この記事を読んでくれている皆さんは既にご存知かもしれないが、令和の大学受験は既に「大推薦時代」に突入しており、その潮流は私学、中でも私学の雄と並び称されてきた早稲田大学・慶應義塾大学において顕著だ。

 実際に2022年度の文部科学省の調査によると、推薦入試による合格者は50.3%と、一般入試による合格者の49.7%を上回る水準となっている。、上記で名前をあげた早稲田大学でも一昔前は文系3教科を研ぎ澄ませた文系職人とも言うべき受験生の入学が多くみられたものの、2026年までに推薦型入試を全体の6割にするという発表をしており、その流れは加速するばかりだ。

 一方で、受験生の子どもを持つ親世代には、まだまだ推薦入試に対する理解が浸透しておらず、「一般入試で受験した子どもたちと比べると、努力せずに入っている」「大学に入学してから、学力が担保できないのでは」など、否定的な声も聞かれるのが現状だ。

 しかし、従来の受験にはない、新しい選択肢として出てきた推薦入試への理解が保護者、子供の双方になければベストな大学受験を遂行することは難しいだろう。

 そこで、今回は私学の中でも早慶に焦点を当て、推薦入試の中身、対策、そして推薦入試と一般入試どちらを選ぶべきかについて考えていきたいと思う。

ここ10数年での一般入試合格者は80%→50%程度へ 

 ここ数十年での一番大きな変化といえば、一般入学者割合の大幅な減少だ。1980年代には80%ほどであった一般入学者比率は、なんと55%程度にまで減少してしまった。

 この頃の入試方式としては、内部進学や指定校推薦こそ存在したが、今ではメジャーな入学方式となった総合型選抜(AO入試)は存在しなかった(1990年代に慶應SFCによって初導入)。

 当時は、現在の保護者世代や祖父母世代が記憶しているように、入学者の大多数が熾烈な一般入試を経験し、多くは浪人を経験して大学に入学していたわけだ。

 しかし、そこから系列校も増加し、内部推薦の枠が増加(早稲田:早稲田佐賀や早稲田摂陵 慶應:湘南藤沢中高や慶應ニューヨーク高など)した。

 加えて、少子化によって一般入試での学生確保という課題に直面したこともあり、指定校推薦の枠を多くの学校に与えるようになり、エッセイや面接によって評価される「総合型選抜」も続々と導入されるなど、その流れは2000年代以降どんどんと増した。

 筆者が早稲田大学に在学した2010年代後半以降はAO方式での入学者が大幅増となり、現在においても2025年より慶應大学経済学部において指定校推薦が初導入されるなど、これまで推薦を受け入れていなかった慶應大学の看板学部もこの流れに抗えなくなりつつある。

 

学校の成績が良い「優等生」でなくても大丈夫!早慶推薦入試の中身について

 ここでは早慶各々の推薦入試(総合選抜型、自己推薦型)の中身について見ていくが、その前にそもそもこのような入試方式はどのようなものなのかという前提を先に述べておく。

 総合型選抜入試(旧AO入試)は、出願書類や面接、小論文などの試験を通して大学・学部が求める学生像(アドミッションポリシー)に一致する受験生を選抜する入学試験である。

 つまりは学力試験だけでは測ることができない「自大学で学び、成長したい学生」をしっかりと受け入れることを目的にしており、その出願の際に、志望理由書や資格証明の提出が求められるほか、面接でも入学後に学びたいことを聞かれるなど、企業の就職活動のようなプロセスを踏む。

 なので、ここから述べていく中身については、上記のような学びの計画が問われることを前提としてご認識いただきたい。

早稲田大学の推薦入試について

 早稲田大学においてはさまざまな学部で多種多様な自己推薦入試、総合選抜入試が行われている。

 従来、推薦入試といえば、学校推薦が中心で「学校の成績が良くないと受からない」といったイメージを持たれがちだったが、早稲田大学においてはそんなことはない。

 評定要件の出願要件を設けているのは社会科学部の全国自己推薦入試、人間科学部のFACT選抜、スポーツ科学部のスポーツ自己推薦入試の3入試のみで、そこでは概ね4.0以上求められているが、その他の方式についてはそもそも評定は出願にあたって全く必要がない。

 そんな早稲田大学の推薦入試で合格にあたり求められるのは大きく3つで「解決したい課題」、「英語」、「スポーツの実績」の3つだ。

 「スポーツの実績」はもちろんあるに越したことはないが適正が各々あるものなので一旦置いておいて、その他2つについて考えていく。

 まず、「解決したい課題」については、地域探究・貢献入試(法・文構・文・教育・人科・スポ科)、社会科学部 全国自己推薦入試人間科学部、 FACT選抜入試(人間科学部)で求められるものである。その地域が抱える課題の解決や、地域の発展に向けて社会的・文化的・学術的に学び、貢献する意志を志望理由書等で示すこと、そして小論文と面接でアピールすることが重要となる。
 自分自身が高校までに感じた課題を、早稲田大学の所定の学部において学ぶことで解決したいという意思を表した書類が必要となるため、実績等を含めたアピールが必要となるだろう。

 続いて「英語」だが、政治経済学部(海外就学経験者)グローバル入試、国際教養学部 AO入試(国内選考)、文化構想学部 国際日本文化論プログラム(JCulP)、社会科学部 英語学位プログラムAO入試(TAISI)等で必要となる。
 早稲田大学全体として、やはり国際的に活躍できる人材を輩出したいという想いが強くあり、英語での志望動機や小論文に加え、英検などの英語系資格が出願にも必要となるが、この部分が満たせれば、上記の入試方式含め多くの学部への出願が可能となってくるだろう。

慶應義塾大学の推薦入試について

 現在、慶應義塾大学では 文学部の自主応募制推薦入試、法学部のFIT入試、理工学部・総合政策学部・環境情報学部・看護医療学部の総合型・学校推薦型選抜 ( AO・推薦入試 ) などが一般選抜のほかに行われている。

 理工学部・総合政策学部・環境情報学部・看護医療学部では書類による審査ののち、大学の教授と直接話す面接試験が課される。 文学部の自主応募制推薦入試では小論文による筆記試験、法学部のFIT入試では小論文による筆記試験に加えて、面接または口頭試問が行われる。

 早稲田大学と比べても同様に評定平均が問われる形式は多くなく、学部のFIT入試B方式、文学部の自主応募制推薦入試、看護医療学部の総合型入試B方式のみとなり、こちらも概ね4.0以上が必要だが、それ以外の方式は一切問われない(一部入試においてA方式B方式があり、A方式は実績重視、B方式は全国から広く採用されることが特徴なため、評定が満たせるのであればB方式は案外狙い目だ)。

 また、特徴としてはSFC(湘南藤沢キャンパス・環境情報学部 / 総合政策学部)は日本で初めてAO入試を導入しただけあり、総合政策と環境情報の両学部の定員が各150人と比較的多い枠を設けている。

 用意する書類も「志望理由書」「自由記述」「活動報告」「任意提出資料」と多岐に渡るが、歴史の古い形式である分、対策資料も豊富であり、定員も多く、他の学部において資料を流用することも可能なため、「早慶のいずれかに入りたい!」という強い意志をお持ちの方はまずは慶応SFCの受験を検討してみることをオススメしたい。 

福沢諭吉も今の時代ならきっと唱えたであろ「推薦入試のすゝめ」

 ここまで早慶の推薦入試の中身について見てきたが、ご覧の通り出願条件はそこまで厳しくないのが現状だ。

 この状況であれば、早慶を第一志望にしたい方はもちろん、一つ下のMARCHクラスの学力の受験生も早慶の推薦入試を検討すべきだろう。

 理由として、早慶の推薦入試で強く求められるのは英語力や学習への意欲、高校時代の取り組みだ。英語力は当然一般入試に備える上で英語資格を目指し、それが結果的に推薦入試に活きてくるという考え方もでき、取り組みは今の時代、逆算的に行動することでいくらでも実績が作れる。

 また、早期に合否が判明する総合型選抜を活用すれば、現役合格の可能性を最大化できる

 例えば、年内に併願校を総合型選抜で合格すれば、残りの時間は第一志望の大学の対策だけに的を絞れるし、併願校の準備を進めながら第一志望の総合型選抜にも出願し、ダメなら一般でリベンジという2段構えの受験も可能になるわけだ。

 この大推薦受験時代、多様な経験を通した活動実績を作ることで突破し、専門性や人間性を高めた上で自身のキャリアを築くのは間違いなく有力な選択肢になっていくだろう。