『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が受験界隈で話題になっている。4月に発売されたが、売れ行き好調で、7月に重版も決定したとのことだ。
ベテラン記者の杉浦由美子氏がきめ細かく予備校や大学、高校を取材し、一部の大学関係者からは「書きすぎている」と困惑を示すほど、実際の入試について書かれている。
まず、大学入試において推薦選抜が主流になっていくのは、「コミュニケーション能力が大切だから」「非認知能力が必要だから」というのは一面的な見方であり、何より大きな要因は一般選抜では選抜ができなくなることだ。そうなると、評定平均値や学科試験、小論文などを組み合わせて多面的に学力を測る推薦入試で選抜を行うしかなくなる。
フェリス女学院大学の2025年の入試結果を見ると、一般選抜はほぼ全入だ。なんと受験した生徒の99%が合格している。
一方で、フェリスの一般選抜率は23.6%(2024年度)。ほとんどの学生は指定校推薦で入学してくる。フェリス女学院大学は多くの高校と連携をしており、それらの連携校から指定校推薦で学生が入学してくるのだ。一定以上の評定平均値の学生たちなので、一般選抜組よりは推薦入試組の方が学力が高くなるのは当然だ。
今後少子化がさらに進めば、多くの大学で「推薦入試組が一般選抜組より学力が高い」という現象が起こってくることだろう。
つまり、推薦入試が拡大するのは「コミュニケーション能力が重要だから」とか「非認知能力が重要だから」といった面だけでなく、実際は「学力が高い学生を確保するために推薦入試を増やしていく」という側面もあるということだ。
総合型選抜は「評定平均値」「英語資格試験のスコア」「志望理由書」の得点の合計で合否が決まるが、この3つの要素について本書では丁寧に言及している。一部を引用して紹介させていただく。
『学習塾がやっているYouTube番組を見ていると、「評定平均値の扱いは高校の偏差値は関係ありません。偏差値60の高校の評定4.0と偏差値45の高校の評定4.0は同じと扱います」といった内容がよく話されています。
一方、ビックデータを保有しているだろう大手推薦塾、ルークス志塾の公式サイトにはこう書かれています。
「一般的には偏差値の高い高校の方が高い評定平均値を取得するのが難しいといえるため、こうした差異が生まれるのも致し方ないと言えます」
つまり、入学難易度の高い高校と中堅高校の評定は違うものと評価するというわけです。私が取材しても、ルークス志塾がおっしゃる通りです。大学側は高校によって評定平均値の評価を変えている場合も多いです。』
ここで言う「評定平均値がとりにくい難関高校」に該当する場合、評定平均値が3.8でも最難関私大の総合型に合格することもあるそうで、それはそういった難関校であれば基礎学力が十分にあると評価されるからだという。大学側も高校のレベルを鑑みて判断しているということだ。
さらに英検資格についても書かれている。特に強めに推奨されているのがIELTSだ。こちらも引用してみよう。
『今、注目の英語資格試験がIELTSです。「聞いたことないぞ」と思われる方も多いでしょう。私も取材するまで、こんなに高校生の間で人気資格になっているとは思いませんでしたし、高校生の間で人気資格になっているとは思いませんでした。いま、総合型選抜や公募制を狙う「推薦入試戦士」の間でIELTSの人気が高まっています。私立高校や推薦塾の中にはIELTSを生徒に受験するよう推奨しているところも増えてきました。
IELTSはイギリスの組織が主催する英語資格試験で、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの大学への留学に利用できます。大学への留学で利用する英語資格試験でTOEFLがアメリカのテストなら、こちらはイギリスのテストです。
TOEFLも英検もライティング問題はまず長めの英文を読んでから記述をしていきます。この場合、英文が読めないとアウトなのですが、IELTSのライティングは、問題に長めの英文が出ないので、リーディングが苦手でもライティングが得意なら点数がとれます。スピーキングは対面式なので、軽くミスったときに試験官がフォローをしてくれることもあります。』
そして、志望理由書については「自分で書くこと」の重要性が書かれている。ネットを検索すると志望理由書の代行サービスもあるし、高校や塾によっては教師や講師が「こういうテーマでこう書きなさい」と指示をすることもある。その場合、どうなるかについてこう書かれる。
『講師がテーマ設定をし、それに基づいて、生徒が志望理由書を書き、それをまた講師が徹底的に添削をします。そうなると、その志望理由書はその講師が作成したものであり、生徒本人が作ったものではなくなってしまいます。大学もそういう構造をよく理解しています。
ある大学の教授は苦笑いをしながらこう話します。
「ネットで検索すると志望理由書の代筆サービスが出てきますからね。志望理由書の大半はどれも同じなんですよ。冒頭で必ず将来の夢を語る(笑)。高校生はまだ将来の目標が見つかってなくてもいいし、それを見つけるために大学に行きたいでもいいんですけどね。あと、やたらと社会貢献を語るのも特徴ですね。SDGsや多文化共生、少子化問題の解決とか教科書通りの社会課題を提示してきます。型通りで大量生産されたものという印象が強いです。そのくせ、構成や文章は非常にちゃんとしていて、本当に学生本人が書いたのかなーと感じるものは多いです」
このように「志望理由書をちゃんと自分で書いているのか」という疑いを晴らすために、総合型選抜や公募制の2次選考では小論文と面接を課します。』
実際に文章が書けるかを確かめるために、入試会場で小論文を課し、そして、志望理由書の内容を確認するために面接がされる。
面接というと「コミュニケーション能力を見る」と考えがちですが、本書では「書類の確認をするための場」と説明されている。
そして、本書の最大の特徴は指定校推薦について一章をさいている点だ。大学入試の半分が推薦入試になっているが、総合型選抜は16%程度、実際の推薦入試はほとんどが指定校推薦なのだ。
指定校推薦は総合方選抜とは違い、校内選考を突破すればほぼ合格できる。その校内選考をどう勝ち抜くかがについても書かれている。指定校推薦というと評定平均値で決まるイメージだが、昨今は違う要素も見られるようになっているとのことだ。大学側が出願の要件で「英検2級以上」と求めてくる場合もあれば、高校側が校内選考で模試偏差値を見る場合も増えているそうだ。大学が指定校推薦で求めるのは「真面目で模範的な学生」かつ「基礎学力が高い学生」。その学力を測るために高校が模試偏差値を見るわけだ。
こうした事実を受け、Xでは「模試がメルカリで売られているのは、指定校推薦対策では」という指摘もあった。大手模試は全国で行うので日時が異なることもある。ある地区で行った一週間後に違う場所で模試を行うことがある。つまり、メルカリで事前に問題を入手して対策をすれば、高い偏差値が取れる。それで指定校推薦の校内選考で有利になる可能性もあるのだ。
このように本書では推薦入試だけではなく、大学入試の全容や課題点が詳細に書かれている。推薦入試に関する報道が増えている中で、珍しく正しい情報を丁寧に提供している良書と言えよう。
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