「現在の日本は意思決定の場に若者が少なすぎます。60歳以上の票数と比較すると、40歳以下の人が95%投票に行かないと勝てないという計算になるんです。これは人口動態からして構造的に難しい状況です。」
こう語るのは早稲田大学在学中から政治現場に飛び込み、未来政経研究所を設立した島田光喜氏。若者の政治離れが深刻化する中、「自分が経験した機会を他の若者にも」という思いから始まった彼の活動は、いま若者の政治参画を促す新たな波を生み出している。
「政治は身の回りにあるプロセスであり、目的ではなく手段である」と語る島田氏が提唱する「パブリックマインド」とは何か。Z世代カフェでの熱い対話から見えてくる、日本の政治教育の課題と可能性を探る。
インタビュアー:落合響
島田光喜(しまだ・こうき) 一般社団法人未来政経研究所理事長、早稲田大学デモクラシー創造研究所事務局長。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学院政治学研究科修了。大学在学中から政治の現場に飛び込み、政治と若者をつなぐ活動を展開。2022年に未来政治経済研究会を立ち上げ、2024年5月に未来政経研究所として一般社団法人化。Z世代カフェや政策コンテストなど、若者の政治参画を促す様々な取り組みを行っている。 |
「政治と政治学の違いに気づいた大学生活」
落合:まずは、政治に興味を持ったきっかけからお聞かせいただけますか?特に大学時代の経験が重要だったんでしょうか。
島田: そうですね、大学で政治に関わるようになったきっかけは、「政治」と「政治学」の違いに気づいたことです。私は政治経済学部に入ったのですが、実は政治が学べると思い込んでいたんです。
落合: 政治と政治学の違い、ですか?
島田: はい。大学の教授から「ここで教えるのは政治学であって、政治を教えない」と言われたんです。今考えると当然なのですが、ほとんど高校生の私にとっては全然分からなくて。「政治経済学部」という名前から、政治家を育てる学部だと思っていたんです。これは工学部の人が全員エンジニアになると勘違いするくらいの誤解でした(笑)。
落合: なるほど、そのギャップがあったんですね。
島田: そうです。そこで「じゃあ政治ってどうやって学ぶんだろう?」と考えて、「政治家の事務所に行ってみるしかないのかな」と思ったんです。早稲田には政治家の先輩も多いですし、たまたま政治家の事務所が公開インターンを募集していたので応募してみました。現場を見てみたいという単純な好奇心からでしたね。
落合: 実際の政治の現場を見てみたいという。
島田: そうです。その後、ネット選挙が流行り始めた時期で、SNSでの政治発信が増えてきました。「このままだと選挙や政治のことが全然わからなくなる」と危機感を持ち、日本最大のネット選挙メディアである「選挙ドットコム」を運営するイチニ株式会社でインターンを始めました。そこでは選挙のポータルサイト運営や、地方政治家のSNS発信データを分析する仕事などを3年半ほど経験しました。
落合: 「選挙ドットコム」とはどんなサイトなんですか?
島田: 選挙版の食べログみたいなものです。選挙区や議員名を入れると、その政策などが比較できるポータルサイトです。そこで選挙や政治のネット活用について学びながら、地方政治家のSNS発信をテキストマイニングして傾向を分析するような記事も書いていました。
落合: 学生時代からすごく実践的な経験をされていますね。そこから団体設立につながっていくわけですか?
島田: はい。選挙ドットコムでのインターンの後、パナソニックの創業者である松下幸之助が設立した松下政経塾という公益財団法人とご縁があり、未来政治経済研究会という任意団体を最初に立ち上げました。そこからZ世代カフェなどのイベントを始め、昨年5月に一般社団法人「未来政経研究所」として正式に登記しました。今では若い人と政治・行政をつなげる窓口として、様々な活動を展開しています。
「麻布高校で培った自己規律と知的好奇心」
落合: 大学入学前の高校時代はどうでしたか?元々政治に興味があったのでしょうか?
島田: 実は、そんなに政治にガツガツと関わりたかったわけではなかったんです(笑)。ただ、高校の公民の授業がとても面白くて、社会のルールを決める基本的な仕組みである法律や政治に興味がありました。それで政治経済学部か法学部に進もうと考えていたんです。
落合: 中高時代を過ごされた麻布高校は、特別な政治教育があったんでしょうか?
島田: 麻布の場合は「教育」というより「放置」という感じでしょうか(笑)。「自由な校風」とよく言われますが、その実態は「自由と責任が伴う」環境です。
「自分のケツは自分で拭く」という考え方で、自由だから何をやってもいいけれど、問題を起こした場合の責任は当人が取らないといけない。受験も自己責任なので多くの人が浪人します。
落合: かなり厳しい環境ですね。
島田: その中で自分のラインを引かなければならない状況に置かれるので、自己規律や自立心が養われました。政治教育という意味ではそれほど特別なことはなかったのですが、毎週土曜日に「教養総合」という授業があり、外部から講師を招いた講座を選択できました。その中に憲法や政治の授業もあったんです。
落合: それは魅力的な授業ですね。
島田: はい。大学教授や弁護士が定期的に来られていました。たとえば弁護士予備校の伊藤塾で有名な伊藤真さんといった方々です。その中で最高裁を見学に行くといった経験もできました。この授業は強制ではなく、深く学びたい人のために場所が用意されていた感じです。学年300人のうち、60人ほどが参加していましたね。
落合: 結構な人数ですね。みんな興味を持っていたんですか?
島田: 麻布は将来医者や法曹を目指す生徒が多いので、関心のある生徒が自然と集まってくる雰囲気がありました。大学のゼミのような授業で、例えばマキャベリの「君主論」を読んでディスカッションするという内容もありました。
落合: 印象的なのは、最初から政治家志望だったわけではないんですね。
島田: そうですね。ただ小学5年生の時に省庁見学ツアーに参加した経験があって、金融庁を訪れた際に当時の大塚耕平副大臣とお話しする機会があったんです。親によると、その時「政治家になりたい」と言ったらしいのですが、私自身は記憶にないんです(笑)。でもそういう体験が何かしらのきっかけになったのかもしれません。
「自分が経験した機会を他の若者にも」
落合: 大学で政治に関わる経験を重ねられて、その後、団体を立ち上げられましたが、なぜ自分で社団法人まで作ろうと思われたのでしょうか?
島田: 大きく2つの理由があります。1つ目は、自分が経験したことを独り占めしたくないという思いです。私は運がよかったと思っていて、いろんな経験をさせてもらいました。でもそれは極めて偶然的なものなので、それを独り占めしていいのかという思いがあったんです。
落合: 経験を共有したいという。
島田: はい。政治参加を促すには、いい経験をした人がきちんとそれを共有して、その体験を追体験できる状況を作ることが、運良くいい体験をした人の責任だと思っています。自分がたまたま学生という立場でいろんな接点を持てたので、今度はそういう機会を多くの人に提供したいと考えたんです。
落合: なるほど。2つ目の理由は?
島田: 2つ目は、学生としてやることと団体としてやることは全然違うということです。学生だから許されることがたくさんあるんです。「大学生」というプラチナチケットがあるから、いろいろな経験ができました。でも、その学生という身分がなくなった後も自分のやりたいことができる環境を作るには、ちゃんとした団体が必要だと思ったんです。
落合: 卒業後の活動基盤を作りたかったんですね。
島田: そうです。自分のための箱でもあり、多くの若者が政治に関われる場所を作りたかったんです。
落合: 団体の活動内容について、もう少し具体的に教えていただけますか?
島田: 未来政経研究所は、若者と政治をつなぐプラットフォームとして、Z世代カフェやシンポジウム、政策コンテストなど様々な活動を行っています。また、早稲田大学の政治経済学部で授業を1つ担当したり、高校生向けの講座を開いたりしています。人材開発や政治参加の機会提供など、若い人と政治・行政をつなぐ窓口として幅広く活動しています。
「パブリックマインドの育成が社会を変える」
落合: 団体の理念として「パブリックマインドを持ったリーダーの育成」を掲げていますが、なぜ単なるシンクタンクではなく、人材育成に焦点を当てているのでしょうか?
島田: 私の問題意識として、世の中が非常に個人主義化していると感じているからです。物価上昇などで生きるのに精一杯の人が増えている中で、目先のことばかり考えるのは仕方ない面もありますが、個人のことばかり考えると、全体としては良くない方向に進むことがあります。
落合: 具体的にはどういうことでしょうか?
島田: 例えば社会保障の拡充は皆が望んでいますが、全体で見れば国として財政が破綻するかもしれません。 税金の減税も同様で、手取りが増えて嬉しくない人はいませんが、それで50年後の日本が立ち行かなくなるかもしれない。目先のことに焦点が行きがちな今だからこそ、もう少し大きな視点で全体がどうなるかを意識しながら個別のことを考えていかなければ、日本の未来がないと思っています。それを私は「パブリックマインド」と呼んでいます。
落合: パブリックマインドとは、公のことを考えながら自分のことも考えるということですか?
島田: そうです。公のことを考えながら自分のことも考えるような思考様式ですね。こういうことを考えられる人材が減ってきていると感じています。特に若い世代にその傾向があります。例えば、私の同期には外資系金融に就職して海外に行く人が多いです。個人の経済合理性から見ればそれは正しい選択かもしれませんが、日本の教育を受けて日本の税金で育ってきた人が、海外に行って税金を払うというのはどうなのかと思うことがあります。
落合: なるほど。社会全体の利益を考える視点が欠けているということですね。
島田: そうです。東大などの優秀な学生が「何をやっていいかわからない」と言うのを聞くと、欠けているのはそこだと思うんです。自分が何をしたいかということが決まらない。これは大きなビジョンや青写真がないからだと思います。せっかくいい教育を受けて、いわゆる「要領がいい」人材なのに、ただ周りと同じように総合商社やコンサルを受けるだけになってしまう。目的意識をもってそういった企業に就職することは素晴らしいことだとは思いますが、ただ周囲の環境に合わせる形でキャリアを形成していってしまうことは、すごくもったいないと思います。
落合: 島田さんの活動はそういう問題意識から生まれたんですね。
島田: はい。私の場合は、政治や政策という軸を通じて、ビジョンを考えられる人材を育てたいと思いました。他の人は個人の合理性で選択肢を選ぶでしょうが、私は社会全体のことも考えられる人材を育てることをライフワークにしようと思ったんです。そこで調査研究、政策提言、人材育成という3つの柱を立てて活動しています。
落合: 強い動機がないとそこまで踏み込めないと思いますが、何か具体的なきっかけはありましたか?
島田: 大学1年生くらいの時に、東大に進んだ高校の同級生と話す機会があったんです。その人が「俺、何やっていいかわからないんだよね」と言ったので、「なんで東大に来たの?」と聞いたら「周りも受けているし、なんとなく流れで」という答えでした。そこで、自分が何をしたいのか、どういう人間になりたいのかというビジョンがないことが問題だと気づいたんです。
落合: そういう経験が島田さんの活動の原動力になったんですね。
「Z世代カフェで生まれる活発な対話」
落合: Z世代カフェについてもう少し詳しく教えていただけますか?どのようなきっかけで始められたのでしょう?
島田: Z世代カフェはコロナ禍がきっかけで始まりました。若い世代が特に大きな機会損失を被ったと感じたんです。私自身、当時大学2年生でしたが、オンライン授業で出会えるはずだった人と出会えず、あるはずだった機会も失われました。加えて「若者が感染源だ」という抑圧的な空気もありましたよね。
落合: 確かにコロナ禍では若者が厳しい目で見られることもありましたね。
島田: そういう中で若者の声や意見を表出する場所が必要だと思い、フォーラムを立ち上げました。その後コロナが収束してきた中で、新たな問題意識として「若者が将来直面する問題」に焦点を当てるようになりました。
落合: 具体的にはどのようなテーマを扱っているのでしょうか?
島田: 政治や政策は10年後、20年後の話をするものですよね。例えばカーボンニュートラルは2050年の話です。しかし、現在政策を決めている人々の多くは2050年には生きていないかもしれません。一方で、今の20代は2050年には40〜50代でまさに社会の中心になっている世代です。つまり自分たちが影響を最も受ける政策を、自分たちが決められていないという問題がある。
落合: 確かに2050年のカーボンニュートラルを決めた菅元首相は、その時100歳近くですよね。
島田: そうです!私たちのテーマ設定は、そういう「実は20〜30年後のことが今決まっているんだ」という危機感を若者に持ってもらうことを目的としています。最近は「シルバー民主主義」や「2050年の地方の未来」といったテーマでカフェを開催しています。
落合: 参加者からの反応はいかがですか?
島田:特徴的なのは質疑応答が非常に活発なことです。日本のイベントでは質問が出ないことが多いのですが、私たちのイベントではチャット欄にコメントが続々と入り、議論が止まりません。参加者からは「政策のテーマごとに最前線にいる人に直接質問できる機会はなかなかない」という声や、「これをきっかけに自分のやりたいことが決まった」という声もいただいています。
落合: 対象は大学生がメインですか?
島田: 最近はすべてオンラインで開催しているので、地方からの参加者も多いですし、年齢層も中学生から高齢者まで幅広いです。年齢制限はないので、様々な世代が交流する面白い空間になっています。
「政治的中立性と非政治性の混同」
落合: 日本の政治教育の課題についてどのようにお考えですか?
島田: 日本の大きな問題は「政治的中立性」と「非政治性」を混同していることだと思います。特に教育現場では顕著ですね。
落合: 政治的中立性と非政治性の違いとは?
島田: 例えば学校で模擬投票をやるとします。本来なら政治家に来てもらって、政策をプレゼンしてもらうのがいいのですが、それができないんです。「政治的中立性」を保つために全政党を呼ばなければならないのですが、それは現実的に難しい。結果として、政治家を全く呼べないという「非政治性」になってしまう。
落合: なるほど、中立であることと政治を排除することは違うということですね。
島田: そうです。ドイツには「政治教育センター」という行政組織があって、そこが政治的中立性を保ちながら実践的な政治教育を行っています。選挙の日に高校生が模擬投票を同時刻に行い、その結果をプレスリリースするといったことまでやっています。政治的中立性を保ちながら、政治に触れる機会を提供しているんです。
落合: 日本ではそういう取り組みが難しいのですね。
島田: はい。日本の教育現場では「政治的中立性」と「非政治性」を混同して、結局「非政治的」になってしまいます。授業では国会の定数や仕組みは教えますが、現在の政治的争点や政策の中身については教えない。それでは学生は興味を持ちません。ドイツでは政治教育センターが様々な記事や資料を提供していて、生徒も先生もそれにアクセスできます。
落合: なぜドイツと日本でこれほど違いがあるのでしょう?
島田: それはドイツがナチスを生んだという歴史的背景があるからです。ドイツでは民主主義や多様性を守り、独裁的なものにならないようにするために、若い世代も含めて政治参画の重要性を共有しています。「自分たちが参画しないとヒトラーのような指導者が生まれるかもしれない」という危機感があるんです。日本にも軍国主義の歴史はありますが、それがナチスほど否定的に捉えられていないというか、他人事になっている面があります。
落合: 確かに日本では「政治的中立性」を理由に、政治教育そのものを避ける傾向がありますね。
島田: そうです。結果として若者の政治参画や意識が育まれにくくなっているんです。これは教育現場だけの問題ではなく、社会全体の課題だと思います。
「政治は身の回りにあるプロセス」
落合: 政治に無関心な若者にはどのようにアプローチすればいいと思いますか?
島田: 理念的には2つのポイントがあると思います。1つ目は「政治というものが実は身の回りの物事すべてを指す」ということを理解してもらうことです。多くの人は政治というと国会の答弁や選挙のイメージがありますが、政治とは本来「合意形成を図るプロセス」なんです。
落合: 身の回りにある政治の例としては?
島田: 学校で決まりごとを決めること、文化祭をどうするかを話し合うこと、サークル活動や部活での決定、家族での話し合いなどすべて政治的なプロセスだと思います。「社内政治」という言葉があるように、いろいろな人と交渉して合意形成を図っていくこと自体が政治なんです。この感覚を共有することが、政治に関心のない人へのアプローチの第一歩だと思います。
落合: 確かに、政治は遠いものではなく、身近にあるものだと感じられるといいですね。2つ目のポイントは?
島田: 2つ目は「政治は手段であって目的ではない」ということです。何をしたいのかが目的であって、政治はその実現手段の1つにすぎません。例えば再生可能エネルギーを日本に広めたいと思ったとき、エネルギー会社に就職する、環境省に入る、政治家になる、NPOを立ち上げるなど、様々なアプローチがあります。その中の1つの選択肢が政治なんです。
落合: なるほど。政治そのものに関心がなくても、環境問題や地方創生など、社会課題には関心があるかもしれない。
島田: そうです。社会課題の解決のための1つのアプローチが政治なんだということを理解してもらえれば、「政治に全く関心がない」という人でも、自分のキャリア選択の中に政治が入る可能性があると気づくはずです。
落合: 実際に島田さんはそういう理解を深めるための取り組みをされているのですね。
島田: はい。例えば政策コンテストを開催して、2050年のビジョンを考え、環境や地方創生、教育などから政策テーマを選んでプレゼンしてもらうといった活動をしています。そのプロセスで政治の役割を理解してもらい、決勝大会で優勝したチームは国会議員の前でプレゼンする機会も設けています。
「当たり前を疑う姿勢が自分の軸を作る」
落合: 「当たり前を疑う姿勢」が重要だとおっしゃっていましたが、もう少し詳しく教えていただけますか?
島田:やりたいことを持てる人と持てない人の違いについて考えたとき、当たり前を疑う姿勢を持つことが重要だと思います。皆がやっているから、それが当たり前だからではなく、自分で物差しを作らなければならない状況に陥ったときに初めて、何をやりたいのかを考えるようになるんです。物差しが周りから与えられている限り、考える必要がありません。
落合: 具体的にはどのような経験が当たり前を疑うことになるのでしょうか?
島田: 様々な形があると思います。やむを得ず当たり前を疑う場合もあれば、進んで疑っていく場合もあります。例えば私の場合、麻布高校という「自由と責任」を重んじる環境で育ち、自分でラインを引く経験をしました。
また、大学で「政治と政治学の違い」に気づいて、想定していたレールとは違う道を歩み始めました。重要なのは、自分が何をしたいのか、どういう人間になりたいのかということについて真剣に考える機会を持つことです。
落合: 社会人になってから、当たり前を疑い、自分軸で人と違う道を進むのは難しいものですか?
島田: 年齢を重ねるほど難しくなると思います。責任が増えたり、家族ができたりして、だんだん当たり前を疑うことが難しくなります。だからこそ、学生のうちにいろいろな経験をして、自分の軸を作ることが大事だと思います。社会人になってから外れると、なかなか戻れなくなりますからね。
落合: それは確かに。では高校生や中学生が政治に興味を持ったら、具体的にどのような活動ができるのでしょうか?
島田: 日本の教育現場では政治的な活動が制限されがちですが、課外活動として国会見学や省庁見学ツアーに参加するといいと思います。夏休みなどに各省庁がいろいろな催しを開催していて、大臣室を見学できるなどの機会があります。私自身、小学5年生の時に金融庁の見学ツアーに参加して、当時の金融副大臣と話す機会があったのがとても印象に残っています。
落合: そういう体験が後々につながるかもしれないですね。
島田: そうなんです。私の場合は見学から10年以上経って政治の道につながりました。政治に限らず、小さい頃からいろいろな体験をすることは大切です。また、主権者教育として模擬投票なども一部の学校で行われていますし、18歳以上であれば実際の選挙に行くこともできます。様々な政策ワークショップなどの課外活動に参加するのも良いでしょう。
落合: 日本の政治教育で改善すべき点はありますか?
島田: すでに話した「政治的中立性」と「非政治性」の混同は大きな問題です。例えば、模擬投票をやっても政治家を呼べないというのはおかしいですよね。全政党を呼ぶならいいのですが、それは現実的に難しい。私立学校ならまだ判断の余地がありますが、公立学校では非常に制限されています。
「若者の政治参画が作る未来社会」
落合: 最後に、島田さんがビジョンとして描く、若者が政治に参画することで実現する社会像についてお聞かせください。
島田: 私が描くビジョンにはいくつかのキーワードがあります。「新陳代謝」「多様性」「労働市場の流動性」「経済成長」「ウェルビーイング(幸福)」です。
落合: 労働市場の流動性というのは意外ですね。
島田: 社会課題が複雑化し、先行きが不透明な時代には、人材もフレキシブルに動ける体制が必要だと思うんです。必要なところに必要な人がいる状態を作るためには、新陳代謝と労働市場の流動性が重要です。多様性も同様で、様々な社会課題を解決するためには多様なオプションが必要です。
落合: そうした状態が経済成長にもつながるということですか?
島田: そうです。これらが実現できれば経済成長につながり、「今日より明日がいい」と思える社会、つまり幸福度の高い社会が実現すると考えています。そしてこれらすべてに共通するのは、若い人が政治や市場に参画していくことなんです。
落合: 具体的にはどのような課題がありますか?
島田: 現在の日本は意思決定の場に若者が少なすぎます。高齢者ばかりでは新陳代謝も多様性も生まれません。
面白いデータがあって、60歳以上の人口に投票率をかけた数字、つまり60歳以上の票数と比較すると、40歳以下の人が95%投票に行かないと勝てないという計算になるんです。これは人口動態からして構造的に難しい状況です。
落合: そこまで差があるんですか。それは厳しいですね。
島田: そうなんです。このままでは若者の声は政治に反映されません。私は女性のクオーター制のような形で、年齢別のクオーター制も検討すべきだと思っています。
例えば政党が候補者を立てる際に、10〜15%は30代の人を入れるといった取り組みが必要ではないでしょうか。
落合: それは面白い提案ですね。
島田: 若い世代の政治参画は、新陳代謝、多様性、労働市場の流動性、経済成長、ウェルビーイングというすべてが解決策として必要不可欠です。私たちの活動はその第一ステップとして、若者が政治に参画できる場所と風土、環境を整えることを目指しています。
落合: 結局、若い世代もウェルビーイング、つまり幸福を望んでいるはずなのに、それが政治と結びついていると感じられていないのかもしれませんね。
島田: そうなんです。政治が身近なものであり、自分の幸福や社会の未来を作る手段だということをもっと多くの若者に理解してもらいたいと思います。そうすれば「政治なんて関係ない」という感覚は変わるでしょう。
落合: 今日はありがとうございました。島田さんの活動が多くの若者にとって政治への入り口となり、より良い社会の実現につながることを願っています。
島田: こちらこそありがとうございました。これからも若者と政治の接点を広げる活動を続けていきたいと思います。
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