近年、総合型選抜入試(旧AO入試)の広がりが加速していることは再三発信してきたとおりであるが、それは日本最高学府の東京大学においても例外ではない

 東京大学は学部教育の多様性を促進し世界に貢献する学術のレベルを向上させることを目的に、2016年より推薦入試を導入した

 この目的を果たすためには学生の多様性が必須で、まず「入り口」を変えることに着手したわけだ。本記事では、東大推薦入試についてまとめたい。

東大推薦の人数は?

 2016年以前の、ペーパーテストを突破することでしか東京大学への入学が叶わなかった時代には、いかに中学高校時代から研究に対し熱心に取り組んでいたとしても、受験戦略の面で東京大学に入学できない学生が多くいたことだろう。

 例えば、首都圏在住で英語に強みを持ち、数学に自信がない学生であれば、早稲田・慶応に進学するのが現実的な選択肢となり、地方の学生であれば東京大学という高い壁に挑戦するよりも地元の最難関である旧帝大に進学するというような形だ。

 加えて、東京大学はリベラルアーツを重視しており、学生は科類と呼ばれる形で教養学部に入学、大学2年時にどこの学部で専門で学ぶかを決定するため、入学時に各科目まんべんなく高い基礎学力が求められる。

 これでは、多様な学生を受け入れることは難しいだろう

 また、東京大学の定員は一学年3000人程度だが、推薦入試の割合はそのうち各学部で5~10人程度、合計して100人程度が定員となっている。

 昨年の推薦入試における合格者数は計91人

 合格者の内訳は、男性49人、女性42人。合格者に占める女性の割合は46.2%で、学校推薦型選抜の導入以来過去最高、一般入試での合格者が女性2割程度であることを考えるとかなりの割合を占めると言っていいだろう。

 関東圏からの合格者は計50人で全体の54%でこちらも過去最高、地域多様性に欠ける結果となったが、東京大学側からこの結果に対して「単年度ごとに一喜一憂するのではなく、今後、注視して」いくとのコメントが出ていることから考えると、関東圏の中高一貫校だけでなく地方の優秀者も埋もれさせないよう方針決定していくことは間違いないだろう。

実際何する?東大推薦の試験の中身

 ここまで、東京大学の推薦入試導入の背景と現況についてみてきたが、次は実際の試験の中身を見ていこう。

 大まかな流れは下記の通りだ。

・書類選考(11月):成績、活動実績、表彰歴などの提出。

・面接・小論文(12月):学部ごとに異なる試験、口頭試問など。

・共通テスト(1月):一般入試と同じく、共通テストを受験。

・最終合格発表(2月):面接や小論文、共通テストを総合的に評価して、合否が決定。

 このようなフローをたどることになる。この中で共通テストは推薦入試では一般に8割程度が目安で求められると言われており、この時点で一般入試で求められるものよりも低いことがわかる。

 では、共通テストの前に行われる書類選考、そして面接はどのようなものか。

あなたも対象? 東大推薦の出願条件

 東京大学の推薦入試と聞くと、一部の限られた天才しか受けることができないと思われがちだが、実際のところそうでもない。

 出願というスタートラインに立つだけであれば、高校卒業程度資格と高校内での成績や一定学問領域への興味を示す資料を作成できれば問題なく立つことができる。

 しかし、それとは別に学部別の出願要綱があり、この部分は各学部で大きく異なる。中でも特に厳しいとされるのが法学部、経済学部、理学部、医学部などで、要件としては学校内の成績が上位概ね5%以内であることや、全国レベル、国際レベルでの入賞経験、科学オリンピックの入賞経験など、さまざまな高難度の要件が並ぶ。

 もちろんこれらも、いわゆる文化系部活の取り組みに力を入れている高校に在籍し、探究活動を行う学生が増加する現在の状況を鑑みれば、自分の学校で上位の成績を取っており、その学問分野にしっかり取り組んでいれば出願可能な学生数は増加しているが、一方で地方の学生が誰しも満たすことができるかは怪しいところだろう。

 だが、もちろん比較的要件の緩い学部も存在する。具体的には文学部や教育学部、農学部などはコンテストなどの入賞経験以外の研究成果なども比較的アピールしやすいとされている。

 もちろん、条件の厳しい学部でもコンテスト等の実績だけでなく3年間の時間を投資し得た成果という視点に立ち合格する可能性は十分あるが、自身の興味のある学問と自身の実績、学部の求める要件を照らし合わせ受験方式を決定することは極めて重要と言えるだろう。

東大推薦合格のために必要なこととは?

 上記のような推薦入試評価基準を見ると、やはりコンテストなどでコンスタントに結果を残す首都圏私立中高が有利なのではと感じるかもしれないが、実際はそうでもない

 東京大学の推薦入試は特に地方学生、女子学生に有利とされ、昨年実績だけで見ても、例年一般入試での東大合格は0〜数名である鳥取県立津和野高校や、長崎の離島、対馬高校などから合格者が出ている。

 その他、県立福島高校、県立秋田高校は県内トップ校ではあるものの地方公立から2名と、幅広い地域から合格者が出ているのも事実だ。

 このような事実から鑑みると、いわゆる「受験天才」だけでなく、尚且つ「実績がない高校生でも諦めないでほしい」という東京大学の姿勢を感じる。

 早い時期に素晴らしい結果が出せなくても、大学生になった後や、さらにその後の研究職で花開くような人材を合格させるというスタンスを東京大学が持ち、そのような人材を一定数合格させているのであれば、神童ではない人にとってもチャンスはあるはずだ。

 この東京大学の姿勢は、推薦入試と一般入試の大きな違いである、進振がないことからも読み取れる。経済学部なら経済学部、教育学部なら教育学部と、合格時に学部が決まるため、前期課程(1、2年生)で後期課程(3、4年生)の授業を、後期課程で大学院の授業を履修でき、実質的に「飛び級」で研究にのめり込める制度設計がなされているのだ。

 実際、学力試験の面でもハードルは一般受験に比べて低く抑えられており、場合によっては共通テストで70%から80%の得点でも合格しているケースがある。

 このような事実から、推薦受験で東京大学に進学するために最も大事なことは、大学進学以降のビジョンが明確で、それが東大でないとできないことを示すこと、そしてそれを裏付けるような3年間の取り組みだろう。

 取り組みといってもコンテスト等の結果だけでなく、1つの学問領域に強い興味を持って3年間の時間を費やした方は東大の推薦入試には合格できる。

 決して「圧倒的に賢い天才」のようなタイプではなく、小学校の時に「校舎のアリの巣の研究」を6年間行うような姿勢と地続きの、そんな地に足のついた自分なりの研究で構わないのだ。

 特に小学生や中学生の段階で社会系・理科系の学問に強い興味を示すような子供であれば、一般受験だけでなく経験や実績重視の東大推薦を本気で狙うことも視野に入れ、本人の興味分野に加えて戦略としての英検取得やボランティアなどの実績作りに時間を費やすのも、合格へのロードマップのひとつと言えるだろう。