本連載では、書籍「東大理Ⅲ 合格の秘訣」の中身を引用し、今年東京大学理科3類に合格した人がどのように勉強をしていたのかについて、記事を掲載していきます。

 今回は、筑波大附属高校卒の上杉さんからお話を伺いました。

臨床医になりたい★★★☆☆ 

研究医になりたい★★★★☆ 

医者以外の道もあり★☆☆☆☆

高校:筑波大学付属高校(中学から) 現役
共通テスト:921/1000
出願校:前期 東大理Ⅲ 後期 科学大学医学 未受験
    私立 出願ナシ
得意科目:数学

一番になりたかった

 中学時代から、日本のトップである東京大学に興味がありました。やっぱり、「一番」の響きは何事にも代えがたい特別感があります。教養学部時代にいろいろ幅広い知識を身に着けられるなど、魅力的な部分を知るたびに、どんどん東大に対する思いは膨らみました。医学に対する興味を与えてくれたのは祖母。彼女の仕事ぶりや仕事の経験談を聞いて、興味を持つようになりました。指が取れてしまったときに、どうやって血管を縫い合わせるのか。神経を抽出して縫合するか。こんな話、他では絶対聞けませんから。おそらく、多くの方にとっては臨床現場なんて、非日常どころか、全く様子をあずかり知らぬ認知の外の場所だと思います。ただ、私にとっては、日常を一歩だけ外にはみ出したところに確実に存在する世界のことで、手を伸ばせば届きそうな距離のお話でした。これに加えて、高2の時に脳腫瘍で祖父が急逝。この時、脳に関する研究を色々と調べて、脳医学をやりたいと考えるようになりました。東大に行きたい。医学部に行きたい。ならば、両者の交わる理Ⅲを志望するのは、自然なことでした。私が高校二年生のことです。

 中1の時は毎日1時間ずつくらい勉強していました。部活は週3日活動の卓球部と、週1日活動がある囲碁将棋部に所属。みんなでワイワイ楽しみながら練習して、家に帰ったらゲームで遊ぶ。やっぱり当時は、勉強よりも遊びのほうが楽しかったですね。

 私が中学2年生の時には、コロナウイルス蔓延によって、自宅待機になりました。もちろん学校がなくても勉強すべきなのですが、緊急事態宣言が出てから1か月程度は毎日8時間以上もゲームをして過ごしていた。『クラッシュロワイヤル』という戦略ゲームに夢中になってしまったんです。どうやって相手の陣地を攻めるか、戦略を練るのが最高に楽しいゲームでしたが、いくら学校がないからと言って毎日8時間はやりすぎですよね。4月に入ったある日、とうとう親からこってり絞られました。何を言われたか覚えていないくらいショックで、さすがの私も「時間の無駄遣いはやめよう」と決意しました。

一念発起して勉強へ

 考えを改めてからは、ゲームにかけていた時間をそのまま勉強に費やすようになりました。中学範囲の英語と数学を一周して、数学については高校範囲の1Aまで突入。ここでまとまった期間勉強し続けたことで、学習習慣が身につき、学校再開後も3~4時間くらいは勉強していました。学校再開後は、授業の復習に加えて、『青チャート』など参考書を活用した高校履修範囲の先取り学習を行いました。それで、中学2年生の11月に東進模試を受講したところ、成績が良かったのか数学特待の勧誘が。「高1の秋まで数学の講座を無料でいくらでも受講可能」と言われたので、お誘いを受けることにしました。東進では、高校数学の基礎レベル講座から難関大学向けの講座、大学数学を取り扱う講座まで受講し、かなりお世話になりました。

 中3、高1では平日3~4時間、休日は6時間程度学習。高1になってからは、数学に加えて、東進の単語アプリを活用して英語の勉強も開始しました。また、高校に囲碁将棋部がなかったので、卓球部のみの所属になりました。

 高2になってからは勉強時間が少し増えて、平日5時間、休日8時間くらい勉強するように。すでに数学はかなりやっていたので、勉強の重心を理科にシフトさせていました。東進の物理化学の講座を中心に学習しました。高2の6月にある東進東大本番レベル模試では高2も高3も同じ内容のテストを受けるのですが、そこで私は高2内で理ⅢがA判定、高3を含めても理ⅢがC判定でした。高1の2月に受けた東大同日模試はそこまで振るわず、総合得点が70点くらい伸びていた。たぶん、高1までにやってきた数学が、自分の中で消化できて実力に変わったのではと思います。

 高3になってからは、平日6時間、休日9時間ずつ勉強しました。物理と化学は終わっていたので、問題集と東進の「東大対策講座」の受講が中心です。東進の講座は週1~2コマ程度で、市販の問題集を用いた演習が中心でした。東大の過去問も触れましたが、本番前の冬休みにまとめて演習したかったので、東大模試のストックから消費しました。基本的には内職はしませんでしたが、高3になってからは一部科目の授業中に理科の問題集を進めることもありました。夏の模試は河合・駿台・東進すべてでA判定。秋模試では河合だけB判定で、ほかはA判定でした。

鉄緑会を選ばなかった理由は?

 塾は、東進ハイスクールのほかに、Z会に通っています。東進は、最初こそ特待をもらえたので入りましたが、数学特待で大分お世話になりましたし、使いやすかったので、特待が切れた後も利用しました。自分のペースで場所を選ばず柔軟に受講できる映像授業のスタイルは賛否両論ありますが、私には合っていましたね。Z会は中学1年生から入っています。中学生の間は学校の授業の復習に使う程度でしたが、高校に入ってからは東大受験生向けの添削コースに入りました。高3の演習でも使いましたが、当時はZ会以外で十分量の演習問題が確保できていたので、オーバーワークだった気もします。ただ、中1から高2までは、勉強量確保の観点からして重要な役割を果たしてくれました。

 東進だけだったら、高2までの問題演習量が足りなかったでしょう。ちなみに、母校は鉄緑会の指定校なので、選択肢にはありました。実際に、学年の半分近くは鉄緑通いだったと思います。ただ、鉄緑会に入ると中1からガッツリ勉強漬けと聞いており、これは私の理想とする中学生活にそぐわないように思えました。中1からZ会に入会して、中学2年生では東進にも入りましたし、途中入塾は全く考えませんでしたね。

 国語の現代文は、基本的に学校の授業とZ会の添削で勉強しました。高2からは東進の「東大特進コース」で定期的に開催される林修先生の授業も受講。基本的には解きっぱなしにならないように、添削まで含めて勉強するようにしていました。古典分野は学校の授業が中心。単語と文法だけ勉強していました。単語帳は『古文単語315』を、文法書は『完全マスター古典文法』でした。東進の「東大対策国語」の講座で演習しました。

 数学は、中2のコロナ期間に高校範囲まで全部やりました。東進の高校数学の基礎レベル講座をとって、1A,2B,3Cすべてが中2の冬までに完了。同時期に『青チャート』1A,2Bも並行して進めており、こちらは秋までに終わっています。そのあとは、中3の春から夏までにかけて、東進の数学発展講座にあたる「数学の真髄」を受講。問題こそ基本レベルでしたが、論理性が重視されていたので、今まであいまいだった理解を再確認できました。公式の丸暗記にとどまらず、導出や証明を通した深い理解に導いてくれた講座でした。中3夏から高1夏までは難関大学向けの数学講座を受講。高1夏から秋までは「大学の数学」という大学数学の基礎内容に一通り触れる講座を取りました。詳しく大学数学をやるわけではありませんが、「こういう考え方があるよ」と教えてくれるので、大学数学に対する興味が湧きました。高2になってからは理科が中心だったので、ちょっとだけ過去問演習。高3からは過去問とZ会の問題で演習しました。

 英語は、中3までほぼ勉強せず。高1から東進の「高速基礎マスター」で単語と熟語を勉強しました。その後『システム英単語』と『鉄壁』を2周ずつして単語をさらに補強。文法は、高1で『エバーグリーン』を辞書にしながら、『NEXT STAGE』を2周して仕上げました。高2からは長文読解の練習として『やっておきたい英語長文』の500と700に加えて、東進のレベル別問題集のレベル3~6を各1周しました。高3からは過去問に加えて「東大特進コース」とZ会の問題を使って演習。

 理科は物理化学を受講しました。高2で東進の講座を使って勉強開始。化学は鎌田先生の『ハイレベル化学』を受講しました。化学現象の解説が丁寧で楽しかったですね。そして、物理は苑田先生の『ハイレベル物理』を取りました。どの先生も素晴らしいのはもちろんですが、苑田先生はその中でも本質をとらえた話をしてくださいます。参考書のうたう定石や典型的な解法に囚われず、時には微積、時には物理モデルの導入と、場合によって最も適した解法を使っていく変幻自在かつ臨機応変な解法導出がとても魅力的です。必要な時に、最適な手段を選択して解説してくださるその姿勢は、彼の解説を聞いた人とそうでない人の物理理解度を大きく隔てている要因の一つでしょう。高2の冬からは参考書を開始して、物理は『名問の森』を、化学は『重要問題集』を使いました。これらは高3の頭までに終わらせて、高3からは物理が『難問題の系統とその解き方』に、化学が『化学の新演習』に、それぞれ変化しています。二冊目の参考書が終わってからは、過去問演習に移りました。

 社会は興味があった地理を選択。基本的には『面白いほどわかる本』を使って対策しました。これ以降は共通テストの過去問演習に突入。

 共通テストの過去問は、英語・数学・理科が各2年分、国語は10年で、地理は5年分解きました。英数理は二次の内容で対応可能ですが、国語と社会は二次にないか、傾向が大きく異なるためです。形式慣れのためには、どうしても数をこなす必要があると考えました。共通テスト国語だけ多いのは、特に苦手だったからです。

 二次の過去問は、国語が4年分、数学が25年分、理科と英語がそれぞれ10年分ずつ解きました。国語が少ないのは、配点が少ないうえに、過去問演習による点数アップ効果が低いと予想したからです。数学は良問が多いので、たくさん演習する甲斐がありますが、理科と英語は少し古くなると難易度や出題形式が一気に変わってくるので、直近10年だけやりました。

試験本番の動き

 共通テスト当日は、一日目がすごく難しくて全然できなかったことを覚えています。すらすら解けたのは英語リーディングくらいでした。解き終わった後釈然としない感じが残りましたね。一方、二日目は問題ありませんでした。化学で少しミスがあったものの満点ペースでした。9割は一応超えたものの、出願はちょっとだけ迷いました。ですが、東大入試においては、一次の得点が全体に与える影響は少ないので、理Ⅲに突っ込もうと決めました。

 一日目の国語は、かなり出来が良かったですね。過去最高得点をとれた手ごたえがありました。特に現代文が簡単でしたね。一方数学は微妙。最低限取らないといけない問題こそ取り切りましたが、差はつけられなかったですね。大問2の後半や5に至っては、手も足も出ませんでした。

 二日目の理科は、化学がめちゃくちゃ難しかったですね。先に化学から取り組んでみたら全く解けなかったので、焦りました。90分も費やしてしまって、急いで物理に行きました。すると物理はびっくりするくらい簡単で、なんとか解き終われて安心しました。時間配分こそミスしましたが、悪くはなかったですね。英語はいつも通り、リスニングでちょっと失敗した感触がありましたが、その代わりに1Bと4Aが満点だったので、トントンになりました。全体としては実力通りの点数が取れたように感じます。

 面接はどちらかというと和気あいあいな感じでした。予想質問と実際の質問が一致したので、順調に詰まらず答えられましたね。

最後に

 私が合格できたのは、勉強から逃げないで向き合い続けたことにあると思っています。最後まで諦めないで、逃げずに真正面から向き合い続けることが、何よりも重要なのではないでしょうか。

 大学に入ってからは、文系科目も理系科目も、満遍なく学びを深めていきたいと考えています。