国立医学部にも存在する推薦選抜とは

大学入試において、現在推薦・総合型選抜での進学者が現在過半数を超えており、推薦入試が大きな潮流となっています。
しかし、国立の医学部はまだまだ一般入試が主流のイメージも強い。"ペーパーテストで審査されるべき"という無意識化の偏見が残っています。

現行のほとんどの国立医学部推薦入試は共通テストで学力を担保する形式なのが特徴で、医学部においてもなお、推薦入試の利用者割合は右肩上がりに増加中です。

つまり、医学部といえども、推薦入学は十分検討されるべき主要な合格ルートになっているといえます。偏屈な学力“だけ”の優秀者より、評定平均をきちんととれるコミュニケーション能力の高いオールマイティ人材を求めているのかもしれません。

画像はイメージです。

今回お話を伺うのは、神戸大の医学部に推薦合格し、現在3年生の倉田善仁さん。
医学部推薦に至った経緯や医学部推薦のリアルに迫ります。

高3夏に知った国立医学部推薦入試

__なぜ神戸大医学部を目指したのでしょうか?

倉田:僕が大学入試について真剣に考えたのは高3の4月。当初は近隣の中四国にある国立医学部のみを目指そうと志していました。

しかし、夏に同級生の指定校推薦合格を聞き、ネットで検索したところ国立医学部の推薦入学の存在に気づいたのです。

チャンスが1回分増えるという発想

もちろん一般入試の勉強は続けていました。初めから推薦狙いだったわけではなく、基軸はあくまで一般入試です。いわば、「入試チャンスが一回増える」という感覚。

言い方はあれかもしれませんが、推薦に関しては受かればラッキーというか…。神戸大学医学部は自己推薦書と現地面接、共通テストの結果提出のみでかかる労力が少ないのが選んだ決め手です。

また、神戸大医学部推薦入試の共通テスト必要スコアは9割強。一般的には高い数値ですが、僕自身、近隣の国立医学部に合格するために必要と考えて到達したスコアでもあります。

それを考えると東大や京大の医学部推薦枠よりは身近な存在でした。両者の条件は「各種科学コンテストの入賞や英語力が必要で、一般入試枠より厳しい」といわれる東大理Ⅲや、科学オリンピック入賞が条件とされ、実質的に東大理Ⅲ合格レベルの子が飛び級で応募する京大医学部ははっきり別格な存在ですから。

__現在推薦入試のある国立は45校ですが、条件がそれぞれありますよね。

そうなんです。一般的な地方国立の医学部推薦を知るうえで外せないのが、「地方枠」。親や本人の地域への居住年数や出身校・出身地などの条件があります。首都圏や関西圏の進学校出身者が医師免許を取るまで地方に住み、即Uターンするのを防ぐ制度です。

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授業料免除などの条件と引き換えに、5~10年程度の指定病院勤務を課す大学や、僻地勤務を義務付ける推薦もあります。推薦が地域枠しかない宮崎大、高知大のような大学もあれば、長崎大、富山大のように隣接県も含む大学も存在しています。

僕は卒業後の拘束が大変なので地域枠利用を避けましたが。とがったところでは、長崎大の研究医志望枠なども存在していました。僕も少し気になりましたね(笑)

__筑波大や鹿児島大、東京科学大のように国際バカロレア枠を設けているところもあるとききますが、倉田さんは学校推薦だとか。

学校推薦枠は取り入れているところが少なく、神戸大や阪大、山形大など少なめです。
小論文や名古屋大のようなプレゼンが必要な学校は除外して選びました。

「きっと落ちる」と言われながらも応募

__先生方からは応援していただけましたか?

倉田:それが、「きっと落ちる」とか、「そんな時間があったら勉強しろ」とか散々な言われようでした。
「受かればラッキー」ですから、気に留めませんでしたが(笑)。

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でも自己推薦書の文面の細かい修正の指摘や、面接の練習はしてもらえましたね。
奥から7年位前に合格した先輩から面接の内容を聞き取りした紙を出してきてくれたり……。

神戸大医学部の面接は3部屋を順番に訪れ、3人と面接をするシステム。
医療がらみではあるけれど、医療知識がなくてもこたえられる出題が出るなど参考になりました。

「ほかの患者の情報を間違って、違う患者さんに送った場合どうするか」など倫理が問われる質問もあり、総合的な人間力や倫理観まで問われます。

ちなみに、僕はよい答えを思いつかず「とにかく謝る」と答えました。
面接官に渋い顔をされたので、とりあえず1分考えさせていくださいとお願いしたのですが、やっぱり思いつかず「すみません、やっぱり思いつきません。ひたすら謝ります」とだけ答えた記憶があります。

また、英語での質問があることを知っていたのも大きかったです。
唐突に英語で質問をされたら面喰うのは必至。やはり、想定問答まで行かずとも、質問の傾向や特徴などは抑えるべきでした。

国立医学部推薦入試に合格する環境

__国立医学部推薦入試についてのアナウンスメントは全くないけれど、資料を秘蔵している。恵まれているのだか、いないのだかよくわからない謎の環境ですね……。

倉田:地方都市にある、国立附属の中高一貫校で特殊な環境だったかもしれません。僕は受験必須の私立小出身で、親に中学受験塾に入れられ、流されるようにして受験しました。

志望校が地元周辺ではトップクラスの学校だったので、それなりに受験対策は大変でした。近所の小学校はやんちゃタイプの親御さんやお子さんが多いなか、私の親は私立小学校を選択する程度には意識が高かったかもしれません。

とはいえ親は「勉強しろ」などとは一切言わないタイプだったのですが、中学時は塾をサボったり宿題をしなかったりと散々な有様で、強制的にやめさせられてしまったことも……。

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__評定平均も9.8あり、軽音部の部長、応援団長と伺いましたが、意外と優等生ではなかったんですね。

倉田:そうかもしれません(笑)。ただ、リーダーシップをとるよう親から常々言われていたので、自然とクラス代表などをこなすようになりました。

父自身は中小企業勤めで医者ではないのですが、小中高と医師家庭の多い学校環境だったので、医学部志望になるもの当たり前でした。
友人たちも広島大や横浜市立大の医学部に通っていますし、医学部が出やすい環境にいたから、一番身近な選択肢に感じられたんですね。

高校に入ってからは、医師家庭出身の親友と一緒の塾へ通うよう親が仕組み、そこがすごく楽しかったので成績がめきめきと上がりました。
高3時は平日5時間、休日10時間勉強していた記憶があります。塾の進度は学校より若干早く、高2で理科科目、高3夏で数Ⅲが終わるくらいでした。

学力差は全く感じない

__ちなみに、推薦組と一般入試組で学力差を感じることはありますか。

倉田:一切ないです。医学部の勉強は暗記や処理能力がかかわってくるので、大学入試とは方向性が違うのも大きいかもしれません。

神戸大医学部推薦入試は6倍の高倍率で、合格するには共通テスト9割が必須。
推薦入試で共通テスト点数が足りずに落ちた人が、一般入試で合格していたりもします。また、地域枠推薦組は成績順に都会に配置されるので、みな好成績です。

__こうお話を伺っていて、ものすごく真面目ですし、聡明な印象を受けます。勉強だけというより、コミュニケーション能力も高いですし。

倉田:共通テストは出題者の問いかけの意図を考え、汲み取って答えていくテストでもあります。いわば、コミュニケーション力と密接なかかわりがあると僕は思います。

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__これから推薦入試に挑む後輩へ一言お願いします。

倉田:高校時代の経験から、目の前の課題やテストに全力を尽くすことが大事だと考えています。それは大学に入学してからも同じです。

母校からは、僕以降も神戸大医学部へ2年連続合格者が出ています。
僕の合格で「神戸大医学部推薦」という“情報へのアクセス手段”ができた部分が大きいようです。
受験に対する意識や情報アクセス、学習カリキュラムが都会と地方では正直異なる部分もあるかもしれません。

僕自身も、最近私立中高や鉄緑会が高1や高2で数Ⅲまで終えることを知り、驚きました。
とはいえ、情報最近はオンラインも発達しているのでうまく利用して、頑張って欲しいです。

まとめ

「ペーパーテストで入るのが受験の本懐」。
ついついそう考えてしまうことがありますが、一般入試と総合型選抜の比率が逆転した現代では「ペーパーだけではない」と考えを改めるべきでしょう。

もちろん共テ9割は大変な結果。
しかし、神戸大学医学部クラスの難関国立医学部を射止めるにしては、比較的ハードルが低いようにも見えます。
総合型で「受験のチャンスが一回増えている」ならば、なおさら。

これからは、一般入試と総合型と、両方を使いこなした方が勝つ時代になるでしょう。
負担は増えるように見えますが、組み合わせ次第で比較的労力がかからなくなるような出願の組み合わせもあるはず。
これをいち早く見つけたものが、次世代で「コスパよく」合格を手にできるのでしょう。

受験は個人戦。受験は団体戦。かつて囁かれた警句ですが、現状を表わすならば「受験は情報戦」とでもいうべきでしょうか。
ひとつのことにこだわらず、広く視野を持って、目的達成のための適切な手段を選べる余裕を持ちたいものです。