インプットからアウトプットへ、学びから政策提言へ──。
35歳以下の若者を対象とした政策コンテスト「次世代政策サミット JAPANビジョン2050」は、単なる勉強会の枠を超え、実際に国会議員への政策提言を可能にする画期的な取り組みとして注目を集めている。
今回は、このサミットを運営する一般社団法人未来政策研究所で事務局を務める苅部周さんに、企画の背景や意義、そして若者に期待する役割について話を聞いた。

インプットに偏りがちだった現状を変えたい
── まずは簡単に自己紹介をお願いします。
苅部: 未来政策研究所の事務局をやっております、苅部と申します。東京出身で、学部の頃は映画制作のサークルに所属していました。今もその方面に進んだ先輩や同級生がいます。私自身は政治学の大学院に進学し、創作活動は趣味として続けております。学部から政治に関心があったのを未来政策に組み込んで、今は理事長である島田さんにお声がけをいただいて事務局としてお手伝いしております。
── 次世代政策サミットを立ち上げた背景について教えてください。
苅部: まずサミットを運営する未来政策研究所の設立理念として、パブリックマインドを持つリーダー育成というところがあります。その中で政策サミットは、年に一回の一大アウトプットイベントという位置づけです。
最初は学生主体でゼミを開いている集まりだったと伺っています。今でも月に一回、2カ月に一回ぐらい政治家や大学の先生をお呼びし、会員の関心があるものについてゼミ形式の勉強会を行っています。ただ、どうしてもインプットに偏ってしまうので、そこで何かしら出せるものがないかなというところが発端になっています。
サークル内でのアウトプットイベントの構想から、いろんな人が参加して、それこそ同じような問題関心ばっかり集まっても面白くないです。せっかくのご講演をいただいているので、ちゃんと誰でも参加できるという形にしました。一応上限は35歳で、それ以下の若者ということになっています。

政策提言だからこそ実現できる「現実への接続」
── アウトプットの方向性として、なぜ「政策」を選ばれたのですか?
苅部: これは他の政策コンテストとの違いにも出るかなと思うんですが、一番大きい点は、現役の国会議員に直接アプローチをすることができるという点です。
コンテストで優勝したという経験だけではなく、実際に法律を作り、実際に政策を実行していく政治家に向けて提言することができる。政治家が政策を練っていく過程で、そのオプションとして1つ提言することができる。単なる優勝者を決めて終わりのコンクールと異なる、すごく大きなインパクトがあると思っています。
一番分かりやすい政治参加は、やはり投票行動だと思うんです。投票行動は政治家が提出してきた、いろいろな政策を選び取ることだと思うんですよね。
そこからさらに前、政治家が政策を決めるより時系列的に前の段階で「こういう政策どうですか」と伝えることができます。その段階から関わることができるのが、やはり「政策」ならではだというふうに思いますね。
── 普段の生活では政策を考える機会がないですよね。
苅部: 政治家さんとお話しすると、国民がどういうものに問題関心を抱いているのか、非常に真摯にいつも聞いて目を配られています。そこで、政治家に問題意識を共有する、「こういう課題があるんです」と伝えるところが、まず初めだと思っています。
2050年に込めた想い──若者が担う未来への責任
── 2050年という設定の意図は?
苅部: 今年から2050年までの25年間は、参加者が働き盛りの現役世代でいられる時期だからです。参加上限の35歳が提言しても、その人がまだ60歳。参加者の多くは10代後半から20代大学生あたりなので、彼らが現役世代の40歳から50歳の年代で、おそらく一番社会における役割が大きい時期だと思うんですよ。
あらかじめ布石を打っておくような感覚で、キャリアを重ねていく上で、一番ピークに達していた時の日本の姿を思い描くという意図で2050年にしています。
年齢の壁を超えた「実力主義」の舞台
── ほかの政策提言系のサミットと比べた、特徴を教えてください。
苅部: 一番の売りは先ほどお伝えしたように、現役国会議員に政策提言ができることです。去年が経済産業大臣も務められた齋藤健衆議院議員で、一昨年が菅義偉衆議院議員(元総理大臣)でした。審査員も今年は大臣経験もある元国会議員、官僚出身の方、そして経団連の経済界の方と、バランスよく審査をしていただける貴重な環境だと思っています。

実際に、その3人からフィードバックをいただけるうえ、最優秀者は審査員の3人からお墨付きをもらったうえで、現役の国会議員に提言できるという点は大きなメリットです。
また年齢的な参加上限は決まってるんですが、それ以外は高校生から35歳までの社会人まで、全員が同じ土俵で戦うという環境も魅力です。
去年優勝したチームは、大学の学部生と高校生のコンビでした。大学院で公共政策を専門に学ぶ学生を倒しての優勝で、大きなインパクトがありました。年齢や学年などに関係なく、本当に魅力的なものを提案できれば、そのまま評価されます。
文化省設立提案が生んだ波紋効果
── 実際に社会に影響を与えた事例はありますか?
苅部: 第一回優勝チームは「文化省設立の建白書」というテーマで政策提言をしました。文化庁を文科省と対等な組織として、日本の文化を推進すべきという内容が趣旨の提言です。
日本の既存の文化庁の仕事はいわゆる伝統的な、過去の歴史的価値の高いものの保護がメインです。日本のサブカルチャーやゲーム、アニメという新しい文化をカバーしきれていない。日本のコンテンツ産業の大きさと、省庁のサポートの不均衡が課題意識だったと伺っています。
この提言があったことで未来政策研究所内でも、漫画家でもある赤松健参議院議員につなげていただく機会が生まれました。また「やっぱり文化って大事だよね」という風潮が研究所内でも出てきて、そこから勉強会をやろうかというふうに繋がっていきました。
最近でもクレジットカード会社が独自の基準で、購入の決済ができるコンテンツ・漫画を規制していることが大きな問題になりました。「この支払いには決済していいけど、これはダメ」と、クレジットカード会社が文化の選別をできてしまう仕組みです。
やはりこういった問題に政策として働きかけていくという活動は、今後も成果につながると考えています。
求められるのは「共感力」と「問い続ける力」
── サミットを通じて、次世代のリーダーに求めたい資質について教えてください。
苅部: 共感力がある、視線の広い人間です。大学受験とか就職活動では主体性やリーダーシップ、何を成し遂げたかを求められがちです。しかし、政治分野・社会分野ではそうはいかない。
どんな政策であっても、いろんな人に関わるので、単なるリーダーシップを発揮するだけではなくて、広い視野を持って人の声を聞けるというのが重要だと思います。
相手がなぜそう思うのかというところを想像できるのが重要です。相手がなぜその結論、その政策提案に至ったのかみたいなところまで視野が行く人間こそ、やはりリーダーとしてふさわしいといいますか、にとって求められる資質なのかなというふうに、私個人の見解ですが思っています。
コミュニティに飛び込む勇気が第一歩
── 関心はあるけれど踏み出せない若者にアドバイスをお願いします。
苅部: 政策サミットに申し込むか悩んでくれている方には、まず見学でもいいからぜひ来てほしいです。フィードバックをしていただく審査員の方も、その分野での第1人者の方です。また決勝大会に進出してくる3チームは毎年どれも本当に説得力があり、政党の公約として実際に掲げられていてもおかしくない高いクオリティです。
政策を練り上げたチームがサミットでプレゼンする場を体感していただきたいですね。舞台に立って自分が言いたい、自分が思った政策について語る人を見ることは、感情に訴えかけるものがあると感じます。
もし問題や関心を持っているのであれば、「そういうものなんだ」で終わらず、「本当にそうなのかな?」と考えられるようになってほしい。政策の提言まで進まなくても、問題を解決するための方法を考えられるように意識が変わってくると思います。

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