みなさんは「進学振り分け(現在は進学選択)」という言葉をご存じでしょうか。
東大生は、まずは全員が「教養学部」に入ります。そして、2年間の教養課程を経て、3年生から始まる後期専門課程での研究分野を決めるのです。

進学先を振り分ける(選択する)から、「進学振り分け(進学選択)」と呼ばれるこの制度は、東大生からも賛否があります。
「後から選べるから気楽でよい」とも、「やりたいことが決まっているのに、足踏みさせられるのがもどかしい」とも聞こえてくるのです。
良くも悪くも、東京大学の最大の特徴とも言えるこの制度に、いま大きな変革の波が押し寄せています。

東大の学生新聞である「東京大学新聞(東大新聞)」が2026年6月23日および8月11日に報じた速報によれば、東大は2028年に実施される進学選択(主に2027年度の学部入学者が対象)から、制度の方式や各学部の定数変更を含む大規模な見直しを検討しているとのこと。既に8月5日には2年生を対象とした意見公募のアンケートも開始されており、水面下で進められてきた改革がいよいよ現実味を帯びてきました。

進学選択制度における最大のメリットは、途中でやりたいことが変わっても、成績さえ良ければ文系から理系へ、あるいは理系から文系へと進路を変えられる(いわゆる「他科類進学」)こと。
筆者の同級生も、文科三類から法学部や経済学部、はたまた農学部の獣医学専攻を希望するなど、進学先は様々でした。

今回の東大新聞の報道によれば、現在3段階で行われている選抜プロセスが統合されたり、「受入保留アルゴリズム」と呼ばれる、学生の希望と学部の条件をより適切にマッチングさせる新しい仕組みが導入されたりする可能性があるそうです。

また、2027年度の新学部「College of Design(UT/D)」設置に伴い、一般選抜の定員が100人削減される予定のほか、将来的には「ディープテック学部」や「コンピューティング学部」などの新設も検討されているといいます。これに伴い、各学部・学科の受け入れ定数も大きく見直されると見られています。

では、この制度改革によって、東大生の進路や今後の受験戦略にどのような変化が起きるのでしょうか。大きく分けて、「より柔軟になった場合」と「他科類への進学が難しくなった場合」の2つのシナリオが考えられます。

進学がより「柔軟」になった場合

仮に新しいマッチングアルゴリズムや定数変更によって、自分の所属する科類にとらわれず、自由に他学部へ進学しやすくなったとしましょう。
これは本来の「教養学部」の理念に立ち返る、素晴らしい変化です。

現状の進学選択では、他科類へ進学するための枠(通称「全科類枠」など)は非常に狭き門であり、0.1点を争う熾烈な点数競争が繰り広げられています。
その結果、学生たちは「自分の興味がある学問」よりも「テストで高得点が取りやすい科目(いわゆる『楽単』)」を優先して履修する「点取り主義」に陥りがちでした。
教養を深めるはずが、実利ばかりを追いかけて「学びたいこと」から離れてしまう学生が一定あらわれる点は、本制度における最大の弱点であり、悩みの種だったはずです。

制度が柔軟になれば、無用な点数獲得ゲームから解放されます。
純粋な知的好奇心に従って学問を修め、大学入学後に見つけた「本当にやりたいこと」へ進みやすくなるでしょう。

これは学生の可能性を広げる、非常に前向きな進化と言えます。

「他科類」への進学が難しくなった場合

逆に、各学部の定数が見直された結果、「自科類からの進学枠」が絶対的に強化され、文転や理転といった「他科類からの進学」が極めて困難になるシナリオも考えられます。

この場合、東大の最大の特徴であった「入学後にじっくり進路を決められる」というメリットは薄れ、他大学のような「学部別入試」に近い性質を持つことになります。
こうなると、受験生の戦略は根底から覆ってしまう。

これまでは「とりあえず入りやすい科類(例えば理科二類など)に入って、後から成績を稼いで希望の学部に行こう」という、いわゆる”コスパ重視”の戦略が一定数存在しましたが、それが通用しなくなるからです。
高校生の段階で、将来の明確なビジョンを持ち、それに見合った科類を受験しなければならず、シビアな選択を迫られます。

どちらのシナリオに転ぶにせよ、まだ具体的な制度の全容は明かされていません。
しかし、2027年度以降に東大を目指す中高生たちにとっては、死活問題でしょう。

今後は、「自分は大学で何を学びたいのか」という根本的な問いに、これまで以上に真剣に向き合う必要が出てきます。
「とりあえず東大」だと、今後の東大側の変革内容によっては、身の振り方を大きく考え直さなければいけなくなるかもしれません。

親御さんとしても、「とりあえず東大に入れればいい」というブランド志向だけで子どもを追い立てるのではなく、お子さんが本当に興味を持てる分野を一緒に探求し、知的好奇心を育むサポートをすることが、新時代の東大受験を乗り切る鍵になるはず。

激動の時代を迎える東京大学の動向から、今後も目が離せません。