東京大学の推薦入試。一般入試とは異なり、「学力」だけでなく、「活動実績」や「個性」「将来の展望」などを評価されるこの制度は、導入から年数を重ねる中で徐々にその姿を変えてきています。では、実際に推薦で合格した人たちは、どんな動機で推薦を選び、どんな成績で臨み、どんな準備をしていたのでしょうか?

 今回、東大推薦合格者20〜30人にインタビュー・アンケートを行い、その実態を明らかにしました。

「東大推薦はチャレンジ・本命は一般入試」

 東大の推薦入試というと、「推薦で合格した」ということは、「東大の一般入試では合格は無理だった、という人も多いのでは」という声も一部にはあります。が、今回のアンケートでは、それとは真逆の実態が見えてきました。

 実に9割以上の推薦合格者が、東大または京大の一般入試も志望していたと回答。実際、出願していた人も多く、「推薦はチャレンジで、最終的には一般で勝負するつもりだった。」「受かってしまって逆に驚いた。」と語る受験生もいました。

 推薦を決めたのは「高3春」が最多

推薦入試を視野に入れたタイミングについても聞いてみました。その結果がこちらです。

推薦受験を決めた時期

割合

それ以前(中学など)

4.3%

高2夏

4.3%

高2秋

6.7%

高2冬

6.7%

高3春

50.4%

高3夏

23.3%

高3秋

4.3%

 「高3春に決めた」という回答が半数以上を占め、多くの受験生が高校3年になってから推薦という選択肢を現実的に考え始めたことが分かります。これは、共通テスト対策や模試の結果、部活動・探究活動の成果がある程度見えてきた時期と重なります。

 この結果だけを見て、「高3春から対策を始めればOK」という風に考えるのは早計かもしれません。なぜなら、それまでの実績が見えてきて、その上で「この実績があればいけるかも」と考えた人が多かったと考えることができるからです。

推薦を選んだ理由:「アピールしたい活動があったから」

では、なぜ推薦というルートを選んだのでしょうか? その理由についての回答は以下の通りです。

推薦を選んだ理由

票数

① 特定の活動をアピールしたかったから

12票

② 一般受験より自分に合っていると思ったから

11票

③ 学校の推薦を受けられる環境にいたから

10票

④ 先生に推薦を勧められたから

8票

 やはり一番多かったのは、「アピールしたい活動があった」という回答ですね。

 全国大会での実績、研究発表、地域活動、留学経験など、通常の一般入試では評価されにくい側面を、推薦ならば評価してもらえるという期待が背景にあるのではと考えられますね。

 また、理由の3位に「学校の推薦を受けられる環境にいたから」、4位に「先生に推薦を勧められたから」がランクインしていたことからもわかる通り、学校のサポートは必須だと言えます。

 推薦は“誰でも出願できる”わけではありません。つまり、学校側が推薦入試に前向きかどうか、制度の説明があるかどうか、推薦に向けたサポートがあるかどうか。こうした“周囲の環境”が、合否以前に「受験するかどうか」を左右しているということです。

共通テストでも高得点

 推薦合格者の学力面についても見てみましょう。共通テストの得点率は次のようになりました。

得点帯

割合

9割〜9.5割

50%

8.5割〜9割

45.5%

8割〜8.5割

4.5%

 実に95%以上の受験生が8.5割以上を得点していたことになります。一般入試でも、東大合格者の共通テストの点数は大体9割程度。ということは、一般入試と推薦入試で決して違いがあるわけではないことがわかります。推薦入試といえども、学力は東大一般レベルと変わらないという実態がここからも見えてきます。

高3秋の模試偏差値:「50〜55」が多数、でもA判定も

 高3秋時点の模試(東大実践模試・東大オープン)に関しても質問しました。ここでは、「偏差値50〜55」が最多層でした。推薦入試に向けて探究活動や面接・志望理由書の準備に時間を割き、模試対策に専念できなかったであろう東大推薦合格者たちが、東大の冠模試で「偏差値50〜55」をマークしているというのは、びっくりですね。

 また「A判定」「偏差値65超」という層もちらほら見られ、推薦合格者の中には、一般でも十分合格圏内だった実力者が多いというのも確かです。

推薦は「逃げ道」ではなく「戦略」

 最後に、今回のアンケートから見えた全体像をまとめてみましょう。

・推薦合格者の大多数は、もともと東大・京大の一般合格を狙える力を持っていた。
「推薦なら通りやすい」という甘い考えではなく、「活動の強み」「将来の展望」など自分の個性と戦略を活かして推薦という道を選んでいた。
つまり、推薦は「逃げ道」ではなく、「自分の強みを最大限に活かすためのルート」として選ばれていた。

 もちろん中には、成績的には一般では難しかっただろうというケースもゼロではありません。それらの層は、学力以外の部分で東大に認められるだけの何かを持っていたということになります。