本連載では、書籍「東大理Ⅲ 合格の秘訣」の中身を引用し、今年東京大学理科3類に合格した人がどのように勉強をしていたのかについて、記事を掲載していきます。

 今回は、久留米附設高校卒の松本賢志さんからお話を伺いました。「医学部に行くのがコスパがいいから」という理由で東大理3を選んだ彼の半生に迫ります。

臨床医になりたい★★☆☆☆ 

研究医になりたい★★★★☆ 

医者以外の道もあり★★★★☆

久留米大学附設高校卒

 共通テスト:921/1000

 出願校:前期 東大理Ⅲ 後期 出願ナシ
     私立 併願なし

 得意科目:数学・物理・地学

医師志望ではない「合理的な理Ⅲ志望」

 中学受験をすると決めたあたりから、なんとなく東大に行こうと考えていました。なんといっても日本で一番偏差値が高いところですから、特別感が違います。そもそも、中学受験をした理由が「東大を筆頭とする難関大学に行くため」でした。ただ、当初は理Ⅲではなく理Ⅰ志望、理Ⅲに行けるとまでは思っていなかったからです。高3の夏休み明けくらいまでは、ずっとそうでした。

 理Ⅲ志望にしたのは、特に医者に対して強い動機があったわけではありません。私の受験を一言で表すなら、「医学部に行くことはコスパがいいから」。高1あたりから考えていたことではあるのですが、大学に通うなら、やっぱり「そのルートでないと取れない資格」を回収できる方がいいですよね。そう考えると、例えば、数学の博士号は理学部数学科を経由しなくても取れますが、医師免許を取るには医学部に6年間通う必要があります。そうなると、医学部に通うことは、他学部に追加で2年追加するだけで医師という高収入な選択肢を増やしてくれて、コスパが高いと感じます。

 私の憧れの人が理Ⅲを目指していたことも、大きな理由の一つ。その人に一歩でも近づきたい一心から、東大理Ⅲの受験において、上回りたい対抗心がありました。だからこそ、他大学の医学部を目指そうとは思いませんでした。ちなみに、お互い無事に合格しましたが、点数開示では負けていました。とても悔しいです。

 そんなわけで、将来のこと、憧れ、加えて夏模試で理ⅠのA判定が出たこともあり、理Ⅲを目指すことにしました。

ずっと勉強漬けではなかった?

 小学校から東大志望とはいえ、ずっと勉強漬けではありません。中学入学後、3年生に上がるまでは、ほとんど勉強せず、コロナ期間もYouTubeを観たり、ネットサーフィンをしたり、遊んでばかりでした。「大学受験は、ずっと先だし、あとで勉強すればいい」と考えていました。

 中3になってからは、数学を毎日3~4時間くらい勉強するようになりました。退屈な授業中に趣味で数学をやっても、先生が怒ってこなかったんです。「あ、勉強しているなら、授業聞かなくていいんだ」と思って、そこからは内職で数学を進めるようになりました。当時は『青チャート』の数学1Aを解きながら、数学オリンピックの問題を色々見て「いつかこういうのが解けるようになるかなぁ」と考えていました。高1になると、さらに内職が本格化し、可能な限り数学を内職。昼休みも図書館にこもって勉強。部活も興味が持てなかったので、放課後は寮に帰って、自習時間に数学の自習。一応、英語リスニングの練習もしていましたが、当時のトレーニングが身になった実感はあまりないですね。

高校生活の勉強時間は?

 高2になってからは、平日でも、学校で過ごす5時間と昼休み・放課後を合わせた3時間程度、合計8時間は勉強していました。内容はほぼ全部数学。数学オリンピックに時間を多く割きました。受験数学の方もたまにすすめ、一橋の過去問を解いてみたら、意外と解けたので、20年分くらいやりました。高2の冬の数学オリンピックでは、本選出場はできましたが、本選で落ちたので数オリはやめました。数オリが終わったので、受験勉強をしっかり始めることにしました。そこからは、数学の時間を全部英単語勉強に変えて、英語を補強。ただ、英単語ですからね、1週間ちょっとで飽きちゃいました。で、息抜きもかねて東大数学の過去問にチャレンジしたら、25年分で60~100点くらいとれたんです。やっぱり数学はいけるな、と思い、英語理科は全然手を付けていなかったのですが、一年勉強できるので何とかなるだろうと考えていました。

 高3の5月には、学校内開催の模試があります。それに向けて、理科をやろうと考えて、『難問題の系統とその解き方』を始めました。問題なく理解できて、まずは力学と波を、模試が終わってからは他分野も学習しました。赤と青をそれぞれ2周しています。最初の1周はじっくりわかるまで、2周目は解けるかどうかの確認でした。この後、東工大の物理過去問を20年分解きました。半分くらいは取れましたね。これも2周しました。

各科目の勉強法は?

 英語は、授業の予習復習に合わせて、授業中の単語、構文、熟語を学習しました。夏の終わりから『速読英単語 必修編』を10周以上して、そのあとは『速読 上級編』『速読英熟語』などへステップアップしました。単語学習を通じて、考え込まなくても英文の意味を英語のまま理解できるようになった気がします。当時は英語対策で、英語の授業だけは内職していません。内職の内容も、数学の演習だけでなく『速読英単語』を読んだり、物理の演習をしたりするようになりました。

 私は理科を物理・化学ではなく、物理・地学で受験しました。高1から地学を選ぶつもりでして、昔から資料集は持っていましたが、ほとんどやらなかった。高3の5月に教科書を買ってきて、改めて読み、並行して『センサー地学』に取り組みました。当然解けませんが、「どんな問題が出て、どうやって解くか」をインプットする場としての利用なので、解けないことに焦りはありませんでした。

 母校には「特講」というシステムがあり、教科ごと、志望大学ごとに、過去問演習のテストゼミが放課後に展開されます。私は、数学理科については自習で演習を進めるほうが効率良いと感じたので、国語と英語だけ受講していました。英国を受講したのは、記述が多く、内容についても素人目にあっているかどうかの判断が難しいためです。

 特講の受講判断でも触れましたが、私は意図的に自習の機会を増やすように行動していました。塾も、中学受験では通っていますから、行こうと思えば行けたかもしれませんが、自習で何とかするつもりで、通っていません。私は、人から習うよりも、自分で勝手に勉強して身に着けていく方が、性に合っているんです。久留米に大きな塾もありませんでしたし、この選択が合格につながった気がしています。

 国語は特講で過去問演習をしていました。高3の冬になっても、現代文は自信があったので、そのまま突っ込んでいます。古文と漢文は、語彙に不安があったので、『古文単語315』を高3冬から直前期まで続けました。入試の直前には、古文漢文の過去問で出題された文章の一文と現代語訳を、オリジナルのフラッシュカードを作れるアプリでまとめて、電子単語帳として活用しました。

 数学は中2までは基本的に授業のみ、中3からは『青チャート』1Aを開始して、年度内に終わらせました。高1には『青チャート』2Bも終わらせて、そのまま『プラチカ』シリーズの文系と理系それぞれの1A,2Bの両方を1周ずつしました。高2になると、メインは一橋大学や京大文系数学など、難関大数学の過去問で演習を開始。あとは数学オリンピックに向けて、数オリ過去問を解きました。途中から数3が始まりますが、初めて聞く内容でも問題なく理解できたので、そのまま数3の『プラチカ』を終わらせて、過去問演習へ行きました。高3には東工大や東大の過去問を中心に演習して仕上げました。

 英語は、高2までは授業を聞くだけ。高2冬頃から『速読英単語』を始めて、高3になってからは特講で過去問演習。ただ、さすがにいきなり過去問は解けず、全くわからなかったので復習もあまりしませんでした。基本的には『速読英単語』を読み続けていただけですね。

 物理は、高3の春に『難問題の系統とその解き方』の赤と青を2周ずつやって、6月には東工大の過去問で演習を開始。9月の第一週には東大物理を25年分解いて、そのあとは東大冠模試の過去問を使って実力を維持しました。

 地学は、高3の6月頃に教科書を買ってきて、読む傍らで『センサー地学』を使って出題のされ方や答え方を学びました。夏模試では平均を少し下回る程度で、理Ⅰ志望だったこともあり、別に高得点は狙っていなかったので、このペースでも問題ありませんでした。9月になって、東大物理の過去問演習の結果から物理は安定して、理Ⅲに受かるために地学でも稼ぐ必要があったので地学に時間を多く割くようにしました。ここから天体・気象・固体地球の各分野別に、東大地学の過去問を20年分解きました。もちろん最初から解けるとは思っておらず、どんな問題が出るか、どう答えればよいかを確認するためです。このおかげか、秋の冠模試では全国2位を取れましたし、東進の最終本番レベル模試では1位でした。まぁ、模試の問題形式は本番とちょっと違う気がしたので、模試の結果をあまり気にしすぎなくてもいいのですが、結果が出たのはうれしかったですね。

 社会は地理を選択。本格的に開始したのは共通テスト直前の1月7日。もともと模試で60点くらい取れていましたし、地理に頼らない得点計画だったので、これで十分でした。どちらかというと、高得点を狙うためではなく、下振れを防ぐ目的で勉強しました。

 過去問は、共通テスト国語が25年、それ以外の共テは2~7年くらいです。東大過去問は、国語が25年分を1周、英語が15年分を1周、数学が45年分を3周程度、物理が25年を2周、地学が20年を5~6周解きました。

 共通テスト当日は、国語と社会がとにかく心配でした。万が一、ひどい下振れをひくと足切りもあり得ましたから。数学理科については、地学で5点落とした以外は全問正解で、文系科目も事故らず、感触としてはかなりよかったですね。少なくとも、二次試験で不利になるほどではありませんでした。

本番で途方に暮れた英語

 二次試験一日目は、国語が簡単でよかったですね。とくに現代文が良くできました。古文もある程度できましたし、40~50点程度の出来でした。開示もほぼ同じ点数で、安心しました。数学は、一目見て難しいとわかりました。どうせ周りも解けないので焦りはしませんでしたが、凡ミスもあって二完四半といったところ。

 二日目の理科は、地学がかなりよかった。難易度が例年並みで落ち着いていたことも追い風でした。物理も簡単で、100点くらいの手ごたえがありました。ところが、英語で大失敗。和訳問題で単語すらわからないし、要約は文章こそ読めたものの、どう文章にまとめたものかと途方に暮れて……。時間もなくてリスニングの下読みもぎりぎりでしたし、リスニング音声自体も難しくて、いつもより悪かった。ほかにもいろいろとやらかしてしまい、感触としては40点もあり得るな、といったところでした。一応、開示は60点近くあったので、英作文あたりが思ってより評価されたのかな?と思います。

 面接も結構失敗しましたね。臨床と答えると「倫理的な禁忌を踏んで一発アウト」がありえると思って、研究医になりたいと言ったら、「研究目的なら、理Ⅱでいいよね?」と突っ込まれました。さらに、授業で臨床とか実習とかあるけど、どうするの?とか、いろいろと答えにくい問題が続きました。

1000万円を意識して

 勉強自体は、やっぱりストレスが溜まります。私は、理Ⅲ合格がどれほどお金になるか換算して、自分を奮い立たせ続けました。例えば、みなさんは「1,000万円払ったら理Ⅲ行けるよ」と言われたら、払いますか?私は払います。それだけの価値があると考えているからです。この考え方に従えば、私が仮に合格したら1,000万円以上の価値があるものを手に入れることになりますよね。だから、引き下がるわけにはいかなかった。

 それも踏まえて、私は自分で自分をコントロールする能力が高いと感じます。独学で勉強して、自らのメンタルを管理して、そのほうがやりやすかったです。逆に、人から教わる講義を使って学習するのはあまり得意じゃない気がします。自分の適性を早めに見抜けたことが、成功につながったのでしょう。