みなさん「可愛い子には旅をさせよ」ということわざを知っていますか?

「可愛い子には旅をさせよ」とは、子どもが本当に成長するためには親のそばで守るのではなく、あえて困難や経験をさせた方が良い、という意味です。

しかし、最近ではGPSで位置情報を把握したり、進路を親が勝手に決めてしまうといった過保護な親御さんが増えています。

そんな中、なんと今回インタビューするWさんは親御さんの反対を押し切り、勝手に北極に旅立ったそう。

北極という命の危険性がある場所に、好奇心だけで飛び込めるWさんについて今回深掘りしていきます!!

なぜ北極に旅立つことに?

「国際的な社会貢献プログラム『Race4Good』に参加したから、北極に行くことになりました。」


「Race4Good」とは、世界中の小学生〜高校生がチームを組み、実際の貧困地域や社会問題に対してビジネスの力で解決策を考え、競い合う国際的なコンテストです。

学校にOBの方が遊びにきた際、「Race4Good」への参加を促し、それに興味を持ったことがきっかけだったそう。

毎回テーマとなる地域は異なる「Race4Good」。最初から北極がテーマとわかっていたわけではなく、対象地域が地球最北端にある「カナック村」であるとわかったのは、参加手続きを終えた後だったそうです。


「北極に対する知識は『ホッキョクグマ』とか『プラスチック問題』くらいしか知らなかったし……。でも、それを上回るドキドキ感で、楽しみで仕方なかったです。」

「Race4Good」では選ばれた地域に根ざす貧困や環境問題などの社会課題に対して、世界中の学生がチームを組み、解決に向けて様々な検討・取り組みの提案を行います。ですが、今回該当地域として選ばれた「カナック村」はその当時、インターネットで検索をしても、何の情報も出てこない地域でした。
というのも、「カナック村」に初めてメディアが取材したのは2023年とつい最近のこと。Wikipediaにも載っていないこの村について知るためには「現地調査」しかありませんでした。

社会課題を解決する有効な手段の提案には、その地域の悩みや課題を、現地の人々の目線に立って知らなくてはならない。でも、日本にいては全く情報が手に入らない。本当の課題を知るためには、北極に飛ぶしかない。そう考えたWさんは大会事務員に頼みこみ、現地住民の取材アポを獲得。日本から3日もかけて村へ向かい、現地の人の生活様式や文化、リアルな悩みを聞き出し、提案するビジネスアイデアの参考にしました。実際、現地住民の方で英語を話せる人はほとんどおらず、ジェスチャー等で会話を試みていたそうです。Wさんはグループ最年長だったこともあってか、必然的にリーダーを任され、各メンバーに役割分担を行い、みんなを率いるようになりました。

「年齢差も大きく、個人の能力にも差があったため、協働作業にはかなり苦戦しましたが、結果としてグランプリを受賞し、世界1位の称号を頂くことができました。」

彼女の行動力がもたらした栄冠でしたが、ある種無謀とも思える彼女の行動に対して、もちろん諸手を挙げて賛成した人ばかりではありません。北極といえば、世界でも有数の危険地帯。命を落とす危険も十分にあります。普段、どんなことでも背中を押してくれる親御さんも、さすがに今回ばかりはかなり引き止めたそう。しかし、普段行けない環境に行ける機会を逃したくなかったWさんは、半ば強引に両親を説き伏せ、北極へ旅立ちました。

「北極に行くなんて思っていなかったので、とてもびっくりしました。でも、新しいことに挑戦することが楽しくて仕方なくて、不安は全然なかった。死んでも本望な場所ならいつ死んでもいいかな、と考えていたので、恐怖心がなかったです。
そもそも、昔から気になったことは放っておけない性格で、興味を持ったことには何でもチャレンジしていました。全く異なるフィールドでも中に入ってみないとわからないので、学生時代も農学から貧困問題まで幅広い課外活動に参加していました。経験してる方が何事も得だと思うし、今思えば実践型思考が本当に強かった。」

好奇心に背中を押されて

世界1位という輝かしい功績を持つWさんですが、その裏では過酷な努力がありました。

学校の定期テストで最も忙しい時期と「Race4Good」をはじめとした5.6個の課外活動が重なり、睡眠時間は毎日2時間ほど。過労で倒れたことも一度や二度ではありません。それでも、体が悲鳴を上げていることを無視し、Wさんは「やりたいこと」を優先するために「やらなければならないこと」を必死にこなしていたといいます。
「Hands On Tokyo」や「activo」、Xのボランティアまとめアカウントなどを活用し、自主的に気になる分野の課外活動を探しては片っ端から参加を繰り返した結果、高校卒業までに彼女が取り組んだ課外活動の総数はなんと300件を超えました。
全国歌唱コンクールでの2位入賞、国際組織ラウンドスクエアでの模擬国連課長の経験など、実績は数えきれないほどあります。

私生活からも楽しい様子が伝わるWさん↓


小さい頃から好奇心旺盛だったWさんには、それを象徴するエピソードがあります。
小学6年生のある日、Wさんは家族に突然こう言いました。

「私、英語をやってみたいからIB(国際バカロレア)の中学校に進学したい!」

IBとは、「すべての授業を英語で行い、エッセイや探究活動が義務付けられる日本の受験中心の教育とは全く異なる国際的な教育システム」のこと。

家族は全員日本人で、彼女自身も海外経験すらない。それでも、「英語が話せたら楽しそう」と、軽い気持ちから進学を決めました。

しかし、ただの中学生がから英語だけの世界に飛び込むハードルは高かった。学費は通常の中学校の2倍以上かかり、英語が全くできない状態で入学しても授業理解など夢のまた夢。親御さんも心配して止めようとしましたが、Wさんは明るい未来への期待を胸に、最後まで説得を続けました。そしてついに、IBの学校に進学します。

入学後の困難は想像以上でした。半年経ってようやく聞き取れるようになってきた英語も、同学年とのコミュニケーションに至るまでには1年以上の時間が必要でした。それまでは言葉が通じず友達もできず、孤独に耐えきれず何度も「やめたい」悩んだそうです。

それでも、「自分の選択には責任を持ちなさい」という親御さんの言葉を胸に努力を続け、少しずつ英語を使いこなせるようになっていきました。今では「IBを選んで本当によかった」と振り返ります。

「自分の経験を武器にしたい」

「推薦入試を目指して活動してきたわけではありません。けれど、自分の多様なバックグラウンドや経験を活かせるのは、知識だけを測る一般入試よりも、人物像そのものを見てくれる推薦入試だと感じました。その結果、IB生専用の入試ではなく、あえて総合型選抜に挑戦することを決意しました。」

最初は一般入試も考えていたWさんですが、自分が取り組んできた多様な活動を正しく評価してくれるシステムで受験したいという思いが強まっていきました。だからこそ、知識の一軸ではなく、自分に通った様々な軸をすべて多面的に検討してくれる総合型選抜を選択しました。もちろん、推薦入試は色々闇雲に手を出せばいいわけではありません。特にAO入試では、一貫性のある活動が求められがちです。
しかし、Wさんはとにかく好奇心のままに挑戦してきたため、過去の活動の軸を一つに絞ることができませんでした。
だからこそ、「私は一つの分野に決められないけれど、幅広く学んで頑張れる人間なんです!!」と飾らない、ありのままの自分を伝え、弱点を強みに変えたと言います。

ですが、彼女の行く手には、さらに意外な敵が立ちふさがりました。志望理由書です。軸が多すぎて絞り切れないのはもちろん、日本語を書く段階でも困難がありました。

IBのカリキュラムで一般的な「国語」という科目を履修していなかったWさん。日本の文学作品でしか、日本語に触れてこなかったため、作文には小説や詩の影響を強く出てしまうようになりました。志望理由書を書く際にも、どうしてもポエマーチックになってしまうと悩んだそうです。

加えて、課外活動が多すぎて方向性を絞れずに迷走。学校の先生と親御さんにみてもらいながら、ひたすら自分が好きなことを書いて、どれをキーワードとして残したいかをブラッシュアップし、リライト。60回目くらいで時系列の大事さを知り、相手に伝わりやすい文章を意識して書くように。100回近くも書き直して、ようやく渾身の完成版にたどり着きました。

そんなWさんが実際に書いた志望理由書はこちら↓

「中学卒業以降の国際体験」(日本語500字以内)

「Quyanaq. また会おうね」。言葉とは裏腹に、二度と合えない想いに涙を堪えながら写真を渡してくれた。2023年3月、私は地球最北端の人口約600人のカナック村に住む友人に別れを告げた。2022年の12月、グローバルビジネスコンテストRace4Goodで世界1位を受賞した。小学生を含む14名のリーダーとして、先住民の生活改善を促すビジネスを立案した。審査はGSKなど有名企業CEOが担当し、計画の実現性や未来の展望力が問われた。優勝後、主催者と担当教員に熱意を伝えカナック村訪問が叶った。偏った食生活や深刻なインフラ課題の他、現地で子どもの飲酒や自死が多い事に衝撃を受けた。少年達の将来はハンターだ。彼らは常に死と直面し、極限の大自然に孤独を感じていた。不十分なWi-Fi設備、極夜、-60℃の酷寒に加え、「寄り添うものが無い深刻さ」を帰国後も考え続けた。約1週間の滞在でさえ、私はカナック村の日常に退屈を感じた。最北端での経験で、自身の関心が社会課題から精神的貧困の要因追及に変化し始めた。そして、私はこの子供達や貧困に苦しむ人々が、将来に曙光を見出せる未来の実現への決意をさらに固めた。

「中学卒業以降に一番力を入れて取り組んだこと」(日本語300字以内)

幼少から歌唱活動を通して、表現力を磨いてきた。音程に忠実な歌唱よりも、心を揺さぶり感動させる歌唱を目指してきた。目の細かい動き、手の動き、姿勢全てが表現を示す。その細部全てに意味を考え、創意工夫を凝らして歌唱した結果、歌唱全国3位を2度受賞した。コンクールの審査員は人間であり、心がある。歌には人を惹き込む力がある。その力を今日まで全力で磨いてきたのだ。歌唱全国の他にも、ダンス・ラジオ・劇・司会と表現を多様に取り組んできた私だが、人前に立ち表現し続けることの恐ろしさも理解している。歌唱コンクールの1週間前には、過去のステージでの失敗を思い返し、精神状況から声が突然出なくなった。しかし、それでも挫けずに表現を幾度と続けてきた。その強みで政府関係者・学園長・法人団体等多くの場で表現を込めた演説を行い、46カ国以上の人々の声を聞きにいった。

Essay「今までのご自身の経験と将来の夢をつなぐ場としてSILSを選んだ理由」(日本語800字以内)

「先週兄が自殺したの」。14歳のカトリーナは、15歳の兄の自死を平然と打ち明けた。2023年3月、私は地球最北端に位置するカナック村に住む友人に別れを告げた。私には、先住民の精神的貧困を解決したいという夢がある。精神的貧困の明確な定義はないが、私は「日常生活で満足感や幸福感を感じることが難しい状態」だと考える。私自身が精神的貧困に陥った時、救ってくれたのはエンターテイメント=歌だった。

そこで、自身の仮説として、娯楽(エンタメ)の無さが精神的貧困の原因なのではないかと考えた。だが、精神的貧困とは一体何なのか。どのような原因なのか。関わる学問領域は何か。自分の認識を外部視点から考え直そうと探求意欲が深く湧いた。しかし、私は批判的思考が未熟だ。故に、貴学での4年間で以下のクラスターを通した3つを達成したい。1つは、精神的貧困の原因究明を【思想・文化】を通して、比較文化とカルチュラルスタディーズで追求し、時代や社会と人々の精神がどうつかを主に文化人類学から分析したい。加えて、コミュニティで団体で過ごすことが精神にどう影響を及ぼすのかを研究したい。「類は友を呼ぶ」という言葉はあるが、類似する個人が近しくなることが常なのか。同じコミュニティに属するからこそ互いに影響されて類似しているのではないか。また、臨床心理行動科学から精神は人間にどう関わるのかを見つめ直したい。2つ目は、【生命】で生命倫理の観点から精神と生命の繋がりを学びたい。3つ目は、【コミュニケーション】で先住民を配慮した対話を研究し、先住民の意見を聞くための姿勢を身につけ

たい。更に、経営学と心理学から先住民の中でも自然と共に生きるカナック村の人々、ビジネスを開拓する民族や近代化を拒む民族は何が違うのかを比較研究したい。そして、何故似た境遇で過ごす先住民でも違いが生まれるのかを追求したい。

将来は国際連合開発計画に勤め、国際社会にて先住民の方々に取り巻く貧困問題への解決に力強く貢献したい。現在在籍する国際バカロレアで培った英語力、論理的思考力や多面的思考を更に貴学で成長させ、異なる領域の繋がりを捉えたい。故に、貴学以上の研究環境はないと確信し、ここに志願した。

まとめ

Wさんは将来、国連開発計画(UNDP)で働きたいそうです。

「これまで色々な経験をしてきたからこそ、多角的な視点を持つことができたように感じます。一貫性がなくて悩んでいた私だけど、様々な立場や視点に立って課題を解決する『開発』なら私の強みを活かして、社会に貢献できると思ったんです。」

これからも様々なことにチャレンジして、さらにアップデートしていくWさんの今後に期待です!!