップホップが好きな若者はたくさんいると思います。

しかし、それを単なる音楽やカルチャーとして楽しむだけでなく、社会学的に研究しようと考える高校生って、ほとんどいませんよね。筆者は、社会の主流から外れた場所で生まれたヒップホップが、どのように発展し、メインストリームへと変化してきたのかを、社会構造や文化の変遷と結びつけて分析しました。

その独自の視点が研究の鍵となり、合格へとつながったのです。

私はこの研究が評価された理由は、「明確な問題意識」と「独自の視点」にあると考えます。


▶ なぜヒップホップの「地下性」なのか?

「 アンダーグラウンドなものとして現れ、親しみにくい黒人の文化として捉えられていたはずのヒップホップは、今や私たちまでよく耳にするものになった。」

「黒人ラッパーに止まらず世界的に人気を博す音楽ジャンルに至るまでには何が起因していたのか、人々の間での捉えられ方がどう変化したのかを社会学的に解明していきたい。」

という記述が示す通り、筆者は、ヒップホップがかつてはアンダーグラウンドな文化とされていたにもかかわらず、今では世界的に受け入れられているという点に対して研究対象として深掘りをしています。

例えば、以下のような具体的な研究アプローチを示し、研究の説得力を高めています。

  • ヒップホップの「地下性」とは何か?
  • メインストリームとアンダーグラウンドの関係はどのように変化してきたのか?
  • 歌詞や公共空間での表現を分析し、ヒップホップの社会的意味を明らかにする

このように、ただ「こういうものが好き」と語るだけではなく、しっかりと「この点はアカデミックに研究する価値があるのではないか」ということが触れられているという点で、この志望理由書は評価されたのではないかと考えられます。


【ポイント② 引用の重要性】

次に、引用に関してです。この志望理由書では、とにかく文献をたくさん引用することで、研究としての信憑性を高めています。

引用されているのは、

  • 『ラップ・ヒップホップ文化百科事典』イヴォンヌ・バイノー
  • 『本物のヒップホップ』マーシーリエナ・モーガン
  • 『ヒップホップ戦争』トリーシャ・ローズ
  • 『アンダーグラウンドの底力』ジェームズ・ピーターソン

など、ヒップホップ研究の第一線の学者たちの著書を引用しています。

ーーなぜこれが有効な手段だと言えるのか?

これについてお話しする前に、そもそもこの人は実は、志望理由書を書く上で必要なあるポイントが抜けていることに気付いたでしょうか?

それは、活動実績です。総合型選抜においてボランティアや留学経験・課外活動などの実績重要なのはご存知でしょうか?

総合型選抜の合格方法として、社会課題を見つけ、その課題を解決するためにボランティアや課外活動の経験をアピールすることが一般的です。

「自分なりに社会課題を見つけ、解決するために行動しました!」

この過程と結果から得た学びをアピールするのです。

しかし、この志望理由書には活動実績がないのです。

そして、だからこそこの人は、活動実績がない分、引用を多くすることで社会課題を意識していることをアピールしていると考えられます。「活動実績がない=自分の経験だけでは語れない」 という弱点を補うために、引用していると考えます。

「私は○○という経験からこの研究に興味を持ちました!」と書くのが難しい場合、「すでに学術的に研究されている内容を組み合わせて、自分の研究テーマを構築する」という方法を取るのは有効です。

これにより、「ただの興味」ではなく、「学問的に価値のあるテーマ」としてアピールできます。

引用を活用する際のコツは、以下の3点です。

  • 必ず自分の研究と関連づける
  • 複数の学者の意見を比較する
  • 単なる丸写しではなく、自分の視点を加える

適切に引用すれば、「この人はすでに研究者としての視点を持っている」と評価されます。

▶ 引用のルール

志望理由書において、どうやって引用すればいいかわからない人もいるかと思います。

実は、一般的な論文ほどきっちりする必要はありません。

重要なのは「文献を明記すること」これだけなのです。

実際の志望理由書を見ても

「イヴォンヌ・バイノーによる『ラップ・ヒップホップ文化百科事典』では、「アンダーグラウンド」は「主要なレコード会社と関わりを持たないラップ音楽を表す用語、または、アメリカ全土で展開しているが~」

とあります。

このように、著者と書籍名のみが記述されており一般的な論文において必要な発行年までは求められていないことがわかります。


【ポイント③ 重要なのは一貫性】

「好きなことを研究する」と言っても、単にヒップホップについて語るだけでは合格できません。重要なのは「大学での学び」と結びつけること。そして、自分の経験と学びがどう一貫しているかを示すこと。

この志望理由書では、

  • 1・2年次:社会学の基礎を学ぶ
  • 英語文学文化専攻の授業でアメリカ文化を深掘りする
  • 社会調査実習で質的調査法を学ぶ
  • 3・4年次:ゼミでヒップホップの地下性を研究する

というように、年次ごとに学ぶことを明確に示し、研究計画をしっかり立てています。

さらに、この志望理由書では「12年間ダンスを続けてきた」という自身の経験を研究の根底に置いています。

「ただヒップホップが好き」ではなく、「ダンスを通じてヒップホップに触れ、そこからその社会的な意義に興味を持った」というストーリーを作ることで、一貫性が生まれています。

つまり、

  • 個人的な経験(ダンスを12年間続けてきた)
  • そこからの発展(ヒップホップの社会的意義に興味を持つ)
  • 大学での学び(ヒップホップの地下性を研究する)

という論理の流れができており、大学での研究と過去の経験が繋がっていることが明確に伝わります。

「ヒップホップを学ぶなら、中央大学の文学部社会学専攻しかない!」というロジックを作り出すことで、説得力を持たせています。

あなたもヒップホップ研究で大学合格を目指そう!

ここまで、ヒップホップ研究をテーマに中央大学に合格した志望理由書を詳しく解説してきました。

ポイントをおさらいすると:
研究テーマが明確(ヒップホップの「地下性」に着目)
文献を適切に引用(学問的な価値を示し、研究の信頼性を向上)
学びの計画が具体的(大学での学びと自身の経験を論理的に結びつける)

このように、総合型選抜ではボランティアや課外活動の実績が必須と思われがちですが、研究の切り口と論理展開次第で十分に合格できることが分かります。

「好き」を学びに繋げることで、中央大学合格を十分に目指せます!
あなたも、ヒップホップ研究で大学合格を目指してみませんか?