文部科学省が2023年3月31日に公表した「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」では、50.3%の受験者が学校推薦型選抜(31.0%)および総合型選抜(19.3%)を選択したことがわかりました。いまや、過半数が推薦総合型選抜による受験を選ぶ時代。2016年からは東京大学でも推薦入試が導入されるなど国公立にも推薦選抜導入の波は及んでおり、新しい方式に対策を練る必要があります。
この方式はペーパーテストとは異なり評価基準が不透明であることがネック。どうすれば、推薦入試の対策をとれるのでしょうか?今回は東京大学経済学部に推薦合格したSさん、東京大学教育学部に推薦合格したKさんにお話を伺いました。
東大推薦の志望理由書・書き方
推薦受験では、調査書とともに志望理由書を提出する必要があります。これは「なぜその大学、その学部を志望しているか」を説明する書類で、これがうまく書けないと書類審査で落とされるケースも。
2人に伺うと、志望理由書の構成は一般的なものと同じで大丈夫だそうです。
① 高校時代に取り組んだ内容
② どんな学問を学びたいか
③ なぜその大学、その学部を選んだか
④ 卒業後は何をしたいか
これら4点を抑えながら、過不足なく書き上げる必要があるそうです。
Sさん、Kさんにコツを伺ったところ「自分の感じる社会への課題感、違和感などを盛り込む」とよいそうです。「なぜその研究に携わりたいと感じたか」を、社会課題や自分の原体験と結びつけて書き上げることで、自然に説明できるうえに、説得力を持たせられるからでしょう。ただし、あまりにも大げさなものにすると、あとで面接のときに質問対応が大変になるかもしれません。嘘はつかず、自分の考えている内容の範囲内で仕上げられると、面接にも耐えうる矛盾のない内容で構成できるでしょう。
学部によって全然異なる!?
また、志望理由書の文字数は学校、学部によって異なるようです。Sさんによれば、東大経済学部の志望理由書はわずか1,000文字であったにもかかわらず、Kさんの受験した東大教育学部は文字数無制限だったとか。
1,000文字の作文を「長い」と感じたかもしれませんが、上記4項目について抑えながら、それぞれ説得力を持った論理的な破綻のない文章を1,000文字で構成するのは至難の業。何度も書き直して、先生に添削してもらいながら、完成形に近づけたそうです。一方で、Kさんのように文字数無制限だと、どこまで説明すればいいのかわからなくなるかもしれません。Kさんは、学校の先生に「どうして東大を選んだの?」「どうして今やっている活動を始めようと思ったの?」と質問をしてもらい、それに口頭で答える形で自らの掘り下げを行ったといいます。一人では掘り下げが難しい場合、誰かに頼るのも有効な手段です。
Chat GPTを頼ってみよう
仮に誰も頼れないのであれば、Chat GPTを頼ってみるのもいいでしょう。今年合格した別の東大推薦生に話を聞くと、やはりChat GPTを使用していました。自己分析のために、Chat GPTはかなり有効なのです。
筆者が試しに「私の自己分析を手伝ってください。私は東京大学文学部に自己推薦形式で受験をします。その志望理由を書くために、なぜ東大なのか、なぜ文学部なのか、といった質問をしてください。勝手に決めつけたりせず、わたしに質問を投げかけて思考を深める役割をしてください。考えを深め尽くしたと感じたら分析を依頼します」と質問を投げかけたところ、深堀りの手伝いとして、様々な質問を投げかけてくれました。


このように、Chat GPTを利用して、自己分析を行うのも一つの手でしょう。志望理由書が出来上がっているのであれば、「私は○○大学○○学部を推薦形式で受験する受験生です。以下は私の志望理由書です。これを読んで、どのような質問が浮かぶか、どのような論理の飛躍、破綻があるかを述べてください」とお願いしてもいいかもしれません。
志望理由書を書くとき、どうしても先輩がどう書いたか気になってしまうもの。ですが、今回お話を伺った二人は「先輩の志望理由書を当てにしすぎないほうがいい」と話します。
「志望理由書は、『どうしてあなたがうちに来るの』を聞く文書です。当然、受験生一人一人の志望理由や研究内容が異なる以上、『たった一つの答え』は存在しません。もちろん、私の志望理由書をそのまま写しても、合格はできないでしょう。志望理由書はオリジナルのオンリーワンを構成する必要があります。先輩の志望理由書をあまり見すぎると、どうしても引っ張られてしまう可能性がある。それでは、自分の志望理由書を書き上げるのに、マイナスになってしまうかもしれません」(Sさん)
オリジナル要素が試されるので、合格した先輩の志望理由書を見るときにも、影響されすぎない程度にしましょう。
小論文対策
小論文とは、課題文やデータを与えられ、それについて賛成、否定を根拠とともに述べる形式の試験です。この試験では、データの読み取り能力や、論理の構成力など、様々な能力を審査されます。Kさんは早稲田大学文化構想学部も受験しており、対策として小論文対策もしています。そこで、Kさんに小論文対策のコツを伺いました。
Kさんによれば、東大の小論文問題に対しては、以下のような構成パターンで対応するのが有効だそうです。
①賛否 私は○○に賛成/反対だ。
②その根拠 なぜなら、与えられたグラフ(1)から~ 課題文筆者の主張から~(根拠を述べる)
③懸念される問題/例外 ただし、これには~という問題・例外が発生する可能性がある。
④それらへの対処法 これを解決するには、~という方法があると思われる。
このように、「賛否➡その根拠➡懸念される問題/例外➡それらへの対処法」の流れで書き進めると、よい小論文になるそうです。これ以外には与えられたグラフ、課題文から社会課題を読み取り、それに対する解決策の提案を行う形式もあるとか。どれにせよ、これらは、大学で書くことになる論文とほぼ同じ構成であり、大学以降の研究活動の走りとして試されていると考えていいでしょう。
小論文をうまく構成するには、データを正確に読み取ること、筆者の主張を正確に読み取ること、そして自分の考えた論理を過不足なく読み手に伝える伝達能力などが必要です。データについては2024年度以降の共通テスト国語に新傾向として追加された問題や、情報分野の問題を解くとよいかもしれません。また、作文能力については何度も文章を書きながら、自分の論理展開にどんな傾向があるか、添削を通して指摘してもらうといいでしょう。毎週1枚などノルマを決めて、何枚も書きましょう。
面接対策
次は面接試験です。これは、学部学科によって大きく異なります。参考までに、Sさんの受験した東大経済学部は受験生1人に対して質問者が3人いたそうです。一方でKさんの受験した東大教育学部は受験生1人に対して司会の先生が1人とほかに先生が5人いたとのこと。どちらも、フリートーク形式で、どんどん聞かれたといいますから、矢継ぎ早に繰り出される質問に対して動揺せずにさばけるよう、練習をしておくといいかもしれません。
今回、Sさん、Kさんに面接の時のことを伺いました。
Sさん「私の時は、怖い人、優しい人、普通の人の3人の先生がいらっしゃいました。志望理由を聞かれた後に、数学の問題や論理の問題をたくさん聞かれて、その場で解いてと言われたことを覚えています。椅子のそばにはホワイトボードがあって、これを自由に使っていいとのことでした。一度間違えても、『でも、それって○○なケースもあるよね?』と間違いを指摘されたうえで、再トライのチャンスをもらえました。ミスを恐れずに考え続ける姿勢が試されたのではないでしょうか」
Kさん「私の時は、司会の先生1人と、ほかに先生が5人いらっしゃいました。志望理由と、ポスター発表に関する質問、大学入学後の展望と、留学に関する質問がなされました。とにかく自由に聞いてくる感じで、一通り答え終わったと思ったら、別の先生が手を挙げられて『じゃあ、今話していた○○っていうのは、××ってことなの?』とどんどん質問が重なってくるような感覚。一つの質問に尻込みするようでは、どんどん追い詰められてしまうかもしれません」
このように、とにかくコミュニケーションを取る方針であることがわかります。数学の試験のような決まった答えが求められているのではなく、受験者本人という個人について、「なぜそう考えたのか?」をとにかく追及してくるようです。これを乗り切るためには、とにかく自分の志望理由や思考について、徹底的に分析するしかありません。
ポスター発表の準備は?
Kさんが行ったポスター発表では、A0判のポスターに自分の活動履歴、受賞歴などをまとめ、それを基にプレゼンを行ったそうです。東京大学教育学部の場合は7分で発表後、8分間の質疑応答時間が与えられました。この質疑応答では、先生方は口を出さず、受験生同士で質問を投げあうようです。
このレイアウトも、やはり先輩のポスターに引っ張られすぎないよう、合格者のポスターを当てにしすぎないほうがいいでしょう。合格者が合格した理由は、その人の思考などが綺麗に主張と合致したからであって、そのポスターが綺麗だったからではないと考えられるためです。自分の発表しやすい形のポスターを目指しましょう。
また、Kさんは一次審査合格後のポスター提出までの期限が極端に短かった」と語ってくれました。少なくともKさんが受験した年の東大教育学部の場合は、ポスターの作成から送付まで8日しか猶予がなかったそうで、非常に苦労したとのこと。提出形式、提出期限、提出先など、様々な情報に気を配りましょう。
まとめ
推薦受験は先輩からしか合格の方式がわかりません。一方で、推薦受験で合格した人のアドバイスが絶対に正しいとは限らないこともネックです。これを乗り切るためには、徹底的な自己分析と、批判的思考を繰り返すしかありません。テクニックで何とかなる部分はともかく、芯の部分は自分と対話し続けることで見出せるといいですね。




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