私学の雄、早慶の一角をなす早稲田大学。

 一昔前はバンカラなイメージで知られた本校だが、2021年度に看板学部である政治経済楽部などで3学共通テスト併用方式を導入したことを皮切りに入試改革を進めている。

 改革から4年が経過した2025年には新たに2学部、合計5学部で共通テストが必須となる入試形式に変更し、今や慶應大学を凌ぎ全国の私学をリードする存在と言える。

 そんな早稲田大学の近年の改革の目的といえば、従来の3教科入試で見られた「私文特化」の受験生が燃え尽き、高田馬場のロータリーで飲み狂う4年間を送ることを抑制し、数学に強い人材や国際人材など今後社会に貢献する人材を輩出すること、と解釈することができる。

 それに加え、2026年までに推薦型入試を全体の6割にするという発表をするなど、ペーパーの学力だけでない指標での入学者も急増しており、この流れは加速するばかりだ。

 しかし、4年ほど前に急に始まったと思われがちな早稲田の改革だが、実は現在から15年ほど前からじわじわと国際化を推し進めている。

 その1つが、今回のタイトルでもある2010年9月よりスタートした早稲田大学政治経済学部の「英語学位プログラム」(EDP)だ。

 今回はそのEDPについて、詳しく見ていきたいと思う。

EDPの背景にある早稲田の20年越しの国際化

 EDPとは、大まかに言えば英語で授業を受け、英語で単位を取るプログラムであり、国際化を推し進める目的で設置されたものだが、まずはその背景にある早稲田政経の国際化への熱意を見ていきたい。

 時は2000年頃に遡り、まず変わったのが教員人事だったという。

 それまで早稲田大学の看板学部である政治経済学部の専任教員は早稲田大学出身者が大半だった。しかし「海外の大学から早稲田に戻ってきた教員から、『今のままでは国際的に通用しなくなる』との声が挙がり、当学部は採用時に国際公募を積極的に展開。

 これにより海外で学位を取った優秀な人材が徐々に集まるようになったといい、現在はおよそ半数の教員が海外有力大学の学位を持つという。

 その後も、2003年頃より筆者も経験した参加型の英語クラス、「チュートリアルイングリッシュ」(通称チュートリ)を必修科目として採用し、2010年9月からは、上記の通り英語による授業履修のみで学位を取得できるEDPがスタートしたというわけだ。

 EDP導入の前から、国際的に学問において活躍する人材を採用してきた政経の国際化への熱意がこのようなプログラムを可能にしたのだ。

 

EDPの3つの特徴とは・・・?紡がれた国際化の執念が身を結んだ現在のEDPの実態

 ここまで、EDP導入の歴史やその背景を見てきたが、その実態、特徴とはどのようなものなのだろうか。

 その特徴は大きく分けて3つあると言えるだろう。

1 英語のみで学位取得可能

 まず1つ目は、英語のみでの学位取得が可能ということだ。

 上記のような経緯を経て導入されたEDPは、徐々に規模を拡大し、現在はほとんどの授業で英語と日本語の両方のクラスを併設している。

 このことで、現在は1学年当たり100人以上の留学生、海外高校出身者、インター出身者がこのコースで学ぶことが可能となり、国際的な学びの場を実現している。

2 研究者と留学生

 2つ目は、レベルの高い研究者、留学生に揉まれながらグローバルリーダーに必要な素養を鍛えることができることだ。

 本学部は日本をめぐる国際政治経済や政治経済の基礎、その他教養科目など多岐に渡る日英両方の授業が用意され、それを教える専任教授は海外での学位取得経験のある人材が半数だ。

 この状況は、政経に在籍しながらしっかりとグローバルリーダーの素養を養いたい学生としてはうってつけの環境だろう。

 その環境の成果も実際出ており、英国の高等教育評価機関が実施する「QS世界大学ランキング」でも、政治学ではアジアでトップ3の常連。世界でも50位以内に入ることが増えてきた。

3 一般の学生も受講可能!

 3つ目は、一般のEDPの授業の多くは、政経の一般の学生も受講できることだ。

 これまでは仮に海外に留学をしたとしても、帰国してから英語を活用する機会が少なかった。

 しかし、EDPができたことで、身に付けた英語力を使いつつ留学生などと交流できる環境が身近になったのだ。

 政経が長らく取り組んできた国際化の動きの中で、海外での研究経験のある教員が増え、そのことで英語での学位取得があらゆる科目で可能となった。その結果、英語話者の留学生や日本人学生、学びたい一般学生などに門戸を開かれ研究でも成果が出ている、というのがEDPの現状と言えるだろう。

早稲田政経EDPの入り方とは?新宿区に居ながらにして国際人材になる方法とは

  ここまで見てきた早稲田政経のEDP。

 東京との新宿区に居ながらにして国際人材としての素養を得ることができる、そんなプログラムにはどのようにして入学できるのだろうか?

 まず、政経EDPの入学時期は毎年9月に設定されている。これは海外大学や海外の高校の在籍する人材に合わせたものだろう。

 選考プロセスは志望理由書やSAT・IBなどの統一試験スコア、TOEFL・IELTSなどの英語資格スコアを含む書類選考からなり、大学側から指定があった受験生のみが面接試験を受ける形となる。

 政治経済学部には政治学科、経済学科、国際政治経済学科の3つの学科があり、政経EDPの受験者はこれらから1つを選択し、卒業時にはそれぞれB.A. in Political Science、B.A. in Economics、B.A. in Global Political Economyを授与され、晴れて英語のみで学位の取得を達成しるというわけだ。

 出願にあたり必要になる項目は主に3つで、統一試験のスコア、英語試験のスコア、志望理由書だ。

 1つずつ見ていこう。

1 統一試験のスコア

 まず統一試験のスコアだが、これはSATやACTなど、海外大に出願する際の共通テストのようなものである。

 これは英語のみのスコアでなく、数学など複数科目の成績が必要となるため、インターや海外の高校に在学する英語力に自信のある学生でも他の科目の勉強は怠ってはいけないということになるだろう。

 実際、SATは1441.3点、ACTは32.1点が求められ、これは海外の高校に在学する生徒であれば東大を目指せるレベルの点数となるため一般科目の勉強は必須だ。

2 英語試験のスコア

 次に英語試験だが、これはTOEFL iBTもしくはIELTSのスコア提出が求められる。

 英語を知っているだけでなく、どれだけ使えるかに重点をおいて評価をしていることがわかる。

3 志望理由書について

 最後に志望理由書だが、志望理由書は1000語ほどの英文エッセイで学校指定のお題に対し回答する方式だ。

 なぜ政経EDPで学びたいのか、自分が選択した学科を志す理由、政経EDPでの学びをどう将来に活かすか、これらに関連する自身の価値観や経験の4点を交えながら論を進めることが重要だ。

 なお、募集要項には太字で”This statement is of particular importance in the document screening process(このエッセイは書類選考における重要な資料となります)”とあるため、統一試験や英語資格のスコアが高くても油断せず取り組むべきだろう。

 

海外大への進学準備と同等の準備が必要

 ここまで見てきて分かる通りだが、出願、そして合格には海外大への進学準備と同等の準備が必要と考えていいだろう。

 一見高く見えるハードルではあるものの、近年は中学受験戦争に小学校低学年から放り込むくらいなら国際化を推進する中高や海外への移住を選択し、土俵を変えて子供の価値を高めようという戦略が徐々に浸透して行っているのも事実だ。

 その戦略を取っている方々や元々海外大での進学を検討している方々にとっては、海外での進学にまつわるリスクや費用を抑えながら母国である日本での4年間を選択し、卒業時には国際人材として世界に羽ばたいてゆく。そんな選択も賢い戦略の一つと言えるだろう。