「数学が苦手」──そう感じたことのある人は、きっと少なくないはずです。
点数が伸びない、授業が怖い、他の教科はできるのに数学だけがどうしても……。その苦手意識は、進路や成績に影響を与えるだけでなく、時に人間関係や生活習慣、そして将来の選択にまで波紋を広げていきます。
けれど、すべてが“悪い影響”ばかりとは限りません。今回は、苦手な数学を克服できなくとも、諦めないことで思わぬ結果を得られた、2人の学生の実体験をご紹介します。
「できなかった経験」が、もしかしたらあなたの人生を豊かにするかもしれません。
数学への苦手意識が育んだ恋
数学がつないだ小さな恋があったとAさんは語ります。
質問のために職員室に通う日々
中部地方の公立中学に通っていたAさんは
「中学1年のとき、担任の数学の先生を好きになってしまったんです。30歳手前の塩顔の先生でした。いわゆるイケメンではないんですが、とにかく優しくて惹かれました。」
もともと数学が苦手だったAさんは、授業後や放課後に2日に1回は質問に通うようになったそうです。
「本当に数学がわからないのが半分で、もう半分は先生に褒めてもらうのが楽しみでした。質問自体は15分くらいで終わるんですけど、その後に少し雑談していました。長いときは1〜2時間くらい話していました。」
先生と話すことを目的に、質問をわざわざ作るほどではなかったそうですが、「わからないところを見つけると“先生に質問に行ける”って嬉しくなっていました」と笑います。
恋心を自覚
明確に恋心を自覚したのは中学1年の10月頃。学級委員としての働きをクラスの前で先生からよく褒められていたAさんは、それが原因でいじめを受けてしまいます。
「それ以降、先生は人前で褒めてくれなくなってしまったんです。でも、2人きりのときだけ褒めてくれるようになりました。そのギャップがまた良かったんです(照)。」
個人面談では頭をポンポンされたり、周囲の先生からも「夫婦みたいだね」とからかわれたりするほど、2人の距離感は近かったといいます。
初恋の終わり
しかし、中学3年に上がるとき、先生が異動することが決まりました。
「異動になるのを知って、思いきって手紙を渡したんです。『好きでした』って書いて。」
卒業後、その先生から返事が届きました。手紙と一緒に添えられていたのは記念写真と「Aさんのおかげで頑張れたよ」というメッセージ。その一言に、Aさんは思わず涙があふれたといいます。
高校進学後も、月に一度手紙のやりとりを続け、近況を報告し合っていました。やがて手紙のやりとりは自然と途切れてしまいましたが、特別な思い出として今も心に残っているそうです。
計算ができないおかげで第一志望に内定
「アメリカでは計算機があるので、2桁の足し算もできないんです」
そう話すのは、中学1年の秋にアメリカから帰国したBさんです。日本の数学教育とのギャップに圧倒され、次第に強い苦手意識を抱くようになったといいます。
学生時代の苦悩
「自分でも“できない”って分かっていたので、授業中に当てられるのが本当に怖かったんです。先生も意地悪をしてるつもりがないのに、『え、こんなこともわからないの??』と、教室がシーンとなるんです。それが本当に恥ずかしかったです。」
「それが嫌で、事前に全ての問題を予習していました。途中式を聞かれてもいいように、全部準備しました。だから予習がめちゃくちゃ大変でした。別にそれで数学を克服できたわけではないのですが、本当にただ恥ずかしい思いをしないための突貫工事でした。」
このような行動に至ったのにはプライドの高さがあったと語ります。
「プライドが高い分、恥ずかしい思いはしたくなかったんです。帰国子女とは言っても、姉などもっと英語ができる人が身近にいて、自分には明確な強みがないと思っていたのも大きかったです。」
日常生活での苦難
計算ができない影響は学校の中だけでなく、日常生活にまで及びます。
たとえば、買い物では1kgあたりの価格を比較して安い方を選ぶといったことができず、毎回家族に頼っているそうです。
また、料理でも困ることが多いそう。
「レシピに“大さじ2/3”と書かれていても、分数がよく分からないんです。2種類のソースを混ぜてハンバーグ用のソースを作ったときは、配分を2回も間違えて材料を切らしてしまったんです。最終的に出来合いのソースをコンビニに買いに行く羽目になりました。」
「ハヤシライスを作った時には、レシピが7人前用で、どう調整すればいいか分からなかったんです。結局、1人暮らしなのにそのまま7人前を作って、1週間ハヤシライス生活でした。」
さらに、時間の感覚にも苦手意識がありました。
「10時5分の10分前って言われると、混乱しちゃうんです。24時間表記の14時とかも難しいですね。アメリカは午前・午後の12時間表記なので、慣れてなくて……」
そのため、待ち合わせなどの予定にはとにかく早く出発するクセがついたそうです。
「15分前に着こうとはするんですけど、時計の読み方や乗車時間の計算に自信がないので、結局いつも1時間くらい前に着いてしまいます。相手を待たせたくない性格なのもあって、スターバックスなどのカフェで時間を潰すのが習慣になっています」
そこで、スターバックスの会員証を見せてもらうと

「いつも時間潰しに使ってるカフェに、合計で12万円以上使ってることが分かってしまって……。気づきたくなかった事実です(笑)」
思わぬ収穫
ところがそのクセが、就職活動で思わぬ形で評価されることになります。 就職活動中、第一志望の企業の二次面接で「1時間前に着いてカフェにいた」というエピソードを話したところ、準備の良さとして好印象に。
「最終面接でも『あ、1時間前に来てた子だよね』って覚えててもらってました。『今日も?』って聞かれて、『はい、カフェにいました!』って答えたらウケました。そのおかげで緊張がとけて、自然体で面接に臨むことができました。」
結果は、見事内定。第一志望の企業への就職が決まりました。
「第一志望の企業しか受けていなくて、落ちたらワーキングホリデーに行こうと思っていたんです。本当によかったです。」
数学や計算といった苦手は克服できなくても、それに対処する姿勢はいつか評価されることがあるのではないでしょうか。
まとめ──「数学が苦手」だったからこそ、開けた道もある
多くの人がつまずく数学。もちろん、試験科目や進路選択の場面では、不利に働くことも少なくありません。しかし、数学が苦手だったことで、人との関係が深まったり、時には就職活動で武器になったりすることもあります。
勉強が思うようにいかず辛いときには、「なぜできないんだろう」と自分を責めるのではなく、「この経験がいつか何かに活きるかもしれない」とポジティブに捉えてみるのも、一つの選択肢かもしれません。数学に限らず、苦手意識との向き合い方は、人生において意外な強みとなる可能性があるのではないでしょうか。

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