2026年2月、「QUEST CUP 2026」の全国大会が開催されました。全国500校、約11万人が様々なテーマの探究学習を行い、その成果を競い合う探究学習の祭典です。
2005年の初開催から数えて21回目となる全国最大級のイベントであり、「実社会・企業における課題に対する『自分なりの答え』」が求められるのが特徴。実際に企業インターンや社会人インタビューを行うなど実践的な視点・アドバイスを取り入れるため、全国大会ともなると、非常に高いレベルのプレゼンが展開されます。
最終発表会は部門ごとの複数日程に分かれており、未来図編集部は2月26日(DAY3)開催の企業探究部門「コーポレートアクセス」(Qグループ)の発表にお邪魔しました。実際に見て分かった「ハイレベルすぎる高校生の研究」の最前線についてお伝えします!
ファーストステージの様子
企業探究部門の全国大会が行われるDAY3・DAY4は、立教大学池袋キャンパスにて実地開催されます。協賛企業はイオンリテール・サントリー・大和ハウス工業など名だたる大企業を含む12社にものぼり、これら企業の社員が学校に訪問したり、オンラインで話し合ったりと、非常に深い関りを持つのが特徴です。

さらに、全国大会の会場には各企業の役員などが参列し、学生チームは「企業インターン」として、各々が考えた与えられた課題に対する答えとしての改善プログラム・商品企画などを発表します。
午前中のファーストステージでは、最終選考に残った8チームが各企業担当者へ向けてプレゼンを行い、その結果を基に企業賞・準企業賞が決定。受賞チームは午後一番で発表され、それぞれの協賛企業から企業賞を贈られたチームだけが、グランプリをかけた最終決戦である「セカンドステージ」に出場できます。
編集部はファーストステージの様子から取材しましたが、各企業同時並行でプレゼンが行われたため、我々は「富士製薬工業」のブースにお邪魔しました。実は、筆者の母校・共栄学園高等学校も最終選考会に参加しており、その担当企業が「富士製薬工業」だったのです。
当プログラムでは、企業ごとに異なる「ミッション」が設定され、学生たちは企業人と協力しながら、課題を解決する手段を模索します。「富士製薬工業」から送られたミッションは「『不思議なタブー』から人々を解放する富士製薬工業の新たな挑戦を提案せよ!」。大人でも考え込んでしまうようなミッションですが、最終選考まで残った8校のメンバーは、様々な「タブー」を定義して解決に取り組んでいました。
「富士製薬工業」は女性に関する医療・医薬品に強い製薬会社であるためか、中でも多かったのが「女性の体調に関するタブー」への問題提起。生理痛、月経不順や、そこから生じる体調不良に関する問題への言及しにくさを取り上げ、「男女間で見えない壁があるのではないか」と仮定したうえで、「見えない壁」を取り払うための様々な工夫が発表されていました。

筆者の母校である共栄学園の発表チームも女性に関するテーマを取り上げて、「男女の見えない壁を体験型アートとして展示してカジュアルに体験できるアミューズメントアート施設」を提案していました。
驚くべきは、彼らチームは全員男性で構成されており、女性的な視点がチーム内に欠けているように見えたにも関わらず、様々な視点から「生理」に対する男女それぞれのタブー視に関する検討がなされていたこと。
筆者自身も経験がありますが、高校生までで見えているものと、大人が見えているものには多くの隔たりがあります。通常は年齢を重ねるにつれ、自分の見えている世界が徐々に広がっていきますが、「QUEST CUP」では、実際に当該企業に勤める大人と話し合いながら、自分にない視点を得られる。さらに、最終発表の舞台までこられれば、自分たちと同じ課題に対して、同世代がどのような答えを出したのかにも触れられます。
これを乗り越えるには、強制的に自分の視野を広げざるを得ない。一筋縄ではいかない道のりですが、取り組みの前後で急角度の爆発的成長を遂げているのではないでしょうか。学校内に閉じこもらず、可能性を最大限広げるような試みであり、最終発表に至らずとも、これに取り組んだ事実自体が、大きな意味を持つように感じられました。
セカンドステージの様子
お昼の休憩を挟んで、午後からはファーストステージの総評と企業賞・準企業賞の発表に移ります。各企業より授与される「企業賞」ですが、化粧品や食品詰め合わせなど豪華な副賞と共に贈呈されるため、学校名が読み上げられたタイミングと副賞の内容が発表されたタイミングで、それぞれ黄色い歓声が上がりました。


そして、企業賞に輝いた7チームは、その直後に行われる「セカンドステージ」での発表に臨みます。ファーストステージよりも格段に観客の数が増え、会場も豪華になり、二階のメディア席から遠めに見ているだけの我々も手に汗がにじみ出てしまうほど、緊張と期待が伝わってくるようでした。
セカンドステージでは午前中に観覧した企業以外の発表も見られます。様々な分野に関する専門企業が集まっているので、ひとつチームが変わるたびに発表内容もガラッと変化して、あっという間に2時間近くが経過してしまいました。
編集部員でひそかに注目していたのは、オカムラの企業賞を受賞した実践女子学園高等学校のメンバーが手掛ける「Hymira(ハイミラ)」。鏡とAI技術をかけ合わせて、いつでも自分を笑わせてくれるような素敵な鏡を提案していました。私自身「そんな鏡があったらほしい!」と強く感じ、本気で商品化されないかなと期待してしまうほど。

ちなみに実践女子学園高等学校はイオンリテールの企業賞も受賞しており、そちらは「ほめぐるみ」というポジティブな言葉をかけ続けてくれる音声機能内蔵ぬいぐるみを提案していました。
どちらも疲れ切って低下した現代人の自己肯定感を緩やかに底上げするような企画で、他のグループに比べて派手さは欠けるものの、個人的には「このグループの商品があれば買いたい」と一番に思わされる発表でした。
グランプリ受賞の様子
いよいよグランプリ受賞の瞬間。ですが、授賞式の前に「クエストカップを振り返って、思ったこと、感じたこと」に関する自主発表の機会が設けられました。
全国各地の中高生がひしめく多目的ホールで、自主的に手を挙げて感想を述べる。大人ならば簡単かもしれませんが、同じチームの同級生以外は、審査員や運営に携わる大人も含めて、みんな知らない人ばかり。
そんな環境で挙手をして発表する……。筆者は「誰も手を挙げられないのではないか」と心配してしまいましたが、これも杞憂に終わりました。何人もの異なる地域・異なる担当企業・異なる学年の見ず知らずの他人ばかりが集まっているというのに、競うようにして手が上がり、時間内では収まりきらないほど感想を発表し始めたのです。
指名された方も「キャー!」「うわー!」と恥ずかしさ交じりの歓声を上げつつ、いざマイクが渡されると、堂々と発表会に関する感想を述べはじめ、きっとこの取り組みを通して多くのものが得られたのだと予感させてくれました。
準グランプリを勝ち取ったチームは大妻中野中学校・高等学校の「Reso5(れぞふぁいぶ)」。グランプリは関西創価中学校の「紗麗望仁組(しゃりもにぐみ)」でした。どちらも、プレゼンテーション自体の完成度もさることながら、検討内容も高いレベルで実践的にまとまっており、個人的には納得感があります。


ただし、他チームの発表(ひいてはセカンドステージに進出できなかったチームも含め)が低レベルだったわけではなく、実際に審査委員長総評では「レベルが高すぎて、グループ選出では非常に揉めた」と述べられていました。
傍目から見ていても、探究学習自体の自分事への落とし込みや、逆に個人的にまとめすぎず社会課題へのソリューションとして一般化していく具体・抽象の往復作業がスムーズなグループばかりであり、断腸の思いでグランプリ・準グランプリを選出したであろう苦労が察せられます。
α世代の本気が垣間見えるイベント
今回、我々は第21回大会DAY3を取材しましたが、続くDAY4も非常にレベルの高い戦いが繰り広げられることが予想されます。実地開催のDAY3・DAY4でしたが、公式の録画資料も残されているようです。参加を検討される方は、ぜひ参考までにご覧になってはいかがでしょうか。
推薦・総合型選抜における実績作りになることはもちろんのこと、高校生とは思えないほど仕上がった実践的提案を行った経験は、きっと参加学生の糧になるでしょう。この実績と経験を胸に、東京大学をはじめとした名だたる名門大学へ合格していく方も必ず出てくるはず。今後も、目を離せない要注目のイベントとなりそうです。
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