今回紹介するのは、「学習院大学国際社会科学部」に提出された志望理由書の一部です。

 この学部の志望理由書は、一般的な志望理由書で求められる「大学で何を学びたいか」とは少し異なり、「履修したい国際社会科学部教員が担当する社会科学科目を具体的に挙げながら、大学での学びをどのようにキャリア・進路へとつなげるか」を明確に記述することが求められます。

 このような形式の志望理由書では、「大学で何を学びたいか」だけでなく、「その学びが将来の目標やキャリアにどのようにつながるのか」を具体的に説明することがポイントになります。単に「学びたい」という気持ちを述べるだけでは不十分であり、学問と実社会のつながりを意識した説得力のあるストーリーが求められます。

 では、実際にこの学部を志望した人はどのように記述しているのでしょうか?
 実際の志望理由書を見てみましょう。

学習院大学 国際社会科学部 の志望理由書の例

Q 履修したい国際社会科学部教員が担当する社会科学科目を具体的に挙げながら、大学での学びをどのようにキャリア・進路へとつなげる考えであるかを記載してください。

 私は将来、難民や移民が抱えている差別問題や労働問題を解決に導きたいと考えている。この志を達成するために、貴学国際社会科学部で社会科学の分野を国際的な視野から学んで難民移民問題の解決法を模索したい。

 私は英語イマージョン教育を推進している学校に12年間通っている。高校2年からは国際バカロレアディプロマコースで多国籍な先生方と世界的な視野で授業を受けることで世界情勢への関心が高まった。そこで私はNGO団体ルミチャーを自身が代表として設立した。英語力を活かして異文化交流や、現代社会が抱える問題について話し合うオンラインイベントを開催した。イベントで難民移民が抱える教育知ったことから、マレーシアの難民学校で子供達の教育支援を行った。

 更にプロジェクトの一環として在日外国人が抱える悩みを聞いてサポートする活動を行った。問題の一つに難民移民の劣悪な雇用環境が挙げられる。厚生労働省の技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況によると、労働基準関連法令に違反していた企業は約70%に上るとされている。この数値から、難民移民の雇用環境が劣悪であることが分かる。私がNGO団体の活動で、実際に悩みを聞いた在日ビルマロヒンギャ難民のアウンティンさんと移民のアリさんが過去に働いていた工場では1日に10時間以上の労働を強いられていた。これは労働基準法で定められている1日8時間の労働時間を超えていて違反している。

 これらの活動から、難民や移民が抱えている問題を解決したいと考えるようになった。難民移民問題という地球規模の問題解決のために貴学で国際的な視野から社会科学の分野を学び、幅広い知識を身につけることが必要不可欠である。

 まず1、2年次に脇坂明教授の下で労働経済学の基本を学び、日本が抱えている労働力不足問題を解決に導く方法を模索したい。日本は「超高齢化」国で、総人口に占める6 5歳以上の割合が28.4%となっていることから、若い労働力を必要としている。そこで、移民難民を積極的に受け入れて若い優秀な労働力を獲得することが効果的であると考えられる。実際チリで移民難民をより多く受け入れる政策が行われ、経済成長と生産性が高まった。これを踏まえて先生の下で改革の方向性を理解し、経済学も用いて労働問題を合理的に考え解決法を模索したい。更に3,4年次には大学院生と共に移民、外国人労働者の労働問題について学びたい。

 さらに私は日本でより多様性が認められるような社会を実現させたいと考えている。そこで私は桐山大介教授の下で「他民族国家」アメリカについて研究を行いたい。そして、他民族国家アメリカにある「人種のサラダボウル」のコンセプトを日本でも実現させたいと考えている。「salad bowl」(サラダボウル)は多文化主義であり、それぞれの文化が共存してはいるものの混じり合うことはない共存の状態を表した社会のことを言う。「混ぜても決して溶け合うことはない」という意味から、共通文化を形成していく状態を示している。全てのマイノリティを含めた文化を尊重し、共生できる姿こそが私の目指す日本社会の未来である。

 これらの学習を得たうえで、貴学独自の海外研修では協定外留学であるカルフォルニア大学へ中期留学したいと考えている。留学中は、グローバルスタディーズを専攻して多民族国家や、異文化を理解するためのメカニズムなどを学びたい。そして将来的には、現在自身が代表として活動しているNGO団体を法人化して更にJICA青年協力隊の一員として難民問題を解決に導きたい。以上により私は貴学を強く志望している。 

ポイント1 具体的な名前を挙げて書く

 この志望理由書の特徴的な点の一つは、「在日ビルマロヒンギャ難民のアウンティンさんと移民のアリさん」のように、具体的な個人名を挙げていることです。

 どんな問題でも、勉強をすれば概要くらいは知ることができます。しかし、勉強だけでは、「n=1」の視点、つまり個々のケースにおける事情を得ることはできません。

 実際に現場でのインタビューや聞き取り調査を行い、そこで見聞きした個々の体験を志望理由書に組み込むことで、「実際に問題の当事者と関わりながら学びを深めてきた」という実践的な姿勢を示すことができます。

また、大学側としても、抽象的な話よりも具体的なエピソードがあるほうが「この受験生はしっかりと現場を見てきたようだ」「表面的な知識だけでなく、実際に課題に向き合った経験があるな」と評価しやすくなります。特に社会科学の分野では、「社会の現実を理解し、それを学問と結びつけて考えられる力」が求められるため、具体的な事例を挙げることは志望理由書を作成するうえで有効な戦略になります。

ポイント2 取り上げる科目の教員について具体的に書く

  この志望理由書では、「脇坂明教授の下で労働経済学の基本を学び、日本が抱えている労働力不足問題を解決に導く方法を模索したい。」と、具体的な教授の名前を挙げた上で、その授業を通じてどのような知識を得て、それをどのように活かしたいのかを明確に述べています。「この教授の授業を受けて○○を学びたい」「その知識を用いて△△の問題を解決したい」と具体的に書くことで、「この大学でなければならない理由」が明確になり、志望動機に説得力が生まれます。

 さらに、教授の研究分野や担当科目を詳細に調べ、それと自分の関心のあるテーマを結びつけることで、「大学のカリキュラムをしっかり理解し、それに基づいた学習計画を立てている」という印象を与えることができます。大学の公式サイトや入学案内、論文などを参考にしながら、「なぜこの教授のもとで学びたいのか」を具体的に記述することが重要です。

ポイント3 大学での学びがキャリアにつながることを明確にする

 この志望理由書では、「まず1、2年次に脇坂明教授の労働経済学を学び、その後3、4年次には大学院生と共に移民、外国人労働者の労働問題について学ぶ」「さらに、桐山大介教授のゼミで他民族国家アメリカについて研究し、『サラダボウル』の概念を日本に応用したい」など、自分がどういうステップで学びを深め、活動していくのかを明記しています。

 このように、単に「この分野を学びたい」だけではなく、「何年次にどの科目を履修し、それをどのようにキャリアにつなげるのか」を具体的に記述することが、大学側の評価につながります。

 「大学での学びをどのようにキャリア・進路へとつなげるか」が求められているので、「将来的には現在自身が代表として活動しているNGO団体を法人化し、JICA青年協力隊の一員として難民問題を解決に導きたい」と書かれている点もこの志望理由書は優れています。大学での学びを単なる「知識の習得」にとどめず、それを社会貢献やキャリアの発展へと結びつけるビジョンが明確であるため、大学側も「この受験生は入学後も積極的に学び、将来的に社会で活躍できる」と評価しやすくなります。

 いかがでしょうか?

 具体的な名前を挙げつつ、大学での学びが将来のキャリアにつながっていく見通しを段階的に明示することで、自分のキャリアビジョンを明確に伝えられるような志望理由書を書きましょう!