「努力していないのに結果を出す人」は、いったいどんな魔法を使っているのでしょうか?
まったく勉強していないように見えるのに、毎回学年トップの成績を修める人や、練習態度は不真面目なのに、部内でぶっちぎりの実力を持つ人など、私たちの周りには様々な「プチ超人」たちがいます。彼らは、どんな方法をもってして、その結果をたたき出しているのでしょう。

今回お話を伺うのは、現在早稲田大学政治経済学部2年生の佐藤大輝(仮名)さん。
韓国で生まれた佐藤さんは、海外の学校を転々としながらプロのサッカー選手を目指し、ボールと共に過ごす毎日を送ります。ですが、プロの夢破れ、急遽アスリート以外の進路選択を余儀なくされることに。
そこで彼が選んだのは、日本最高峰の大学である早稲田大学でした。もちろん、受験対策なんて微塵もやっておらず、普通ならば門前払いを受けるところ、彼はなんと「書類のみ」合格を勝ち取ります。面接が免除されるほどの、輝かしい経歴。
しかし、彼は「全く努力なんてしていない」とうそぶきます。そこには、「好きなこと」を追い続ける人だけに見えてくる「努力の地平線のその先」の姿がありました。

グローバルに生きた少年の原点:釜山からタイへ

韓国で生まれた佐藤さんは、5歳頃で一時「来日」し、小学校高学年まで日本で過ごした後、韓国へ戻り、さらに中学2年生の頃にはタイへ引っ越すなど、非常にグローバルな半生を送ってきました。一般的な日本人名をもち、日本語もペラペラな彼ですが、生涯のほとんどを海外で過ごされているからか、「日本=海外」だと思えてならないそう。

小学校5年生の頃には、のちにライフワークとなるサッカーと出会います。地元のサッカーチームに所属した彼はメキメキと頭角を現し、13歳時点で釜山代表になるまで実力を高めました。タイに移住してからも練習は欠かさず、14歳の時には大会で優勝最優秀賞まで受賞し、15歳になるとその腕を見込まれ、奨学金付きの入学オファーを受けるまでに。

サッカーだけじゃない!13歳で英検準1級の実力

もちろん彼も一般学生ですから、学業もおろそかにはしていません。なんと、13歳になった時点で、英検準一級を取得しているのです。公益財団法人日本英語検定協会が公開している各級の目安によれば、準一級は「大学中級程度」とされており、大人でも難しいレベルであることがうかがえます。「社会的な話題について、複雑な文章や話の展開および概要や要点、詳細を理解し、情報や自身の考えを展開や主張と根拠を明確にしながら詳細に伝えることができる」ことが、既に中学1年生の頃からできていた。これは、とてつもない努力が裏に潜んでいるのではないでしょうか。

大学並みの難易度?IBディプロマのリアル

タイインターナショナルスクールに入学してからは、IB(国際バカロレア)と呼ばれるプログラムに参加。いくつか級がありますが、彼が参加したのはディプロマ・プログラムと呼ばれるもの。所定のカリキュラムを2年間履修し、課外活動にも精を出し、最後に待ち受ける最終試験に合格すれば、晴れて国際的な大学入学資格(国際バカロレア資格)が受けられるプログラムです。

ディプロマ・プログラムのカリキュラムは厳しく、「母国語」「外国語」「個人と社会(日本でいう社会科)」「理科」「数学」「芸術」の6つの分野において、それぞれ学習する必要があり、このうち3~4分野については「ハイレベル」な講義を受ける必要があります。すべては大学入学後に必要となる専門知識スキル姿勢などを入学前から準備するためであり、日本の勉強とは全く異なる角度の努力が必要。彼自身も「勉強の内容自体は日本の高校生のほうが難しいことをやっている」と前置きしながらも、量は圧倒的にIBのほうが多いと振り返っていました。例えば彼が受講していた心理学の授業では50個程度のケーススタディを覚える必要があるそうで、それぞれの事例について理解を深めることも怠ってはならないなど、単純な暗記とはまた異なる難しさが感じられます。彼が2年間で書いた小論文は10本にも及び、多いものは4000文字にものぼるとか。

これとは別に3つのコア科目として「Theory of Knowledge(知識の理論)」「Extended Essay(課題論文)」「Creativity, Activity & Service(創造性・活動・奉仕)」が定められており、これら探究学習についての取り組みも必修となっています。課題論文では4000words程度(日本語なら8000文字程度)の論文を仕上げる必要があるなど、やはりこちらも過酷な課題をこなす必要があります。


努力の正体は「好きだから」だった

これら6科目と3つのコアについて、合計45点が割り振られており、合計24点以上を取得すると、晴れて最終試験が受けられるように。見てわかるように、日本の高校生に求められている学習とは全く性質が異なり、どちらかといえば、大学で求められるような学習が要求されます。学生の主体性が強く求められる制度であり、実際にこれを勝ち抜いてきた佐藤さんは「大学の勉強が楽に感じるから、バカロレアを受けてよかった」と振り返りました。

いかに優秀な高校生であろうと、大学レベルの学習が求められるバカロレアプログラムのクリアは容易ではありません。そのうえ彼はサッカーの実力を買われて奨学金を受けた都合上、サッカーに打ち込む必要もある。大量の課題をこなしながら、プロサッカー選手になるための練習を日夜こなし続ける過酷な日々。ですが、彼に「早稲田に入るまで、学校の勉強などは頑張ったのですか?」と聞くと、笑って「そんな、まったくですよ」と答えました。それも、謙遜ではなく、本心から「まったく努力していなかった」と感じているようなのです。もちろん、サッカーに打ちこんで勉強をサボっていたわけではありません。彼は毎日最低でも2~3時間は机に向かって自習しており、経済の評価は6点(7点満点中)、数学の評価に至っては満点を取るなど、勉学でも非凡な結果を出しています。いわく、「周囲はケンブリッジやオックスフォード狙いが多かったので、自然と勉強した」そうで、その成績はUSC(南カリフォルニア大学)へ進学した友人と同程度だったそう。だからこそ、一般的には栄転をイメージする早稲田進学も、恥ずかしかったのだとか。日本国内で言えば、「早稲田=エリート大学」ですが、彼の感覚では「早稲田=極東の島国にあるマイナー大学」なのです。

朝練習がある日は欠かさず5時に起き、学校のプログラムを終えたらサッカーへ直行。みっちり練習を重ねた後は3時間の自習に入り、寝る前のわずかなひと時を友人との談笑で過ごし、翌日も5時に起きるため床に就く。こんな生活を、弱冠16歳の少年が、卒業するまで毎日続けた。しかも、この事実に対して「好きだからやっていただけ」と、全く意に介していない。
これこそが、「努力しないのに結果を出し続ける人」の秘密の招待ではないでしょうか。

「早稲田すら通過点」― 世界に羽ばたくその先へ

「歯を食いしばって努力する人が、好きで続けている人に勝てるわけがない」。これこそ、今回取材班がインタビューを通じて痛感した事実です。どんなにつらい山道でも、好きならスキップで駆けていける。そして、それは歩くよりもずっと速く、軽やかで、美しいものなのです。

もしも努力が苦になるならば、まずはそのものについて勉強してみるのはいかがでしょうか。好きになれる場所がないか、どんなところが魅力的なのか、徹底的に調べてみる。そうして、相手を好きになる努力から始める。これこそが、私たちが「なぜか結果を出す人」に変身する唯一の手段であるように思えます。

佐藤さんは現在、卒業後日本を出て世界規模での活躍をするために、精力的に活動されているようです。今後の活躍に期待が持てますね!