「子どもの成績が上がらないのは、才能の問題じゃない。親の“関わり方” が大事です。」
こう語るのは、SNS フォロワー3 万人超、塾業界のリアルを歯に衣着せぬ言葉で発信し、注目を集める“愚痴講師” 先生。小学生から高校生までを幅広く個別指導してきたベテラン講師であり、現場のリアルな声に耳を傾ける数少ない「当事者」だ。
今回は、長年にわたる指導経験の中で見えてきた「子どもが伸びない家庭の特徴」── “今の生徒の特徴” と“親の関与” について、お話を伺った。
「なぜ最近の子は勉強ができないのか?」
──先生は長年、個別指導塾で教えてこられたと伺いました。最近の子どもたちには、どんな変化を感じていますか?
講師:そうですね、20 年以上教えてきましたが、ここ数年の子どもたちは、これまでとはまったく違います。単に「スマホ世代」だからという一言で片づけられない、もっと根本的な変化を感じています。
──たとえば、どういった点でしょうか?
講師:昔なら「当たり前にできた」ことが、今は“勉強” しないと身につかない。例えばトランプや硬貨、碁石といった基本的なモノを知らない子が本当に増えています。
──トランプや硬貨を知らないんですか?
講師:ええ。中1 の数学の授業で「トランプのハートを順番に並べて」と説明したら、「先生、トランプって何ですか?」と真顔で聞かれたんです。最初は冗談かと思いましたが、彼は本当に知らなかった。現金を見たことがほとんどない子もいて、1 円玉や10 円玉の違いを知らない子もいます。
──そこまで…ですか。
講師:ええ、日常的な体験の「土台」がごっそり抜けている。だから、教科の内容以前に“常識” を教える必要が出てくるんです。
──なるほど、勉強内容だけじゃなくて、生活経験の欠如も障害になっていると。
講師:その通りです。たとえば、「教科書の150 ページを開いて」と言うと、105 ページを開いて「答えが載ってません」と言う。ページを見間違えているだけなのに、自分で正しい場所を探そうとしない。こういう子は、偏差値50 ぐらいの高校にも多くいます。
スマホ時代の子供は「調べられない」
──スマホ時代のはずなのに、自分で調べられないんですね。
講師:逆にスマホ時代だからこそ、「調べる力」が失われているんです。検索=思考ではありません。辞書を引いた経験がない子どもたちは、分からない言葉に出会っても、文脈から推測せずに思考停止してしまう。
──さらに最近は「我慢ができない子」が多いとも聞きます。
講師:まさにそれです。宿題を出すと、「やってません」「忘れてました」「やりたくなかったです」と平然と言う。
昔なら「すみません」が先に出てきたものですが、今は言い訳から入ります。
──それって、叱られ慣れていないということですか?
講師:コロナ以降、「子どもを追い詰めてはいけない」という風潮が強まり、教育現場では叱ることがタブーになってしまった。でも「嫌なことでもやる」「継続する」という力がないと、勉強って続かないんですよ。
──勉強を“他人事” として捉えてしまう子も多いとか?
講師:そうですね。模試の結果が悪くても「まだ時間あるし」「本気出せばいける」と言い続けて動かない。共通テストの後になって、ようやく「先生、どうすれば…」と泣きついてくる。正直、それでは遅いんです。
逆に成績が伸びるのはどんな子?
──逆に、成績が伸びる子にはどんな共通点があるのでしょうか?
講師:一つ興味深いのは、ピアノ経験者ですね。地頭がいいというより、「継続する力」がある。ピアノって、すぐに結果が出ない習い事の典型ですよね。毎日コツコツ練習して、ようやく弾けるようになる。この経験が、受験勉強でも活きるんです。
──すごく分かりやすいです。
講師:ピアノって、「今日は指が思うように動かない」みたいな日もある。それでもやり続ける習慣が、学力の土台になります。努力がすぐに報われるとは限らない。でも、それでもやる。これは、今の子どもたちがなかなか持ちにくい感覚です。
──つまり、勉強ができないのは「能力の問題」じゃないと。
講師:まさに。今の子どもたちは、環境の中で「勉強ができなくなってしまっている」だけ。社会全体で、勉強する力──考える力、続ける力、我慢する力──を育てる必要があると思います。
──そんな中で、大人にできることって何でしょう?
講師:「昔はできたのに」ではなく、「今の子はどう学ぶか」に向き合うことですね。塾や学校だけでなく、家庭や社会も含めて、子どもが“自分の頭で考えられる” 環境を作る。その意識が必要だと思います。
子どもの成績が上がらない本当の理由は“親”?
──今の子どもたちが抱える学習の課題についてお話しいただきましたが、ここからは“親” の関与についてお伺いしたいと思います。ズバリ聞きますが、「子どもの成績が上がらない原因は、親にある」と感じることはありますか?
講師:正直、かなりあります。私の経験上、成績が伸びない子の背景には、少なからず“親の関わり方” が影響しています。東大や京大に受かる子とそうでない子を見てきましたが、その差は単に子どもの能力だけじゃなく、親のスタンスにも如実に表れます。
──よく「親のサポートが大事」と言われますが、それが逆効果になることも?
講師:あります。特に問題なのは「干渉型」の親。たとえば、子どもの勉強計画、参考書選び、志望校決定まで、すべてを親が決めてしまう。いわば“代理受験” のような形になっているんです。
──管理しすぎてしまう、ということですね。
講師:ええ。ある男子高校生の例ですが、小学生の頃からずっとお母さんが細かく勉強管理してきた子がいました。高校に入って反抗期になると、「お母さんの言うこと=やりたくないこと」になってしまい、勉強へのモチベーションを完全に失ってしまったんです。
──“良かれと思って” やっていたことが裏目に出てしまったんですね。
講師:そうです。愛情からの行動なんですが、それが“支配” に感じられると、子どもの自立心を削いでしまいます。
「うちの子も同じようにできる?」SNSの功罪
──最近は「1日2 時間の勉強で難関大に合格」みたいなSNS の成功ストーリーも多いですが、ああいうのも影響ありますか?
講師:大アリです。極端な成功事例を真に受けて「うちの子も同じようにできるはず」と思い込んでしまう親が少なくありません。でも、そういう話には“前提条件” が抜け落ちていることが多い。たとえば、地頭の良さとか、もともとの基礎学力、家庭環境など。
──確かに、背景が見えない分、誤解を招きやすいですね。
講師:実際に、ある保護者は「動画で見た高校生は3 ヶ月で偏差値20 上げたから、うちの子にもできるはず」と言ってましたが、その子は中1 の内容も怪しい状態だったんです。期待値だけが膨らんで、子どもは自信をなくしていく。悪循環です。──親の“夢” が子どもにプレッシャーとしてのしかかる……。
講師:ええ。「あなたの将来のために言ってるのよ」と言いながら、実際には親の願望を押しつけているケースも多いです。子どもは「お母さんのために勉強してる」状態になり、“自分の人生” として受験に向き合えなくなる。
──子どもが“自分の意思” で動かないと、結局は続かないですよね。
講師:その通りです。「親のために」じゃなくて、「自分のために」勉強している子は、やっぱり強いです。逆に、親の手を離れた途端に崩れてしまう子は、自分で考える力が育っていない。
──最近は「先回りしてなんでもやってあげる」親も増えているように感じます。
講師:そこも大きな落とし穴です。学習計画、参考書選び、スケジュール管理まで全部親が代行してしまうと、子どもは“指示待ち人間” になってしまう。大学受験って、自分で優先順位を決めて計画的に学習を進める力が求められます。そこを親が奪ってしまったら、成長の機会がなくなります。
理想的な親のかかわり方は?
──では、理想的な親の関わり方とは、どういうものでしょう?
講師:私が理想的だと感じる親の特徴は、以下のようなものです:
1. 環境整備に徹する部屋、教材、送迎などは整えても、学習内容は口出ししない
2. 応援の姿勢を示す「頑張ってるね」「応援してるよ」と声をかける
3. 最小限の管理にとどめる勉強時間や生活リズムなど最低限のルールはあるが、細かい学習計画は任せる
4. 失敗を受け入れる失敗してもすぐに口を出さず、子ども自身に考えさせる
──まさに「支えるけれど、支配しない」ですね。
講師:そうです。以前担当したH 君の家庭は、まさにその理想形でした。お母さんは「塾にお任せしているので、私は信じて見守ります」というスタンス。H 君は自分で計画を立てて、何度も失敗しながら改善していきました。結果、志望校にも合格し、大学でも主体的に学んでいます。
──信じて見守るって、簡単そうで難しいですよね。
講師:親自身の「不安」が原因で、過干渉になってしまうんですよね。「このままでは失敗するのでは」と心配して、それを“管理” で解消しようとする。でもそれが、子どもを潰してしまうこともある。
──最後に、親御さんたちに伝えたいメッセージがあればお願いします。
講師:「子どもの人生を代わりに歩くことはできない」ということを忘れないでほしいです。親ができるのは、「子どもが自分で歩くための支えになること」だけ。愛情とは、「手を離す」ことでもあるんです。




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