質の高い教育や研究環境を手にする一番の近道は、「難関大学に入ること」でしょう。意欲的な仲間との出会いも、卒業後のキャリアにまで響く貴重なものです。

 では、「難関大学」に入るためには「難関高校」に在籍している必要があるのでしょうか。実は、必ずしもそうというわけではありません。むしろ近年、その風潮は薄れつつあります。

 東大をはじめ、東京科学大や東北大などの国立大学でも推薦型や総合型の選抜方式は増え続けています。早慶上理、MARCHといった難関私立大学でも一般入試によらない入試方式が拡大中です。

 そんな「新しい入試」に対応するためには、学校選びも非常に重要です。中高入学時点での「入口」はそこまで高くないものの、大学進学時点での「出口」で高い結果を期待できる、”コスパのいい”学校も確かに存在します。高校1000校以上の知識を持つ、高校研究家である筆者が深掘りします。

今回は東京編です!

東京農業大学第一高等学校・中等部

 東京農業大学第一高等学校・中等部は東京都世田谷区に位置する私立共学校です。2025年より高校からの生徒募集を停止するなど、現在勢いのある学校として多くの注目を集めている学校です。

 首都圏中学受験最大手学習塾であるSAPIXによる「2025年入試結果(首都圏)80%判定偏差値表」を参照すると、東京農大一中2/1入試は男女ともに80%合格偏差値50。決して低くはありませんが、かといってさほど高くもない数字です。

 特筆すべきは推薦・総合選抜型での合格者の多さです。2025年には東大推薦合格者のほか、お茶の水女子大や神戸大といった難関国立大、早慶理工など難関私立大、さらには海外最難関であるトロント大学への総合型選抜合格者が確認できます。2、3年前の結果も覗くと、筑波大や横浜国立大、東北大などへの総合型選抜合格者が多数確認できます。「新しい入試」への強さは確かなようです。

 同校の2025年度卒業生合格実績(https://www.nodai-1-h.ed.jp/?page_id=45 2025年12月6日閲覧)

 その強さの秘訣はなんでしょうか。東京農大第一の教育目標は「生徒の夢の実現」。放課後や長期の休みに開催される「一中一高ゼミ」はまさに「探究」そのもの。折り紙で立体を作って数学を考えるゼミや、何気なく使っている「コトバ」を音楽・英語・社会という3つの視点から多角的に考えるゼミなど、学びを深めるプログラムが展開されています。

 また、隣接する東京農業大学との連携も魅力。質の高い実験や、課題研究発表など、大学レベルの環境があります。生徒が興味を存分に深められる体制が整っているのです。

「入口」のハードルは今後まだまだ上昇していくでしょう。今のうちに入学すれば、「コスパ最強」なこと間違いなし。

三田国際科学学園中学校・高等学校

 三田国際科学学園中学校・高等学校は、東京都世田谷区用賀の私立共学校です。2015年より共学化。2025年には「三田国際学園」から「三田国際科学学園」に改名し、近年急激に躍進している学校の一つです。

 例によりSAPIXの「2025年入試結果(首都圏)80%判定偏差値表」を参照すると、三田国際科学学園の80%合格ラインは偏差値46〜52。近年急上昇してはいますが、まだそこまで上がりきってはいません。

 新興校である三田国際科学学園ですが、2025年には理学部で東大推薦合格者が出ています。さらに、2025年の海外大学延べ合格者数は150人近くを数えました。これは、全日制では広尾学園に次いで全国第2位の数字。一学年200人強であり、「入口」もそこまで高くない学校にしては驚異的です。

同校の国内進学実績(https://www.mita-is.ed.jp/career/result/ 2025年12月6日閲覧)
海外進学実績にはスタンフォード大学やトロント大学など名門校も多い。

 三田国際科学学園では、高2生が全員参加で3回の海外研修に行くほか、充実した留学プログラムも用意。学校には40人近いネイティブ教員がおり、英語の習熟度に応じた授業のクラス分けも実施されているそうです。

 国際教育はもちろん、サイエンス教育、ICT教育など先進的な教育システムも実践されています。AR技術を用いた数学の授業や、消臭ビーズを自作する実験、地域の商店と連携した探究まで、幅広く生徒の知的好奇心をくすぐるカリキュラムがあります。

 確かな英語力と高度な探究学習は、生徒の進路実現において強力な武器になることは間違いないでしょう。魅力的な進路を実現できる、「コスパの良い」学校といえそうです。


富士見中学高等学校

 富士見中学高等学校は、東京都練馬区の私立女子校です。山崎学園によって運営される、伝統ある名門校です。

 SAPIXの「2025年入試結果(首都圏)80%判定偏差値表」によれば、富士見の80%合格偏差値は39〜40。決して高くはない数字です。

 しかしながら、富士見の強みは「コスパの良さ」。2025年は東京科学大、東北大、筑波大、千葉大といった難関国立大や、早慶上理といった難関私立大、さらにワシントン大やトロント大にまで総合型での合格者が複数おり、2024年には東大推薦にも合格者を出しています。そのほか、直近では東京科学大の医学部や香川大医学部医学科にも総合型での合格者を出しているようです。「入口」がそこまで高くないことを踏まえると、驚きの「出口」実績です。


同校の2025年度卒業実績(https://www.fujimi.ac.jp/course/graduate-course/ 2025年12月6日閲覧)

2024年度には東京大学現役合格者も。

 富士見は探究学習に強みがあります。「米」や「練馬」といった身近なところから始まり、6年間を通して自分の力で探究。年に1回「探究成果祭」で発表します。高2では1万字の論文を書き、自分のキャリアに繋げていきます。

 また学校自体が「JICA-SDGsパートナー」に認定されており、SDGsを意識したプログラムが積極的に行われ、探究に結びつけやすい環境があるそう。

 そのほか主体的な自主活動やグローバル教育も多数行われており、充実した6年間を過ごすことが可能になっています。豊富な選択肢を選び、それを深めていける環境が富士見にはあります。こんな6年間を過ごすことができれば、それを生かした進路実現に繋がっていくことも納得です。「入口」に比して高い「出口」実績を確かに出せる高校として、「コスパ」は抜群でしょう。

かえつ有明中・高等学校

 最後に紹介するのはかえつ有明中・高等学校。江東区東雲に位置する私立共学校です。2006年に改称・共学化を行い、以降先進的な教育を次々に実践。近年急速に注目を集めています。

 そんなかえつ有明の「入口」偏差値は、SAPIX「2025年入試結果(首都圏)80%判定偏差値表」では36〜41。比較的入りやすい学校といえます。

 かえつ有明では、生徒のうち6割以上が推薦・総合型選抜入試で進学しています。まさに「推薦に強い」高校です。

 同校の2025年度進学実績(https://www.ariake.kaetsu.ac.jp/news/57568/ 2025年12月6日閲覧)

 その秘訣はなんでしょうか。ユニークな授業科目である「プロジェクト科」では、自身が設定したテーマに対して探究を行います。教員の助けは必要最低限。生徒が主体となって「自分は何がしたいのか?」「どんなことに興味があるのか」と向き合い、自分たちでプロジェクトを立ち上げたり、創作活動を行ったりするそう。過去には神輿を作るプロジェクトや地域の子どもが集まる憩いの場作りなど、面白い企画が行われています。

「サイエンス科」ではいわゆる高校の「科学」にとどまらず、体系化された知識を学ぶ土台を会得します。「学び方を学ぶ」という、高度な探究を支えるシステムがあります。国際交流プログラムや海外留学制度も充実しており、また学校には帰国子女も多く、多様な価値観に触れることが可能になっています。

 こうしたカリキュラムを通した貴重な体験は、昨今の推薦・総合型選抜の流れにピッタリです。低い「入口」で高い「出口」を実現できる学校、「コスパ」は最強です。

おわりに

 入試難度が高い、いわば「入口」が上位にある高校の「出口」実績が良いのは、行ってしまえば当然のこと。もともと高いポテンシャルを持つ生徒が集まるからこそ、結果も引き上げられます。

 しかし、今は時代が変わりました。難関大学への進学ルートは、もはや「高校の授業をこなし、筆記試験で勝負する」一本だけではありません。入試制度は多様化し、求められる力も複線化しています。

 だからこそ、進路の賢い選択は、中学校・高校選びの段階からすでに始まっています。どの学校で、どの仕組みを活かし、どんな入試形式に備えるか。「コスパの良さ」の見極めもこれまで以上に重要になっています。