大阪府教育庁が7日発表した「府内公立高校入試一般選抜」の最終出願状況が、話題を呼んでいます。全日制128校の平均倍率が1.02倍で、過去最低を記録したのです。
しかも、地域の伝統ある公立高校の倍率が非常に低く、寝屋川高校が0.94倍、八尾高校が0.99倍、鳳高校は定員が320人から280人になったにも関わらず、去年より0.94倍に倍率が下がってしまっています。
これらの高校は、偏差値上非常に高いところが多いです。サイトで確認すると、どの高校も偏差値65〜70の名門校です。
ネット上では、「偏差値68の寝屋川高校が定員割れなんて、どうなっているの!?」「鳳高校って、2年連続で定員割れだよね!?どういうこと!?」と波紋が広がっています。
出典:2025年度大阪府公立高校一般選抜最終出願状況(全日制128校・定時制全校倍率一覧)
これは、私立高校無償化の波が想像以上に大きいことを示しているのではないか、と言われています。
大阪の公立高校では今、一体、何が起こっているのか?
これからどんなことが起こる可能性があるのか?
今回の記事では、関西で教員をされている方や、有識者からも話を伺いつつ、考察してみました。
私立高校無償化という大転換の波
まず、今回の大阪の公立高校の倍率がなぜこんなに落ち込んでいるのか。その理由の一番大きな要因は、「私立高校無償化」の流れでしょう。
高校無償化により、大阪の高校では下記のような支援を受けることができます。
2025年度入学(現中3):
・高校1年生時:年収や子どもの人数により支援内容が異なる
・高校2年生時から:無償2026年度以降入学(現中1・2):
・高校1年生時から:無償
2024年度より前でも、就学支援金制度の充実により、世帯年収が590万円未満の世帯では無償、590万円以上910万円未満の世帯では生徒負担の軽減がありました。しかし2026年度からは、完全に年収に関係なく授業料が無償化します。「授業料が無償になるなら、せっかくだし授業料が高くて教育の質が高い私立高校にしよう」と考える層が多くなっています。
大阪だけではない!?公立不人気の流れ
このような「高校無償化→公立不人気」の流れは現在、どこの都道府県でも起こっており、またこれからの高校無償化の全国化に伴ってどんどん発生することと考えられます。
例えば姫路では、昨年多くの公立高校で統廃合が行われました。例えば、県立高校を3つ集めて新設の学校「姫路海稜高校」が作られました。
しかし、それにも関わらず、令和7年度の入試では定員割れとなっています。最新のデータによると、「姫路海稜高」の倍率は「0.82」となっていて、定員割れになっています。
出典:県内公立高校の『2025年度一般入試』で、再編で新設される「6校」のうち5校が「定員割れ」になったみたい
このように、公立高校の没落はどこの都道府県でも発生している現象だと言えるのです。
関係ない公立高校もある
ただし、公立高校の中でも、トップの1・2を争うような偏差値の高校に関しては、そこまで不人気にはなっていません。例えば大阪の話に戻れば、大阪の公立高校の中でも北野高校が1.27倍、天王寺高校が1.21倍、三国丘高校が1.31倍という結果になっています。
今回話題になっている寝屋川高校・八尾高校・鳳高校は、偏差値は水準と比べて高いものの、大阪府立高校の中でのトップではありません。ランキングで見ると以下のようになっています。
北野高校 75
天王寺高校 74
三国丘高校 73寝屋川高校 68
八尾高校 63
鳳高校 61
このように、偏差値が本当に高いトップオブトップの高校群と比べると、偏差値的に低いように見えてしまう高校だったと考えられます。
また、基本的に高校受験の偏差値というのは中学受験の偏差値と比べると高くなりがちであり、「偏差値68なのに定員割れ」というのは数字の上での問題と言えるかもしれません。
その上で、今回取り沙汰された3校以外の府立高校において、100人以上定員オーバーになる学校もあります。ここには、偏差値だけではなく、校舎・設備の充実性や教育の質の充実などの要素も複雑に絡み合っていると考えられます。
無視できない立地の問題
その上で、今回キーポイントとなったと考えられるのは、立地の問題です。
例えば寝屋川高校は、寝屋川市駅から徒歩8分のところに位置する、大阪の県北側にある学校です。大阪梅田駅から移動するとなると、徒歩で歩く時間も含めて40分程度かかります。それに比べて、北野高校は梅田駅からバスで10分程度で通学することができます。
鳳高校も、最寄りのJR富木駅から徒歩16分であり、梅田駅から移動するとなると徒歩で歩く時間も含めて60分程度かかります。立地の観点からも、人気が若干落ちてしまっているのではないかと考えられます。
鳳高校の2連続定員割れは無視できない
今回、寝屋川高校・八尾高校・鳳高校が定員割れでニュースになっているわけですが、その中でも鳳高校は特別注目するべき事情があります。それは、2年連続の定員割れになっているという点です。
通常、突発的に1年のみ定員割れになることは多いです。しかしそれを見て、「あの学校なら倍率が低くなるだろう」という考えの中で、定員割れした次の年には元に戻ることが多いです。それにも関わらず、鳳高校は2年連続で定員割れしています。2年連続で続いたということは、高校無償化が本格化する2026年度においてもこの傾向が継続するのではないかという見方が濃厚です。
ちなみに、ネット上では「定員割れしている高校の力のある先生方が辞めて、私立の高校に流れるのではないか」という意見もあります。実際に取材して見ると、人数は少ないですが、確かにある流れのようです。
実際の先生の声は?
また今回、関西の公立中学で働く先生に実際に取材してこの問題を聞いてみました。
「生徒に話を聞くと、やはり高校は私立、という人は増えてきましたね。また、小中一貫の学校でも、中学からは私立に行く、という選択をしている生徒も増えてきました。中高一貫の私立に行って、高校3年間は無償で受けられるということをメリットにしているという人も多いみたいですね。」
「また、高校受験の際に、関西の公立高校だと内申点が必要になります。内申点が必要ということは、9教科・美術や音楽も含めた科目で満遍なく点数を取れていないといけません。私立高校では3教科でOKなところ、9教科勉強しなければならないというのはとても難しいんですよね」
「ぶっちゃけもう、公立高校を潰す流れなんじゃないかと思っていますよ。生徒募集が大変な公立高校をこの際だからスクラップして、新しい教育の流れをビルドしていくつもりなんじゃないか、と考えています」
この問題は、今後も継続して行ってしまうのか? 大阪の公立高校は無くなっていってしまうのか? そしてこのムーブメントは、全国規模になっていくのか?
今後も注目が必要ですね。





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