東京大学は2025年4月4日、70年ぶりの新学部「UTokyo College of Design」を2027年9月より開校すると発表しました。この学部では世界標準ながら日本では珍しい「秋入学」制度を取り入れ、すべての授業を英語で行うなど、非常にグローバル視点を意識した学部となっています。よりグローバル化が叫ばれる日本教育界において、その最先端をゆく東京大学が「世界標準」を強く意識した施策を打ち出したことは、今後の英語教育やグローバル視点での思考法の獲得が急務となっていることを強く感じさせます。

 もちろん、東京大学以外にも英語教育を強く打ち出している大学は多数存在します。たとえば、秋田にあるAIU(国際教養大学)は、近年ひそかに注目を集めています。パンフレットによると、AIUでは「英語による授業科目:100%」を掲げており、東大デザイン学部と同じく、授業のすべてが英語で行われている特徴があります。現代だからこそ、こうした教育を実施する大学に注目が集まるのもうなずけます。

 今回は、AIUに通っていた田中花子さん(仮名)にお越しいただき、その魅力を徹底的に伺いました。通ったからこそ見えてくる本当の魅力と、意外な落とし穴。秋田県に君臨するグローバルエリート大学の真の姿に迫ります。

__AIUを選んだ動機とはなんでしょうか。

田中さん:当時は国連で働きたいという思いがあり、国際関係学を学べる環境に進学したいと考えていました。AIUは海外の大学との連携が非常に強く、特に国際関係分野で評価の高いオーストラリア国立大学やシドニー大学と連携している点に大きく魅了に感じました。元々英語が得意だったわけではないのですが、AIUの全授業が英語で行われるカリキュラムに強く惹かれました。

グローバルワークショップ入試に参加した際、模擬国連のようなディスカッションに取り組む中で出会ったある先生の講義も、AIUを志望する大きなきっかけとなりました。その先生は米口関係を専門とする方であり、ロシア・ウクライナ紛争について、私自身とは全く異なる角度からの考察を示してくださいました。「プロはこういうふうに物事を見るのか」と衝撃を受け、「この先生からもっと学びたい」と強く思ったのを覚えています。

また、学内に学生寮があり、ほぼ全員が寮で共同生活を送ることも、魅力的に映りました。私は東京都で生まれ育ったので、実家を離れて、寮での一人暮らしを経験してみたかったんです。実際には、いいところもあれば、少し息苦しく感じる部分もありましたが、それでも新鮮な体験ができました。


__実際に通ってみて、どんなところに魅力を感じていますか。

田中さん:一番魅力を感じたのは、教授との距離の近さです。授業後にオフィスへ行って、課題のエッセイをどう改善すればよいかを何時間も議論できる環境はとても刺激的でした。中には世間話も交えながら親身に相談に乗ってくれる先生もいて、まるで友達のように学問や将来のことを語り合えました。授業自体も、最初は基礎的な英語スキルを高めるところから始まり、そこから専門科目で深い学びに入っていくという段階的な構成がしっかりしていて、着実に力がつくと感じます。キャンパスも自然に囲まれていて、東京のキャンパスビルとは全く違う環境で学べるのも新鮮でした。

__逆に、通う中で「しんどい」と感じる部分もありましたか?

田中さん:そもそも、AIUって周りに何も無いんですよ(笑)大学の敷地内にバス停があって、大学とイオンが直通に繋がっているんです。車を持っていない学生にとっては、このバスが町に出る唯一の手段といってもいいかもしれません。イオンまでは、バスで片道15分ほど。だから、日常の買い物や遊びは基本イオン頼みです。だからこそ、寮で友達の部屋に集まって宅飲みしたり、夜中に大学の周りを散歩したり、無いなりに楽しむ方法を工夫していましたね。ちなみに、AIU生の定番デートコースは「星空散歩」でした!(笑)

 後はキャンパスも自然と一体化してるんで、熊が普通に出てくる。その予防として入寮してすぐ、熊鈴が生徒全員に配られていました(笑)熊を見かけたりしたり、叫び声を聞いたら、全校生徒にベアアラートというメール配信が来たりするけど、大体は生徒が面白がって叫ぶ声だったり。

 しかも寮生活で気まずいことに、周りに何もない、娯楽もない状態だから大学内の恋愛が流行って、カップルで一緒に車とか買う人も少なくはないんですよ。「別れちゃったらどうするんだろう」と思っていたら、本当に破局しちゃって。しかも、最近聞いた噂話だと誰も車の行方が誰も分からないそうで(笑)加えて、寮生活で集まりやすい環境だからこそ、発表の打ち合わせが23時~24時から始まって深夜過ぎまで長引くこともしばしば。学生はほとんど不健康な生活リズムでしたね。そもそも、秋田県の気候自体が独特で、いつも曇っていて、うっすら寒い。太陽の光をしっかり浴びて、スッキリ目覚めたい!って感じる時も正直ありました。


__授業が素晴らしくても、環境があわないとつらいですよね。ではAIUには、その「しんどさ」を乗り越えるだけのそ魅力があるのでしょうか?

田中さん:AIUでの一流の学問も素敵なんですけど、しんどさを一緒に乗り越えたり和らげてくれるコミュニティがあるのは良かったですね。プレゼンとかフィールドワークみたいなグループワークが多くて、勉強をしながら友達と関係を築けるような場所だと思います。課題もかなり多いんですけれど、それだけ学生を鍛えてくれるってことでもある。それに、わからなくなったら教授の部屋へフランクに質問に行ける環境ですから、やる気がある人にとっては天国のような大学です。教授とティーパーティーとか開いたり、夜遅くからも勉学の相談や単に雑談もしてくれたり、公私ともに凄い支えになる存在でした。寮生活だって、人によってはストレスかもしれませんが、私の場合はルームメイトも気が会う人と当たって十分楽しめました。2年次からは宿舎によって仲のいい人とペアで住むこともできますから、心の底から仲良しな友人ができれば、ずっと楽しく暮らせるでしょう。

__最後に、国際教養大学は後輩におすすめできますか。

田中さん:課題の多さや秋田の環境に合わず、つらいと感じる人もいると思います。ただ、学びたい気持ちとモチベーションがあれば、これほど力を伸ばせる環境はなかなかありません。教授との深い関わりや、多様な留学生との交流は大きな財産になります。だからこそ「覚悟を持って挑戦する」のであれば、自信を持って勧めたい大学です。

まとめ

 偏差値帯・授業の質・施設・学費・立地……大学選びの軸は様々で、だからこそ迷いがち。特に、一回きりの大学見学では見えないような、数週間、数カ月そこに通った時にこそ見えてくるような魅力や欠点にこそ、知りたいポイントが詰まっている。

 そんな時に一番信用できるのは、やはり内部に通っていた方の「リアルな本音」でしょう。国際教養大学のパンフレットからは読み取れない「教授との距離の近さ」や、東北地方特有の曇りがちで冷涼とした気候。これらがどのように人間の精神に作用するかは、そこに暮らしたことのある人からしか得られません。

 大学選びは、「何を学べるか」が一番重要。ですが、継続して通い続ける努力が可能なことも、同じくらい大事です。「どんな学生生活になりそうか」をリアルに想像して、オープンキャンパスや学校見学に臨むといいかもしれませんね。