2026年2月11日、東京大学の学校推薦型選抜(以下、東大推薦)の合格発表が行われました。合格者を出した高校(判明分)に着目すると、今年の傾向がいくつか浮き彫りになります。

 本記事では、判明している合格校データをもとに、2026年の傾向を大きく3点に整理します。結論から言えば、見えてきたのは①地域の集中②合格校の集中③中高一貫校の集中です。

1.地方出身者の減少 ― 都市圏集中の進行か?

■ 数値推移(2024→2025→2026)

・首都圏:50.5% → 39.5% → 47.3%(前年差 +7.8pt)

三大都市圏:63.7% → 57.0% → 62.9%(前年差 +5.9pt)

・地方(三大都市圏以外):36.3% → 43.0% → 37.1%(前年差 −5.9pt)

・合格者を出した都道府県の数:31 → 32 → 29

三大都市圏の比率が6割超となり、地方は30%台まで減少。都道府県数も減少し、地域によっては「合格者ゼロ」が生じていることから、より都市圏への偏りが強まった印象があります。さらに今年は、四国地方・山陰地方で合格者が確認できていない(例年は一定数確認される)点も目を引きます。

探究支援体制外部発表機会出願戦略のノウハウが都市部で先行して蓄積され、結果として「経験を積みやすい環境」が都市部ほど整っていることが一因でしょう。推薦入試の内情をいち早くキャッチし、それに適応すべく様々な施策を迅速に打ち出した都市部の高校が、順当に勝ちを重ねてきているように見えます。

ただし、2024年の数値まで俯瞰すれば、2025年が相対的に地方比率が高かった年であり、単年度の揺れとして解釈できる余地も。少なくとも、「今後は都市部の一人勝ち」と断言するまでには至りません。

東大が掲げるアドミッション・ポリシーの中核は「多様な学生構成」です。一般入試では地方出身者が3割弱であることを踏まえると、今年の地方比率(37.1%)でも一般入試の割合よりは高い水準といえます。とはいえ、「多様性」にはまだ程遠いのが現状ではないでしょうか。推薦を導入してもなお学生の多様性実現には限界があり、結局都市部出身者に偏ってしまうのか、今後はより丁寧な検証が必要でしょう。

2.複数人合格校が過去最多 ― 合格校の固定化

■ 2026年の特徴

・渋谷教育学園渋谷中学校・高等学校:4人合格(史上初)

・3人合格:7校

・2人合格:7校

・以上の15校で全体の43.8%を占有

渋渋が理論上最高値の4人合格を達成したのはニュースになりましたが、東大推薦累計合格者数ランキング上位の学校である西大和学園、灘、県立広島なども3人合格。2人合格を出した高校の数も例年から大きく増加し、複数人合格高校が一段と増えた年といえます。

東大推薦に毎年合格者を出す高校がここまで固定化されると、戦略上「個人」よりも「学校」の方が大きな比重を占めるようになりつつあるのではないかと思えてきます。

東大推薦は一般入試に比べて合格者の勝因分析が難しい上、過去問や面接質問例が出回りにくい。何より、歴史はまだたったの11年であり、受験生にとってはほとんどが未知です。その分、情報アドバンテージは一般入試よりも大きくなるので、ポートフォリオ設計、教員の支援体制、過去事例の共有など、ノウハウが蓄積された学校が有利になるのは自然な流れでしょう。

加えて、過去に合格者を出した学校ほど「挑戦の心理的ハードル」が下がり、出願も組織的になりやすいでしょう。こうした循環が働くと、合格校の固定化が進む可能性があります。

3.中高一貫校の爆増 ― 83.1%という水準

■ 数値推移(2024→2025→2026)

・中高一貫校出身者:68.1% → 61.6% → 83.1%(前年差+21.5pt)

※一貫教育を実施している学校(非完全3年制高校)を全て「中高一貫校」とカウントしている。高校からの編入生も含まれる可能性には留意が必要。

今回、最も明確に表れたのがこの点でした。推薦における評価軸は、継続的探究、一貫したテーマ性、早期からの研究活動、外部発表の積み上げと強く結びついています。

通常は中学2年~3年から高校受験に専念するため、課外活動などは妥協・中断せざるを得ない状況になりやすい。一方で、高校受験がない中高一貫校の生徒は、中1から高2・高3まで一貫して5年~6年体制の研究活動を行えるのです。中には受験と両立させられる生徒もいるでしょうが、同レベルの学生間では研究期間を長く取れるほうが圧倒的に優位なのは明らかでしょう。

また一般的な3年制の公立中学校の場合、探究活動などの課外活動に力を入れられる環境はほぼありません。公立中学校から継続して何か研究に打ち込めた、という生徒はごく一部を除いてほぼいないのが現状です。つまり、3年制高校よりも、中高6年で設計された環境の方が「積み上げ型の実績」を作りやすい構造にあるのです。

一般入試における中高一貫校出身者は7割程度。今年の東大推薦のそれは、7割を大幅に上回る83.1%に達しました。

3年制中学校→3年制高校というルートでは東大推薦で不利になりやすいのか、あるいは今年が特殊要因を含むのか。ここは今後、年度をまたいだ検証が不可欠です。

まとめ

2026年の東大推薦(判明分)からは、次の3点が同時に進んだように見えます。

・都市部への集中:都市圏が6割超

・合格校の集中:15校で約44%

・中高一貫校への集中:83.1%

この結果だけを見るなら、東大が推薦入試で掲げる「多様性(ダイバーシティ)」とは逆行した現象が生じているように感じます。すなわち、光るものを持ち合わせた個人だけでなく、探究環境・支援体制・情報資本を備えた「構造優位校」にいることが合格確率を押し上げる傾向が強まっているのではないか、という示唆です。

もっとも、単年度の変動なのか、構造的な転換なのかは断定できません。出願母数の変化なども含めて、来年度以降のデータと突き合わせながら慎重に分析する必要があるでしょう。


参考資料

『サンデー毎日2026年3月1日号』(毎日新聞出版)