医師といえば「頭がいい」「お金持ち」「堅実に資産形成をしている」――そんなイメージを抱く方も多いでしょう。

ところが現実には、不動産投資の世界で“カモ”にされ、思わぬ損失を抱えてしまう医師が後を絶ちません。背景には、巧妙な詐欺まがいのスキームと、医師という職業特有の落とし穴があります。

本記事では、不動産投資に詳しい海野先生(仮名)へのインタビューを通じて、「医師の不動産投資の実態」と「医師が騙される理由」に迫ります。


プロフィール

海野先生(仮名)
美容外科医。医師4年目。
不動産投資に詳しく、自らも2件の物件を購入した経験を持つ。


ライタープロフィール

現役医学生。都内国立医学部に在籍。
受験戦争への疑問から、教育業界に従事。


不動産投資の誘いは99%が“詐欺的”

そもそも不動産投資とは
不動産投資にはさまざまな形がありますが、本記事で取り上げるのは「物件を購入し、その物件を貸し出すことで家賃収入(賃料)を得るタイプ」の投資です。購入した物件の管理やローン返済を行いながら、入居者から得られる家賃を収益とする仕組みを指します。

____医師という職業は、年収の高さと信用(与信)力の高さから、不動産業者にとって格好のターゲットと聞くことがあります。実際はどうなのでしょうか。


実際に、不動産投資の話を聞く機会は少なくないです。しかも、そのような誘いの99%は詐欺的な構造を含んでいると考えて良いと思います。

そもそも本当に良い投資案件は、向こうからはやってきません
提案される不動産についても、営業会社の取り分(マージン)が大きくのるため、価格も相場より明らかに高く設定されています。

投資詐欺の実態

____では、投資詐欺の実態はどのようなものなのでしょうか。

約2,000万円での新築ワンルームマンションを例に考えましょう。
こういった営業では、年間で約60万円(利回り3%)の家賃収入になるとして、フルローンでの購入を勧められます。営業マンは「節税になります」「年金代わりになります」と説明するんです。
実際に購入する場合には、マンションのローン支払いに年間100万円近い出費が必要になります。一方で、この100万円の赤字によって、所得税が約50万円分減る。
つまり、本来100万円かかるものが50万円で買えるという営業を受けるんです。

地域や具体的な数字は様々ですが、概要としてはこのような投資勧誘は多いです。
特に、ワンルーム投資は、かかる金額が小さいため、詳しくない人でも足を踏み入れやすいのだと思います。

____一見すると、月5万円(購入費の3%)の家賃収入が見込めますし、節税にもなって、お得に思えます。
どういった場合に困るのでしょうか。

まずは、居住者が入らない場合です。もちろん家賃収入は0。儲けるために買ったはずが、自分が住む訳でもない物件に年間100万円も無駄に払う赤字になってしまうのです。
そもそも、家賃収入が見込めるような物件であれば、わざわざ営業をする必要性も薄いので、空室になる可能性の方が高いと考えて良いでしょう。

ただ、これは破滅への序章にすぎません。最大の闇は「想定していた値段より遥かに低い値段でしか売れない」こと。
家賃収入が得られず赤字が膨らむと、売却を検討する人が多いと思います。
しかし、先程説明した通り、この2000万円の物件には業者のマージンが上乗せされています。本来の相場は、1500万円程度ではないでしょうか。買値の70%で売り抜けられれば良い方でしょう。


____ただでさえ落ち込んでいるところに、500万円以上の損失が突きつけられるのですね。

気づかないのが1番幸せ、ということなのでしょうか?

最悪のタイミングで発覚するパターンも考えられます。
家族や子供ができて自宅を購入するとなると、ローンの借り換えを考えますよね。

しかし、いざ売ろうとすると、期待していた売値2000万円には500万円以上及ばないと気付かされます。もちろん家賃収入が入る当てもなく、所有しているだけローンの出費はかさみますが、売るに売れない大損確定の値段しかつかない。これから子供の養育費とかもかさんでくるでしょうし、家庭内でどんな会話が繰り広げられるか……。

____1番大変なタイミングですね。精神的なダメージは大きそうです。
一体、何が原因なのでしょうか。

大きく分けて2つあります。「買値が高すぎること」と「物件の条件が悪いこと」です。

買値が高すぎる
まず、物件を売る時に損失が出る構造になっています。こうした新築マンション投資では、営業会社のマージンが大きく上乗せされているため、相場よりも高い価格で購入することになります。結果として、いざ売却しようとすると買値の70%以下になってしまうのです。

物件の条件が悪い
加えて、都市部から外れた地域、駅から遠い、物件の中身もよくない、など入居者が見込めない条件であることが多いです。そのため、想定通りの賃料収入が得られない可能性が高くなってしまいます。
つまり、“節税になる”という名目で、実際には必要のない、しかも割高な買い物をさせられてしまうのです。

____詐欺に近いんですね。

はい、詐欺と考えても良いと思います。普通に考えれば明らかに避けられるはずなのに、

引っかかってしまう医師はいるんです。何も考えていないのか、「うまく節税した」と考えているのか、私には全く理解できませんが。

「年金・生命保険の代わり」「節税になる」 医師が騙される手口

____ここまで、詐欺の内容についてお話いただきました。
では、実際にはどのようにして投資の提案を受けるのでしょうか。


大きく分けて二つのルートがあります。

一つは、先輩医師からの紹介です。
信頼している先輩から「この会社はおすすめだよ」と紹介されるケースは少なくありません。ただ、実際には、先輩医師が紹介料(数十万円)を目的にしているケースがほとんどだと思います。

もう一つは、直接の営業です。

わかりやすい例としては、学会などの医師向けのイベントがあります。私自身も美容外科学会に参加した際には、不動産会社の大きなブースをいくつか見かけました。先ほどの事例のように実態はほとんど詐欺であるにも関わらず、「あなたのサポートをします」と“投資のプロ”を装って堂々と勧誘しているんです。

他にも、営業マンから電話がかかってくる場合もあります。
医師会や学会などのリストを元に手当たり次第アプローチをしているのではないでしょうか。ひどい例だと、医療関係者を装って病院に電話をかけ、医師に取り次いでもらうという話も聞きます。

____なるほど。積極的なアプローチを受けるわけですね。


そうなんです。彼らの鉄板トークとしては、「年金・生命保険の代わりに」「節税になる」というものなのですが、なびいてしまう医師もいます。
加えて、営業マンとの“人間関係”も厄介なんです。キャバクラなどに連れて行かれるうちに、断りづらくなってしまう。営業や接待にお金を使っても採算が取れる訳ですから、どれだけぼったくられているのか、とは思いますが。

結果として、5%ほどの医師が不動産投資に引っかかっているように感じます。実際に、私が知っている限りでも10件以上、投資詐欺の被害を知っています。もちろん、恥ずかしくて周囲に言えないケースも含めれば、被害者数はさらに増えるでしょう。

なぜ医師は不動産投資詐欺に引っかかるのか?


____では、優秀なはずなのに、なぜこれほど多くの医師が不動産投資で損をしてしまうのでしょうか。

逆に、医者だからこそ、騙される要素があるんです。

一つ目は、資金力です。
年収が高いことに加えて、借りるにしても、金融機関からの信用が厚い。実際に、私自身が不動産を購入した際には、研修医(社会人)1年目にも関わらず収入の7.5倍もの額を借りられました。
また、数百万円騙されたところで人生が終わるほどの損失ではないんです。資金に余裕がある分、騙されても「まぁいいか」で済ませられる額が大きい。
逆に、お金を稼ぐ分、節税したがる方もたくさんいます。例えば、年収1400万円の場合には、額面はおよそ120万円ほどあるのに、手取りは約80万円になってしまうんです。そこで、「マンションを購入すれば、毎年税金で引かれる額のうち100万円を購入費用として有効活用できるんですよ!」と勧誘を受ければ、心が揺らぐのも無理はないでしょう。
お金に余裕があることが、詐欺にかかる確率を上げているようにも思えます。

二つ目が、”性善説”で生きてきた環境です。多くの医師は、幼少期から教育に十分な資金をかけてもらい、恵まれた環境で育っています。似たような家庭環境の友人に囲まれるため、金銭トラブルに直面する機会が少ないと思います。医療現場でも「助け合い」が基本です。
結果として「自分を騙す人はいない」と無意識に思い込み、人を疑う姿勢が他業界の人よりも薄くなりがちなのではないでしょうか。

要するに、マネーリテラシーが低いんですよね。お金に不自由はしたことがないし、周囲もいい人ばかりの環境で育ってきている。だから、騙されるとは微塵も思っていないし、万が一、数百万円損しても「ちょっと痛かったな」で済んでしまう。
不動産会社にとっては、これ以上ないカモでしょうね。

まとめ:医師ですら騙される不動産投資

____まとめると、資金力や人を疑わない姿勢、マネーリテラシーの低さなど、医師ならではの背景が、不動産投資詐欺に引っかかる要因になっているのですね。では、騙されないためにはどうすれば良いのでしょうか。


このようなポイントをおさえると、安全性は上がるのではないでしょうか。

  • 不動産サイトで相場を確認すること
     今の時代、不動産情報はある程度民主化されています。最安値とまではいかなくても、市場価格の目安としては十分な指標になります。
  • 不動産に詳しい知人の意見を聞くこと
     自分一人で判断せず、信頼できる知人のセカンドオピニオンを得ることは非常に有効です。
  • まずは自宅から購入すること
     絶対に本気で選びますし、たとえ資産価値が下がっても自分が住むつもりであれば影響は少ないです。他にも、ローン金利や税制、空室リスク等の観点からも利点があります。投資物件に飛びつく前に、自宅を持つ経験から始めるのが安心です。

____営業会社以外からの情報を得ることが重要なんですね。ありがとうございました。