突然ですがみなさん、こちらの問題をご覧ください。

 こちらは、1968年の東大入試です。50年以上前の東大数学の問題です。

 どうでしょう?「簡単そうだな」と思いませんか?

 そうなんです。この問題、今では参考書の「例題」として載っているような問題です。昔はこの問題でも「難問」として扱われたわけですが、今では典型問題になってしまっています。

 逆に、最近の東大入試の問題は、昔と比べて求められる力が変わってきていると言われています。

 生成AIの発達により、何万もの職業が淘汰されるというニュースはよく耳にしますよね。AIに聞けばわかることを、わざわざ勉強する意味があるのか?すでに多くの教育専門家が「大学入試において、ネットで調べられる問題はもう出題する必要がなく、創造性や思考力を問う問題を出題するべきだ」という意見を表明しています。

 そのため近年では、従来のセンター試験から思考力を重視する共通テストへの変更が行われたり、人物像を重要視するAO入試が増加したりしています。一般入試でも、自由英作文など暗記だけでは解くことのできない思考力、知識の運用能力を確かめる問題の割合も増加しています。

 入試問題は、どんどん変遷をしています。時代によってどんどん変わっていくものなのです。

 今回の記事では、大学として時代の最先端をいく東京大学の入試問題を取り上げ、その問題傾向の歴史的な変遷を見ながら、現代の「入試に必要な力」とは何かを分析していきます。

① 数学の問題から見る、難易度の移り変わり

 まず最初に1991年の東京大学文系の数学の第一問です。(引用

第一問. 関数 f(x) = x3 −2x2 −3x+4 の、区間 −7/4 ≦ x ≦ 3 での最大値と最小値を求めよ。

 東京大学の数学の問題と聞いて尻込みする方も多くいらっしゃるかもしれませんが、現代の高校生の数学のレベルを考えるとこの問題は拍子抜けするような難易度だと言えます。

 具体的な解法の解説は省略させていただきますが、この問題は今では普通レベルの教科書の練習問題として乗るような難易度だと言えます。

 当然、第一問であるという特性上、ある程度基礎的なものを出題するという意図があったのかもしれませんが、四問しかない大問のうち一つがこちらの問題であったという事実は間違いありません。

 次に2004年度の入試問題を見てみます。(引用

 xy 平面の放物線 y = x2 上の 3 点 P, Q, R が次の条件をみたしている。
 △PQR は一辺の長さ a の正三角形であり,点 P, Q を通る直線の傾きは √2 である。 このとき,a の値を求めよ。

 2000年代というと、インターネット、特にスマートフォンが全世界的に普及を始めた時期です。詳細には1995年のWindows 95の家庭への普及がきっかけとなっていたため、2000年代にはかなり普及が進んでいたと言えるでしょう。

 そのせいと断定することはできませんが、全体的な傾向として、検索だけでは解くことのできない思考力を問う問題が増えてきたように感じます。この問題は高校一年生レベルの知識さえあれば解くことのできる問題ですが、難易度は高く、知識の運用能力が試されています。そして現代の問題を確認すればさらに知識の運用能力を求める入試問題へと変容しています。

 一時、棋士の羽生善治9段が「学習の高速道路理論」を将棋と絡めて述べて話題となりました。それは、ITとインターネットの進化によって将棋が強くなれるための環境が一気に整い、従来よりも圧倒的に速いスピードで学習が可能になったということです。

 これは勉強にも同様のことが言えます。各大学の入試問題は予備校や出版社が解説付きのものを公開し、それと類似した問題も多く出版されています。ネットとITによりそれらにアクセスもしやすくなり圧倒的に学習の効率が上がっているのです。ましてや生成AIのブームが来る中で簡単な難易度の問題であればAIが自宅でわかりやすく解説をしてくれるようになっています。

 このように考えると大学側も簡単な問題を出題しても差がつきにくくなるため、これまでとは一風変わった趣旨の問題というのを出題してくるようになり、難易度はしたがって増加していくことでしょう。

 時代とともに、入試問題は難しくなっていく運命なのかもしれません。

 実際にGPT 4oに1991年の問題を解かせてみたところ、完璧に正確な答えを算出しました。

②地理の問題から見る、時代の変化

 では、地理の問題の問題を見てみましょう。地理は、世の中の情勢を非常によく反映しています。まず、2006年の問題をみてみます(引用)。

 上記の数学の問題の例でも紹介しましたが、こちらは「パソコン」という一つのキーワードをもとに作成されています。2006年というと各家庭にパソコンがあるかないかという時期ではありますが、ビジネスマンには必需品となっていた時代です。

 また、この時中国の経済成長が著しく、この頃の地理の問題では多くが工業品の生産地としての中国にフォーカスしていました。この時期の入試問題は、どの大学も中国やインドについて着目した問題を出題することが多かったです。

 次に2025年最新の問題をご紹介いたします。

 

 (2)の問題をみていただくとわかるように、2010年以前と比較するような問題も出題されています。

 回答としては「衣類の主な生産国が中国からベトナム・バングラデシュ等に移行したため」という内容が正解となります。

 また、ファストファッション、大量消費大量生産といった社会的問題に対する世界的な動きなどを把握しているかという問いも出題されます。

 以上の問題を見ていただいたらわかる通り、東京大学の地理の問題は教科書を頑張って勉強するというような勉強法ではクリアすることはかなり難しいです。なぜなら教科書は、作成から出版までに様々な検閲工程が挟まるため時間がかかり過ぎてしまうのです。

 地理の入試問題に挑む上では、ニュースや最新資料などを自ら進んで参照し、その時代ならではの話題をしっかり把握しておくことも重要なのです。

③まとめ

 ここまで、数学と地理の問題から、時代の変遷とともに東京大学の入試がどのように変化していったのかをご紹介いたしました。

 では結局、現代の入試に求められる能力とは一体なんなんでしょうか?

 それは、最新の情報に敏感になり、異なる知識を組み合わせて運用する能力だと言えるでしょう

 これからの時代、生成AIだけではなく今後もっとさらに多くのイノベーションが発生することでしょう。そのイノベーションに遅れないよう最新の情報に敏感になりつつも、その新たな知識を使って社会的な問題を解決することが将来的には求められてきます。

 大学入試はそのための訓練の一つであるとも言えます。社会科目では最新の情勢について勉強し、数学や物理などの理系科目ではその運用方法についてロジカルに考える思考力を鍛えることができるのです。