みなさんは、令和の受験が大推薦時代に入ったことをご存じでしょうか?
いまや推薦・総合型選抜の利用者割合は50%を超えており、一般入試はマイナー側に追いやられました。とはいえ、東大や京大など有名国公立は一般入試を本懐としており、実際に合格者数も推薦入学者より一般入学者の方がはるかに多い。やはり、ペーパーテストによって測られる計算能力や知識などは重要なのでしょう。
ただし、実はこの事実自体は、推薦入試の猛追と矛盾しません。なんと、一般入試と推薦入試は、同じ大学・学部・学科であろうとも併願できるのです。つまり、「推薦でいったんチャレンジしてみて、ダメなら一般でカバー」なんてこともできてしまう。だからこそ、現代の常識は「とりあえず推薦でチャンスを増やす」になりつつあるのです。
とはいえ、これも甘い話ばかりではありません。当然のことですが、一般と推薦の全くタイプが違う2種類の入試に適応しなくてはいけなくなるからです。もともと一般入試が余裕なほど勉強ができるならともかく、大半の受験生はそうではないでしょう。
一般入試の勉強時間を削るのは難しいでしょうから、推薦入試の出願にかかる様々な準備時間をどうにか削減したい。そう考えた方も多いのでは。そこで、今回は「推薦出願準備の手間を半分にしてくれるAIの使い方」についてお伝えします。
AIに任せていい仕事か否かを見極めて
同じ問いに対しても、AIの出力は母体によって表現やニュアンスが異なります。たとえば「AIは高校生の思考力を伸ばすか、奪うか」という問いに対して、ChatGPTは「使い方次第」と答え、Geminiは「武器にも麻薬にもなる」と表現します。どちらにも一定の妥当性はありますが、そこに唯一の正解があるわけではありません。
AIの回答は客観的な真理というよりも、設計思想や学習データに影響された“生成物”にすぎない。この点で、AIは便利である一方、常に安定した質や一貫性が保証されるツールとは言い切れません。
とはいえ、使い方によっては大きな時間短縮につながります。その代表例が情報収集です。これまでは教授の研究や論文を調べる際、CiNiiやGoogle Scholarなどを使って一つずつ探す必要がありました。しかし現在は、条件を入力すればAIが検索や整理を行い、調査の初期段階を大幅に効率化できます。
【何を書くか決める → 調べる → 読み込んで分析する → 自分の書類に組み込む】
この工程のうち、「調べる」という段階をAIによって短縮できれば、その分の時間を小論文対策や一般入試の勉強に充てることが可能になります。
AIに任せる作業か否かを判断する目安ですが、「誰がやってもある程度同じ出力が出そう」なら、任せてもいいでしょう。自分が行っても、友人に任せても、先生に頼んでも大きな差が出にくく、質よりも出力までの時間で差がつくようなタイプの作業は、AIが一番得意な分野です。
実際、私自身も課題に取り組む際、テーマに合った論文を探す段階ではAIを活用しました。
私の課題は「英語教育の早期化は教育格差を拡大させるか」であり、その際に『「英語教育の早期化による格差拡大」をテーマにレポートを書きます。 私は「親の所得による学校外学習の差が、英語格差に直結する」という仮説を立てています。この根拠となる、ネットで読める学術論文や調査データをいくつかリストアップしてください。』といった指示で情報を集めさせたところ、これだけの情報が集まっています。
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ただし、これだけでは「チェリーピッキング(つまみ食い効果)」といって、都合のいいデータだけを寄せ集めてしまう可能性があります。研究においては、仮説を否定するような学説の確認と、それに対する反論などが重視されるはずであり、自分の考えた仮説を支持する証拠ばかりを集めてはいけません。
なので、この直後に「チェリーピッキングを防止するために、私の仮説と真逆の主張を行う、もしくは私の仮説を否定するような論文や専門書、学説を探しています。根拠となる学術論文や調査データをソース付きでリストアップしてください」と自分のバイアスだけで行動しないように意識することが肝要です。
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もちろんこのAIが調べた結果だけがすべてではありませんが、ひとつ論文や参考図書を発見すれば、それが引用したり参考図書に挙げたりしている文書から、更なる研究が可能になります。必要なのは「入口の選定」であり、AIはそこまでのハードルをほぼ0にまで下げてくれる。
自分がどのような論文を書きたいのか、どのような視点の研究が必要なのかを具体的に指定すれば、膨大な情報の中からキーワードを手探りで探すよりも、自分の目的に合った論文に出会いやすくなります。
しかし、ここで注意すべき点があります。それが生成AIの「ハルシネーション」です。事実と異なる情報や、存在しない論文を、あたかも実在するかのように提示してしまうことがあります。実際に、AIに提示された論文を確認すると存在しなかったり、リンクを開くと「Not Found」と表示されたりすることも珍しくありません。
AIは便利ですが、完全に信用しきるのは危険です。仮に存在しない論文や本だと気付かないままで、しかも元の資料にあたらない「孫引き」(これも「不適切な引用」として忌避される行為です)をしてしまうと、「捏造」に当たる可能性があり、受験資格の喪失など重いペナルティにつながる可能性も。最終的な裏取りや事実確認は、必ず自分自身で行いましょう。
AIに任せるための準備
例えば、「上智大学文学部ドイツ文学科のことについて調べて」とAIに指示すれば、パンフレットに載っているような基本的な情報が一覧で返ってきます。
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しかし、「上智大学文学部ドイツ文学科の教授の研究テーマを3つ挙げ、それが現代社会のどの問題と接続できるか整理してください」といったように、自分の目的に照らして“どんな情報が欲しいのか”を具体的に示せば、返ってくる情報の質は大きく変わります。
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*この画像は2026年2月24日に作成したものです。
AIは魔法ではなく、あくまでツールです。だからこそ、使う側のプロンプト次第で出力される結果も変わってきます。イメージとしては、「中学生でも誤解しないレベル」まで指示を具体化することが大切です。
そのためには、まず自分が何をしたいのか、どんな情報が必要なのかを自分の中で明確にしておく必要があります。AIに指示を出す前に、使う目的や用途を整理することが重要なのです。
紙に書き出して頭の中を整理するのもよいでしょう。あるいは、自分の考えを一度打ち込み、AIに整理してもらうのも一つの方法です。大切なのは、自分の頭の中でいったん言語化すること。そのうえで「自分がやりたいこと」と「必要な情報」を明確にし、それを具体的にAIに伝えて集めてもらう。この段階が重要なのではないでしょうか。
自分の考えをまとめるために
ただ前述した通り、他者が読んでもその意図を100%正確に理解してもらえるくらい自分の考えを自分の思うとおりに言語化することは、決して簡単ではありません。なぜ難しいのでしょうか。それは、自分の中で「常識だからわかるはず」「なんとなく伝わるだろう」と省略している部分があるからです。
例えば、ペットボトルで水を飲むという日常的で一見簡単な動作を、あえて一つひとつ言葉にしてみましょう。多くの人は「そんなの簡単だ」と思うかもしれません。しかし実際に書き出してみると、意外なほど複雑であることに気づきます。
例えば、
右手を出し➡ペットボトルを掴み➡左手にボトルを持ち替え➡右手でキャップを開け➡左手でボトルを口元に傾け➡水を飲み➡左手でボトルを垂直に戻して➡右手でキャップを占め➡左手でボトルを置く
このように、ひとつひとつ分解してみると、「簡単だ」と思っていた動作にも多くの工程が含まれていることがわかります。自分の中では当たり前になっていることほど、言葉にすると曖昧になってしまう。「わかるでしょ」と飛ばしてしまっている部分こそ、他者にとっては最もわかりにくい部分なのです。
だからこそ、一度“小学生でも理解できるレベル”まで言葉を崩してみる。この過程を経ることで、自分が本当に何をしたいのか、何が必要なのかが明確になります。
そしてそれは、AIに指示を出す際にも同じです。曖昧なまま「なんかやっておいて」と入力するのではなく、自分の頭の中を細かく分解し、具体的な工程として言語化する。その精度が、AIの出力の質を決めるのです。AIに正確な答えを求める前に、まずは自分の思考を正確に言語化できているか。その姿勢こそが、AI時代に問われている力なのかもしれません。
まとめ
受験生にとって、「時間がない」という感覚は、ごく自然なものです。そもそも受験とは、限られた時間の中で成果を出せるかどうかを問う試験でもあります。時間管理やスケジューリングそのものが、実力の一部といってもよいでしょう。だからこそ、「時間がない」と嘆くこと自体は特別なことではありません。重要なのは、その先です。
「どうすれば時間を生み出せるか」「どうすれば工程を圧縮できるか」
その視点に立てるかどうかが、差を生みます。
AIは「よくない」と一括りにされがちですが、使い方を限定すれば、確実に時間を短縮できる場面もあります。思考の代替としてではなく、情報収集や整理といった工程の一部を担わせる。そうした部分的な活用であれば、受験生の負担を軽減する助けになるでしょう。
こうした小さな工夫を積み重ねることで、推薦入試と一般入試を両立させる、いわば“二刀流”も現実的になります。推薦だけに絞るか、一般だけに集中するか。もちろん戦略はさまざまです。しかし、選択肢が広がること自体は、受験生にとって明らかに有利です。
受験は、学力だけでなく「戦略」を問う試験でもあります。だからこそ、道具を恐れるのではなく、賢く使いこなす姿勢が求められているのではないでしょうか。
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