本連載では、書籍「東大理Ⅲ 合格の秘訣」の中身を引用し、今年東京大学理科3類に合格した人がどのように勉強をしていたのかについて、記事を掲載していきます。
今回は、東大寺学園卒の上田さんからお話を伺いました。
臨床医になりたい★★★★★
研究医になりたい★★★★★
医者以外の道もあり☆☆☆☆☆
私立東大寺学園卒 現役
共通テスト 935点
前期 東大理Ⅲ ○
後期 (出願)千葉大医
併願 慶應大医 ○
得意科目 英語・国語
不得意科目 数学
山のように本を借りた子供時代
昔から本を読むのが大好きで、小学生の頃は毎週のように図書館に連れて行ってもらっては、山のように本を借り、本の入った袋を担ぐようにして家に持って帰って、一心不乱に読んでいました。
小4から浜学園に通い、中学受験対策を始めました。新しい考え方や、新たな事実を吸収するのが面白く、小6まで楽しんで通塾しました。奈良県に住んでいて、自由な校風に惹かれたこともあり、東大寺学園が第一志望で、無事合格しました。
中学入学後も読書は大好きで、ずっと本を読んでいました。中1の1年間で、小説を中心に約100冊の本を読みました。村上春樹さん、伊藤計劃さん、佐藤究さんの本が好きです
楽しかった学校生活
入学後に偶然隣の席になった友達が、とても勉強ができて格好良く見えました。後に文系に進み、今では東大で共に学ぶ彼に刺激を受け、学校では周りの友人と切磋琢磨して楽しく勉強しました。特に英語と国語の授業が好きで、楽しみでした。
英語は、新しい文法規則にならった言語で記述された世界を、自分が解釈して再構築していくという体験、世界が広がっていくような感覚が大好きでした。学校の先生も優しく丁寧に教えてくださり、高3まで英語は得意教科でした。
国語は、先生の選んだ本を読み聞かせてもらう時間があったり、自分で短歌を作ってみる回があったり、みんなで生徒の答案の良い点や改善点を言い合ったりする、創造性豊かな授業で、高3まで楽しく授業を受けました。模試でも国語は大得意で、国語の科目別順位では、高3の一年間で東大・京大の冠模試の全国トップ10に3回入ることができました。
学校では、バドミントン部に入部しました。定期テスト前には、テスト対策を真面目にやっていました。今から考えると、中学生の内にしっかりと基礎固めをしていたことと、短期間で集中して課題をこなす能力を養えたことが良かったです。
全統高決勝、英国研修、科甲もいい思い出
中3の時から東進の数学特待制度を活用し、高1の12月までに数Ⅲの履修を終えました。
高1の6月に、全国統一高校生テストの決勝大会で新幹線に乗って東京まで行きました。新宿の東京都庁の目の前の、京王プラザホテルに泊まって、東京の賑やかな雰囲気と熱気が大好きになり、そして何よりも、高みを目指し、選ばれた者だけが見える世界を見てみたいと強く思いました。幼少期から漠然と医師になりたいと思っていたこともあり、東京から奈良に帰ってくると、自然と心は理Ⅲ志望になっていました。
高2の夏休みには、イギリスに渡り、ケンブリッジ大学で10日間の英国研修を受けました。全く見知らぬ土地で、とても優秀な現地の大学生の方々と過ごした一瞬一瞬は刺激的で、とても楽しかったです。大学では幅広い学問分野を学び、再び自分の可能性を広げる一歩を踏み出したいです。
高2から高3に上がる春休みには、科学の甲子園に奈良県代表の一員として出場しました。同じ高校の中で8人チームを組み、理科4科目と数学、情報の計6科目の筆記試験と実技試験の成績で競う大会で、茨城県つくば市まで行って大会に参加しました。熱気球を作って打ち上げる課題が事前に発表されたのですが、学校に遅くまで残ってはデータを集め、その日の夜に改良案を出し合っては次の日の朝早く登校して早速実験してみる、オンラインで大会の過去問について議論を重ねる、東大寺の大仏殿に行って祈願する、などの充実した時間を過ごしました。個人戦の受験とは違い、チームで戦う経験は新鮮で、とても楽しかったです。成績は総合で全国7位でしたが、もっと上を目指していたのでかなり悔しかったです。帰りの新幹線で敗北感と無力感でいっぱいになったのを今でも覚えています。
生まれつきの才能以外の部分で勝つ
理Ⅲを目指す上で後悔はできないと思い、高1の12月に、鉄緑会に入会しました。当面は、約1年後、高2の2月にある東大同日模試で理Ⅰの合格最低点を上回ることを目標に勉強していました。予想していた通り鉄緑の授業はハイレベルで、毎週の課題をこなすだけで大変でしたが、熱意あふれる先生と優秀な同級生に恵まれ、今振り返ると楽しく通っていたように思います。東進の高2東大本番レベル模試を高1の途中から受験し、理Ⅲの判定はD→D→C→B→Aと、右肩上がりでした。英語が高得点で安定していたのと、理数が成長していったのが良い点だったと思います。努力の甲斐もあってか、無事に東大同日模試では共通テスト同日模試と合わせて理ⅢA判定で、理Ⅰの合格最低点を上回ることができ、一安心しました。理Ⅲの合格最低点には50点ほど足りませんでした。
理科と数学はあまり得意ではなかったので、勉強法を工夫していました。
数学では、見開きのノートの左に問題文を貼り、右側には正答を書き、右のページを隠して問題文だけを見ては、考えられるアプローチや問題のポイントとなりそうな部分を問題文の下に書き出してみて、その解法を選ぶ理由や類似した問題をじっくり検討していました。
理科では、難問とされる問題を一問解くたびに、どこが難しい点だったのかを、内容面と時間面の両方から検討して、書き出していました。これらをストックしておき、ある程度の物理現象や化学の反応操作における「難しい問題」のパターンは頭の中にストックしていました。東大の理科は時間が本当に厳しいので、問題の引き出しを多く持っていて、素早く引き出せるようにすることは大きな強みになると思います。
総じて、僕は周りの賢い友達に比べて、生まれつき理数の才能があるわけではないので、訓練や努力で補える、「生まれつきの才能以外の部分」を鍛えることを念頭において勉強していました。
夏の東大模試ではオープン、実戦ともに理ⅢB判定でした。どちらも理Ⅲ志望者の中で100位前後であり、まずまずといったところでしたが、理数が弱く、秋模試までの課題として設定しました。
東大寺の大仏さまに合格祈願
秋の東大模試はオープンがA、実戦がB判定でした。どちらも、理Ⅲの定員数より上の順位だったので、自信を持って共通テスト対策の勉強に切り替えられました。
年末年始は共通テスト対策一色でした。地理の勉強と化学の知識の再確認をして、国語とリスニングの戦略を練っている内に、時間はあっという間に過ぎ、本番を迎えました。最終的に、共通テストの過去問は地理を20年分、国語を10年分解きました。鈴木達人先生の「たつじん地理」というサイトと、中野芳樹先生の「現代文読解法の基礎講義」という本はどちらもとても良かったです。
共通テストの前日には、同級生4人で東大寺の大仏殿まで行って、合格祈願をしました。迎えた共通テストの結果は935点。最低ラインとして設定した945点に届かずあまり満足できない点数でしたが、すぐに切り替えて二次対策に移りました。
共通テスト後は、友達と一緒に学校に行き、数学と理科の過去問を本番の時間に合わせて解きました。解いた後はお互い採点して、感想戦をしました。友達も自分も後に理Ⅲに現役合格しました。
東大の過去問は、国語と数学が10年分、理科は20年分、英語は2年分を解きました。得意だった英語は演習よりも知識の確認を優先しました。
諦めるにはまだ早すぎる
東大入試前日に東京に入りました。前日は睡眠が途切れがちで、夜中に何度も起きてしまい苦しかったです。朝早く起きて、好きな音楽を聴きながらウォーキングして、リラックスに努めました。
東大の現代文は毎年興味深い話題が出題されるので、楽しみにしていました。「自己鏡像認知」が話題の一つとしてあり、詳しくは知らないけれど聞いたことはある内容だったので、興味深くすらすら読めました。予定通り現代文に半分を少し超える時間をかけて、国語の試験を終えました。
数学はあまり得意ではないので、謙虚に、できる問題から解く姿勢で臨みましたが、全然思うように解けませんでした。6問中1問しか完答できず、150分が一瞬で終わってしまい、数学の試験が終わった頃には、落ちてしまったかもしれない、と涙がこぼれそうになりました。しかし、ここで諦めて自分の努力を全て無駄にするわけにはいけない、諦めるにはまだ早すぎる、と考えて、ホテルに帰ってからは、物理と化学の勉強に必死に取り組みました。おそらく、その夜の自分は今までの人生の中で一番集中していたと思います。
次の日の朝の電車では、今日の出来で合否が決まると思うと、両肩がずっしり重く感じました。
理科は、形式変化にびっくりしました。問題数が少なくなり、問題そのものも、解きながらずっと「東大らしく」ないな、と思っていました。難化したであろう化学で悪くない感触だったので、まずまずといったところでした。昨日の数学とも合わせて、過去問には無い問題の雰囲気を感じ取り、東大は何かを変えてきているな、本番は思っていたよりも結構心が削られるな、と思いました。
英語は得意科目なので、中高の6年間を全てぶつけるつもりで取り組みました。出題者の意図を読み取ることに努め、会心の出来でした。
18年間の答え合わせの時
試験が終わってからは友達に電話して、「78%で受かった」と言いました。細かい数字になったのは、「80%まではいかないけれど、それなりに自信はある」ことの表れ。試験終了後、あまりにも理Ⅲの試験会場の空気が重く張り詰めていたので、「もう二度と受けたくない」と心の底から思いました。理Ⅲ入試の3日間は、高3の1年間くらい心が擦り減り、体が疲れました。
東大の面接では、「なぜ東京大学に入りたいのか」と聞かれ、「全国から優秀な人が集まってくる東京大学で、多くの人と議論したり交流したりして、高い知見を手にしたいから」と答えました。
合格発表の時は、18年間の人生の答え合わせだな、と思って不安でした。合格が分かった時はほっとしました。
将来は患者さんに寄り添って、患者さんを肉体的にも精神的にもケアできる医師になりたいです。「ことば」や「こころ」に興味があって、複雑な人間の営みをもっと知りたいと思うので、精神医学の領域にも関心があります。





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