今回は、奈良県の公立中学校、私立高校を経て東京大学経済学部に学校推薦型選抜で合格した下村さんにお話を伺って見ました。彼の東大推薦のテーマは地方創生であり、面接で強調したのは地域での散歩経験だったと言います。

 英検は2級しか取れておらず、「数学オリンピック優勝」などの経験がないにもかかわらず、なぜ彼は東大の学校推薦型選抜で合格できたのか?インタビューを通して、その合格の秘密に迫ります。

受験のきっかけは?

ーーーまず、下村さんはどうして東大を目指されたんですか?

下村さん:私はもともと京都大学を目指しておりましたので、前期試験で京都大学の経済学部に合格するための勉強を進めておりました。ですが、ある日、担任の先生から「東京大学に推薦入試がある」ということを聞いて、「ぜひやってみないか」と言われました。それまで、推薦入試を受けようとは全く考えていなかったのですが、「もし自分がこれまでやってきたことを活かして、自分がやりたいことを教授に伝えられる機会があるのであれば、ぜひやってみよう」と思い、東京大学への受験をすることにいたしました。

ーーーなるほど、そうだったんですね。ちなみに、担任の先生と話をしたのはいつ頃だったんですか?

下村さん:高校3年生の10月でした。東大推薦の出願は11月頭ですので、もう1ヶ月もないくらいギリギリの時期でありました。

ーーーそれはすごい。それまでは完全に、京大に行くぞ!って感じだったのですね。

下村さん:そうですね。受験勉強は完全に京都大学の問題に合わせて行なっており、前期試験も京都大学に出願いたしました。推薦受験に受かる自信はそこまで大きくはなかったので、あくまで前期で立ち向かえるように京大受験の対策をしていました。

ーーー1週間あたりどれくらい自習していたのですか?

下村さん:多いときで週65時間とかだったと思います。

ーーー自習で65時間はすごいですね。やはり推薦合格する人は学力面でも優れている場合が多いということなのかもしれませんね。

下村さん:それはわかりませんが、共通テストの点数も加味されますし、面接でも数学についての問題が出題されますから、一定の学力が必要であることは間違いないのかもしれないと思います。

推薦入試で強調したのは「散歩」

ーーーここからは推薦受験についてお聞きしたいと思います。下村さんは、志望理由を「地方創生」ということで、どうしてそのことについて興味を持ったんですか?

下村さん:はい。自分が住んでいたのは奈良県の三郷町というところでした。そこで、地域のおじいちゃんおばあちゃんだったり、働く人だったり、いろんな人と話をしました。受験生の期間もあえてそれを絶えず続けていたのですが、そんな中で、地方の人が地方の持つポテンシャルに気づいていないことがあると感じました。

ーーーポテンシャル、ですか?

下村さん:例えば、私は、土踏まずが大変発達しております。この土踏まずの発達は、体のバランスを向上し、腰痛などを防止する効果があるようです。その御蔭で、私や私の周りの人は腰痛に悩まされたことがございません。この要因の一つがわが町の地場産業「ミサトっ子」のお陰であると考えています。わが町では草履の生産が盛んで、小学校の上靴も草履になっています。小さな頃から草履の鼻緒を足でつまみ続けていますから、土踏まずが発達するわけです。つまり、ミサトっ子には世界に6億人以上いる腰痛の人の健康状態が向上するポテンシャルがあるじゃないか、と。

ーーーなるほど。目の付け所が面白いですね。

下村さん:ちなみに、推薦で一番強調したのは賞などではなく、この散歩でした。実際に街を歩き、そこで生きる人と話すことが好きで、かつ地域の実際の人とも交流でき、何が課題で、どんな苦しみがあるのかを教えてもらえます。受験期も通してずっと散歩をしています、ということを語りました。

散歩先のオカヤ堂にて

ーーーそれは面白いですね。そこを強調する東大推薦生は少ないだろうから、その点でしっかり差別化できたのかもしれませんね。

経済学部推薦の流れ

ーーー経済学部の推薦受験はどのような流れで進んでいきましたか?

下村さん:まずは、「志願書」などの必要書類を提出する必要があります。経済学部の場合は、1000文字程度で、これまで自分がやってきたことや、自分の将来像を記述しました。経済学部では、全国規模の大会で何らかの成績を残している客観的根拠が必要になるということだったので、ビジネスコンテストで優勝した際の賞状や、「日本数学A-lympiad」という大会の成績などを提出しました。あと、学校内で統計を使った研究をしていたのでその論文を提出しました。

ーーービジネスコンテストで優勝したことがあるんですね。素晴らしいです。

下村さん:とんでもございません。どれも、同級生と一緒に作り上げたものでありますから、そこについては感謝を忘れてはならないと思っております。ただ、数学オリンピックの入賞経験とかはなかったので、正直賭けだった部分はあります。また、英検1級とかそういったものはなかったので、より国際的な活動が評価されるような学部の推薦だったら合格できなかっただろうと分析しています。で、なんとか自分はこの書類審査を通ることができ、12月頭の面接に案内されました。そこでは、これからやりたいことを聞かれたり、経済学についての論文を見せられて考察を求められたりしました。意外だったのは、その場で数学の問題を聞かれることがあったことですね。

ーーー面接で問題を解くんですね。東大の推薦らしいですね。どんな問題でしたか?

下村さん:自分の時の問題は、「相関関係」と「因果関係」の違いみたいな話も出てきて面白かったです。で、この面接の後、1月にある大学入学共通テストを受けて、その結果と合わせて2月13日に合否が発表される流れになります。

ーーー12月の面接の結果は2月まで出ないわけですよね。

下村さん:そうなんです。この期間が少し自分にとっては辛い時間ではありました。「あんなこと言っといたらよかったなあ」とか「あれは言ったらあかんかったかなあ」とか、後になって色々思い始めるのは避けられないものでありました。また、面接練習と志願書作成で1ヶ月くらい前期試験の勉強時間がかなり削られているというのも、大きな不安の要因でしたね。

ーーー2ヶ月もその状態で待つのは精神的に難しいところもありそうですね。

下村さん:とはいえ、一般入試の勉強があるので、面接の結果を待つ状態でも、共通テストや二次試験の勉強をしなければならないので一旦面接のことは忘れられた面がありましたかね。

ーーーところで下村さんは、10月に入ってから突然東大の推薦受験を決意したと話していましたが、準備期間があまりない中での面接は大変ではなかったんですか?

下村さん:もちろん大変でした。プレゼンすること・志望理由書として書くことに関しては、地域の人とたくさん喋っていたということに加え、高校での生徒会活動などと普段から積極的にお話をする場をとっていたことから、不安はあまりなかったのですが、やはり自分の話したいことを端的に述べることが最初はなかなかつかめず、言葉が詰まったりしていました。そこで、実際に経済学部の推薦受験を経験した先輩などからお話を伺いつつ、対策を進めら形になります。

ーーーこれまでの経験と持ち前のスキルと、そして本番を想定した練習の積み重ねによって、推薦入試を突破されたのですね。

まとめ

ーーー大学でやりたいことはありますか?

下村さん「大学では、さまざまなバックグラウンドを持った仲間と、色んな角度から地方創生について考えていけたらなと思っています。それから、私が推薦入試に挑戦したように、人々が前のめりに挑戦することを応援していきたいと思います。」

ーーー最後に今推薦入試を目指す人へ一言お願いいたします。

下村さん:推薦入試に関して言えば私の周りにはすごい⚪︎⚪︎オリンピック優勝、といったようなすごい経歴を持った人ばかりで、圧巻されています。しかしながら、私の場合は大会の履歴などはほとんど強調せずに挑みましたし、実際に面接でもあまりつっこまれることはありませんでした。そしてまた英検は2級の合格証明書しか出していません。ネット等で紹介されている人を見て、「私は無理だあ」と思って諦めてしまうのは相当勿体無いと思います。ぜひ挑戦していただきたいと思うと同時に、いつか「この記事を見たよ!」といった形で、東京大学でお会いできたら嬉しいなと思います。

私は、今ある私の劣等感を起爆剤にして、「大学で」いろいろなことに挑戦すればいいじゃないか、と考えております。ぜひみなさんとお話しできることを楽しみにしています。