大学入試における推薦入試割合増加の波が加速していることは、これまでも発信して来ている通りだが実際に2022年度の文部科学省の調査によると、推薦入試による合格者は50.3%。一般入試による合格者の49.7%を上回る水準となっている。

 これは私立大学のみならず国公立の超難関大学においても例外ではなく、東京大学、京都大学、東北大学などもその流れを汲んでいる状況だ。

 その中でも東大京大がやはり並び立つ印象があるが、逸れものを多数輩出するイメージの強い京大も年々推薦入試での合格者を増やしている

 では、果たしてどのような意図があり、どのような方式で、どちらの受験方式が良いのかについて、考えていきたいと思う。

変わり者だらけの京大生にメスを!京大推薦入試導入の意図とは

 京都大学といえば、東京大学と並び立つ西日本一の名門大学であり、我が国No.2の大学であるが、そんな京都大学の学生のイメージを一言で表すなら「変わり者」ではないだろうか。

 非常に自由な学風の中で俗物となることを嫌い、一部優秀な研究者を輩出してきた一方で「1人の天才のために99人の凡才がいる」を地で行くようなスタイルで8年間学部に在籍するような学生や、自由気ままに京都の街で飲酒を楽しむ学生も多く輩出してきた。

 一面的な物の見方をしたい訳ではないが、そのような学風は弊害もあり、大学合格時点での偏差値では双璧を成す東京大学に比べ「社会貢献性」という指標でみれば京都大学のコールド負けであることは明らかだろう。 

 そんな京都大学だが、2016年より「特色入試」という名称の入試を導入した。

 中身を見てみると、実質的には京都大学版の「総合選抜型入試および学校推薦入試」と考えて問題ないだろう。

 そんなこれ以上ないほどに多様性が担保されている京都大学が推薦入試を導入した意図は大きく下記の2点だと考えられる。

 それは、高大接続・高大連携の推進と、入試改革をばねとした高校・大学双方の教育改革だ。

 こう書くと仰々しい雰囲気があるが、その実入試における偏差値のみで突破した多くの入学者の中には、大学入学後には失速感のある人材となってしまうことを憂慮した結果といえる。幅広い学習に裏づけられた総合的な能力・意欲・適性・志を多面的に評価し、入学後も熱意を持って学習および学校生活に取り組むことができる人材の確保を目指したものと見て間違いない。

 導入当初、「意欲買います。京都大学」というキャッチコピーで推薦入試導入の周知を図っていたが、そのポリシーは導入から8年程度が経過した現在でも変わっていない。

特色入試とアドミッション・ポリシー

 実際、京大は【建学以来の「自由の学風」と学術の伝統を守りながら、「対話を根幹とした自学自習」という教育理念】を担う人材をアドミッション・ポリシーの中で定めている。

 特色入試で実践されている評価・選抜は、上記アドミッションポリシーと精緻に一致している。

 また、上記で説明してきた特色入試は導入初年度にあたる2016年度は14学科でのスタートとなったが、2019年度以降は全学部の22学科と導入する学科も増え、募集人員も2016年度108名から2021年度は165名、さらに昨年度、2024年度は177名と拡大している。このことからも、京都大学はこの入試方式で選抜された学生の質に一定の手応えを感じているようで、今後もチューニングが加えられながらもより拡大、定着して行く流れをとるだろう。

 加えて、1年ほど前に京大は2026年度入試から、「特色入試」の枠組みを使い、理学部と工学部で、女性のみが出願できる枠、いわゆる「女子枠」を導入することを発表したことも記憶に新しい。

 特色入試のうち、理学部は総合型選抜(旧AO入試)で15人、工学部は学校推薦型選抜(旧推薦入試)で24人を男性とは別に募集する形になるため、その是非は置いておいて京大における推薦入試の波が大きく跳ねるタイミングはもうすぐそこまで迫っているのだ。

一定の学力も求められる京大推薦入試!結局どっちがお得?

 これまで見てきた京都大学の特色入試だが、試験において必要な要素は大きく分けて以下の3つ。

1.基礎学力

2.高校での学びの取り組み

3.学部、カリキュラムとの適合

 1の基礎学力については、大学入学共通テストが課され、学部によって違いはあるが、おおむね80%またはそれ以上の得点率を求められるなど一定の学力は必要だ。

 2の高校での取り組みは提出書類により評価され、高校在学中の顕著な活動歴を示す学業活動報告書(高等学校が作成)や、入学後に京都大学で何を学びたいのか、卒業後にどういった仕事に就きたいのかなど、 学ぶ意欲や志を記載する「学びの設計書」(学生が作成)の提出が必須となっている学部が多い。

 3については学部ごとに、課題、小論文、 論述試験、口頭試問や面接試験が課され、各学部での入学後の学修に対する適合力が判定される。

 この内容は学部によって特徴がはっきりとしており、例えば文理融合を掲げる総合人間学部では、特色入試で志願する受験生にも文理融合的な思考が要求されるペーパテストが課される。薬学部は、科学に関する英文と日本語の資料をもとに論述する形式を採用しており、高度な英語と科学の知識が要求される。一方で工学部は情報学科を除き提出書類と共通テストで判定され、個別試験に当たる試験は実施されず、提出書類の重みが増すなど正に多種多様だ。

 では果たしてどちらの入試方式が「お得」と言えるのだろうか。

 3つのレイヤーと、上記3つの試験で求められる要素から考えていきたいと思う。

 まず、京都大学の特色入試を受けることを視野に入れる層を大きく3つに分けてみる。

1.一般入試での合格に余裕があり、なおかつ一貫校で科学オリンピックに取り組むなど、一般と推薦のどちらも可能な層

2.一般入試での合格可能性はギリギリであり、京都大学にどうしても入りたいが「入ってから何をしたいか」は漠然としている層

3.一般入試での合格可能性はギリギリもしくは怪しいが、京都大学で学びたい内容が決まっており、研究に対しての意欲が高い層

 もちろん多様な状況の学生が存在することは承知の上だが、大きく上記3つに分けさせてもらった。

 結論、3つ全ての層が京大の特色入試の受験を視野に入れるべきだと考える。

どんな受験生も特色入試を視野に入れるべき?

 3パターンについて、1つずつ見ていこう。

 まず、1の一般入試での合格に余裕があり、なおかつ一貫校で科学オリンピックに取り組むなど、一般と推薦のどちらも可能な層だが、特色入試への出願を検討するに値するだろう。このような層は一定の実績があるため合格可能性が十分あることに加え、一般受験と特色入試の両方を受けることが可能なため、単純に一回分チャンスを増やすことになる。その上、特色入試で一般受験より早く進路を確定させることができれば、その時間を自身の興味のある領域の研究に時間を使うことができ、損が一切ないといっていいだろう。

 次に、2番目の一般入試での合格可能性はギリギリであり、京都大学にどうしても入りたいが「入ってから何をしたいか」は漠然としている層だが、この層も検討はするべきだ。

 なぜなら、大学進学以降のやりたいことが漠然としているということは入学後に苦しむ可能性を孕んでいるため、特色入試の出願に必要な学びの計画書等を作成することで、結果どのような形式で入学したとしても本人にとってマイナスになる要素はないからだ。

 もちろん出願準備には一定の時間というコストを支払う必要がある。合格確率を上げるために一般入試の勉強に専念するのも一つの選択肢なので、時間に余裕がある早いタイミングで一度本格的に検討してみるフェーズは踏むべきだろう。

 そして最後に3番目の一般入試での合格可能性はギリギリもしくは怪しいが、京都大学で学びたい内容が決まっており、研究に対しての意欲が高い層だが、この層は言うまでもなく推薦入試に取り組むべきだ。

 この層は一番京大側が求めている層でもあり、受験生としては合格が叶えば最もお得だと言える層だろう。

 実際、特色入試は輝かしい実績がなくとも、その意欲やその学部で学ぶ必要があることをしっかりロジックが組めていれば合格可能性は十分ある。

 ただし、ここに時間を使うことにより一般での合格可能性が下がる可能性はあるため、共通テストの結果如何では研究内容を学べる滑り止めなど受験戦略をしっかり立てておく事が重要だろう。

まとめ 

 ここまで見てきた通りどのような受験生であっても一度特色入試は検討すべきだと言える。

 特色入試の波が大きくなるにつれ、従来のような「京大生」だけでなく研究や学校生活に熱意を燃やし社会で輝く、そんな新時代の京大生がたくさん輩出される未来も近いかもしれない。